RAIN

「驟雨」

――大丈夫という言葉を譫言のように聞いていた。

濡れた錆に混ざってどこか場違いな花の香りがするのは気のせいだろうか。
色のない雨は降り止まない。
雲に覆われた空は白く眩んでやけに明るい。
厚い手袋越しに染み込む冷たい水と、白い視界、それから錆と、かすかな花の匂い。
かき抱く腕の中の重みの冷たさにただ漠然と縋り付くほか何も出来ない。


――大丈夫だ、ビクトール、大丈夫だ。


囁くように繰り返されるその声に気付いたのはどれほど経った頃だったか。
背中に緩慢に伸ばされた腕には何の力もこもっていなかったが、男のうなじに添えられたその指先からは確かな熱がゆっくりと流れ込んでくる。
俺はひょっとして泣きてぇとか、あるいはもしかしたら笑いだしてぇとか、そんな収拾のつかないガキみたいな顔をしてるんじゃねえだろうか?

雨の中

再び強まる雨脚を言い訳にビクトールは抱えた体を引き寄せた。
濡れた髪に顎を埋め、それからゆるゆると詰めた息を吐き出した。
腕の中に抱えた、その表情を見ることが恐ろしく、男はその場から動くこともできぬまま、濡れた大地にひざまずくように遠い地平に祈るような眼差しを向けていた。


ほんとうに短いものですが、お受け取り頂けると嬉しいです。
穂高さんのサイトはこちら


2003.09.24〜10.05 TOP画として使用。

気が付けばいつの間にか秋…で、慌てて描いた間に合わせTOP…
ほんと手抜きで申し訳なかったです。
しかし意外と気に入って下さった方が幾らかおいでましたので、格納しておきますです。
(2003.09.24)

チャットにおいでて下さっていた穂高さんが
「あの絵でお話が出来そうです(とかいった内容でした)」
と洩らした一言に、ぐいぐい喰らい付いて強引にお約束を取り付けてしまいました…(←鬼)
その節は大変申し訳なかったです。
でも!でもでも!!お陰でこんな素敵なお話しが!!!!
うわーん!有難う御座いましたー!!!
まるで目に浮かび上がるかの描写に、惚れ惚れです。
そして、「泣きてぇ」とか思ってるのに、どうして熊はこんなに格好いいのでしょうか?!
ほんとにほんとに有難う御座いましたです。
是非また宜しくどうぞですv(いい加減にしとけ…)
しかしタイトルが読めなかったのはココだけの話です(笑)
(2003.10.28)

下絵 タブレット直描き(oC)


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