2 スマートP2Pによって情報検索がスマートになる。今までの検索エンジンは入力したキーワードからページを検索していた。しかし、webページの増大に伴いこのような方法で自分の望む情報を手に入れるのは難しくなってきている。なぜなら、同じキーワードでも検索する人間によって意味が違うからだ、webの数が少なかった2〜3年前はそれでよかったのかもしれないが、現在ではwebの数も膨大になりそれと同時にインターネットを利用する人間の数も大幅に増えている、それに伴って検索エンジンも一つのキーワードで何十種類ものカテゴリーを用意しなければならなくなっている、検索する人間は何十種類ものカテゴリの中からさらに情報を絞り込みサブカテゴリに移動しその中の何十種類のページから自分が欲しい情報を探さなければならない。検索するwebサイトが膨大になればその分だけ情報を検索するのが難しくなる。 また、専門的な情報を探す場合、検索エンジンに入力するキーワードも「専門的」な情報になるが、一般的な検索エンジンではこのまような専門的なキーワードで検索するのが難しくなっている。既にこのような問題に対して専門的な検索サイトを作って対応している、検索エンジンも存在しているが、(3)専門的な検索エンジンを何種類も用意するのは非常に難しい。また、従来のようなキーワード検索では「有益な情報」などの曖昧なキーワードでは自分の望む情報を手に入れる事ができない。さらにこのようなキーワード検索はその情報に対する保証がまったくない。検索エンジンから自分の欲しい情報を探しても果たしてその情報が本当かウソかわからないのだ。 このような問題は現在の検索エンジンだけでなくGnutellaのようなファイル共有ソフトにも当てはまる。現在のGnutellaなどのファイル共有ソフトは情報に対する信頼性があまり無い、現にGnutellaを使ってMP3ファイルをダウンロードしたら全然関係のない音声広告だったりする事もあるし、Gnutellaの中には「ウィルス」まで発生している。(4)ファイル共有ソフトによって共有されるファィルはその信頼性まで保証されていない。 この問題を解決するには従来のような「キーワード検索」の他に検索対象に新しい検索システムが必要になってくる。そのような新しい検索システムは従来のような「キーワード検索」やGnutellaのように検索対象そのものを共有するのではなく検索対象が持っている「意味」を共有するようになるだろう。この場合「意味」というのは、検索されたページの信頼性や自分にとって有益な情報を得られるかどうかという事だ。そうなれば、検索されたページやデータがウィルスや虚偽の情報が書いてあるページであるとしても、検索された時点でそのページの信頼性がわかるようになるだろう。 既にこのような検索対象に「意味を持たせる」検索システムは存在している。例えば、「blink」はブックマークを共有し、共有されたブックマークの中から情報を検索するサービスを提供している。(5)「blink」は通常のキーワード検索の他に自分が登録し共有した「ブックマーク」を使い、他の会員が登録したブックマークとの類似性を判断し、自分が登録していないブックマークを推薦してくれるサービスを提供している。このサービスを利用すれば通常の検索エンジンではヒットしない「専門的」な用語でも検索するようになるし、「有益な金融情報が載っているページ」や「ミステリーの有益な書評」など漠然なキーワードでも検索する事ができるようになる。 また、「検索バディ」(6)は検索エンジンで検索された結果にそれそれがコメントをつけて共有するサービスを提供している。検索バディには検索されたコメントに投票する機能が付いている。この機能によってどのコメントが有益なのか調べる事ができるようになっている。 これらのサービスの共通している点はブックマークや検索結果などの情報に、様々な「意味づけ」をしている点だ。今までの検索エンジンでは「キーワード」に頼るしかなかったが様々な情報に色々な「意味づけ」を行えば、それだけ様々な角度から情報を検索する事ができる。現在は自分にあったページを検索できる程度止まっているが、将来的にはページだけでなく音楽データなどの推薦やセキュリティが甘く信頼性のないページを除去する事も可能になるだろう。 このような「意味」の情報共有は現在の検索エンジンやGnutellaやNapsterなどのP2Pソフトではできない。しかし、P2Pを超えた「スマートP2P」技術は共有された膨大なデータに様々な「意味」を加え、より自分にあった情報検索ができるようになるだろう。 また、このような情報の「意味づけ」によって変わるのは「検索システム」だけではない。例えば「コンピューターウィルス」を防ぐのにも有効に使われるだろう。 今まで「コンピューターウィルス」を防ぐには自分のパソコンに「ワクチンソフト」を入れ定期的に最新のプログラムをダウンロードする必要があった。