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 ものづくりって、いいねぇ。


『夜が来る!』などのアリスソフトの作品をやってると、ほんと、そう思います。

ある作品がこの世に生まれ出ようという強い意志をもっている。
企画、シナリオ、原画、彩色、システム構築(ゲームデザイン、プログラム)、そして生み出された作品を世に送り出す営業……
それぞれの担い手である表現者たちが、それをこの世に生み出してやりたいと強く願望し、
その一つの作品、まだ形にならぬ目に見えぬそれに真剣に向き合い、
おのれのたましいをもってそれに息を吹き込む。
やがて、品格をもった一つの作品としてこの世に生まれ出でる……。
うむ。素晴らしい。

工芸であれ芸能であれ文学であれ絵画であれ建築であれ服飾であれ何であれ、
この、表現がなされてゆく過程、ものが生み出されてゆく過程は、
そしてそれをおこなう者の意思というのは、
とーーーっても尊い、どろどろに汚くって、でも綺麗なものであるなぁと思うのですが(わけわかんないけど)、
『夜が来る!』など、こういうコンピュータゲームってのは、
それを生み出すのに関わる職人たちの人数も(少数精鋭という場合もあるけれど)多く、
表現者である一人一人それぞれが別々に抱いている創作への意思と、各人の個性や表現が一つの作品に向かい集約するというのもなんだか凄い話だし、そうやって多くの表現者が寄ってたかった結果、きっちりと唯一の作品が成立・完成するんだから、そうやって出来上がった作品ってのはなんとも稀有な有難いものであるなあと感慨深げに思ってしまうのです。普段そんなこと考えないけど。

4月29日、「キャラフェスタ2001・春」というイベントにアリスソフト目当てで行ってきたのですが、そこでアリスソフト開発部長のTADA氏やプロデューサー・シナリオライターのとり氏などスタッフたちの姿を実際に目にし、ものをつくっている人は違うな、としみじみと実感したものです。
なんというか、覚悟が風格になって表れているように感じたのです。これはアリスソフトのスタッフだけでなく、まだ全然売れていないと思しき新興のソフトハウスの若いスタッフたちも同様でした。常に真剣勝負のただなかに身を置いている緊張感に由来するものか、その人のたたずまいというか雰囲気というか、そういうものが、そこらの人とは全く違うのでした。
『夜が来る!』から引用して「火者とは覚悟ある者の名だ」というならば、彼らは火者だ、なんて思えるくらい。
それほど、覚悟っぷりが風格となって表れていました。

で、そんな表現者たちが自らの魂でもって生み出し、磨き上げた作品をこうして享受できるって、ええのぅ、幸せじゃのぅ、なんてたまに思うかもしれないけど普段はまったくそんなこと考えつきもしないで無邪気にただ楽しめるってのが、ええのぅ、と思う次第なのです。


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