> ハイラガ行 〜 謎の奇病捜査編。






 公宮の任務により、強敵・サラマンドラの巣にある羽を取る事となったさばみそ面子。
 圧倒的な炎の闘志をまとい彼らの前に立ちはだかったサラマンドラは、かつて数多の衛士たちを躯に変えてきたという。

 普通なら断るような依頼ではある。
 だがその依頼には、ある願いが込められていた。


 「サラマンドラの羽。それが、父の病気をなおす為の材料になるのです。お願いです、誰か、誰か…………」


 公女の切なる願い。
 そう、この依頼は、病に倒れた公主の病気を治すためのものだという。

 迷宮の奥に挑む冒険者としては、駆け出しを抜けようとしていた。
 だがそれでも実力はまだまだ未熟なさばみそである。

 うかつにサラマンドラと戦えば、死すらあり得る。
 それでも彼らは、向かわずにはいられなかった。

 父の無事を祈る、公女に自分たちも何かしてあげたい。
 何か……。


 「……あの方たちは、無事に戻られるのでしょうか」


 任務を出した後も、公女の顔は暗く沈んでいた。
 サラマンドラが危険な生き物である事をよく知っていたからだ。


 「信じましょう、姫さま。大丈夫です、きっとあの者達は、うまくやってのけます」
 「ですが……」
 「笑ってください、民もそれを望んでおります。それに……」



 笑っていれば、その日はきっといい日になりますよ。
 大臣のその言葉を示すかのように、門の下では笑顔の冒険者たちがこちらに手をふる姿が見える。

 その手には、七色の光をはなつ羽が握られていた……。




> 見習い助手、る!




GM : 「では、そろそろ今日のセッションをはじめるか。前回はサラマンドラの羽を手に入れる所までだから……8階からになるのだが」


ローズ : (キョロキョロ)


アクセル : 「どうした、ローズ。そわそわしているけど」


シュンスケ : 「あっ、おトイレかい。もう、始まる前にいっておきなさい、って言ってるだろ? ほら……」


ローズ : 「なぁっ! 何いってますのおじさま、ローズ、おトイレじゃないですの! れ、れ、レディーにおトイレの話をするのは、失礼ですわよ、おじさま!」


ミクト : 「そうだそうだー! 不躾だぞおじさまー!」


シュンスケ : 「あっ! ご、ご、ごめん……でも、どうしたの? 何だかすごくソワソワしているけど……」


ローズ : 「えっ……あの、今日はシロガネ、いないなぁ、と思って見てましたの! GMさま、今日はしろがね、居ないんですの……?」


GM : 「うム……今日、データを見る限りだといないようだな……」


アズマ : 「PCとして登録されていたようですが、今日は現れてないんですかね?」


GM : 「あぁ……どうやらシロガネはこちらの操作がきかないPC扱いだが、存在は非道く不安定らしい……」


ローズ : 「シロガネ、出てきませんの? う〜、シロガネをモフモフしたかったのに、とっても残念ですの〜……」


アクセル : 「仕方ないだろ、諦めろよ……中身が誰だかわからないけど、今日は来てないみたいだからな」


GM : 「そうだな……それに、プレイしているうちにまた出てくるかもしれないぞ? 何せシロガネは不確定PCだからな……突然現れる事は、充分考えられる」


ローズ : 「本当ですの! じゃぁ頑張って迷宮を踏破しますの!」


アズマ : 「お、気合いが入りましたねぇ。その意気ですぜ、嬢ちゃん!」


ミクト : 「いいぞローズちゃん! でももし、モフモフしたかったらほら! ミクトのお兄さんも髪の毛がとってもモフモフしているから、好きなだけモフモフしたまえ! そしてあわよくばラッキースケベ! ラッキースケベ!」




アクセル : (ターン、タターン!) ※無言で発砲



ミクト : 「はぐれいぶんっ!」



アクセル : 「……変な大人に近づくなよ、ローズ」


ローズ : 「はいですのー!」


アズマ : 「……完全に変態扱いされてますねぇ、旦那」


ミクト : 「しくしくしく……でも負けない! ミクト、つおい子だもん!」


アクセル : 「駄目な方向にどんどん強くなっていくんじゃない! このバカスメ!」


ミクト : 「しくしくしく……」


シュンスケ : (なでなで)