しかし、最新のプログラムをダウンロードするのを忘れる事もあるし、最新のプログラムをダウンロードしてもウィルスの感染力が早い場合は最新のプログラでもウィルスを防ぐのには役に立たない。 そこで、最近ではクライアントPCでウィルスを防ぐのではなく、ISPやASPでウィルスを駆除する試みも始まっている。(7)ISPやASPでウィルスを防げるようになれば、クライアント側はそれほど注意深くウィルス情報を見る必要がなくなるし、ISPやASPのスタッフはクライアントPCのユーザーとは違い24時間ネットワークの監視にあたる事ができる。 しかし、このような方法はISPに入ってくる全てのメールやファイルをチェックしなければならなくなるため、ISP側のサーバーには膨大な負荷がかかる事になる。しかも、インターネットの問題はウィルスだけではない。私たちが普段使っているブラウザにもたくさんの「セキュリティホール」が存在している。もちろん、セキュリティホールを埋めるためのパッチもリリースされているが、必ずそのようなパッチをダウンロードするとは限らない。また、巧妙なオンライン詐欺もあるかもしれない。このようなものはウィルスのようにISP側で処理する事は不可能だ。 だが、このようなオンラインセキュリテイの問題もP2P技術で解決できるようになるだろう。 まず、前章で述べたとおりサーバーに多量の負荷がかかる場合は、ISP側のサーバーだけでなく、インターネットに接続された他のクライアントPCを使い処理すれば柔軟に対応できる。ISP側はサーバーの負荷を恐れずにメールのフィルタリングができるようになる。もちろんISP側が完全にウィルスを駆除できなす場合もあるがそのような場合でも、添付されたファイルや直接ダウンロードするデータの信頼性を共有された情報から調べる事ができるだろう。今まではウィルスのデマ情報などがメールで送信され、どれが本当のウィルス情報かわからなかったが、スマートP2P技術を使い様々な情報に「意味づけ」がなされている正確な情報からウィルス情報を調べる事ができるだろう。オンライン詐欺やブラウザのセキュリティホールを使った悪意あるページも様々な情報を共有しそれぞれのページやコンテンツに「意味づけ」がなされていれば、どのページが信頼性のあるページなのかがすぐにわかるようになり、自然に自分だけのページの格付けランキングなどもできるようになるかもしれない。 4 スマートP2Pによってモバイルとの連動がスマートになる。スマートP2Pによって恩恵を受けるのは、いわゆるパソコンだけでない。将来的に携帯電話やPDAなどもスマートP2P技術が組み込まれ、モバイル端末は今以上に使えるようになるだろう。 まず、P2Pが組み込まれる事によってモバイルと様々なデータの同期化がスマートになるだろう。現在の私たちはパソコンや携帯電話などの様々な情報端末から、様々なソフトを使っているが、それぞれのデータはバラバラに管理されている。例えば、パソコンや携帯電話に内蔵されたアドレス帳をいくつ使っているだろうか?電子メールソフト、携帯電話、PDA、IM、webベースのカレンダーサービス、それぞれにアドレス帳が内蔵されているが、それぞれ一つずつ入力しなければならないため非常に効率が悪い。もちろん、これはアドレス帳以外にも「スケジュール」や「to doリスト」も同様だ、複数のサービスの利用した場合、それぞれの情報がバラバラではとても使い物にならないだろう。 しかし、「スマートP2P」技術を使えばこのような同期化の問題は解決できるだろう。「スマートP2P」技術を使えばどのような種類のデータでも一つのデータを更新すれば、同種類のあらゆるデータが更新されるようになるだろう。つまり、外出先で新しいアドレスデータを携帯電話に入力すればその瞬間にパソコンに入っている電子メールソフトのアドレス帳やwebカレンダーサービスのアドレス帳、PDAのアドレス帳がいっぺんに更新されるようになる。もちろん更新されるデータは自分個人だけのものとは限らない、例えばあるグループに属していた場合、グループの誰かのスケジュールが変更になった場合それをリアルタイムで知る事ができるようになるだろう。 スケジュールやアドレスのデータだけに止まらずあらゆるデータの同期化が可能になるだろう。最近では携帯電話で音楽データを聞く事ができるサービスが試験的に行われているが、今のところ、携帯電話でダウンロードした音楽を記録するメディアはメモリーステックやSDカードなどごく限られたメディアであり、自分が持っているパソコンやオーディオ機器がそれらのメディアに対応していない場合携帯電話以外で音楽を聴く事ができないようになっている。ダウンロードした音楽が携帯電話でしか聞くことができないとすれば誰も使わないだろうが、このような音楽情報を様々なものにデバイスと同期する事ができるようになれば、どのような端末からでも音楽を聴く事ができるようになるだろう。 