Strawberry Kiss


 冬に舞い降りた雪も全部溶け、花も綻び始めた季節―――

 「もうすぐで戦線も激しくなるだろう。休む暇があまり無いから全員、二日休みを与える」
 何時もの朝の軍議・・・。皆無だったシュウの心使いはおそらく軍のリーダーであるハルの頼みなんだろう・・・。口では何と言っても軍師はリーダーに甘いのだ。そして、それはマイクロトフとフリックを除く周囲の事実なのだった。
 「フリックさん・・・」
軍議も終わり自室に戻ろうとしたフリックに声がかかった。
「カミュー・・・何か用か??」
そうフリックに声をかけた人物はマチルダ騎士団で赤騎士団長だったカミューだったのだ。そう・・・この二人は仲が大変よろしいのである。もちろん二人には恋人がきちんと居る・・・
フリックは風来坊の異名を持つビクトール。カミューは同じく青騎士団長のマイクロトフである。
騎士達の関係はあまり知られていないがビクトールとフリックの関係はばれているのは周囲の事実であり、仲がよろしいこの二人が実は恋人同士では無いかと言う噂も流れているのもまた事実だった。
そんな噂を全く知らないフリックは上げたい物があるので部屋に来て頂けますかと言うカミューの後についてカミューの自室に向かった。

「いいのか?カミュー・・・こんなに貰って・・・」
「構いませんよ・・・私も部下の者から結構な量を頂いて処理に困っているのですよ・・・どうせならビクトールさんと一緒に食べてはいかがですか?『恋人』なのでしょ?」
 ここはカミューの自室の前の廊下・・・。そこで二人は仲よく会話を楽しんでいるのである。そしてフリックの手の上には赤い果物がたくさん入ったパックが乗せられている。カミューの言葉にフリックはそんな事無い・・・と顔を朱に染めながら否定を示す。フリックは親友で自分達の事を知っているカミューだけにはビクトールと自分の間に起こった事を正直に話すのだ。ビクトールにとってそこが面白くない所なのは本人は知らない。
「貴方がそんな事を仰るなんてビクトールさんと何かあったのですか?」
カミューはどこか悲しそうなフリックの様子にそう訊ねた。フリックは少し戸惑いながら言葉を紡いだ。
「実は・・・最近ビクトールの機嫌が悪いんだ・・・。俺、あいつを怒らせた理由が分からなくて・・・」
それは・・・とカミューは思う。カミューは回りの噂の事についてはきちんと知っているのだ。そしてビクトールの機嫌を損ねているのはその事が原因である事も――――
カミューはこれ以上ビクトールの機嫌を損ね被害を食らわないようにと思いフリックに全ての真実を
話した。


   その夜――――

「お〜い。レオナ―!酒をくれよ〜!!」
ビクトールは酒場にひょっこり姿を現すとそのまま陣取っていた席に座り、カウンターに居る酒場の女主人レオナに酒の注文をし始めた。
今までなら真っ先に可愛い恋人、フリックの部屋に行き、性行為に及んでいたであろうビクトールが只今不機嫌そうな顔をしながら度の強そうな酒を飲んでいた。
では・・・ビクトールの不機嫌な理由は単純なものである。そう、恋人であるフリックが自分の事はほっといて、同じく同姓の恋人がいるかミューと仲よろしくなっているのが原因である。
いやはや単純な理由であった・・・
「ビクトールさん・・・少し宜しいでしょうか?」
フリックの事を考えながら酒を飲んでいたビクトールの背後から優雅な声が鼓膜に響いた
―――会いたくない奴に声をかけられちまったか・・・
ビクトールは声には出さず心の中でそう思うと後ろを振り向いて不機嫌極まりない声で告げる。
「何で俺がお前と一緒に何処かに行かなきゃならねぇんだ?フリックと一緒に居れば良いだろ!?」
「いえ・・・私では無くフリックさんに会って頂きたいのですよ」
カミューの言葉にビクトールは無言でカミューを見やった。何を言おうとしたとき酒場のドアが開いた。
「カミュー!そこにいたのか探したんだぞ・・・」
どうやら酒場にやってきたのは真面目で酒場に来る事などめったにないカミューの恋人マイクロトフだった。カミューはニッコリとマイクロトフに微笑み、訊ねる。
「マイク・・・どうしたんだい??」
「いや・・・明日の事なんだが・・・・・・」
「部屋で待っててくれるか?ビクトールさんの用が終わったらすぐ部屋に行くから」
さり気にマイクロトフの耳元でそう囁き、酒場に入るメンバーに気付かれないようにと思いながらカミューは彼の頬にキスを落とす。
マイクロトフは突然のカミューの行動に顔を真っ赤にし分かったと告げるとそのまま走りだしそうな勢いで酒場を後にした。
「・・・で?なんでフリックが呼びに来ないでお前が来たんだよ!?」
マイクロトフの姿が見えなくなるまで見つめた後、ビクトールの不機嫌極まりない声が酒場中に響き渡った。
「フリックさん・・・貴方のご機嫌が悪い理由を知っていますよ?まぁ・・・私が教えたんですが・・
・。彼は屋上で貴方を待っていますよ。それではマイクが待ってるのでこれで失礼します。」
カミューはビクトールにそれだけを告げると愛しのマイクロトフがいる部屋へと向かうべく酒場を後にした。
「レオナ・・・ツケといてくれねぇか??」
ビクトールはグラスに残った酒を一気に飲み干すと立ち上がりカウンターにいるレオナにそう告げた。
レオナは笑みを浮かべると、
「その事はいいから早くフリックのとこに行ってやんな!」
そう告げると他の客から注文の届いた酒をグラスへと注いだ。ビクトールはサンキューと礼を述べると酒場を後にした。
「ふぅ〜・・・結構風強いじゃねぇか・・・」
屋上に向かいながら窓を叩く風の音にビクトールはため息を吐いた。これだけ風が強ければフリックはもう部屋に帰っているのかもしれない。そんな考えも頭の中をよぎったが、まだフリックが屋上で待っているかもしれないと思いビクトールは屋上へと向かいつづけた。


