真夜中の危ないテレビ

田原総一郎の世界が見たい!

 

日米関係について

 

 

 

 

平成3年9月8日

AM 1:20   東海テレビ

 

 

 

 

 

 

               出 演 者

 

                    

 

 

    高野 孟 「インサイダ−」編集長

 

 

  石川 好   ノンフイックション作家

 

 

           三枝成彰  作曲家

 

 

      大磯正美  静岡県立大学教授

 

 

     月尾嘉男  東京大学工学部教授

 

 

 

 

 

 

 

 

ナレ−ション

 

画面

1991年4月24日

「金融報復条項」

下院銀行委員会

経済安定小委員会公聴会

ジェイク・ガ−ン上院議員、共和党、ユタ州選出の発言

私は長年、制裁法案を提出してきました。東芝修正条項もその一つです。だから、私は

15年たった今でも反対する人が理解できないのです。

これは新しい問題ではありません。何回も現われては消え、消えては現われた問題です。日本は喜んで我々のことを馬鹿だと思っているに違いありません。我々がシュ−マ−議員と4年前、日本にいきました。

その時はミラ−氏も一緒でした。恥ずかしがり屋の一行でした。ミラ−・ガ−ンも一緒でした。現地では大変な注目を浴び、当時の中曽根首相が我々の訪日についてマスコミに話しました。重要な問題であり、何らかの対応策を取らねばならないといったのです。

これは我々の聞き飽きた台詞です。そして、何も変わりませんでした。

ほんのちょっと手当てをしただけで、満足しろと言うのです。2年3年4年経っても何も変わらないんです。

日本は、この問題では不公正でした。一方的に不公正だったのです。それははっきりさせるべきです。わずかばかりの物を与えて、背中を叩いて、頬笑みかけて、いい気分にさせてくれますが結局3・4年待たされるのです。

私はこの15年間、日本人のこの手の馬鹿話を聞かされてきました。私が頭にきているのは、長年、我々のこういった不満に対して、日本が子供を相手にするような、僅かな金を握らせて、頭を撫ぜるといった態度を取ってきたこと。さらに彼らは決して我々よりも頭がいいわけでもなく、良く働くわけでもないのに、多くの不公正なル−ルのお陰で、信じられないくらい上手くやっているということです。

さらに日本が湾岸戦争でほとんど参加しなかったことは、私を打ちのめし、私の反感を一層強めたのです。彼らは輸入原油に頼っているのに、数十億ドル出しただけです。そろそろ日本に対して自主規制以上の、圧力を掛けるべきです。素直にいって我々は我が国の銀行協会がかのハイテク産業の二の舞に成る前に強制措置に踏み切るべきだと思います。

 

田原総一郎

今日は、田原総一郎です。ソ連のク−デタ−から始まったロシヤ革命といってもいいかも知れませんが、この大激動の中で、ややもすれば見失われているけれども、大きな問題というのは、日米関係です。

特に今年はパ−ル・ハ−バ−50周年ということで、アメリカでもいろんなイベントが用意されているようです。パ−ル・ハ−バ−50周年というのは、これはどうしたって相手は日本、日本が悪いと、真珠湾の奇襲攻撃けしからんと、云うことです。アメリカの経済良くないこともありまして、又、それから日米関係、ジャパン・パシング色々出てくると思いますが、しかし、といってアメリカけしからん、Noといえる日本、と云って一概に云う、これが日米関係の、何と云ったって日本の基軸ですから、Noと云ってすむ問題ではありません。一体このジャパン・パッシング、日米関係どうすればいいのか。日米関係というのはアメリカとソ連が対立していた。米ソ対立していたから日本というのはアメリカに向かって、、アメリカの子分としてやっていた。アメリカとソ連の関係が対立関係でなくなると、ますます難しくなるけれども、この日米関係について今日は石川好さんが、つまり、今までのはどうも日本のアメリカに対する考え方、アメリカに対する対応というのは間違っていると、根本的に違うと、こんなことをしていたら日本は大変な事になると云うことで、新しい提案、日米の新しい在り方。アメリカというのは実は日本についてこんなことを考えているといると、どうも両方が相互に誤解し合っている、という基本的な提案を示しております。とてもユニ−クでおもしろい提案だと思います。

 

  舟方

今晩はレンホウです、真夜中の危ないテレビ、田原総一郎、世界が見たいの時間になりました。冒頭の田原さんのVTRにも有りましたように、今夜のテ−マは日米関係ということについて、最近、パッシングという言葉を聞くと、又かというようなイメ−ジが頭の中に残りますが。

 

高野

このところ、湾岸戦争後は何か白けた気分で、それで、そうこうしているうちにソ連でク−デタ−とか、いろんな事が起きていますが、日米関係の事、皆頭から失せているが、大体災害は忘れた頃にやってくるといいますので、秋を向かえパ−ル・ハ−バ−50周年というような一つのタイミングもやってくる。そこで日米のそれぞれの感情、お互いに対する感情の襞の部分にまで分け入って、考えていこうというのが今回の趣旨ですね。

 

  舟方

皆さんからいろんなお話でると思いますが、その前に今週の気になるニュ−ス、やはり今週も引き続きソ連でしょうか?

 

高野

何といってもソ連ですね、私の感想は、なかなかゴルバチョフもしぶとくやっとるなあと云う感じですが、それを云うと大磯さんが嫌がるんですが!