このような「同期化」の試みは既に始まっている。いくつかの会社がこのような「同期化」の問題にとりかかっている。(8)また、Gnutellaの技術を使って更新されたデータをすぐに反映できる検索エンジン「InfraSearch」が公開されている。現在のGnutellaのような「ファイル共有」ソフトはあらゆるファイルを共有し、ファイルの変更をすぐに反映する事ができる、このような特性もスマートP2Pに反映される事になるだろう。 「スマートP2P」がモバイルにあたえる影響はこれだけではない、IntelがIDFが発表したP2Pの技術の中には何台ものクライアントPCを結びつけて大きな力を発揮させるような事も発表されていたが、将来的には結びつけられるのはクライアントPCだけでなく、携帯電話やPDAも結びつけられようになり、クライアントPCでする計算の一部を携帯電話が代わりに行う事になるかもしれない。なぜなら、現行のPCやワークステーションの他にもPDAや携帯電話のCPUが今よりも劇的に性能が伸びる可能性があるからだ。 例えば、Intelは第3世代携帯電話やPDA向けに「XScale」というCPUを「P2P構想」とほぼ同時に発表している。(9)この「XScale」は現在PDAや携帯電話で使われているCPUの20倍の性能を持ち最高で1GHzの性能を出す事ができるという。(10)さらに、この「XScale」は強力なCPUであると同時に消費する電力は現在のCPUに比べて少ないという利点を持っている。現在の携帯電話が処理する情報は少ないが、音声で会話しながらビデオ再生ができるような第3世代携帯電話では処理する情報量は爆発的に増える。そのような時には強力なCPUが必要になってくる。携帯電話やPDAでビデオや音声などのコンテンツを扱う需要は確実に伸びてくるだろうし、将来的にはビデオ再生ができるPDAや携帯電話も登場するだろうが、クライアントPCと同様に携帯電話を一日中使うことは少ないだろう。むしろ、ビデオ再生の時間よりも「待ち受け状態」の方が長いはずだ。そうなれば、クライアントPCの他にも携帯電話やPDAをP2Pネットワークに接続しクライアントPCと同様に情報を処理させる事ができるようになるだろう。 携帯電話やPDAのP2Pネットワーク参加は、携帯電話やモバイルでの「ウィルス」の予防にも役に立つだろう。 以前から携帯電話には悪質なチェーンメールが存在していたが、最近では携帯電話をフリーズさせたり、勝手に110番通報してしまうメール(11)や悪質なメールが最近数多く登場している。また、海外でも既に携帯電話をフリーズさせてしまうメールや携帯電話やpalmなどのモバイル端末をターゲットにしたウィルスが登場している。(12) <これらのウィルスの感染ルートは従来の通りインターネットからの感染であるが、携帯電話やPDAは新しい感染ルートを持つ恐れもある。それは、風邪やインフルエンザのような「空気感染」である。冗談では無い。既にpalmや一部の携帯電話はIrDAが搭載されているし、Bluetoothも携帯電話やPDAも近いうちに標準装備される事になる。BluetoothはPDAやパソコン、プリンタなどを無線でシームレスに接続できる技術だが、単純にデータをコピーする他にも特定の場所で携帯電話の着信音を鳴らさないようにするなど(13)様々な事ができる。確かにBluetoothは有効なツールだが同時にこれが「ウィルス」などに悪用されれば、現在のウィルスよりもはるかに強力になるだろう。なぜなら、Bluetoothなどを利用してウィルスが配布されるようになれば、人通りの多い駅前に立っているだけで他人の携帯電話やPDAにウィルスを送る事が可能になるかもしれないからだ。まだBluetoothは開発中の技術であり、どの程度のセキュリティなのかわからないが、携帯電話やPDAに感染するウィルスが広がれば町を歩いているだけで感染してしまう、コンピューターウィルスも登場してくるだろう。 前述した通り、このような「スマートP2P」技術はウィルス予防にも威力を発揮する、データだけでなく、それらのデータの「意味」も調べる事ができるようになるだろう。 例えば、町を歩いていると自分の携帯電話に何かのデータが届いていたとする。このメールは友人からのメールかもしれないし、近所でバーゲンをやっているお店の広告かもしれないし、ウィルスがついたチャーンメールかもしれない。現在では友人からのメールであらうと悪質なチェーンメールであろうとも携帯電話に受信されるようになっているがスマートP2P技術が導入されれば、データ受信する前にそれらの信頼性や「意味」を共有された情報の中から調べる事ができるようになるだろう。