アズマ : 「じゃ、お決まりのミクトの旦那滅多打ちのターンも終了しましたし……そろそろ始めましょうか、今日のセッション」


ミクト: 「ちょ! お約束みたいに言うんじゃねーよ! まるで俺がアクセルに撃たれるのを喜んでるみたいじゃねーかよっ!」


アズマ : 「…………違いましたか?」


ミクト : 「そりゃ、まぁ……きもちいいかどうかって聞かれたら、きもちいいけどさぁ! アクセルたんの冷たい視線で! 銃を、タターンとうたれる感触! あの感触……ふんふんはぁはぁ!」


アクセル : 「うわぁ……」


シュンスケ : 「あんまり見ちゃ駄目ですよ、アクセル」(おめめないない)


ローズ : 「おじさまー、アクセルー! そろそろ、迷宮に行きますのよ〜! もう、まちきれませんわ!」


アズマ : 「……はいはい、それじゃそろそろ行きますかねぇ、皆さん」


GM : 「……と、迷宮に向かおうとしたキミたちを誰かが呼び止める。 ???『お、おーい! まって、まってくださ〜い。さばみそ冒険者の皆さぁ〜ん!』『こ、これ。待ちなさいっ。キミ……』


アクセル : 「……? 誰ですか?」


GM : 「振り返ればそこには、息を弾ませた二人の男女が立っている。そのうち、一人は見覚えのある顔だ。メガネで白手袋の好青年……公国薬泉院の治療士だ」



ミクト : 「コーコク……ヤクセ……誰?」


アズマ : 「ほら、ハイラガの……石化を治してくれたり、死んだら生き返らせてくれたりする施設があるでしょう? そこの、治療士さんでさぁ」


ミクト : 「……あぁ、いたなそんな奴。スカしたイケメガネだったから記憶からキングクリムゾンしてたんだが」


ローズ : 「ミクトおにいさま、イケメンに厳しいですわ〜」


シュンスケ : 「薬泉院の治療士さんが、何の用でしょう……それに、そちらの女性は?」


GM : 「治療士の青年は、息を整えながらキミたちを見ている。だが、彼の呼吸が整うより先に、隣にいた女性……金色の髪を結い上げた彼女が声をあげた。 ???:『さばみそギルドの皆さん! 私を、迷宮につれていってくださいっ!』」


シュンスケ : 「えっ! えっ? えぇぇっ!?」


アクセル : 「……迷宮は、キミみたいな素人が出入りできるような所じゃないよ。それなのに、どういうつもりだい?」


ミクト : 「というか、この可愛いおねーちゃんは、一体何者だ? スカしたイケめがねの彼女か?」


GM : 薬泉院の治療士:『か、かのっ……ち、違いますよ! 彼女は、薬泉院で治療士の助手として働いてくれているものです……はい、挨拶を』 助手:『よろしくおねがいしまーす!』(ペコ)


ミクト : 「うんうん、礼儀ただしい可愛いおねーちゃんだね。じゃ、お兄さんと行こうか」(すっ)


アクセル : 「どこにだ、どーこーに!」(ガツ、ガツ、ガツ!)←銃床で頭を殴っている。


ミクト : 「いたい! いたい!」


シュンスケ : 「えぇっと……迷宮につれていってほしい、との事ですが。一体どうしてですか? 何か……」


GM : 「それは、メガネの男……薬泉院の治療士が説明するな。 治療士:『はい。実は、この所迷宮の木々が妙な枯れ方をしている、という報告を衛士より受けているのです……』」


ミクト : 「何だ? 森の木が枯れるのって、普通の事じゃねーのか?」


GM(治療士) : 『老木でしたらが枯れるというのは自然の摂理でしょう。ですが、迷宮にあるまだ若い木々も枯れるというのは何か、木特有の病である事が考えられます……』


アズマ : 「……そういえば、迷宮では一面が枯れ木というフロアが何カ所かありましたねぇ」


GM(治療士) : 『はい、そのような報告を受けて、その木々は病気なのでは……と、思い。是非その病気と思しき木。そのサンプルを手に入れられたらと思ったのですが、私は治療士としての仕事が忙しくなかなか迷宮まで向かう事が出来ないのです』


シュンスケ : 「そこで、助手であるその方を迷宮に……」


GM : 「治療士:『はい……いいえ、私は止めたのですが……』 助手:『駄目です! ぼさぼさしていたら、感染が森全体に広がって世界樹の森が枯れてしまいます! 一刻も早く手をうたなければいけませんっ!』 治療士:『……彼女が、サンプルをとってくると聞かなくて』(汗)