 

  舟方

大磯さんはゴルバチョフさん好きなんですか? 

 

大磯

好きですよ。

 

  舟方

如何でしょうか?

 

大磯

今度はソ連の方が日替わりメニュ−みたいに毎日情勢が変わっておりまして、まあ御存じの人民代表会議、人民代議員会議、日本で云うと国会ですね、ここで何事か図ろうとしたら、ほとんど皆、蹴飛ばされてしまったと、これは当たり前でして、、自分達が5年間の任期で選ばれたばかりの国会議員たちは、自分達を辞めさせることを決議しなさい云われたものですから、これは怒り狂うわけですね。だから何も決まらない。結局のところ後は大統領令を連発するという、ちょっと前に戻ってしまうわけですね。だけど完全には戻らない。一体何なんだという、だれも今本当の権力を持っていない。エリツインが持っているように見えるんですけれど、あれは法律的に少なくとも合致するようなものは少ないんですよ。一番いい例が、一人自殺しましたが、フ−ゴはね、後の7人の裁判ですが、国家反逆罪、ところがそれをやっているところが共和国の法律にてらして、ロシヤ共和国、連邦ではないんですね。一体これは何なんだ、そこからして不思議な状態になっています。

  舟方

その点、三枝さん如何ですか?

 

三枝

そうですね、僕はアフガニスタンが年内に崩壊するだろうと思います。今までは援助していたのが、ほとんど無くなってしまうと、これは今までの政府が崩壊して、アフガニスタンも非常に大きな火薬庫になる可能性、どこの政府がどうなるのか分からないですね。

非常にイスラムの原理主義に近いところと、アメリカに近いところと、中でも色々もめているいるようですね。政権がどういう形になるのか、結構、我々の国から遠いですけれども、多分アフガニスタンという国は年内に大変動が来ると思いますね。

 

  舟方

先程、大磯さんが、日替わりメニュ−と云ってましたが、毎日変わっているソビエット情勢、再来週ですかこの番組で取り上げて・・・・

 

高野

今、アフガンのことをおっしゃいましたが、一つ響いていく先が中国、なかなかボデイ−・ブロ−みたいでして、ソ連邦解体というのは中国にとっても非常に深刻な影響が来ると思いますね。もう一つは北朝鮮がそうですし、キュ−バですね。今週は日朝国交交渉第4回ですが、大した進展有りませんでしたけれど、この辺の朝鮮、中国がどうなるのか再来週少しまとめて取り上げたいと思っています。

 

  舟方

再来週お楽しみということですが、さてもう話伺ってしまいましたが、改めてメンバ−をご紹介しましょう。みなさん一言づつアメリカといわれた時に、何を思い浮べるかご意見を云って戴きたいと思います。まず最初はこの方です。国際問題研究家、静岡県立大学教授、大磯正美さん。

 

大磯

私は、1968年、昭和で云うと43年ですが、初めてアメリカへ、アメリカの金で留学させてもらいました。アメリカに着いて、翌日ぐらいだったと思いますが、アメリカはいいなあと思って大学の外を歩いていましたら、早速呼び止められまして道を尋ねられました。その時、来た人間は皆アメリカ人になってしまうと思いました。それが私のアメリカの原体験ですね。

 

  舟方

続きまして工学博士、東京大学教授月尾嘉男さんです。

 

月尾

私は技術関係でアメリカは何度も行っているんですが、最近は随分変わりましたけれども、やはり非常に人の良い人達の集団だという感じですね。随分、日本に対してだけじゃないかも知れませんが、我々に対して、技術という点でも親切ですし、生活の点についても親切ですね。そういう意見もあるんだと思いますけれど田舎の人の良い人達の集まりだという感じが実際します。

 

  舟方

そして作曲家の三枝成彰さんです。

 

三枝

僕はアメリカというと小さいときに見たブロンデイ−という漫画ですね。朝日新聞で、まだ続いていますね、向こうでは。やはりブロンデイ−がハムをこんなに挟んだ厚いサンドイッチを見たときはすごいショックでしたね。昭和25、6年ではなかったかと思うが、ですから豊かな国というイメ−ジは今だに、小さい時のイメ−ジは持っています。

 

  舟方

本日の問題提起してくださいます作家の石川好さんです。

 

石川

やはりアメリカというのは英語がネイテイブな言葉なんですけれど、英語が実に通じない国だなあという印象を持ったことがありまして、それがアメリカを理解する上でショックだったですね。英語が通じないということが。

 

  舟方

高野さんのアメリカの印象は?

