陽だまり























窓から眩しい太陽が降り注ぐ穏やかな日。
ビクトールはう〜んとひとつ伸びをし部屋をでた。向かうはフリックの部屋。
「おい!入るぞ」
そういって部屋の扉を開けるとフリックは腕組みをして窓の外を眺めていた。
前髪が外から入ってくる風に柔らかくなびいている。それを軽く手でおさえると
ビクトールの方へ向き直った。
「今日はいい天気だよな」
「なあ、久しぶりに遠乗りでもいかないか?」
「こんな時期に?」
「まあ、今日は何もなさそうだし、そんなに遠くまで行かなければ大丈夫だろ」
「そうだな、行くか」
たまには気分転換もいいだろうと二人はレンに許可をとってから馬に乗って城から出た。


二人は草原に馬を走らせた。心地よい風を全身にうけ太陽が眩しく輝いている。
騎馬技術はフリックの方が上なので少しづつビクトールより前にでた。
その差は開きビクトールがフリックの後を追うかたちになった。
たずなを軽やかに操り青いマントをたなびかせてさっそうと馬を走らせるフリックの背中を
ビクトールはじっと見つめながら追い掛けた。
どんなに頑張っても並ぶ事はない、その追い付きそうで追い付かない緊張感がビクトールの気持ちを煽る。
フリックに声をかければ速度を緩めてくれる事はわかっているが敢えてその気持ちを楽しんだ。
フリックもまたビクトールに後ろを預ける事で安心感を得ていた。
暫らく馬を走らせていると前方に川が見えたのでフリックは速度を落しビクトールに声を掛けた。
「あそこで一休みしよう」
「賛成。尻が痛くなったぜ」
二人はその場所につくと馬を河辺につなぎ傍にある木陰に腰をおろした。
「だいぶ速くなってきたな」
「お前を追い越す日も近いかもな」
「それにはもっと大きい馬が必要だろ?お前重いから」
「・・・ひでーな」
二人は笑いあった。誰もいない静かな場所。
川のせせらぎと風に揺れて擦れあう葉の音だけが聞こえていた。
「気持ちいいな」
ビクトールはそう言ってごろりと横になった。
フリックも足を前に投げ出す形で座っていた。
「戦争をしてるとは思えないほど静かだな」
「そのうちここも戦場になるのかな」
「そうかもな」

しばらくの沈黙の後
「なあフリックちょっと足かせや」
ビクトールは横になったままフリックの方を見た。
「なんでだよ」
「いいじゃねえか」
ビクトールの意図する事を察したのかフリックは黙って膝を折りげで座りなおした。
ビクトールはその膝によっと頭を乗せて満足そうに笑った。
「たまにはこういうのもいいよな」
「・・・俺は重いぞ」
「まあ俺の愛の重さってやつだな」
「・・・よくそんな恥ずかしい事言えるな」
「お前にならな」
そう言ってビクトールは手を延ばして自分を覗き込むようなかたちで見ているフリックの頬を触った。
その瞳は青空よりも更に青く澄んでいる。
フリックの肌は戦場で戦う男とは思えないほど白くスベスベしていた。
風あたっていたせいか少しひんやりしているがそれがまた触り心地がよかった。
手の甲にはフリックの柔らかい髪が時折なでるようにふれる。
ビクトールはその心地よさにしばらくフリックを見つめながら頬をなでていた。
フリックは最初はされるがままになっていたがそっと手を伸ばしてビクトールの
少し硬い黒髪にやさしく触れた。
フリックの手感覚もまたビクトールにとっては安らぐものであった。
フリックの背後から差し込む木漏れ日が優しい温かさをもたらす。
それは頭の下の暖かな体温と交わりまるで夢の中にいるような錯覚さえ感じる。
「暖かいな・・・」
「そうだな・・・」
お互いの手からお互いの体温が伝わる。
戦乱の中で見つけた安息の場所。それは時に優しく時に儚い。
悲しいほど強く美しいその人の存在を永遠に感じ続けたいとビクトールは強く願う。
フリックもまたその深い安らぎにこのまま身をゆだねたいと願う。
二人の間に暖かいそよ風が吹き抜けていった。


END



のりさんコメント
樹林さんがビクフリ日記を元に描いてくださった祝画をイメージして書いてみました。
ただの日向ぼっこのお話になってしまいました。私の文章力ではこれが限界なのかもしれません(笑)
全然お礼になってませんが・・・こんなものでよろしければ受けとってやってください!
これからもどうそよろしくお願いします!



樹林コメント
HP開設祝い&リンクお申し出にと絵を贈らせて頂きました。
そのお礼にと、絵に合わせたシーンのお話を書いて下さいました!
元々差し上げた絵は、のりさんちのビクフリ日記の一こまにときめいて描かせて頂いたものだったのですが、まさしくその時のお話を下さってとっても嬉しかったです〜v
そして穏やかで優しい休日の二人が見えて幸せです!
のりさん、ほんとに有難う御座いましたー!!


のりさんのサイト




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