LOVIN ' YOU 真夜中から明け方へと続く時間の空隙。 次第に白んでいく空と、空気。 部屋の窓を開けて、その縁に腰かけたフリックがいた。その隣では相方が静かな寝息を立てている。 熟睡している証拠だ。 その寝顔に微笑んで、フリックは外を見る。高台に造られた城の高みに位置する部屋から、展望するように、遥かを見渡す。 人気のない空気に満足を覚え、もうすぐ聞こえてくるであろう鳥の声を待っていた。 そして聞こえてきたのは……。 Lovin' you is easy cause you're beautiful Makin' love with you is all I wanna do 優しい歌声だ。 フリックは声のあたりに視線をやった。けれど姿は見えず。 「……あなたを愛するのはとても簡単なこと、ね」 異国の言葉の歌詞を訳す。 舌に乗せて、その意味の甘さに苦笑した。その間も歌声は続き。 風が吹き込んできた。カーテンが音をたててはためく。その動きを絡めとり、布地に唇を寄せる。 明けていく空、明確さを満たしていく空気。その中に響く歌声。 La la la la la la la …do do do do do … ハミングのように続く声。 甘やかな声色にフリックは知らず微笑する。 そんなふうに相手を思えたらいい、と。 傍らの相方を振り返りもせず、歌声の綴る言葉に心をよせる。 No one else can make feel The colors that you bring Stay with me while we grow old 「いくら夏だからってんな薄着で窓あけんじゃねぇよ」 ぼそりと耳元で囁かれた。 「…脅かすな」 「ああん?」 目が覚めたらしい相方が、薄いブランケットを手に立っている。寝起きの、けれどこちらを気遣う相手の顔にフリックは笑い。手を伸ばす。 「ビクトール」 伸ばして、その顔を捉えて、そっとキスをした。 「珍しいな」 「たまにはいいだろ」 そんな気分だったんだ。 いまだ微かに聞こえる歌に、薄っすらと笑みを浮かべてフリックはもう一度、と唇をよせた。 end. 2002/07/27
|
幻想水滸伝
樹林さまより【歌とビクフリ】のリクをいただきました〜。
本来どちらかに歌わせるべきだったんですが(汗)。たまには甘くても良いかな〜なんて(笑)。
お受け取りくださいませー。
歌は『MINNIE RIPERTON』の『LOVIN' YOU』です〜。
樹林コメント ありまさんのサイトの一周年企画のリク募集に、嬉々として応募させて頂きました! 物凄く早く書いて下さったのに、とても素敵なお話で大変ご満悦〜!なのです!! 好きな夜明け前だし、甘いし、ほんのり幸せだしー また選曲もすばらしーです。今にも聴こえてきそうです。 ありまさん、ほんとに素敵なお話有難う御座いました。 |
有馬秋人さんのサイト |