データを受信する前にそれらの情報を調べるようになれば、不必要なデータは受信しなくとも良いことになるので、不愉快なチェーンメールや今後増大するであろうモバイル機器向けのスパムを減らす事ができるようになるだろう。 また、P2P技術とモバイル機器を利用すれば、携帯電話が「圏外」の場合でもメッセージを渡せるようになるかもしれない。現在の携帯電話は当たり前だが電波が届かない「圏外」の相手には通話する事も電子メッセージを送る事もできない。相手が「圏外」ならば留守番電話を送るか、メールを送る事ぐらいしかできなかった。 しかし、P2P技術が普及すれば、Bluetoothや位置情報との連動すれば電波の届かないところでも端末間の情報の受け渡しで電波の届かない場所での情報の受け渡しができるかもしれない。 例えば、携帯電話は自分のいる位置をセンター側に知らせると共に近くにいる携帯電話に自分の情報を送る。そして、近くにいる携帯電話の情報もセンター側に送る。つまり、「常に自分の近くにどのようなユーザーがいるか」という事を自分の携帯電話やPDAが把握し、センター側も送ったユーザーの近くにどのようなユーザーがいるかを把握する事がてきる。 もし圏外になったユーザーがいた場合、センター側は圏外にいたユーザーの近くにいる携帯電話に情報を送り、情報を受け取った携帯電話はBluetoothなどを使い「圏外」にいるユーザーにも情報を届ける事ができるようになる。もし、一度の送信で目的のユーザーに届かない場合にもさらに近くにいるユーザーにその情報を渡す事で、最終的にはユーザー に届く仕組みだ。さすがに「圏外」での通話は難しいかもしれないが、簡単なメッセージぐらいの送信ならば、このような仕組みで「圏外」のユーザーにメッセージを届ける事が可能だろう。 現在では携帯電話の情報処理能力は貧弱だし、パソコンなどの連動もあまりスムーズにいっていない。しかし、第三世代携帯電話やBluetoothの登場で携帯電話やPDAがパソコン並みの処理能力を持つ他のデバイスに連動する事ができるようになるだろう。しかし、それに伴ってウィルスなどの被害が携帯電話やPDAで登場する事にもになっていくだうろ。今まではウィルスやスパムなどはインターネットら接続したパソコンのみの出来事であったが、今後は携帯電話やPDAなどのモバイル情報端末の事を考えなければならなくなる。そのような場合、「スマートP2P」技術が有効に使われるだろう。 5スマートP2Pによってコミュニティがスマートになる。無料で掲示板やML利用できるサービスや新しい出会いをテーマにしたコンテンツがますます増えてきている。このようなコンテンツは当初は専門の出会い系のサイトやそれぞれの個人サイトで開設されていたが、最近では大手ポータルサイトで掲示板や出会い系のコンテンツが開設され好評である。 また、無料で利用できるメーリングリストも大手ポータルは取り入れようとしている。例えばYahoo!は無料メーリングリストサービスを行っているeGroups買収完了しているし(14)「楽天」は無料メーリングリストサービス「インフォキャスト」を買収している、今後もこのような無料メーリングリストサービスの買収は続くだろう。 また、このような「コミュニティサイト」が登場しているのはパソコンだけではない。iモードやPDAの普及とともに、モバイル向けの「コミュニティサイト」も数多く登場している。例えば前述した「インフォキャスト」は業界で初めての携帯電話でのメーリングリストを始めている。携帯電話でメーリングリストを利用する事により外出先の家族全員に夕食のリクエストを聞いたり、飲み会の幹事がお店の場所の地図ファイルをMLに添付して参加者に知らせるなど、従来のPCベースにはできなかったモバイルならではの使い方ができるようになっている。また、サイバーアソシエーツも携帯電話でのメーリングリストサービスを開始している。(16)また、掲示板サービスや「出会い系」のコンテンツもiモ−ドなどのモバイルコンテンツは数多く存在している。例えば現役高校生が管理している、出会い系」のコンテンツ「Wander Destiny City」は開設されてから半年も経っていないが既に1日2000件のアクセスを誇っている。また、大手ポータル「Excite」では会員数が50万人いる人気サイト「エキサイト出会い」のpalm版を開設している。(18) このように、様々なサイトがユーザーの囲い込みのために掲示板やメーリングリストなどを利用している。ポータルはこれらのコンテンツを融合してさらに囲い込みを広げるだろう。 現在では、これらの掲示板やメーリングリストなどのコミュニティサイトは様々なカテゴリに分かれており、自分の興味がある話題を探すのは大変だし、出会い系のページも様々な人達が登録しており、やはり自分に合った人達を捜すのは大変な作業になる。しかも、これらのページに自分のプロフィールなどを載せた場合に大量のメールが自分に送られてくる場合がある。