P2P(ビアツーピア)からスマートP2Pへ

作成・横田真俊
00/09/11

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P2Pのビジネス展開(2)

はじめに。

今、「P2P」(=ピアツピア)技術に注目が集まっている。Napsterが2000万人以上の会員を集めたことやTIMe Warnerの首脳陣もP2Pによって自社のコンテンツが危機に直面しているのにも関わらず、「P2P」技術を取り入れようとしている事、何よりIntelがP2P技術の可能性についてついて語り、「P2P」のワーキンググループを発足させた事から「P2P」は大きな注目の的になっている。

しかし、「P2P」技術は大きな話題になっているが、P2Pには解決しなければならない問題がいくつかある。例えば、NapsterやGnutellaは様々なファイルを共有するが共有された情報の中から一つの情報を取り出すのは難しくなっている。また、あらゆるファイルを共有するので共有されたデータに信頼性が無い、「P2P」ソフトを使ってダウンロードしたデータがウィルスの可能性もある。

また、本当に自分のパソコンやデータをを大勢の人間で共有し活用されるのか疑わしい。自分のマシンが勝手に使われるのを好ましくないと思う人達も当然いるし、GnutellaやNapsterのような「ファィル共有」ソフトにどの程度自分のデータを共有するかわからない。もし共有されるデータが少なければこのようなデータ共有サービスの魅力は薄まってしまう。

このように、現在のP2Pの技術には様々な問題がある。どんなに魅力的なサービスを開始したとしても、このような問題が解決されない限りP2P技術が本格的に使われる事はないだろう。

ではどのようにすれば、現状の「P2P」サービスを改善できるのであろうか? 私は「P2P」が本格的に普及するためには、共有されたデータの「意味づけ」が必要になるのではないかと考えている。

例えば、現在の検索エンジンは入力した「キーワード」を元にして検索しているが、キーワードが専門的な言葉だったり、複数の意味がある場合は上手く検索できない場合が多い。しかも、「曖昧な言葉」を入力しても自分が望んだ検索結果はまず表示されない。

このような情報検索には、一つの情報に対し様々な意味を「意味づけ」する事で現在よりも上手く改善する事ができるだろう。今までは一つのwebページについて今までは「どのような分類か?」「更新したのはいつごろか」程度の情報しかなかったが、これからは「自分と趣味嗜好があっている人間が読んでいるか?」「読んだ人間の表はどうだったか?」「このぺージの信頼性はどの程度か?」「似たような記事はあるか?」「このページを読んだ事があか」「このページを書いた人間はどのような人間か」「このページを見る事で自分の個人情報は抜かれていないか?」など様々な情報が意味づけされる事になるだろう。

このように様々な情報が「意味づけ」され、情報を選ぶ際に大きな判断基準となる、そして、このような「意味づけ」は自分でやるのではなく、世界中のユーザー自分の意志とは関係なく様々なデータやwebページに「意味づけ」を行うだろう。 例えば、自分と趣味嗜好が似ている大勢のユーザーがあるwebサイトをブックマークに登録しその事を公開したとする。その時にユーザーが「意味づけ」された検索エンジンに情報を検索する場合、曖昧な言葉(面白くてタメになるページなど)を入れたとしても、自分と趣味が似ているユーザーが推薦してくれたページにたどりつく事ができるようになる。

もちろん、これはブックマークだけでは無い、今まで読んだ本、持っているMP3ファイル、作成したファイル、公開したプロフィール、今どこにいるか、など自分が公開した様々な情報や他人がチェックした情報、またはどのような人がこの情報を勧めているかなどの情報を統合し、そこから自分にあった情報を引き出す事ができる。 また、このような情報検索は携帯電話などのモバイル情報にも使われるようになるだろう。最近では位置情報と連動したコンテンツや割引チケットを携帯電話に配信するサービスも行われているが、これらのサービスも関係の無い人間にとっては意味がない。効果的に情報を配信するために、これらの情報も「どの場所にいるユーザーに必要か」「どの時間にこのコンテンツを読むのが最適か」など様々な「意味づけ」がされ効果的にユーザーに送られるようになるだろう。

このような「意味づけ」情報を検索する場合だけではなく、様々な事に応用される事になるだろう。 例えば、巨大なサーバーの代わりに何台ものクライアントを情報処理に使う事になると思うが、接続したクライアントによって機密性のあるデータが盗まれる心配もある。しかし、サーバー自体に様々な「意味づけ」が行われていれば、どのサーバーがどの程度安全なかがすぐにわかる事ができる。しかも、「意味づけ」された情報は世界中の人間がチェックした負荷された情報なので信頼性も高い。高い信頼性を持ったサーバーやクライアントがわかれば、P2P技術を使いやすくなるだろう。

現在のP2P技術には様々な問題がある。しかし、一つのデータに様々な情報が「意味づけ」され、そこから様々サービスを提供するならば、このような問題も解決できる。 そこで、一つのデータに様々な情報を意味づけしたP2P技術「スマートP2P」を提唱する。 次章はこのようなP2P技術を使えば具体的にどのようなサービスが提供できるか考えていきたい 。

(1)スマートP2Pはオンラインショッピングをスマートにする。

「インターネットを使えば、人混みの中に入らず自宅にいながら買い物ができる。」初期の頃のオンラインショッピングではこのような事がよく言われていたが、残念ながらインターネットにも人気商品には「人混み」が存在する。

アメリカでは毎年クリスマスシーズンになれば、人気のあるオンラインショップはアクセスが集中し、ショッピングサイトに接続しにくくなったり、まったく接続できない場合もある。中にはあまりのアクセス数に良いサービスが提供できずに提訴されたショッピングサイトもある。(1)もちろん、このような事はアメリカだけの問題では無い、日本でも人気ゲーム機「プレイステーション2」の販売時は午前0時からの受付であったにも関わらず、最初の一分間で10万ヒット、ピーク時には40万〜50万ヒットと予想以上のアクセス数が集まりシステムの一部がダウンした。(2)

いくら人気のある商品をオンラインで販売しても、サイトにつながらなければ意味がない。サイト側が十分だと思ってもそれ以上のユーザー数が訪れる場合もあるし逆に予想していたよりも少ないユーザー数しか訪れない場合もある。今までは訪れるユーザー数を正確に予想し多くのヒット数に耐えられるようなシステムを用意するのは非常に難しかった。

しかし、P2P技術を利用すればこのような悩みも軽減するだろう。今までは多量のヒット数に耐えるシステムを構築するにはサーバーを何台も用意する必要があり、予想以上にアクセスが集中し処理するサーバーを増やそうとしても、簡単には増やす事はできなかった。しかしP2P技術を利用すれば予想以上のアクセス数がきてもシステムがダウンせずに処理するクライアントPCの数をリアルタイムで増やし柔軟に処理する事ができるだろう、しかもアクセスする数が減っても処理するクライアントPCの数を減らせば良いだけだ。

P2P技術を利用すればアクセス数を正確に予想しなくとも、柔軟に処理する事ができるようになる。そうなれば、本当にオンラインショッピングは「人混み」がないスマートなショップになるだろう。


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