ミクト : 「それで、俺たちを護衛に……って事か?」


GM(治療士) : 『はい、お願い出来ないでしょうか……』


アクセル : 「どうします、アニキ?」


シュンスケ : 「えっ? えっ? ボク? ぼ、ボクは。えーっと……」(オロオロ)


ローズ : 「ローズは、助けてあげたいですわ! 森の事も心配だし、私、助手さんの、お手伝いをしてさし上げたいですの!」


アズマ : 「アタシも、構いませんぜ。何、どうせ迷宮行くんだ、道連れは多い方がいいですからねぇ」


シュンスケ : 「あっ、あっ、私も構いませんよ。困っているんですから、助け合わないといけませんものね!」


アクセル : 「そうですね……断る理由もないですし、いいですよ。助手さんのお手伝いをしましょう」


ミクト : 「だな! ……って、ちょ、ま! アクセルくん、俺の意見! 俺の意見きいてないデスヨー!」


アクセル : 「オマエに仲間としての発言権を与える必要性を感じてないからな」


ミクト : 「ひどっ! この人ひどい! ひどいです、GM!」


アクセル : 「それに、オマエの事だから 女性の依頼は無下にできない! とかいって受けるつもりだろ?」



ミクト : 「うむ、ズバリその通りだがなッ!」



アクセル : 「やっぱり……」


アズマ : 「……アクセル坊って、ミクトの旦那が嫌いな割にはミクトの旦那の事、よーく心得てまさぁねぇ」


ローズ : 「アクセル、本当はミクトお兄さまの事好きなんですわ!」


ミクト : 「ほー、そうかそうか……アクセル、恥ずかしがらずボクの胸に飛び込んでおいでー!」(むばっ!)



アクセル : 「ぜっ、絶対に嫌だっ! バーカ!」



GM(助手) : 『え、えーっと……一緒に、いってもいいんですかっ?』


シュンスケ : 「あっ、はい。勿論です! ……よろししくお願いしますね、助手さん」


GM(助手) : 『はい! 不束者ですが、よろしくおねがいしまーす!』(ペコリ)




> サンプルを還せよ!




GM : 「と、いうワケでキミたちは薬泉院の治療士から依頼を受け、彼の助手をひきつれて迷宮へと赴いたワケだ」


ローズ : 「磁軸の柱を使って、ぎゅーん! ですわ。はい、助手のおねーさま! ここが、迷宮ですわよ〜!」


GM(助手) : 『うぷっ……』(ふらふら)


ローズ : 「? どうしましたの、助手のおねーさま?」


GM(助手) : 『あ、はい。あのっ、磁軸の柱って、ふにゃーっとして結構酔うんですねっ……私、気持ち悪くなっちゃって……うぷっ』


ローズ : 「大丈夫ですの、おねーさま?」(お背中さすさす)


GM(助手) : 『だだ、だいじょーぶです! こんな事で、皆さんに迷惑かけられません。それじゃ、はりきっていきますよー! えい、えい、おー!』


ローズ : 「おー! ですわ〜」


GM(助手) : 『何の、気合いでは負けませんよ〜。おー! おーおー、おー!』(ぶんぶん)



アズマ : 「………………」


GM : 「……ん、どうしたアズマ? 俺の顔に、何かついてるか?」


アズマ : 「いや、何というか……GMさんの演じる女の子、妙に可愛いと思いましてねぇ」(笑)


ミクト : 「ホントだな、とんだ萌えキャラだ! ……GM、女の子のプレイヤーとして参加したらどうだ?」(笑)


GM : 「勘弁してくれ……」


アズマ : 「そうですねぇ……可愛いと、思いますよ? GM?」


GM : 「やめてくれ、俺は男だ!」


アズマ : 「そりゃ、わかってますよ。それにしても……」


ローズ : 「助手さーん、こっち、こっちですわ〜!」


GM(助手) : 『あ、はーい。今いきまぁす。まってくださぁい』(ポテポテ)


アズマ : 「……演技がちょっと、気合い入りすぎてるんですよねぇ」(笑)


ミクト : 「女の子が少ないから、男性読者の為に努力しているのかもな」(笑)


アズマ : 「涙ぐましい努力でさぁね」(笑)