 

高野

僕はそうですね、高校生の頃はサックスなど吹いてモダン・ジャズ擬いの事をしたりして、米軍基地のキャバレ−などでアルバイトをしたり、その頃一晩で1500円、そういう感じで黒人の汗の匂いですね。

 

  舟方 

さて本日のテ−マに話を戻したいんですが。日米関係、石川さん早速問題提起をお願いします。

 

石川

問題提起といえるかどうか分からないが、ジャパン・パッシングという言葉で云われている、この言葉を、今日は粉砕したいと思います。ジャパン・パッシングと云う言葉を日本人は使ってはいけない。つまり、これは全部が全部、貿易を巡るトラブルなんですね。

今、日米関係で我々が今、ジャパン・パッシングというようなことは、そうではなくて、今、パ−ル・ハ−バ−50周年で考えなくてはならないのは、日本人が持っているアメリカ人に対する感情、アメリカ人が日本に対して持っている感情というものを綿密に仕分けしてみる必要がある。例えば反日、アメリカには反日感情が有るんですが、と、同時に親日感情もあるですね。日本人のもつ反米感情と、アメリカ人の反日感情を改めて細かく、自分達の心の襞まで覗き込んで分解してみる必要がある。それをやった時、始めて日米は対話が出来るのではないかと。これはアメリカ側にも必要だし、日本側にも必要で、今日は、私、日本人がアメリカに対する感情の心理分析をしてみようと思っています。

 

  舟方

一つよろしくお願いします。本日も張り切ってお願いします。

 

ナレ−ション

1941年12月8日、日本は真珠湾を攻撃。この事件が今日の日米関係を作る切っ掛けとなった。そしてこの衝撃の日から50年目にあたる今年、日米両国の間には日米開戦というきな臭い雰囲気が漂い始めている。アメリカ国内ではソ連の次の脅威は日本だという強硬論がはびこり、日本では日米開戦をほのめかす本がベスト・セラ−になっている。

湾岸戦争で垣間見たアメリカの強国の論理の横暴さと、度重なるパッシングに耐えかねて、再びアメリカと決裂しようとしているのか?他に道はないのか?このまま日米関係はレッド・ゾ−ンに突入するのか?

ところがこの状況を歓迎すべきだという男がいた。

作家 石川好は18才の時、夢を片手にアメリカに渡った男。 彼は主張する。たとえ嫌われようともパッシングはアメリカが日本を意識しはじめた証だと。戦後40数年間、日本はアメリカに追い付け追い越せと走り続けた。

日本の今こそ国家としての自覚を持つべき時なのか。目覚めようジャパニ−ズ。

石川好の日米関係の読み方。祝、ジャパン・パッシング。

 

  舟方

さて今日のテ−マはジャパン・パッシング。まあ日米関係ということで、ちょっとご覧ください、日米関係に関する本をそろえてみたんですが、見出しだけでも、以外と辛辣で、こちらの中身の・・・鬼畜米英・・・

 

高野

こちら話題に成っているCIAの 2000年の・・・、これなんかジャン・カ−トという有名なロビ−ストなんですが、敵と云うところなんかタイトルがすごいですね。

 

  舟方

色々なものが出ていますが、

 

高野

こういうものが次から次へと出て来る。そこのパッシングという、云うならば誠に便利な、何かそれを云われると分かってしまうような気がするような言葉が横行する。言葉が一人歩きするんですね。

 

  舟方

どうでしょう石川さん

 

石川

今、高野さんがおっしゃた通りで、アメリカで起こる日本を巡る論議、これは全部パッションといういわば接頭語を付けて、それで終わりにしてしまっているわけですね。それは貿易問題、貿易の交渉のことも含めてパッシングにしてしまっている。人間は貿易ばかりしているわけではなくて、いろんな感情を持って生きているわけですね。その感情のあらましを全部パッシングか、反日でやってしまうわけです。例えば、反日の印象とかね。この反日という言葉しかないのかという、これは明らかに日本のマスコミ、報道者のボキャブラリ−不足だと思う。

 

  舟方

日本のマスコミが悪いと!

 

石川

ボキャブラリ−不足です。いろんな感情が有りますよ、アメリカが日本に対してね、しかし経済的な問題を如何にも不公平な障壁を取り払ったらどうだとか云うような要求から、例えば日本人のビヘビヤ−はね、ホ−ム・ステイしてですね、自分自身でぶらぶら歩いて帰ってこない、日本では当たり前のことがアメリカではしてはいけないことがあるのです、高校生が旅行にいって、大体アメリカの高校生は20ドルぐらいしか持っていないのにですね、日本の親達は旅行にいく高校生に2百ドルも3百ドルも持たせて、帰りにはヂュ−テ−・フリ−の店にいって2百ドルも3百ドルも買って行くという、そういうことも日本批判になったり、色々ある訳ですね。だからいろんな事が一緒くたになって全部が反日になっている。それが日本批判なんだと、それが日本に伝えられている批判というものは経済的なことだけでよ、例えばどこで何を買ったとか云う、土地をやりすぎた、株上場をやりすぎた、しかしその日本批判の背景には、そういう日本人がやっている日常生活の批判も入っているわけですね、しかし、そういうものはほとんど伝わってこない。僕はジャパン・パッシングという言葉を使うべきでないと思っていますね。現実に日本との貿易の問題のことがパッシングという風な合意では、我々は生きている時ではないですね。

 

高野

あれは経済の面で云えば世界一の大国と二の大国ですからね、いろんな競合があるのが当たり前で、それでいうと経済摩擦というのは有って当たり前ですね。だからそういうことも今おっしゃった日本人のビヘビヤ−みたいな、旅行のマナ−とか、そんなことも含めて全部が何から何まで反日だと、パッシングだという風になってしまうということですね。

蓮 舟方

このパッシングという言葉がずっと基本的なことなんですが、一番最初の何方が使われたんですか?