これらのメールの中から本当に自分に合った人を見つけるのは大変な作業だ。 また、複数の話題が融合したコミュニティを探す事も難しいだろう。現在の掲示板やメーリングリストは基本的に話す内容か固定されている物が多い。全然関係のない複数の話題を取り扱うには掲示板やメーリングリストは不向きだ。また、これからはパソコンだけでなくPDA用やモバイル用のコミュニティサイトも今以上に活発になってくる。現在は従来の文字ベースのコミュニティサイトが一般的だが、第3世代携帯電話やPDAの普及でこれらの特性を生かしたコミュニティサイトの構築が不可欠となってくるだろう。 また、現在のコミュニティ大手ポータルが「囲い込み」の道具として使っている事からわかる通り、他のコミュニティとまったく連動していない。あたりまえの事だが、LYCOS の掲示板とYahoo!の掲示板で同じ話題が出ていても、LYCOS の掲示板でYahoo!の話題を見る事ができない。つまり、どんなに自分にあった情報があっても自分が属しているコミュニティでなければ見る事ができない。現在の大手ポータルが囲い込んだものでは自分の欲しい情報がバラバラになってしまい情報を得る事が難しくなっている。 また、Yahoo!やLYCOS などの大手ポータルは多くの人達が利用するので多くの情報が書き込まれるといるが、あまりにも書き込まれる情報が多く自分が関連しているところだけを見るとしてもかなりの時間をかけなければ見つからない。いくらインターネット上で自分に関連する様々な情報が数多く存在していても、それらの情報があまりにも多ければその中から自分に望む情報を見つけるのは非常に困難だ。 また、掲示板やメーリングリストは議論が活発になっているところもあれば、「開店休業状態」の掲示板やメーリングリストもある。いくらコミュニティに参加しても掲示板の書き込みもほとんど無ければコミュニティに参加した意味が無い。自分が参加するコミュニティがどの程度活発なのかがわかればコミュニティに参加するヒントになるが、従来のキーワード検索ではどのような掲示板やメーリングリストが活発な状態であるかわからない。メーリングリストの紹介をするサイトの中には一日にどの程度の発言があるが書いてあるサイトもあるが、それらの情報は日々変わっていくのでどの程度まだ信頼できるかわからない このように、現在の掲示板やメーリングリストを中心としたコミュニティでは書き込まれた内容がバラバラに存在し、自分が望む情報をなかなか手に入れる事ができない、など様々な問題があった。 今まではコミュニティに参加する人間が少なかったからこのような方法でも上手くできたが、これからますます多くの人達がコミュニティに参加し、より多くの情報がコミニティ内でやりとりされる事から、新しいコミュニティを構築しなければならなくなる。 では、現在のコミュニティの問題点を改善した新しいコミュニティサイトの構築はどのようにしたら良いのであろうか?答えの一つに「スマートP2P」の特徴である「意味づけ」の技術が必要になってくるであろう。コミュニティ内で発言された情報をそれぞれ「意味づけ」されるようになり、その中から自分にあった情報を得る事ができるようになるだろう。今までの掲示板やメーリングリストなどのコミュニティはコミュニティ内でしか情報の交換ができなかったが、「スマートP2P」技術を使った新しいコミュニティは自分が関連していればどのようなコミュニティからでも情報を持ってくる事ができるようになる。そうなれば、メーリングリストや掲示板などのコンテンツを使っての囲い込みができなくなってくるだろう。 既にこのようなコミュニティの形成の話は出てきている、例えば「スピーチバルーン」と呼ばれるプロジェクトは運営者などのサービス提供者やサーバーに依存せずに、自然発生的にコミュニティを形成する事ができる。(12) 「バルーン」とは、漫画中の人物の口から出た言葉を示す風船形の輪郭"吹き出し"のこと。ネットワーク上で付箋(ふせん)や気球のように浮遊するバルーンは、それぞれ相関の強いメッセージ同士が結び付き、互いにリンクを張っていく。このようにして成長したバルーンの数(クラスタサイズ)がある値になると、バルーンにあらかじめ属性情報として設定してあったサービス(アプリケーション)が自動的に起動し、バルーン発信者のコミュニケーションを支援するようになる。そして、自律発生的にコミュニティーが発生し、そのコミュニティーができた段階で、メールが送られて来たり、コミュニティーのメンバーとチャットができるようになるという。 < まだ、このような自然にコミュニティを発生されるような仕組みはまだ実用化にはいたっていないが、将来的にはこのようにコミュニティを自然発生させるようなシステムが登場してくるのは間違いがないだろう。 また、このような様々な情報を「意味づけ」する事によってできるコミュニティによって従来からの広告やオークションサイトなども変化せざるを得ないだろう。 