GM : 「うるさい! 早く来い! 置いていくぞ!」


ミクト : 「はいはい……ところで、その助手さんは戦闘では何かしてくれるのか?」


GM : 「ん? 何か、というと?」


ミクト : 「だから、一応治療士の助手なんだろ? 戦闘中回復してくれたり、補助してくれたり……そういうのはねーの?」




GM : 「ないな!」




ミクト : 「ないのかよ! てか、無いのに何でそんな堂々としてんだよ!」


アズマ : 「潔いお答えですねぇ」(笑)


ミクト : 「何だよー、曲がりなりにも治療士の助手なら少しくらい怪我を治してくれたっていいだろー!」(ぶーぶー)


GM(助手) : 『す、すいません。サンプルを採取するための道具で手一杯で、治療用の道具はいま、何ももってきてないんです〜。あっ、でも、もし皆さんのなかで誰かが倒れたら、私も治療士のはしくれですから! もし戦闘で倒れた方がいたら、サンプルを途中で投げ出してでもお助け致しますよ! ……助けられない場合がほとんどですけど』


アズマ : 「……それって、もし道中でアタシたちの誰かが倒れたら任務失敗、最初からやりなおし。って意味ですかい?」


GM : 「そうともいうな」(笑)


アズマ : 「そうとしか言わないでしょうに! はぁ……こりゃ、戦闘不能にならないよう気を付けて進むとしましょう」


GM(助手) : 『はい、よろしくおねがいします!』(ぺこ)


アクセル : 「はぁ……まぁいいですよ。とにかく、助手さんははぐれないようにしてください。戦闘に参加しない、って事はわざわざ助手さんを守らなくてもいいって事ですよね?」


GM : 「あぁ、助手はキミたちから距離を置いているから戦闘には巻き込まれない。キミたちはくれぐれも倒れないよう気を付けてくれたまえ」


アクセル : 「……足手まといにはならないようですね、安心しました。では、いきましょう。ついてきてください、助手さん」


GM(助手) : 『はい! ……うわー、改めて来ると、この迷宮ってとーっても綺麗なんですねー。私、普段は外で見るだけで……採取のお手伝いとかもするんですけど、そういうのもほとんど一階層の安全な所だけだったから、こんな真っ赤な森、あるんだー。すごーい、綺麗ですねー!』


ローズ : 「うふふ、そうですわね! でも、助手さま! 向こうは、もーっと綺麗なんですのよ!」


GM(助手) : 『本当ですか! 楽しみです〜』


ローズ : 「ローズ、嘘つきじゃありません事よ……それじゃ、向こうのもっと綺麗な所まで、競争ですわ。よーい、どんですの!」


GM(助手) : 『あ、ローズさん! ずるいです、まってくださーい!』(ポテポテ)


シュンスケ : 「何だろう、GMさんは男の人で、今まで近寄りがたい印象だったんだけど……急にローズの友達っぽくなりましたね」(笑)


アズマ : 「本当に、微笑ましい光景でさぁね……ですが!」(ジャキッ)


GM : 「おおっと、ここにガラガラノヅチが現れた! が、アズマがすかさず返す刀でなぎ倒したか……」


アズマ : 「他愛もねぇ……っと、ローズちゃん。助手のお嬢ちゃん。迷宮に目を奪われる気持ちは分かりますが、あんまりつっこんだら危ないですぜ?」


ローズ : 「あっ……ご、ごめんなさいですの。アズマおにーさま……」


GM(助手) : 『す、すいません。アズマさん……それと、助けてくださいまして、ありがとうございます! お強いんですねっ、ブシドーという方は!』


アズマ : 「やっ、やめてくだせぇ、GMさん! GMさんが思った以上に演技上手いのはわかりましたんで……それ以上可愛い女の子を演じられると、惚れかねませんぜ!」(笑)


GM : 「……む、そうか。それなら、少し控えるか。俺もアズマに惚れられても困るからな」


ミクト : 「そのスジの女性しか喜ばねーもんな、その展開」(笑)


ローズ : 「そのスジ……どんなスジですの?」


シュンスケ : 「きっと、ローズは知らなくてもいいスジだよ」


ミクト : 「とにかく、この辺りは知ってる場所だ……助手のねーちゃんが欲しいサンプルはもっと奥にあるんだろう?」


GM(助手) : 『はい! ……話では、9階にあるとの事でした!』


アクセル: 「ちょうど、これから行く階ですね……それじゃぁ、探索ついでにそのサンプル探しをしましょう。階段はこっちですよね……」


GM : 「そうだな、キミたちは助手をつれ、ひとまず順当に9階へと到達する……」


シュンスケ : 「新しい敵や、さらに強いF.O.Eが居るかもしれないね……みんな、気を付けて! 助手さんは、ボクの後ろにいて下さい。ボクの後ろなら敵に狙われないですし、もし狙われても大丈夫。絶対に、ボクが守りますから」