 

石川

これは割合古いんですよ、70年代前半、ニクソン政権の時、日米繊維交渉というのがあったわけですな。ニクソンは西部の政治家でしたから、西部のテキサスなんか繊維の問題で圧力が強かったんですね、そこで当時の佐藤内閣の時だったんですけれど、この段階で繊維交渉上手く行かないと、その時たまたまテキサス州知事のジュン・コナリ−という、後に財務長官が彼が日本との交渉にはジャパン・パッシング、パッシング・ジャパンと、日本とは叩いて交渉しなければいけないと。この時始めて出てきた言葉が、その後、死語になっていて、5、6年前にもコロンビヤのカ−ジスさんという日本研究者が、若い学者がいますけれども、アメリカの新聞に、これは5年前の話なんですが、ジャパン・パッシングという用語見たことないと、英語ではないと私に云ったことがあるんです。

 

高野

英語の辞書に載っていないという事ですか?

 

石川

こういう使い方はないと、新聞の記事にですねジャパン・パッシングという形で、センテンス、或いはフレ−ズとして英語の辞書に載ったことないと!5年前、それは日本で作られ、有名になったから、アメリカの記者たちがジャパン・パッシングという言葉を使うようになった。これは間違いなんだというんですよ! 

 

大磯

最近、アメリカにいってロケして、街角で立って、「ジャパン・パッシング知っていますか?」といったら、アメリカ人知らない、知らないと云うんですね、ほとんど知らない。そういう名前知っている人は云うんですけれど、面白い事を云う人がいるんですよ、「誰かを引っ張たくゲ−ムかい?」と云った人がいる。

 

石川

これは日本人が作った英語なんですよ、間違いなく。

 

蓮 舟方

もしかしたら、日本人が騒いでいる程アメリカの人達はパシングということを気を取られていないんですか?

 

石川

99%そうだと思います。

 

高野

月尾さんどうですか、何から何まで日本叩きに見えてしまうという、石川さんの言い方だと、それはちょっとこっちの方が作り出した幻影だという感じ・・・・ 

 

三枝

例えば日本というのは何時もなんて云うんでしょうか、外国の方から見ると色々変わりやすいために、むしろ外国に物を言わせている懸念が非常に強いわけですね。例えば、湾岸の時に自衛隊を出さなかったのは問題有るといったみたいな言い方をする。実は向こうは出して欲しいと思っていませんね。日本がこんなことを向こうは出したいと思っていると、思っている政治家、日本にいますね。そういう言い方をすると日本は出さなかったのは不味かったのかという風に使うでしょう。 そういう意味では何時も外国から何か云われているということを一つの逆手にとって、米の問題でもそうだと思うんですね。ほとんどの議員は自由化するだろうと思っている。でも日本が言うと上手くいかないので、向こうから言わせる、言ってちょうだい見たいな、何時もなんて云うか外圧を上手く利用している部分有る。

 

月尾

典型的に使っているのは日本の役所の省庁間争いですね。例えば、通産省が郵政省に対して対向しようとするとき、面と向かってやるということは大変だから、アメリカが日本の通信制度の開放をしようと云っているという風に云う事によって、郵政と通産はやり合うという風に使われている。マスコミのさっき石川さんが云われましたが、かなりそんな感じで、少し煽るという印象かなりあります。

 

石川

それは意図的に煽るならいいんです。僕はほとんどない現状を、後で細かくやりますが、意図的ならいいんですが、そうではなくて、それをほとんど無知のままやっている事が問題だと思う。後で細かく説明したいと思いますが、

 

大磯

パッシングという言葉は知らないけれど、有ることは否定できないんですね。例えば、つい最近ハワイの市長が大統領に手紙を送って、真珠湾50周年記念に日本人を呼んで謝らせようという手紙を書いたよといって記者が発表しているわけです。ハワイなんて日本人の観光客で一杯いるような州なのにそういうことになると堂々と私はこういう手紙を書いたんですよといって政治的に使うわけですね。これは十分意識してやっているわけですよ。

 

石川

ハワイの州が大統領に、日本人を謝らせるように書いても、それはパッシングとは全然違うな、それはハワイから見ればそういう云い方出来るという事は不思議ではないですね。

 

蓮 舟方

今、パッシングということがあまりにも多すぎて、特に私達の世代から見ると、どれがパッシングか分からなくなって、不合理なことをアメリカが言っているものは全部パッシングになるんではないかという風に捉えてしまいますが。

 

石川

ですから、幻想という云い方はこういうことですね。つまりアメリカが抱いている感情ね、僕はパッシングという言葉を使ってはいけないんですが、歓迎だということは、始めてアメリカが日本人を他人としてみなしたという事なんですよ。ところが今まで日本はいろんな愛憎があった。ところがこれは全部片思いなんですよ。日本人が勝手にアメリカを好きだといったり、憎んだり、愛し合ったりするという感情があった。けれども、アメリカ全体から見ればそんなことを感じている人は0.1%以下で、どうでもいい国なんで、簡単に云えば。

 

三枝

記事にならなかったんですね。

 

石川

記事にならない。例えば、自動車がアメリカの市場の3割も席巻するようになった。テレビは日本製が凌駕したとなると、始めてアメリカ人が日本に嫉妬したり、日本はそんなに凄いのかと、日本の寿司も食ってみようかとか、始めて他人としてある種の人間的な感情を持ちだすようになった。つまり、これまでは日本人だけが何時もアメリカに裏切られたり、憎んだり、一人相撲をやっていたので、一人で愛したり、憎んだり。

 

月尾

朝日新聞の松山さんが昔、ワシントンに居たとき面白い話があったんでがね、アメリカの小学校に行って講演にいったんですが、女の先生が自分の教えてる小学生に、「皆さん皆さんは日本なんて知らないでしょう!私が最初に日本を示します」と云ってフイリッピンを指した。アメリカ人の意識というのはこの程度なんですよ。  

 

蓮 舟方

何年ぐらい前の話なんですか? 

