夢の場所


夢の場所


夢を見た。

どこだったか、あれは。

一面の花畑が、目に眩しかった。


オデッサが笑っていた。



解っている。

あれは、夢だ。



あれが、自分の記憶である筈もない。


オデッサが、笑う。

優しく、穏やかに、幸せそうに。



あんな風に。

彼女と、過せた日はなかった。

ただ自分の記憶に在るのは。

熾烈な戦いや、敗走。

難しい顔でする軍議や、疲れ、それでも走る日常。


穏やかな時間がなかった訳じゃない。

だけど。

あんな風に。

ただ、ひたすらお互いだけを想って。

あんな風に、優しく穏やかに笑い合う。

あんな時は知らない。

あんな表情の彼女は知らない。



あれは夢だった。


その事に、酷く後悔させられる。

どうして。


あんな彼女の顔を見ておかなかったのか。

どうして。

あんな風に彼女を笑わせてやれなかったのか。



今更。

思っても仕方ない事だけれど。





「夢で逢えたら」そう思ってそれが実現したとしても。それで幸せとは限らない。
2003.12.07