今までは、利用者に自分のサイトをより長く利用してもらうために掲示板やメーリングリストなどに、各サイトが持っている様々なコンテンツを連動させ、一秒でも多くの自分サイトに滞在してもらい、バナー広告を表示する事が目的だったサイトもあるが、様々な情報が「意味づけ」された新しいコミュニティではこのような囲い込みでは有効な広告にならない。 なぜなら、掲示板やメーリングリストのように初めから大雑把な分野の分類が出来ているものならば、それぞれのコンテンツに関連しそうな広告を表示すればよかったが、一人々のユーザーが「意味づけ」された様々な情報を収得する、「スマートP2P」ではこのような大雑把な分類では効果的な広告は望めないだろう。 ではどのようにしたら、効果的な広告を掲載する事ができるのだろうか? まず、このような広告も「意味づけ」され、自分にあった広告がおくられてくるようになるだろう。 自分にあった情報を推薦し自動的に送ると言う点では「レコメデーション」や「オプトイメール」と似ているが、「レコメデーション」や「オプトインメール」が限定的な範囲でしかも決められた情報しか推薦できなかった。また、「オプトイメール」は関心を持っている情報をユーザに選ばせて、そこから効果的な情報を送る方式だが。いくらユーザーが関心を持って選んだ情報であっても、同様のメールが何通も送られれば、それは「効果的な情報」ではなくただのスパムになってしまう。 しかも、インターネットに接続できる機器は多様化している。最近では携帯電話などのモバイル端末用の広告も登場しているが、これらのモバイル用のBluetoothや位置情報などと連動すれば、我々が持っている携帯電話やモバイル機器に多量の広告が配信されるようになる、パソコンだけならば今までのようにユーザーに分類された情報を選ばせる方式もある程度の効果はあるだろうが、携帯電話やPDAなどのモバイル端末にこのような情報が頻繁に届くようになれば、ユーザーにとってかなり迷惑になる。しかも、位置情報に連動するようになるため、現在よりもさらに広告を配信するタイミングが難しくなる。例えば自分が関心「グルメ」に関心があるといっても、料理店の前を通るたびに広告がその店の広告が配信されるようでは効果的な広告とは言えない、これからの広告システムはユーザーの関心だけでなく、「今までのユーザーの行動」「現在時間」「ユーザーの居場所」など様々な要素を考えて送らなければならなくなる。逆に言えば「意味づけされた」広告はユーザにとって最適化された情報システムとなるだろう。 このような「意味づけ」のシステムはオークションサイトの利用にも使われるようになるだろう。現在のオークションサイトのやりとりは基本的に同じオークションサイト内でのやりとりでしかできない、あたりまえだか一つの商品を複数のオークションサイトから入札を行う事はできない。 しかし、様々な「意味づけ」が可能になる、「スマートP2P」技術を使えば、オークションサイトに自分の商品を出品しなくとも、ただ自分の商品の情報を公開するだけで自分の商品を世界中のユーザーから書いてを募集する事ができるだろう。 また、インターネットでのオークションでは商品の値段と共に、相手の信頼性も大きなポイントになってくると思う。 どんなに良い商品が魅力的な値段で出品されていても、その商品が本当に届くかどうかは その商品が届くまでわからない。また商品を送る側も相手がちゃんとお金を払ってくれるかどうかお金が届くまでわからない事がある。このような問題に対して現在のオークションサイトでは、出品者や落札者の評価を行っているサイトも多い。もちろん、様々な情報が「意味づけ」されたオークションならばそのような情報もよりわかりやすく表示する事ができるだろう。 終わりに先日、Xeroxパロアルト研究所(PARC)が発表した調査報告によればGnutellaのユーザーの2%のユーザーが残り98%のために音楽ファイルを提供しているという現状が明らかになった。(20)つまり、大多数のユーザーがファイルを提供せずダウンロードしてくだけの「ただ乗り」ユーザーであり。このような「ただ乗り」ユーザーは最終的にこの種のP2P型ファイル共有システムを破滅に追い込む可能性があるという。 一方、ブックマークを共有するサービス「blink」は75パーセントの会員が自分のブックマークを公開しているという。(22) この違いが意味しているのは一体何だろうか? 私には共有され活用されるものが、「データ」から「意味づけられた情報」になっていく前兆だと思われる。 ただ闇雲らデータを共有する時代はもうすぐ終わろうとしている。これからは共有されたデータをいかに活用するかがポイントになってくる、そしてそれには「P2P」の概念を超えた、「スマートP2P」技術が利用されるようになるだろう。 