 

月尾

15年頃前

 

三枝

これは今でもそうですよ。

 

蓮 舟方

今でも!

 

石川

私は65年にアメリカにいったでしょ、ベトナム戦争の真っ最中ですよ、あれぐらいの最大の事件がある時に、高校の授業でね、ベトナム戦争に皆行くわけですよ、高校終わったら、ベトナムの場所が何処にあるのか知っているのはいないですよ。戦争やっている最中にですよ。毎日ベトナムのニュ−スが流れているんですよ。アラスカの辺りがベトナムでないかという高校生がいたんですから。

 

三枝

欧米人の教育はちょっと違うんですね。日本人が異常にそういう事についてよく知りすぎているんで、これは例外だから。世界的なレベルで云うと大体そんなもんですね。

 

高野

ソ連にいっても同じようなものですよ。

 

三枝

ヨ−ロッパに住んでいる人はベルギ−が何処にあるのか知らないのですから。飛行機の中でベルギ−の話をしたら、フランス人がベルギ−が隣の国だという事を知らないんですからね。あれには驚ろくね。

 

蓮 舟方

其の事にも驚いてしまいましたが、さて、石川さんジャパン・パッシングは幻想というお話だったんですけれど、じゃあ、あれは一体何なんでしょうか?どういう感情で・・・

 

石川

それはアメリカ人が、或いはアメリカ社会が始めて日本というものを他者と、一人前の者と認めだした、認め始めたということで、認めるためにはやはり経験が無いわけで、アメリカにすればですね、要するに、アメリカを越える品物を作る国が、東洋の島国が出来るとは思っていなかったし、戸惑いなんだな。それから教育水準もいいとか、そういう事がありえるとなると、戸惑いが急速に起こったわけですよ。アメリカのようなすごい国が国債の3割も日本に買ってもらはなければやっていけないのか、そんな馬鹿な事有りえる事ないと、それは俄には認められないんだな。だってあれだけ潰された国がすぐそうなってしまった、だから彼らが日本に対して正確なイメ−ジを持つ前のブレなんですよ。と考えたほうがいいんですよ。それを短絡的に何か、これを買ったらどうだとか、日本人は何だ、と云っている時にまだアメリカは日本を批判しているから、日本はやられると思える。実は他者として、自立した他者として日本を認める前のイライラなんだと。そういう風に見るだけの度量を持たなければいけない。

 

高野

日本人が割りと、湾岸戦争後でしょうけれど、何というかアメリカのやっている事はどうも気に入らないと、何か金を出せと云ったかと思うと、為替の差額を出せといった感じがあるでしょう、補填だね、国際的な補填が行なわれたんだけど、そういう事に対して何かアメリカというのはしょうがないなあと云う気分有るでしょう。そういう意味で全体としては今はどんな時期よりも反米的な感情が高まっているんではないかと思うが。

 

石川

一番大事なんですよ。アメリカの方も何というのか、自分達の感情が名付けられないんですよ。自分達が、今、日本に対して、向かい合ってイライラしている。これは一体どういう感情なんだ?これは始めて日本人を一人前の国家として認めようとする、ブレだという。それもある、我々はジャパン・パシングという、日本の方も二言目にはアメリカから何か云われると日本の中の親米派と云うのと反米派という風に二極分化してしまって、この本なんかも、反米感情が強まっているという、こういうやり取りをするからいけないのであって。私はこう思っていないの。ここが一番大事で、ここの所を細かく分析しなければいけない。例えば、作ってみたんですが反米と親米という感情があるとすると、この感情

 

 

   反 米

   親 米

 

   嫌 米

   離 米

   遠 米

   憎 米

   好 米

   愛 米

   恐 米

   知 米

 

 

 

 哀 米

 

 

 

 

の中に沢山の感情があって、例えば嫌米、アメリカが嫌い、離米、とにかくアメリカと離れてやってみたいとか、遠米、アメリカと距離を置いてみたいとか、それから憎米、これは始めからアメリカ憎しという、その外にいろんな感情があるわけですよ。アンチ・アメリカの感情にはね、同じように親米派と云われる中にも本当にアメリカが好きでしょうがない、寝ても醒めてもアメリカを愛してしまったという、ところがある種の感情のなかに恐米がある訳ですね、恐ろしい国なんだと、逆らっちゃいけないんだと、そういうものも親米感情を形成している、それから知米ね、アメリカを理解している上で、それから哀米というのがある、例えばアメリカが湾岸戦争やるにあたって、世界最大の強い国でありながらドイツと日本の金を頼りにしなければ戦争も出来なかった。ゲイが凄いとか、犯罪が多いとか、何かアメリカというのは困っているんではないかという、そういう感情もあると思う。そういう親米感情はまだ沢山有ると思うけれども、反米にね。同じようにこの例を親日派、恐日派、日本の経済力は脅威である、それから知日派、それから愛日派、それからあんなちっぽけな国いじめてはいけないという親日派がいる。同じように反日でも単純に顔も見たくないという嫌日、日本なんかなしで相手にするな、あんな云うことをきかない国は、という離日派とか遠日とか、最初から日本嫌い、日本を遠ざける、日本と付合ってもいいことなんにも無い、日本憎し、嫌日派とかね、そういう風にこの日を米に変えても同じような感情ある。一番大事なことはそういう事で、今の日本のアメリカに対する感情というのを覗いてみなければと思う。

 

高野

これとこれが枠に入っているのは?

