「本日は、横濱JAZZプロムナードにお越しくださいまして、まことにありがとうございます…」
このようにして始まる会場諸注意をいったい何回聞いたことだろう。10月10日、11日の2日間はイベント、横濱JAZZプロムナード'98が行われ、横浜の街、というか関内・桜木町一帯は一大ジャズスポットと化した。もともとジャズクラブが多い界隈だが、それに加えて小規模ホール、果ては野外でも大小規模のジャズライブが開かれたので至る所にジャズあり、であった。去年の冬、某ページにてこうしたイベントの存在を知ったわたしはずっとこの日を楽しみにして、はるばる横浜へ行ってきたのである。最初に挙げた注意は、わたしが主にいた会場でたびたびかかったもの。すべて同じ人が喋ってた感じがするな。
今回はその時の模様を中心に横浜滞在の丸2日間を克明に書いた見聞記とも行動記録とも何ともつかないようなことをつらつらと、延々と書くつもり。しかもフォントを一段階小さくしたのでご注意を。なお、出演者はパンフの記述が中心。違うとはっきりわかるものは変えているがわかってないものはそのまま。
6:30過 うちを出る。前日の帰宅が遅かったこともあって睡眠なし。朝飯代わりにコンビニで500ミリリットルののむヨーグルトを買って胃に流し込む。市バスに乗って京都駅へ。
7:26 新幹線、ひかり210号乗車。ホームにいる時から眠気の塊。先頭に並んでいたおかげで席に着く。発車後数分で意識を失う。直射日光を肌に感じて新横浜到着直前に目覚める。
9:53 新横浜駅着。
10:00台 1日乗車券を買って地下鉄に乗り込む。伊勢佐木長者町駅下車。11日のラストに行く予定の会場を探そうとしてちょっと迷ったが、すぐに当てが外れていて全く違う場所にあると気付く。あたりを適当にうろつきながら関内駅方面を目指す。
10:50 モスバーガー関内店。
11:15 横浜スタジアムへ向かうベイスターズファンを横目に北上。と、ビッグバンドの演奏がきこえてくる。ついに来た、と小走りに向かうとそこには入手しているチケットをフリーパスとなるバッヂと交換してくれるテントがあった。交換。脇で演奏中のZAMAビッグバンドを見るのもほどほどに、最初の目的地へ。
11:40頃 開港記念会館着。席に着く。待ち。真後ろにJAZZ研的団体に所属の慶応ボーイがいて、連れに講釈をたれている。耳につくも、それもまたよしかと。ジャズが好きなんは一緒だし。
12:00〜
大坂昌彦・原朋直クインテット。
大坂昌彦(ds)、原朋直(tp)、川嶋哲郎(ts)、井上祐一(p)、上村信(b)。
迷わないようにオープニングはこれを見よう、と出発前からあらかじめ決めていたセッション。しかし、困った。眠い。たまらん。こらえきれずにうとうと。そのうえメロディーがはっきりつかめないせいか、曲がよくわからん。わりと期待していただけにちょっと拍子抜けか。実力・人気とも日本の若手の中では群を抜くはずだが、わたしにはちょっとこの世界はよくわからん。ソロの長さも眠気にはこたえました。上手いのは確かなんだが個人的にはこんなものなのかなあという感じ。
13:00〜 休憩。襲ってくる眠気対策に、缶コーヒーを1本あおる。
13:30〜
引き続き開港記念会館にて向井滋春・村田陽一MMスライダース。
向井滋春(tb)、村田陽一(tb)、山下こうじ(b)、なんちゃら太郎(わすれた。ds)、ピアニスト(パンフに名前なし。でもいた)。
MMというのはおそらく向井と村田の頭文字だろう。CDでよく演奏を耳にする村田陽一が出るし、って感じで残ったセッションだが、これが自分にはぴったりだった。トロンボーン2本という異色の編成もあいまって、ノリノリ。世界でも珍しい編成だとおもう(カーティスフラーとかJJジョンソンはやってるのか?)が違和感なし。聴いた感じでは、村田がわりとハリのある音なのに対し向井はやわらかめの音で、向井の方が好みだったかな。バックもいい味を出していて息もぴったり。ラスト、チック・コリア「スペイン」のドラムソロは見事だった。名前忘れたけど。だってパンフに載ってる名前と違うんだもの。あらかじめ行くと決めていなかった公演の中でベスト。というかこの日のベスト。
14:30〜 休憩。バスに乗って港の見える丘公園にあるイギリス館を目指す。
15:00〜
イギリス館、杉浦良三ラテンJAZZヴァイブ。
杉浦良三(vib)、稲葉国光(b)、田村博(p)、山崎比呂志(ds)。