「ビクトール!!?」
屋上の扉へ入ったと同時に聞こえる聞きなれた声――――
「フリック・・・まだここに居たのか寒かったんじゃねぇか??」
パア―っと喜色を浮かべて自分の傍へ近寄ってくるフリックにビクトールは笑みを浮かべ赤みを帯びた頬に手を当てた。
「こんなに冷たくなってるじゃねぇか・・・何で中で待ってなかった?」
ひやりと冷たい頬にビクトールはそうフリックに訊ねた。
フリックは頬に当てられたビクトールのごつくて暖かい手の上に自分の手を重ね合わせるとビクトールの問いに答える。
「桜が綺麗だったからつい・・・それに勝手に部屋に帰ってお前が此処に来たらお前ずっと待ってなきゃいけないだろ?だから此処に居たんだ・・・・・・」
あまりにも可愛い答えにビクトールは力の加減もせずにフリックを強く抱きしめた。
「ちょっ!?ビクトール離せよ!痛いってば!」
あまりにも強い抱擁にフリックは抗議の声を上げたが自分を抱きしめる手は弱まるばかりかより強くフリックを抱きしめる。
ジタバタと抵抗をしていたフリックだったがようやく諦めると逞しいビクトールの背中に己の手をそっと回し抱き返していた――――


 抱きしめあっていた時間がどれ位過ぎたのだろう―――
ビクトールはフリックを抱きしめていた手を離し、今度は顎を掴み上げると額や頬に軽くキスを落とし
形のいい唇にも優しくキスを落とした。
「フリック・・・好きだ」
「何今更そんな事・・・」
ビクトールのキスを受けながら告白するビクトールにフリックは少しため息を吐くと今度はフリックからビクトールにキスの仕返しをした。
「俺も好きだよ・・・ビクトール・・・」
耳元に小さな告白をして―――――