 

石川

それでね、今、湾岸戦争が起こった後で親米派というものの中では、その分け方の中で何処が一番強いかというと、私は、親米派がね、要するに日本はもう一回軍備を持った独立した国になるべきだというのはこの親米派に強いですね。これはむしろ恐米、アメリカの圧倒的な軍事力を見せ付けられて、振るえ上がってしまって、いわばアメリカ恐わしの親米派というものが強くなっているのではないかと思う。所謂右派といわれる反米派の中にはとにかくアメリカ嫌いとか、反米感情とか云うが僕はそうは思わない。むしろ遠米感情なんで、アメリカの云っていることは例えば貿易、対外貿易の40%はアメリカにいっているんですよね、又、アメリカの国債の3割は日本が買っているとか、文化面にも日本にはアメリカ一辺倒で、ところがアメリカだけでは我々はいいんだろうかと云う一種の反省がある。その点経済的にもアジアに出て非常に大きく云っていますね、それをしようとして大東亜共栄圏という云い方もしますけれども、アメリカと距離を置いて見たいという感情があって、反米派といわれる中にも、ですから今、アメリカを巡る日本の感情はこの恐米感覚と遠米感覚がミックスして複雑な所にきているというのが私の持論です。

 

大磯

面白いですが、ちょっと違うような気もするんですね。自分自身の事を云うと、多分恐米に入ると思うんですが。今の日本人、特に有識者になればなるほど、もうひとつ重要なやつで、侮米というのが入ると思うんですね。

 

石川

アメリカを侮蔑する!

 

大磯

それは何かというと、湾岸戦争が、アメリカはあんな馬鹿な事をするのかという事だと思う。日本人が見ると、だからその反日とか、反米と親米の間に、真ん中の境界線の所にぴたっと入れたいような、真ん中が侮米なんだと思う。これが問題なんで。

 

石川

ですからね、私は敢えて作ったんですがね、今まで単純にすぐ反米か親米かという見方をしてきたが、そうではなくてこの言葉の中にいろんなものがある。

 

高野

これは恐米だったものがス−トこちらに移ってしまう事だってありますね。

 

石川

ジャパン・パッシングという時に大事な事は、日本人はそれぞれに戦後、あるいは明治開国以来、アメリカから利益を得て生きてきたんですね。ビジネスも含め、文化的にいっても、自分のアメリカに対する気持ちというのは一体何なんだ。単なる親米とか反米という言葉で見るのではなくて、いろんな言葉で自分のアメリカに対する感情、何なんだという事を問う事が先だと思う。その上で今日本の中で反米感情、大きく云えばこんなのがあるのかと云う事を言うべきであって、いきなり雑誌の見出しで反米感情が強くなっているとか云うことだけでやる必要はなく、今おっしゃったように例えば私には侮米が有ると、そういう事を・・・・

 

高野

私は愛米に違いない・・

 

三枝

高野さんはかって反米だった。

 

高野

反米から斜めに移って・・・・

 

三枝

日本の1945年、45年と申しあげたのは皆が好米だったんですよね、その後一部左翼といったりインテリといったり、当時のインテリというのは皆反米と云わなければインテリとしての証が立たなかった時代がある。それが30年ぐらいつづいている。昭和の20年から50年ぐらいまで、反米というとインテリだと、格好いいと云うか、一応、日本には心情左翼と云うのがあって、何となく左翼的でないと知識人でないと思われていた時代があった。その時代が長かった。その時代には皆反米という形を取ったんだが、実は心の中ではアメリカが好きだった。

 

高野

それはあるね。

 

三枝

ところが今はね、世界的にと云うか、日本的には割に皆親米なんだけど、ちょっと違うのは、こういうところで、この叩かれた時に起こってきている中で、今一番起こってきているのは国粋主義だと思う。反米じゃなくて、日本が顔を持って向こうと対等にやりあえと云うのは、ヤマト的な漫画みたいのは。

 

石川

国粋主義的なものは、それをすぐ反米といってはいけない。国粋主義は国粋主義でいいわけで、日本のナショナリズムはナショナリズムで、日本のナショナリズム、イコ−ル反米とくっつけちゃいけない。これはつながっている。

 

蓮 舟方

パッシングをかわぎりに、日本の反米感情、親米感情にも色々なパタ−ンと云っていいでしょうか、色々な種類があると云われましたが、本日この番組のために大磯さんが取材をしてくださいまして、このパッシングについてアメリカの著名なジャ−ナリスト、デビット・ハラバ−トさんにインタビュ−して戴きました。この方は・・・

 