一応打楽器やってるしビブラフォンも、というノリで行ってみた。カル・ジェイダーっぽいビフラフォンみたいだし。キャパは100人前後といった感じだが優に200人は超えていた、大入り満員。入りきれず外に出て窓越しに見る人続出。わたしは立見ながらなかなか良いところ、ただし半分見えなかったけど。ここは座れませんと係員が言っているのに座る人は続出するし、演奏中に小さい持参のマラカスを取り出してリズムに合ってないのに鳴らすおっちゃんはいるし、なんだか曲自体自分に合わないような気がしたし、居たたまれない思いで途中、4曲目だったかが終わったところで去る。でもマラカスのおっちゃんに関しては、それもまた一つの楽しみ方だし極端な邪魔でなければいいかなという気もする。それにしてもラテンビブラフォンは、自分に合わないのかな。カル・ジェイダーもあまり聴かないしな。それがわかっただけでも収穫とするか。演奏は、杉浦がなかなかお年を召しているので見た目はスリリングだがしっかりしたものだった。マレットは、わりと硬めみたいだけどいい雰囲気。やっぱりあのくらい硬くなければ大きな音は出せないね。
15:35頃 バスに乗り、ふたたび開港記念会館をめざす。バスの中で、4年生くらいの女の子がバスの運転を評し母親に「かなりこのバスやばくない?」と現代風の発音で喋ったのに愕然。こんな小さい子でもそういうアクセントで話すわけ?
16:30〜
開港記念会館で辛島文雄トリオ。
辛島文雄(p)、本田珠也(ds)、荒巻茂生(b)、スティーブ・コルツ(名前はうろ覚え、スペシャルゲスト。ts)。
予定を組んでいったらこれを聴かねばピアノトリオを一つも聴くことなく終わることが判明しつつあったので組み込んだもの。テンポが上がると新しくなるにつれ滲み出てくる、攻撃的な側面が姿を見せるためよくわからない世界に突入するが、バラードはピアノトリオ特有のしっとり感が感じられそれなりによかった。ただ本田のドラム、初めて聴いたがシンバルに頼りすぎのきらいが。というか、シンバルばっかり使ってる。よく言えば、シンバルで歌える人。また、辛島、本田とばりばり音量を出すタイプだったので、PAの関係か、荒巻のベースがきこえなくなることしばしば。ピアノとドラムのデュオじゃないんだから、音量調節にもう少し気を遣った方がいいんじゃないのかなあ。ゲストを迎えて演奏した「枯葉」はおなじみのメロディーがほとんどきこえてこない非常にアグレッシブなものだったが、締め方は絶品だった。
17:45 モスバーガー神奈川県庁通り店。
18:15 10日のラストを見るべく目指したジャズクラブ、エアジンに到着。目当ての前の演奏をまだやっていた。途中で入るのはちょっと気がひけたが結局入る。沢田奈津美(p,voice)ソロ。vocalではなくvoiceというところがミソで、即興くさいピアノにこれもまた即興のようなどこの言語かわからない言葉を囁く、喋る、呟く。ラテン語圏というよりはゲルマン語圏の発音だった。甚だ前衛的。天井桟敷とか、そんなものを思い起こさせる。いわゆるフリージャズの範疇になるのかな?さっぱりわからない世界。
19:10〜 広木光一&渋谷毅デュオ。
広木光一(g)、渋谷毅(p)。
エアジンは椅子が30あるかないかの小さなところで、当然のごとく席はいっぱい。余談だが隣の隣に座った人が中島らもに酷似。関西弁じゃなかったので違うと思うが…。そこで演奏されたのはアコギ1本とピアノのデュオ。まさに夜のための音楽といった感じ、聴く人が聴けばもうめろめろだろうという甘い演奏。アコギだったので、聴いたことのある中で思い起こしたのは佐藤正美。ちょうどあの世界と似た雰囲気。わたしにとって佐藤正美といえばアルバム「マザー・トゥリー」なので、白神の山々の中にいるような気分に勝手になっていた。あたたかかったこともあって夢見心地。
20:40 アンコールも含め、すべて滞りなく終了。1日目の日程を終える。泊めてくれることになっている弓岡氏(どうせ筆名なんだから名前だしてもいいよね。だめなら言って)に連絡。予想だにしない方向へ呼び出される。
21:15 弓岡氏と、某所で会う。連れていかれたのは彼の中高時代の塾の講師陣、その友人の集まっているところ。半ば引き合わされるかたち。笠置シヅ子「買物ブギ」をイントロで即座に当てることで自分がどういう人間かある程度把握してもらったり、それこそいろいろと。ゴールデン・カップスの興味深い話を聞く。カップスは得意じゃないけどなんとかわかる範囲だった。流れから、中の一人の邸宅を訪ねたり。内装に刺激を受ける。