関連リンク (1)ギフト配送めぐりユーザーがToys"R"Usを提訴 http://www.zdnet.co.jp/news/0001/13/toysrus.html (2)久多良木社長、プレイステーションドット・コムの状況を説明 http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/20000218/ps2_2.htm (3)検索エンジン垂直化の動きは「Napsterの影響」 http://www.zdnet.co.jp/news/0008/24/search.html (4)新種のVBSウイルスはGnutellaユーザーがターゲット http://www.zdnet.co.jp/news/0006/05/gnutella.html (5)Webブックマーク共有サービス、日本で開始 http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/inet/106353 (6)検索バディ!
(7)ISPでウイルス感染をストップ http://cnet.sphere.ne.jp/News/1999/Item/991224-7.html?rm ウイルス対策のASPを目指すトレンドマイクロ http://www.zdnet.co.jp/news/0007/11/trendmicro.html (8)次のビッグな波は「シンクロナイズ」 http://www.zdnet.co.jp/news/0008/07/berst.html (9)インテルが『XScale』で『Palm』ハンドヘルド機分野に参入か http://japan.cnet.com/News/2000/Item/000825-1.html (10)携帯電話に1GHzプロセッサが入る?--Intelの新CPU「XScaleアーキテクチャ」 http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/20000828/kaigai02.htm (11)iモード利用の110番いたずら電話急増 警視庁がドコモに対策要請 http://www.mainichi.co.jp/digital/netfile/archive/200007/21-1.html (12)既に、海外では携帯電話やPDAをターゲットとしたウィルスの被害が報告されている。 携帯電話をターゲットにした初のウイルスが登場 http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20000607301.html 携帯電話へのハッカー攻撃か http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20000901301.html トロイの木馬がPalmを奇襲 (13)『ブルートゥース』で迷惑な携帯着信音をストップ http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20000710301.html (14)Yahoo!によるeGroups買収完了 http://www.egroups.co.jp/files/managersjp/Yahoo/ltrs-moderators-20000831.txt (15)楽天、無料メーリングリストのインフォキャストを買収 http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2000/0725/rakuten.htm (16)サイバーアソシエイツがインターネット対応携帯電話向けの無料メーリングリストサービスを開設 (17)Wander Destiny
City (18)エキサイト出会いPalm版 (19)スピーチバルーン"の魅力を探る http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/2000/0512/topi06.html (20)Free Riding on Gnutella http://www.parc.xerox.com/istl/groups/iea/papers/gnutella/ 「Gnutellaコミュニティに協力関係なし」の報告書 http://www.zdnet.co.jp/news/0008/22/fileshare.html (21)ヤフー脅かす異色サイトが日本上陸--米ブリンク・コム http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/inet/95418 00/09/21 作成・横田真俊
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