大磯

この方はノン・フイックション作家でジャ−ナリストでね、田原総一郎みたいなところのある人ですが、ちょっと違うのはテレビをやらないのと、一冊の本を書くのに10年ぐらい掛けるんですね。これはとんでもない人なんですね。この一番新しい本がこれで、日本人の読者のために書いたという非常に特殊な本ですが、厚さも手頃なんで読んで戴きたいんですが、これにもアメリカの知性と書いてあるんですね。ピュ−リツア賞も受賞しているアメリカの代表的な評論家ですね。

 

高野

その方パッシングの中身についてどう考えておられるのか、・・

 

蓮 舟方

大磯さんがインタビュウ−して下さいました。

 

大磯

現実にこの本ご存じだとおもいますけれども、来るべき日本との戦争という本が既に出ていると、最近出たのでCIAの日本の2000年という悪名高い報告書が出てまいりまして、要するに何時かは日本と戦争しなければならないであろうという内容で、CIAの研究なるものは、日本が潜在的な敵国であると云う事だと思うんです。お互いの見方のコンセプトがだいぶ違っているという意味で、どうも危険な状態になってきているという気がするんですが、いかがですか?

 

デビット

この本のタイトルがカミング ウオ− ウイズ ジャパンだったせいでしょう。このタイトルが多くの日本人の頭の中である種の感情やイメ−ジを引き起こしたために良く売れているんです。ただアメリカでこの本が発売された時は、ちょうど小石が川に落ちたようなもので小波さえ起きませんでした。誰も注目しませんでした。アメリカ人にはアピ−ルしなかったのです。日本とは違ってアメリカではベスト・セラ−にもなっていませんし、

 

特に重要な本だとは考えられていません。私も読んだことがありますが、著者は日米双方のワ−スト・シナリオを想定して書いたものだと思われます。又私の知り得る限りでは、先程あなたが云われたCIAのリサ−チはニュ−ヨ−クのロチェスタ−大学の学者達がCIAに依頼されて行なったものであり、それがたまたまヒステリックな日本感であっただけです。しかし、この研究報告書はCIAの公式文書ではありませんし、米国政府の人間で日本を敵として見ている人は一人もいません。レ−ガン、ブッシュ大統領とも日本の事はかなり良く思っています。しかし、上院、下院議員の多くが、現在、アメリカのフラストレイションの真っ只中にいます、そして、その中には地元の経済が苦況に陥っているためジャパン・パッシングする人もいますが、大統領を含む最も重要な人達は、実際には日本に大変同情的であり、評価もしています。又米国の最も重要なマスコミである、ニュ−ヨ−ク・タイムス、ウオ−ル・トリ−ト・ジャ−ナルそしてワシントン・ポストなども、皆日本に対して同情的であり、日本を評価しています。もし、パッシングがあるとすれば、むしろアメリカに向けられたものの方が多いと思います。アメリカは絶えず自分の国の社会を批判しており、他人よりも自らを厳しく批判する国であることを忘れないでください。私は、アメリカのトップ・ジャ−ナリスト、所謂エリ−トの典型だと思っていますが、その私自身なぜアメリカ経済がここ10年、このような調子で終わっているのか、どうして日本との間に緊張をもたらしてしまったのかと云う事に関しては、日本に関してよりも、むしろアメリカや、アメリカ政府に対してより厳しい批判をしています。勿論もっと日本が市場を開放してほしいと思っていますし、相互主義なる概念も持ってもらいたいと思っています。このような私の態度はアメリカ人の間で典型的なものでありトレンドになっています。アメリカの経済的なヘゲモニ−は既に終わっているのに、政治の世界では今でもアメリカが最も巨大な国であると信じている。既に世界がアメリカに追い付いたという事実を認めていない。そのためにアメリカはフラストレ−ションを感じています。又、日本の方はこんなにリッチになり、こんなにパワフルになったにもかかわらず、政治的に、軍事的にどのような役割を世界に果たしていけば良いのか解らないから、そのためにフラストレ−ションを感じイライラする、日本はどうして世界が我々の云う事を聞いてくれないのかと云うが、一体何を云いたいのか解っていない。だから、日本もアメリカもイライラしている。しかし、イライラとパッシングは違います。

 

高野

なるほどね、アメリカは自分で自分の事をイライラしていると。

 

蓮 舟方

ジレンマでしょうか?

 

高野

それとアメリカは自分の事にイライラしているのに、日本人は日本だけがいじめられていると思っている。そういう両方の擦違いの構造なんですね。

 

大磯

そこは又彼は非常にインテリですから、自分を分析するというタイプですから見えているので、アメリカ人というのは一般的に、自分を分析しないと、私は思いますけれどね。

 

蓮 舟方

そこでパッシングという言葉を使うことが正しいのかどうか、今夜の番組の中では解らないんですが、こういったものを作ってみました。

 

 

               主なパッシング項目

 

  関税

  米

 

  ス−パ−・コンピュ−タ−

  コンピュ−タ−

  特許

  直接投資

  半導体

  自動車部品

  流通

  90億ドル追加支援

  タイマイ・マグロ

 牛肉、オレンジなどの農産物

 日本は輸入を完全に禁止、

 戦後作られた食管法で管理

 将来の販売は日本政府の予算にかなり依存

 政府による外国品調達10%

 特許庁の人員不足による手続きの遅れ

 日本企業の系列維持

 一層の開放を要求

 日本市場のアメリカ・シエア1%以下

 独禁法のガイド・ライン不透明

 支払い額約4億ドル目減り

 ワシントン条約抵触

 

