フリックは大変朝が苦手である。 大抵はすぐ目が醒めず、ベッドの中でぐずぐずとしている。 特に寒くなると尚更酷い。 何とかベッドから這い出るようにして体を起こしても、頭の中はぼんやりと霞が掛かったようで。 本格的に目覚めるには、小一時間は要するのであった。 「よぉ、今日は朝一でシュウに呼び出し喰らってんじゃなかったのか?」 「ん〜〜〜?」 同室のビクトールに体を揺すられて、呻きながら目を抉じ開けた。 そう言えばそうだった。 眠気眼のままで起き上がると、のろのろと支度に入る。 だるい。 眠い。 しかし、あの軍師の呼び付けに遅れたとあっては、何を言われるか解ったもんじゃない。 渋々と服を整えていると、ビクトールが手を伸ばしてきた。 「おい、バンダナいがんでるぞ?」 直してやるから向こう向け、と体を反転させられる。 ビクトールは何かとこうして世話を焼きたがる節がある。 それにももう慣れてしまったので、こんな時は最近は好きなようにさせるようにしている。 「ちゃんと目ぇ覚まして行かねぇと小言喰らうぞ。」 「ああ…解ってるって…」 「よし、出来たぞ!」 ぎゅうぎゅう締め付けていた頭の圧迫感がなくなると、ビクトールがぽんと背中を叩いた。 「ん、サンキュ。」 何か… どこかしらいつもと違う感じが後ろ頭にある。 「…?」 「どした?」 「いや…」 他人が括ったからだろうか。 ちょっと気になったが、折角結んでくれたのを目の前で直すのは幾らなんでも失礼だろう。 また後で直せばいいか… 「じゃ、行ってくる。」 「おう。」 見送るビクトールは満面の笑みだった。 「おはようございます。今日はまた一段とお可愛らしいですね。」 「はぁあ?」 部屋を出ると、丁度同じくして自室を出るカミューと出くわした。 そして、にこやかに妙な事を言われる。 「では、急ぎますので…」 「あ、おい…!」 何か含んだ笑いでこちらを見てから、カミューはさっさと行ってしまった。 「まぁいいか。」 自分も急いでいるのだ。 気にしないで先に進む事とする。 階段を降りて、渡り廊下を渡って、また階段を上がる。 当然、道中幾人もと擦れ違う。 「……??」 何か、おかしい。 ヘンに注目を浴びているような…気がする… しかもその誰もの目が笑っているのは一体どういう事なのだろう。 「……」 気になる。 なる、が。 先に鬼軍師の部屋に行く事が先決だ。 目的地に辿り着くと軽くノックして扉を開けた。 「フリックか。遅…」 部屋に入って後ろを向いてドアを閉める。 背中越しに聞こえてきたシュウの声は何故か途中で途切れてしまった。 「何だ?どうかしたか?」 「いや…」 振り向いて顔を見ると、眉間に皺が入っている。 いや、それはいつもの事だったか。 特にシュウが何も言わないので、すぐに報告の内容について話し出した。 全部伝え終わって、部屋を出ようとして呼び止められた。 「先刻から気になってはいたんだが…」 「?」 「後ろが蝶々結びになっているのは何かのまじないか?」 「ちょっ…蝶々?!!」 慌てて後ろ頭に手をやると、ごわごわとした手触りが… そう言えば、ビクトールが結んでくれたっけ。 |
「あんの熊ぁあ〜〜〜!!」 出掛けの笑顔はそういう事かぁあ!!! シュウに答える事も忘れて一目散に部屋を飛び出た。 勿論、あのくそ馬鹿熊を探すためにだ!! 「すまん…俺が悪かった…」 性悪熊の口からその言葉が出たのは、全身焦げて顔の形が少々変わってからだった。 まぁ、その後姿を発見してすぐに雷を落として蹴り・パンチ・踵落としの三連コンボを決めたもんだから、口を開く暇もなかったかもしれないが。 その辺は自業自得とゆうやつで、仕方あるまい。 「今度こんな真似してみやがれ!その時はほんとにただじゃ済まねーからな!!!」 「解った…もう二度と蝶々結びなんてしねぇ。」 釘を刺したら、意外とすんなりと素直に頷いた。 まったく、いい歳をして何でこの男は… まぁとりあえず当り散らしてすっきりした事だし。 いつまでも怒っているのも馬鹿らしい。 それにこのくらいの事ならまだ可愛いほうだ。 「解ったならもういいさ。飯でも食いに行こうぜ。」 「ああ!今日のランチは何だろうな〜♪」 もうすでにダメージから回復した相棒に苦笑して。 食堂に向って二人肩を並べて歩き出した。 次の日。 バンダナに派手な羽飾りを後ろに挟み込んだフリックが、物凄い形相でビクトールを追いかける姿が目撃された。 懲りない人達… |
↑そのまた次の日。フリックの仕返しらしい(笑) |
おわり。2002.09.27 |
沙原マミィ様に、キリ番4001(繰り下げ)のリクをさせて頂きましたー! リクは「フリックで遊ぶビクトール」でした(笑) ヘンなリクでしたのに快くお引き受け下さって有難う御座います。 フリック美人だし、熊は熊で(←?)楽しそうだし!! 勇気を出してお願いしてほんとによかったです〜v ほんとに有難う御座いました!! お礼のつもりの絵と文ですが… 想像力貧困で誠に申し訳ないです。 すみません… |
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