「・・・で?何で俺を此処に呼んだんだ?」
お互いに深いキスを重ねてその余韻に浸っていた頃、ふいにビクトールがフリックに自分をこの屋上に呼んだ理由を訊ねた。
「えっと・・・その・・・ゴメン。お前が機嫌の悪かった理由・・・カミューに聞いたんだ。俺とカミューが本当は恋人じゃないかって噂が流れてるのが原因だって言ってた・・・」
ホントごめんなさいと謝罪を述べてフリックはビクトールから顔を反らすように俯いた。
「・・・フリック。もう怒ってねぇよ・・・顔、上げろよな?」
あまりにも可愛い態度にビクトールは更に愛しさを覚え、優しい口調でそう告げる。フリックはおそるおそると言った感じで俯いた顔を上げる。そこにはビクトールの怒ったような顔は無くフリックの好きな笑顔をしたビクトールがいた。魅力的な笑顔にフリックは顔を赤らめながらちょっとした誘いをビクトールに告げる。
「あ・・・明日、二人で花見に行かないか?ちょうど満開だし・・・去年の約束覚えてるか??」
「もちろん覚えてるぜ?あん時のお前可愛かったからなぁ〜♪」
ふざけたような物言いにフリックは顔を真っ赤にしてビクトールを睨み突けると可愛いって言うな!と怒鳴り散らす。
そこがまた可愛いんだけどな・・・とこれ以上言うと彼の雷がくる恐れがあるので言わずに心の中でひっそりと思うビクトールである。
「なぁ・・・お前の持ってるそれなんだ?食べ物か??」
フリックが持っている赤い果物をビクトールは指しているのだろう・・・。フリックはハッとするとそれを二粒ほど取り出してビクトールの言う。
「これなイチゴなんだ・・・。カミュ―がくれてお前と一緒に食べようと思って。すごく甘くて美味しいんだ食べてみろよ!」
フリックの説明にビクトールはふう〜ンと返事を返すと彼の手の中に収まっているイチゴ一つ取るとヘタを取り口の中にほおばり込んだ。噛むと口内で果汁が広がる。確かに甘くて美味しい・・・
「確かに甘くて美味いな・・・」
唇の端に漏れた果汁を手で拭いながら感想を述べるとフリックはだろ!?相槌を打ちながらイチゴを口に含みビクトールに顔を近づけ、イチゴを食べた唇にキスをした。薄く唇を開くと入りこんできたのはフリックの舌ではなくイチゴ―――                               
「フリック・・・」
唇が離れ驚きで目を見開いた顔でフリックの名を呼ぶとフリックは顔を赤らめさっきのキスの意味を話す。
「えっと・・・お前に悪い事したから・・・俺のキスでイチゴを食べさせようと思って・・・」
怒ったか?と問われビクトールは思いっきり顔を横に振った。怒っているのではなく、その逆である。まさかフリックからあんな事をしてくれるとは思わず下半身は痛いほどに張り詰めたのである。当の本人はそんな事に気付くはずは無く良かったと笑みを浮かべている。
あまりにも無防備な笑みにビクトールはフリックに深いキスをしながら彼の体をきつく抱きしめた。
「ふ・・・んっ!」
いきなりのあついキスと痛い抱擁に驚きながらもフリックは口内をむさぼるビクトールの舌に絡みつく。ようやくキスから解放される頃にはフリックの膝はガクガクに震えていた。
「ビク・・・」
「フリック・・・あんな事他の奴には絶対するなよ?」
耳元でひっそりと言われフリックは顔を朱に染めながらビクトールを見つめた。
「ビクト・・・ル」
「俺が嫌なんだ・・・お前は俺の物なのに他の奴にされるの・・・フリックの事誰にも渡したくねぇ!」
更にギュウッと抱きしめられフリックは何だか嬉しくなった。ビクトールにこんな風に思われてるなんて初めて知った。何時も『愛してる』とか『好きだ』とか言われるけどこんな風に言われるのは初めてだった。
「うん・・・しない。絶対にしない・・・俺があんな事出来るの、ビクトールだけだから・・・一番ビクトールの事が好きだから・・・」
フリックの可愛い告白にビクトールはもう一度強く抱きしめた。そしてお互いの耳元で『愛してる』と囁き笑みを浮かべると何度も熱烈なキスを交わした――――

その夜は屋上からフリックの甘い喘ぎ声が漏れたのは言うまでも無い―――


次の日―――
手を繋ぎラブラブモードで何処かに出かける二人に城の住民はどんよりとした空気に包まれたとか包まれてないとか・・・


                                           終わり



唯伽さんコメント

ご・・・ごめんなさ〜い!
遅くなった上にこんな駄文押し付けてホント申し訳ないです!
リクは『春らしいビクフリで騎士を絡ませる』と言う事で騎士ではなくカミュー様を絡ませてみました(汗)
因みに隠しテーマ(!?)は仲直りとイチゴキス(謎)です。
ホントに申し訳ないです。こんな物でも気に入って頂けたら幸いです



樹林コメント

唯伽さん、どうも有難う御座いました〜♪
ホントにSS戴けるとは・・・!感激でございまする。
リクト通りの春らしいビクフリ&騎士’sで、とってもハッピーです〜(^^)
しかも、らぶらぶ甘甘で。フフ・・・乙女フリック超カワイイッス。熊が妬くのも解りますな。まったく。



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