前田の算数

小学校外国語活動
コミュニケーション能力って
小学校で大切にしたいのは、方略的能力

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1、コミュニケーション能力って何?
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 指導要領に何度も登場する“コミュニケーション”という言葉。
 何だか漠然とした言葉である。

 コミュニケーション能力って、一体どんな力なのだろうか?

 コミュニケーション能力を高めるには、一体どんな授業をすればいいのだろうか?

 コミュニケーション能力が身に付いた姿って、どんな姿なのだろうか?


 コミュニケーション能力”って何なのか、その意味をもっと明確にしていきたい。



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2、コミュニケーション重視の授業って、どんな授業?
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自分たちが学生時代に受けてきた“スキル重視の授業”と、
これから外国語活動で目指すべき“コミュニケーション重視の授業”とでは、
具体的にどこが違うのだろうか。

大城賢先生は、その違いについてI like apple.を例に、分かりやすく説明してくださった。

 まず、「求める子どもの姿」が違ってくるのだと言う。
 例えば、I like apple.と言おうとしたが、appleという単語が思い出せない時、I like…と言った後に、りんごの絵を書いたとする。
 これを良しとするのが、コミュニケーション重視の授業。
 これでは駄目なのが、スキル重視の授業。
 「外国語活動では、スキルがなくとも、何とかして伝えようとする姿こそ大切にしていきたい」と大城先生は述べられた。

 求める子どもの姿が違ってくれば、当然、授業の形も違ってくる。
 大城先生は、What is this?を例に、その違いを説明してくださった。
 例えば、スプーンを提示しWhat is this?と聞いてIt isa spoon.と答えされる活動。
 それは、あくまでもスキルの習得に過ぎない。
 しかし、スプーンを見せずに、叩いた音だけを聞かせながらWhat is this?と尋ねると、What is this?という言葉が意味を持つ。

 「知りたい」「伝えたい」という思いが生まれてこそ、コミュニケーションが成立するのである。


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3、大切なのは「何とかする能力」!
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 一口にコミュニケーション能力と言っても、その意味は広い。
 大城先生の先生の話によれば、文法的能力、社会言語能力、談話能力、方略的能力などの能力が合わさってコミュニケーション能力が形成されるそうである。

 この中でも、「小学校の外国語活動においては方略的能力(strategic competence)を育むことを大切にしたい」と大城先生は述べられた。
 方略的能力とは、簡単に言えば、
「知っている知識を組み合わせて、何とか伝え合う力」
のことである。

 例えば、appleという単語が思い出せないければリンゴの絵をかく。
 cousinという単語が思い出せなければ、my father's brother's sonと説明する。
 言葉で伝えられなければジェスチャーで示す。
 そんな能力のことである。

 語彙も少なく文法も覚束ない小学生がコミュニケーションを図るには、不足を補って何とか伝え合う力が必要になってくるのだと大城先生は述べられた。




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4、何とかして伝え合うには…
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 うまく伝わらない時に、少ない知識を生かして何とかして伝える。
 そんな力を身に付けたい。
 だからといって、子どもに「何とかしてね。頑張って!」と言うだけで、方略的能力が身に付くわけではない。
 教師自身が、何とかするにはどんな方法があるのかを知っておく必要があるだろう。

 「うまく伝わらない時に何とかして伝える方法」について、大城先生は次のような方法を示された。


<方略的能力>

・繰り返して言う

・ゆっくり大きく言う

・ジェスチャーを使って伝える

・感情を表情で伝える

・絵をかいて説明する

・擬音を使って説明する

・意味の近い他の知っている言葉を使う


 この中で、私が特に「なるほど」と思ったのは「もう1度繰り返し言う」ということである。
 日本語で会話する時には、普段から当たり前のようにやっていることではある。
 案外、こんな当たり前のことが、英語になった途端できなくなるような気がする。

 卯城祐司先生は、「これらのことを担任がやって見せることが効果的だ」と述べられた。
担任が率先して、方略的能力を用いながらコミュニケーションを図る姿を子供たちに見せると効果的なのだと言う。

 子どもがうまく伝えられずに困っている時には、上記のような方法があることを助言してあげるといいと思う。
 例えば、もう1度ゆっくり言わせてみる。
 もう1度言うと、案外、伝わるものである。

 慣れないうちは、困っている子どもの代わりに、教師が伝えてあげてもいいと思う。
 例えば、ジェスチャーや絵などを使って、教師が変わりに伝えてあげる。
 子どもは、そんな教師の姿を見ながら、いずれ自分も試すようになる。


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5、教師がモデルになろう!
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 「繰り返し言う」「ゆっくり大きく言う」など、何とかして伝え合う方法。
子どもに助言するだけでなく、教師がそれを授業の中で意識的に使っていくことが大切だと思う。

 ALTは、発音や文法のモデルである。
 それに対して担任は、英語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする姿のモデルである。
 持っている少ない英語スキルで何とか伝え合うには、どうすればよいのか。
 それを示していくのが、担任の役割だと、私は思う。


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6、英語がしゃべれないからこそ!
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 実は、私は学生時代から英語が大の苦手である。
 しかし、外国語活動の時間に、一切日本語は使わず全て英語で行ったことがある。
 その時に思ったのは「何とかなる」ということである。
 ジェスチャーを織り交ぜれば、英語が話せなくても何とかなるものである。

 これまでは、英語を教えるのは、英語が堪能な英語教師であった。
 しかし、これからは、英語初心者の担任が教えていくことになる。
 「それは、スペシャリスト(specialist)ではなく、ジェネラリスト(generalisut)が教える時代になることだ」と大城先生は述べられた。
 子供にとって英語が身近になるということである。

 英語がうまく話せないからといって、何も遠慮する必要はない。
 英語がうまく話せないからこそ、子どもに伝えられることもあると、私は思っている。


余談@:非言語表現って、とても大切!

 言語によらない表現の重要性について、面白いデータがある。
 Birdwisteklの研究によれば、メッセージを伝える際、「言葉」が占める割合は、僅か35%で、「非言語」による割合が65%も占めるそうである。
 また、Mehrabianの研究によれば、感情を伝える際、言葉が占める感情表現は、僅か7%で、声が38%、顔が55%なのだそうである。
 この数値はどうやって算出された数値なのかはよく分からないが、非言語による表現が大切だということは、共感できる。普段、子どもに何かメッセージを伝えようとする際、言葉よりも、表情で伝えている情報量の方がはるかに多いような気がする。
 英語教育というと、ついつい言葉(スキル)にばかり目が行きがちになるが、それと共に、ジェスチャーや表情など、言葉によらないコミュニケーション能力も高めていくことも大切だと思う。




余談@:金田一京助氏の方略的能力!

言語・民族学者の金田一京助氏。
彼について、面白いエピソードがある。

金田一氏がアイヌ語の研究を始めた頃は、アイヌ語については、まったく分からない状況だった。
聞き取り調査では最も重要な言葉の一つである「これは何?」という言葉すら、何と言うのかよく分らない有様だったそうである。

そこで金田一は思案の末、訳の分からない絵を描いた紙をアイヌ人に見せた。
すると、アイヌ人は、「ヘマタ?」と尋ねた。
その反応から、金田一氏は、「何?」という言葉はアイヌ語で「ヘマタ」と言うことが分かった。
そして、それから「ヘマタ?(何?)」という言葉を使って、膨大なアイヌ語の単語を一つひとつ聞き取り調査していったそうである。

なるほど!と思うエピソードである。
これこそ、アイヌ語が分からない金田一氏の使った方略的能力である。


金田一京助氏

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