アメリカがイライラしている原因と取ればいいんでしょうかね、これは。

 

大磯

これはパッシングと貿易摩擦が両方全部入ってしまっているという感じで、上の方は特に貿易摩擦で、下の方のタイマイとかマグロに至っては貿易ではなくてイライラの方に・

 

高野

鯨なんかもそうだなあ。

 

蓮 舟方

タイマイとか鯨はイライラの方で・・・・

 

大磯

90億ドルもイライラの方でしょうか・・・

 

高野

これが全部パッシングの項目というのはおかしいなあ、摩擦だな、経済摩擦というのは有って当たり前であって、この調整方法を間違えるとこれはパッシングの種にもなるという事ですね。

 

大磯

順番から行くと経済摩擦オンリ−だったものが段々政治摩擦や文化摩擦に発展していくということは事実ですね。

 

石川

それは僕の言葉で言えばさ、むしろいい事なんだということは、単に製品だけで睨み合うんではなくて、例えばお前の顔は良くないとか、そういうレベルまで来ているわけですね。云ってみればそういう事なんですよ、だけど世界の中の二大経済パワ−でしょう、その問題があってはいけないというのはこういう意味なんですよ、お前んとこ家はなんだと、そういうレベルまで一回徹底的に話し合って、始めて、そういう事で啀み合ったり、ののしり合って、始めて日米パ−トナ−・シップという言葉が使えるんで有って、お前んとこの家は大きすぎるではないかとか、お前んとこの家は小ちいさすぎるではないかとか、そういう事でやり合わなければ二国関係とは言えないと思う。だから僕がジャパン・パッシングと云われているような言葉嫌いだけれども、今のアメリカの対日批判は歓迎すべきだと云うのはそういうデテイ−ルまで来たということ、今までは税関の問題で、障壁が沢山有るとか、それをどうしろ、こうしろではなくて、一体お前は何をやりたい人間なんだと、あんた達の云っている民主主義は何かおかしいではないかと、という訳で、今回の証券スキャンダルがあったけれども、そういうものだって、我々のマ−ケットは違うんではないかと、そういう事も云って、そういう事から始まっているわけですね。云ってみればアメリカ人と始めた会ったときにhow do you do?と握手するでしょう、日本はよろしくどうぞ、と云って頭を下げる、そういう違い、そういう事は有っていいのだと思う。

 

月尾

ただ、アメリカはねえ、問題が有るとすれば特許の所に問題がある。世界の主要国でアメリカの特許制度だけが特異なんですね、それを主張していまでも自分の国しかないといっている。それからヤ−ド・ポンド法とかメ−トル法でも、アメリカも一時は全世界がメ−トル法にするといったとき調印したんだけれども、その後一国だけやめたという。それが科学の分野での問題となっている。

 

石川

アメリカというのは世界でも珍しい大国でしょ、だからそういう事にチャレンジを受けた事がないんですよ。だからメ−トル法なんかだって、確かにアメリカだけがあんなことをやっているのは可笑しいですよ。でもそれも彼らを理解するには時間がかかるんだな、つまり日本のように我々の問題はこういう事だからと理解を求め、あれだけの多民族が居て、いろんな価値観があって、勝手気儘に生きている人間がいる国の中で、メ−トル法一つ変えるにあたっても大変な事ですよ。だから、今、そこでアメリカのイライラと云うのは今云ったんですが、そのイライラを我々が一緒になってイライラする必要はないんですよ。

高野

三枝さん文化の面でアメリカが衰えてきたというか、自分で自分にイライラしているとか、癇癪病みたいになっているとか云う事ですけれども、文化の面でそういう事有るんですか?

 

三枝

これは世界の潮流がアメリカじゃないですか?つまりかって20年前アメリカに留学するア−チストは居なかった。あそこには何もないと思っていた。豊かな食物と車は有るけれど文化はないと皆思っていたんじゃないですか。それがやはり今はアメリカへ留学する人はヨ−ロッパより面白いと、作曲家でいうと1/3ぐらいアメリカに行こうとしているんじゃないですか。かっては0%でした。演奏家も今一番、バイオリンなんかも良い先生がいないんです。ソビエットはかって良い先生がいたんですが、全部どっかに行っちゃったんですね。ですからはっきり云っていないんです。

 

蓮 舟方

何が原因で!

 

三枝

やはりアメリカは第二次世界大戦の時ナチに追われた人で職を失った人が行ったという事と、二つ目にはアメリカが非常に豊かな時代に、引っ込抜いたという事は事実ですね。オ−ケストラなんかパッケ−ジでポンと抜いたりしている。何でも金に証せて日本人が買い漁ったといいますが、かってあの時代には買い漁ったものばかりですよ、そういう意味ではかってやった国なんですよ。世界一のア−チストもそうやって抜いてきた事は事実ですね。でもそれでもなかなか自国で育たなかったんですが、ところが今ポップ・ア−トなんてのはアメリカ抜きで語れないんでしょう。

 

高野

アメリカの没落というのは文化面にはないと?

 

三枝

文化面では上昇ですね。

 

月尾

国が駄目になると文化面が興隆する。

 

三枝

何でも30才過ぎないと駄目でしょう。そういう面で今アメリカはトップですね。

 

 

 

 

 

         −−−−以下時間切れのため収録できず−−−−

 

 

 

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