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ふかみ ありちか

深見有隣

ふかみ ありちか

1691.12.24(元禄4.11.5)〜 1773.3.7(安永2.2.15)

江戸時代の幕臣、儒者、書家、考証学者

埋葬場所: 3区 1種 32側 9番

 長崎出身。深見玄岱(同墓)の子。諱は但賢。のち有隣に改める。通称:松之助、久太夫、新兵衛。字を雙玉、隠居後は右翁と号す。
 深見家は中国の明の福建省影郡がルーツであり、祖父の深見但有(高大誦)は長崎で唐通事(通訳官)を務め、深見 姓を名乗った。父の玄岱は書家・篆刻家として名を馳せた人物。兄に書家の玄融(頤齋)がいる。玄融は幕府に儒臣として仕えていたが、1718(享保3.2.16) 狂気を理由に父の玄岱のもとに籠居させられ、父も連座して出仕差仕止の処分を受けた。のちに赦されるが、その件もあり、同.10.19 父の致仕を受けて有隣は家督を継ぎ、儒者となった。
 1721(享保6)から父と5年間かけて中国清代の総合法典『大清会典』を解読し翻訳(父の玄岱は1772没)『大清会典和解』を編纂した。『大清会典』は清王朝の制度や典礼を集めた書籍(会典)であり、清代を通じて5回編纂されている。この『大清会典』は徳川吉宗に納本された。
 1732(享保17)享保の大飢饉を受け、備荒作物としてサツマイモ(甘藷、甘蔗)の栽培を徳川吉宗に建言した。これは後に、1744(延享1)甘藷に関する研究は『甘蔗考』として農業技術に関する編述もまとめた。
 1734(享保19.8.8)書物奉行に抜擢される。徳川吉宗の側近学者の一人となり、寄合儒者から書物奉行に転じてからは、在職三十余年の間、翻訳・考証に業績を残した。徳川吉宗の時代に間断なく広汎に行われた『類聚国史』、『明月記』などの校訂、『二条家日次記』書写に当たる。また天文の知識にも秀でていたことから、幕府天文方の観測所詰を命じられた。
 父譲りで書に対して才能を発揮する。門下に澤田東江など優秀な人物を輩出する。1765(明和2.4.11)西城御裏門番の頭に移る。同.12.18 布衣(ほい)を着ることを許される。1768(明和5.5.9) 辞職して寄合となる。翌年末より隠居。享年81歳。戒名は尚議院殿仁岳道薫居士。
 前妻は本多伯耆守家臣(田中藩士)の朝倉与市景長の娘。後妻は大奥老女河井の養女。子は1男1女。男子の深見貞雄(槌太郎、帯刀、長左衛門。母は「某氏」)は大番として幕府に出仕したが、1764(明和1)大坂在番中に父に先立って37歳で逝去。貞雄には1男2女があり、深見有忠(尚之助、久太夫:同墓)が家を継いだ。

<朝日日本歴史人物事典>
<日本人名大辞典など>
<今井秀様より情報提供>


墓所 墓所

*墓所には三基並んで建つ。正面真ん中に和型「深見家之墓」、裏面は「平成二十四年十一月吉日」、右面が墓誌となっている。正面右の独立性易の墓には前面「天外一間人髪歯碑」。左面に「天外一間人髪歯碑記」「竜澗源良弼撰」と刻み、明獨立禪師 杭州仁和縣人 自號天外一間人・・・と裏面、右面と碑文が刻む。右面最後に「右翁高有鄰拝立 勵齋橘隆棟敬書」と刻む。正面左には小さな墓の深見有忠夫妻の墓が建つ。前面戒名「禮光院殿義融忠山居士」と妻の戒名、それぞれの没年月日が刻む。左面に「孝男有能百拝建」と刻む。

*「天外一間人髪歯碑」は、独立性易の髪と歯牙を分骨した遺身分墓である。1672(寛文12)示寂した独立性易の百回忌にあたる1771(明和8)に深見有隣が建立した墓である。有隣の父の深見玄岱が独立性易に師事し私淑した関係から深見家代々の墓所地であった寛永寺の上野 護国院に建てられた。

墓所

*深見家の墓所は元々寛永寺の上野 護国院にあったが、1926.7(T15) 多磨霊園に改葬された。上の写真は、1998頃に撮影した写真であり、当初は、左手前に「深見家之墓」、左奥に「天外一間人髪歯碑」、中央に深見玄岱の墓、右に深見有忠夫妻の墓が建っていた。2012.11(H24)「深見家之墓」を新しい墓石にした際に、墓石の配置が現在の並びに変更された。また、その際に、深見玄岱の墓が撤去されたため、現在墓所に墓石はない。

*「深見家之墓」右面の墓誌は、右から深見寿太郎(1928.5.15没)の刻みから始まる。右から四番目に深見章(2005.3.10没・86歳)が刻む。深見章は「深見家家譜」を所有されていた人物。なお墓所に墓石がある深見有忠(1798:寛政10.3.11没・51歳)は、深見玄岱の子の深見有隣の嫡孫にあたる。有忠の養嗣子の深見有能(1778:安永7生まれ)は、22歳の時に家を継いでいる。以後の代々の詳細は不明であるが、深見寿太郎、深見章を経て、現在も継承されている。


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