Love is blind.


<<マイクロトフ・カミュー 編>>



「で?何があったんだい?」
自室に戻るなり、マイクロトフに切り出した。
こういうのは早いほうがいい。
「何がだ?」
「だから、訓練でフリックと喧嘩でもしたのかと訊いてるんだよ。」
「いや?訓練では問題ないとさっきも言ったじゃないか。」
「……」
答えるマイクロトフに不自然さはない。
本当にフリックとは、何の確執もないようだ。
だったら何故、こんなにも不機嫌なのだろう。
さっきよりかは幾分ましにはなったけれど、まだマイクロトフの表情は固い。
「…カミュー、お前のほうこそ、何かあったんじゃないのか?」
「は?私?」
「……」
突然、問い掛けられて一瞬対応が出来なかった。
マイクロトフは後ろを向いている。
「何も…なかったと思うけど…?」
「……」

何もなかった。
訓練は滞りなく何もかも順調で、予定よりか早くに終わったくらいだ。
何故、そんな事を訊くのだろうか。
ちゃんと正直に答えたのだが、振り返ったマイクロトフの顔は不満気だった。

「じゃあ、さっきビクトール殿と何を喋っていたんだ?!」
「何って…別にこれといって…」
訓練の感想とか世間話とか。
マイクロトフが、今一何を言いたいのかが解らなくて顔を見詰める。
すると、怒った表情になって、肩を強く掴んできた。
「嘘を言うなっ!」
「嘘ぉっ?!」
嘘とはなんだ?!
私が一体、いつ、嘘をついたと言うのだ!
「お前、ビクトール殿に言い寄られていたんじゃないのか?!」
嘘吐き呼ばわりされて頭に来たところで、何かトンデモナイ言葉が耳に入った。
「は…?」
「俺が行った時、ビクトール殿がお前の手を握って、見詰め合っていたではないかっ!!」
「見詰め…?」
合っていただろうか?
いや、それより、手なんか握っていただろうか?
「…え〜と。何言ってるんだい?マイクロトフ…それに第一、ビクトールにはちゃんとフリックがいるじゃあないか。」
「何を言う!ビクトール殿だって男だ!!フリック殿よりお前の方がずっとずっと綺麗で可愛いんだから、気の迷いがあったって…っ!!」
「…は…」
マイクロトフの顔は真剣そのものだ。
思い出した。
手を握って…というのは、『爪の垢』あたりのやりとりだろう。
つまり、あれを見て、この男は思い違いをしたらしい。
「あはははははははははは!!」
「?!」

つまり、嫉妬してた訳だ。
それで、あんな不機嫌な態度を?
なんて、なんて解り易い男なんだ。
いや、解らなかったんだけれども。

「カミュー?」
「あ、ごめん…」
笑いすぎで涙目になった自分を、不思議な顔で覗き込んでくる。
でも、すこし苛立っている。
ちゃんと、説明してあげよう。
「あのね、マイク。さっきの言葉をビクトールに言ってごらん?」
「?」
「きっと『フリックの方が何万倍も綺麗で可愛い』って言い返されるから。」
「そ、そーか?」
「そーそー。それに…」
言われて、思い直したのか、マイクロトフがちょっと怯んだ。
そこにすかさず入り込む。
「私が、マイク以外に応える筈なんか、ある訳ないだろう?」
そう言って首に腕を廻す。
途端に、瞳に輝きが宿った。
「カミュー!」

強く、抱き寄せられる。
なんて、扱い易い男なんだ。
けれど、それもまた愛おしい。
そして、とてもとても愛されてると実感する。



「誤解も解けた事だし、さて、これからどうする?」
「決まってるだろう。」
「だな。」
自分でも満点だと思える笑顔で応えると、マイクロトフの瞳が優しくなった。
その表情を目に焼き付けながら、唇が振ってくるのを、瞳を閉じてゆっくりと待った。



                                  おわり。2002.07.20


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はせがわ様に捧げます。

ははは…
決してマイクロトフをばかにしている訳では…ごめん、うちの青い人は皆短気で思い込み激しいみたいです。
ちゃんとリク消化できなかったんで、お詫びのつもりで書いたんですが。
えと、青赤ってこんなんでも宜しいんでしょうか…?びくびく。


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