23:15頃 辞す。泊まる場所へ向かう。
24:00頃 到着。即、寝る。
8:20 起き上がる。9:00に別の友人と待ち合わせということになっているので弓岡氏とともに出発。途中で別れる。
9:10 待ち合わせの友人と関内で合流。
9:15 モスバーガー関内北口店。
10:00頃〜 山下公園近辺散策。喋る。
11:35 中華街。友人の知り合いが働いているという店で食べる。大学に入って3年半、親族と行かなかった食事の中でおそらく一番豪華な食事。12:00〜の中川善弘デキシーディックスを見ようかなと思ってはいたがとりあえずそれはつぶす。
13:00 バイトに向かう友人と別れる。開港記念会館へ。
13:30〜
デューク・ジョーダンソロ。
デューク・ジョーダン(p)。
平易な英語で噛み砕くように話してくれた。わかりやすい発音。ソロだからかどうかは知らないが短め、長くても5分程度の曲をたっぷり聴かせてくれた。他の公演はたいがい10分前後の曲をやっていたので新鮮。次に備えての座席確保、くらいの気持ちでいたがよかった。思い切ったブレイクなどに感心。ピアノソロだとポップス、くらいの受け止め方をしてもよさそうなものだがやっぱりどう聴いてもジャズ、であった。それを感じさせるのはやはりジャズ特有のスウィングなのだろう。あの程よいハネ方が心地よいリズムを生み出すのだな。そんなあたりまえのことを改めて認識させてくれた。前のおっちゃんたちが演奏中にもかかわらず喋るのにはいささか閉口であったがそれもまたよいのかな。
14:30 休憩。気合いを入れようと缶コーヒーを胃に流し込む。間違って冷たいのを買う。
15:00〜
開港記念会館、宮之上貴昭&スモーキン。
宮之上貴昭(g)、宇多慶記(p)、山口雄三(b)、井川晃(ds)。
待ってました。宮之上を見るためにこのイベントに来た、といっても過言ではないわたしにとってはここからが本番。宮之上は初見、聴くのもはじめてだが大好きなWes
Montgomeryのを最もよく体現していると評判のギタリストゆえ、否が応にも期待は高まるというもの。ホールのライブで客はみんな着席しているがボルテージが上がっているのがよくわかる。それにしてもやわらかい音。あの音は、やっぱり親指ピッキングから来ているのだろうか。いや、そうとしか思えないのだがほんとうに包み込むような音が出るのだな。MCも他の出演者に比べてちょっと多め、初心者も意識したかなと思うくらい丁寧なMC。曲もウェスや自分の曲の中からわかりやすい、とっつきやすいものを多く選んだような気がする。思えばウェスの曲を生で聴くのも初めてだがたいへんよかったね。レギュラーグループとして長らく組んでいる面々だけにブレイクやソロのつなぎも絶妙。そして、舞台をハケる時のバックが演奏している中でのメンバー紹介、書きながらあー、それってCDでもきいたことあったわなどと思っていたら、そうそう、“SOLITUDE”のラスト、「Blue
and Boogie」から「West Coast Blues」に移る流れであった。これを意識しているかどうかは知らんが、そんなことも今思い出した。
16:10 近くの郵便局で金をおろす。
16:30 関内駅前。ビッグバンドの演奏がちょうど終わったところ。惜しいっ。このまま南下。
16:45 伊勢佐木町界隈を歩いていたらVirgin MEGASTOREを見つけたので入る。しかも横浜優勝記念サービスとかで、スタンプ2倍。この魅力に抗いきれず、CDを1枚購入。サニーデイ・サービス「24時」。ついに買った。今回から、CD購入も一応書いて感想を書いたら直接リンクをはることにしてみる。和田アキ子「ダイナマイト・ア・ゴー・ゴー!!!」試聴。ゴスペラーズがプロデュースしている2曲のみだけど。1曲は村上てつや作曲、彼らしい作り。サウンドプロデュースや基本的な音作りは北山が中心かもしれないけど。もう1曲はグループでも曲は書かない安岡優作曲ということで、らしい作りなのかどうかはわからなかった。コーラスもこっちの方が控えめ。「G.T.O.オリジナルサウンドトラック」発見。ドラマは見なかったが、高野寛が何曲か作曲していると最近彼自身のホームページで知ったので興味津々だったが生憎彼が関わったのであろうVol.1はなかった。オリジナル・ラブの旧盤が安くなっていることを知る。ラブ!ラブ!&ラブ!が安ければ買ったかもしれないが、なんでこれだけ安くなってないわけ?
