小出朋治

　新潟県三条出身。小学校を卒業し上京。正則英語学校卒業。1904(M37)頃に中央福音伝道館で受洗。柏木聖書学院に学び、日本ホーリネス教会の前身の東洋宣教会の牧師になる。
　'07長岡市の福音伝道館に赴任。新潟県を巡回をしていた中田重治(19-1-3)に同伴し、翌年、東洋宣教会は役員会制度を設け、新潟県長岡市の牧師に任命された。'09米子福音伝道館の伝道者に任命され転任。'11秩父の福音館で牧師をしているときに聖教団事件が起こる。
　聖教団事件とは中田重治ら日本人教役者とチャールズ・カウマンらアメリカ人宣教師らの分裂事件のこと。当初は1901東洋宣教会の創立以来協力しながら伝道活動をしていたが、牧師と伝道館が増えることにより、教団の組織運営や利権の問題で対立するようになり、宣教師側の東洋宣教会と、中田側の日本聖教会団に分かれた。小出は中田側についたが、中田が自分たちに相談せずにカウマンと妥協したことに不満をもち、小出を含む多くの牧師が中田に失望し離れた。これにより、鹿児島県奄美大島の名瀬で半自給生活をしながら開拓伝道を始めることになった。翌年、中田は小出を訪ねている。
　'17(T6)広島アライアンス教会（日本同盟基督教団）から招聘され、中野教会に赴任。'20より伊東教会へ転出。'22日本ホーリネス教会に復帰（1917より名称を「東洋宣教会日本ホーリネス教会」に名称変更）し、ホーリネス浅草教会の牧師となる。'23.9.1関東大震災が発生し、小出一家は助かったが、浅草教会は焼失。同.10.8「聖潔の友」に被災体験談を『御守りの記』を掲載。
　'25日本ホーリネス教会の朝鮮部長に任命され、京城に転任。'33(S8)朝鮮半島を訪問していた中田と共に普州や小鹿島で巡回伝道をした。日本ホーリネス教会は朝鮮半島と満州の日本人への伝道を目的とし、現地人への伝道は東洋宣教会と朝鮮聖潔教会が行ったとされる。
　'36日本ホーリネス教会は「日本聖教会」と「きよめ教会」とに分離し、日本ホーリネス教会は消滅した「ホーリネス分裂事件」が発生。これに伴い、'37小出は日本聖教会に属し、日本に戻り、日本聖教会参与に任命され、近畿部長として大阪西野田教会牧師に着任。'41.6日本基督教団成立時に第6部に所属。
　'42.6.26 ホーリネス系3団体の治安維持法による一斉検挙で逮捕される。禁固3年の実刑判決を受け服役。家族への手紙を書くことが許されたときに「生還を願わずして死に至るまで信なれ」と書いたという。'45終戦後、堺刑務所で釈放間近に病死。死因は動脈硬化症と診断されていたが、特別高等警察の拷問により死亡したとみられている。57歳で獄死。遺体は夫人まん（同墓）と長男の小出忍（同墓）が引き取った。なお拘留期間中に小出を含む、菅野鋭、斉藤保太郎、辻啓蔵の4人の牧師が獄中死した。
　没後、息子の忍は日本キリスト教団ホーリネスの群中央委員長を勤めた重鎮となり、'80『昭和の殉教者 : 小出朋治の生涯』を刊行している。

＜日本キリスト教歴史大事典など＞

＊墓所には二基建ち、右側は自然石「故 小出朋治 牧師 之 墓」、裏面は小出朋治の略歴が刻み、浅草ホーリネス友会が昭和三十年十一月十六日に建之とある。左側は洋型「小出家」。裏面が墓誌となっている。妻は まん。

※出生が1883年、没年月日が1945年9月10日とする人名辞典が多いが、墓誌や墓石に刻む略歴には、出生は明治21年（1888）、没年月日は1945年9月9日、57歳で亡くなったと刻むため、これを優先する。

小出　忍、 中田重治