「ぴくみん(冬眠前ミニサイズ)」






冬眠の支度をさぼって昼寝をしていたら球根のフリックにおこられた。
「ちょっと休んでるだけだって」
人の腹の上でどすどす暴れている。
さぼらずにさっさと支度を済ませて冬眠すべきだ、と言いたいらしい。球根だから雷が落ちる心配もないだろう。
「まあまあ」
とか言って適当にごまかしているうちに、小春日和に負けてフリックもうとうとしはじめた。
いい傾向だ。こいつだって眠いんだよな。球根だし。
寝顔が見えない位置なのが不満だったが、ずりおちないように抱え直してもう一眠りすることにした。

ぐーすかぴー

今年の冬は寒くなるのが早かった。でフリックが球根になるのも早かった。
不満そうだ。冬眠の支度をもっと手伝いたかったらしい。ぴくみんのかがみだな。
そういうわけで球根になってもちまちま手伝いのようなことをしていて眠ろうとしない。
俺としちゃあ気持ちは嬉しいんだが早く鉢植えで寝てもらった方が安心だ。
何せ球根だからな。ぼやっとしてるしな。俺も眠いしな。何かあったら大変だ。
何より先に眠ってしまえば、安心して自分も冬眠できる。少なくとも冬眠の隙をついていなくなられるという心配はなくなる。

何度か一緒に冬眠したが、やっぱりちょっと心配だ。起きたらこいついなくなってないかな、とか。
来たばっかりの時よりはかなりましだけど、たまに喧嘩になるしな。
「先に起きた時に不便だから」とか言って太陽のエキス用意しとくのもやなんだよな。俺が寝てる間にどっか行っちまったりしないよな。
もうそんなに嫌われてないと思うんだけどな。・・・こないだ「お前は手伝いがいがあるな」とか言われたし、あれは多分、好意的な意見、なんだよなあ・・・。
確信がもてずにぐずぐず抱え込んでいたら相手が目を覚ましてしまった。
もちろんすぐにおこられて魚を捕りにでかけることになった。

頼むから留守番しててくれ、というとさすがにおとなしく頷いた。足手まといになる、と思ったのだろう。残念そうにしている。・・・そういうのもかわいいけどな。
とはいえ長く留守番させておくのも不安なので、とにかく魚を捕りに行って急いで帰ることにした。
しかしそういう時に限って大した収穫がなく、少し足を延ばさなくてはならなくなった。
ついてない。眠いし寒いし。
あわてて帰ると球根頭が冬眠用の鉢植えの前で右往左往していた。
・・・何か困ったことでもあったのだろうか。こちらに気づく様子もなく真剣に悩んでいる。
鉢を俺の寝床の枕元にひきずっていってみたり、巣穴の隅までまた引っ張っていったり、目で距離を測ってやっぱりちょっと寝床に引き寄せてみたりしている。
最初は日当たりでも見ているのかと思ったが、どうも関係ないようだ。何をしてるんだか。

しばらく見ていて気づいた。寝床の近くに引きずってくると少し赤くなって、ちょっと離しすぎると寂しげな不満な顔をしているようだ。
大事なのは俺の寝床との距離らしい。
確かに離れてるのもやだけどあんまり近寄りすぎても寝返りとかうったら危ないしな。・・・・・・とりあえずフリックはなるべく俺のそばで冬眠に入ろうと画策してるわけだな。
・・・・・・・・・寝てる間に逃げられる心配はなさそうだ。
フリックがこちらに気づいた。あわてて鉢を巣穴の隅までひきずっていく。
寝床から離れすぎだ。捕ってきた魚をそのへんに放り出した。
「違うだろ」
お前はここ、と寝床の頭あたりに鉢ごとフリックを抱えてくる。
頭のとこなら危なくないだろう。
フリックは赤い顔をして危なくないかぐるぐる見て回っていたが、こちらを向いて満足そうに、にこー、と笑ってみせた。
やっぱり冬眠は一緒じゃないとな。
「しっかり支度して早く冬眠しような」
眠いしぼんやりするけどもうひとがんばりだ。
フリックがこくこく頷く。
今年の冬も暖かく過ごせそうだ。
それで春になったらまた一緒に昼寝をしよう。
春だって眠いからな。

じゃあやめ


樹林様へ。冬眠絵の御礼・・・だす(ややためらい)。
・・・どうなんでしょうね。どうなんだろう。でも御礼のつもりです。
ありがとうございました!
(030402)

樹林コメント
いやいやもーこちらこそありがとうございますー!
勝手に描いた落書きに可愛いお話付けて下さいまして。でへ。
いやー癒されますな。ほんとに。
鉢を持ってうろうろするぴくみん…微笑ましいですわー


海保さんのサイト




CLOSE