17:40 モスバーガー伊勢佐木オデヲン店。
18:00 最終目的地、FIRST到着。開場前だったのでちょっと外で待つ。そのうち入場。時間が経つにつれ徐々にドラムが運び込まれてきたりして、そりゃ期待もするさ。やはりエアジンのように椅子は30あるかどうかといったところ(内装は断然FIRSTの方が綺麗だったけど)。座ったところは2列目。人を一人挟んで目の前にミュージシャン、といった近さだ。
19:05〜
宮之上貴昭&スモーキン+三木俊雄。
宮之上貴昭(g)、三木俊雄(ts)、宇多慶記(p)、山口雄三(b)、井川晃(ds)。
この日2回目の宮之上。楽器を持って演奏すれば動くのも結構辛そうなステージ(境界はないが)で充実、白熱のセッション。こちらではMCもほとんどなく、宮之上のすさまじいばかりの指の動き、各人のソロに感嘆しながら存分に満喫。セットはおよそ1時間で終了。「ちょっと休憩してもう1セッションやりますのでよろしかったら…」そりゃ、聴くさ。あんたを聴きに来たんだから。
20:20〜
宮之上貴昭&スモーキン+三木俊雄。
宮之上貴昭(g)、三木俊雄(ts)、宇多慶記(p)、山口雄三(b)、井川晃(ds)。
宮之上、怒涛の3セッション目。座るところを事情によりちょっとだけ変えて臨む。やっぱりね、いいもんは何回聴いてもいいわけよ。もうそれしか言葉がありませんわな。終了後、別料金ながらもう1セッションやるとの報告。去年の実績からいって十分予想された事態、わたしも是非聴きたいところだったが次の日の1限が講義なんだよう。で、新宿発の夜行バスを取っていたため泣く泣くFIRSTを後にすることに。これが聴けなかったことが心残りといえば心残り。こうして横濱JAZZプロムナードは終了。
21:15〜 FIRSTを出る。桜木町を目指す。
21:45 東急東横線にて渋谷へ。
22:30 渋谷着。山手線で新宿へ。
22:40 新宿着。ちょっと時間があったのでオープンしたばかりらしいFlagsなる建物の中にあるタワーレコード新宿店に寄る。広すぎ。お手上げ。なんとか辿り着いた試聴コーナーで、梶原秀剛が曲を書いているはずのEAST RIVERを試聴。よい。これは、いけるんじゃないの。それだけでタワーを去る。いつかゆっくり来たい。
23:15頃 夜行バス、出発。こうして2日間が過ぎていった。
だいぶ余計な記述も多いがそんなふうな今回の横浜。いいところだね。見た中でのベストは開港記念会館での宮之上、意外な収穫はMMスライダースといったところか。来年も来たいね。で、宮之上を今度こそ最後まで見るのだ。ただ、横浜ってひとりでは結構歩きづらいところだね。そこここに二人連れ。カップルばかりじゃなく気の会う友人同士で回ってる人もかなりいる。ジャズクラブなんかは特に肩身が狭かった。誰か来年は一緒に行ってくれんかな。