GM(助手) : 『シュンスケ……さん、ありがとうございます……』


アクセル : 「よし、敵を軽快しながらとにかく進もう。9階は……うん、随分細い路地だな……先にはなにがあるんだろう」


GM : 「……細い路地を抜けた先も、細い路地だ。そしてその先に、F.O.Eが見える」


ミクト : 「地図からも見えているf.o.eか〜……これまで出てきた、カボチャ(三頭飛南瓜)や唐突に現れるアクマ(森林の破王)とは違うっぽいな。ゴリラ(紅樹の殺戮者)か……それとも、新しいF.O.Eか。随分上の階層まできたから、新しいf.o.eの可能性のが高いか」


アズマ : 「ミクトの旦那、分析は凄い説得力ありますが、一つもf.o.eの名前覚えてないんですねぇ……」


ミクト : 「破王やら殺戮者やらご大層な名前、いちいち覚えていられるかってんだ! さて、このF.O.Eの動きはどうだ?」


アクセル : 「……遠目だからハッキリとはいえないけど、こっちが一歩動いてもすぐに動かない。二歩、動いてやっと一歩動くな……鈍足のF.O.Eだ。初めて見るタイプの動き方だな」


ミクト : 「だとすると、新種のF.O.Eで決まりだな! どうする、ゴリラやアクマは何とか倒せる程度にゃなってきてるが……」


アクセル : 「今は助手さんもいるし、新しい階のF.O.Eは思わぬ強さだったりするからな……鈍足な奴だったら追いつかれたり、って事もないだろ。今回はルートを読んで避けよう」


ミクト : 「ちぇ、つまんねーの。RPGの醍醐味! 強い相手と戦うチャンスだってのになー……そして助手ちゃんにいい所を! 助手ちゃん俺に惚れる! フラグ! のチャンスがー」


アズマ : 「GMさんは男ですぜ、ミクトの旦那」(笑)


ミクト : 「GMが男でも、助手ちゃんは女の子だから問題ない! むしろ愛に時間なんて関係ない! いっその事今から付き合ってください!」


GM(助手) : 『えええええっ! ごご、ごめんなさい! 好きな人がいるんです!』(ぺこり)


ミクト : 「がびーん! 知りたくなかった事実!」


アクセル : 「いいじゃないか、早いうちにオマエの気持ち悪い視線から外れる事が出来たんだ……しかし、このF.O.Eはトロくて追いつかれる事はなさそうだけど……通路が細いから、思うように進めないな」


シュンスケ : 「まぁまぁ、根気強くいこうよ」


GM : 「等といってるうちに、敵が現れたぞ……新しい奴だ。名前は、アクタイオン巨大な、羊のような……ヤギのような外見の生物だな」


シュンスケ : 「羊? ヤギ……群れじゃないみたいですが、仲間でも呼ぶのでしょうか?」


アズマ : 「何しでかすかわかりませんが、切っちまえばいいんですよ……覚悟!」


GM : 「ダメージは入る、が耐えた……アクタイオンの攻撃は、恐怖のいななき! テラー効果だ。くらったのは……シュンスケだな」


ローズ : 「きゃー、おじさまが急に怯えだしましたわー」


シュンスケ : 「何だろう怖い! どうしようローズどうしよう!」(びくびく、おろおろ)


アクセル : 「落ち着けって……いや、倒しちゃえばバステ効果はきれる! 一気に畳みかけます、撃つ!」


GM : 「それで倒れたな……テラー効果は一匹だと、攻撃畳み込まれて駄目になるんだよな」


ミクト : 「攻撃キャンセル率はまー、そこそこあるみたいだけど、単体でつかう技じゃねーな。他に仲間がいるか、俺みたいにテラーで操り出来れば別だろーけど」


GM : 「そうだな、次は仲間をひきつれてくる」(笑)


アズマ : 「……アクタイオンは、単体だと一気に畳みかければ問題ないみたいですが、複数で現れたら厄介。と覚えておきましょうか?」


アクセル : 「ですね。いざとなったら、俺がドラッグバレットで治しますけど」


GM : 「状態異常にも迅速に対応できるパーティか……」


ローズ : 「あっ、アクセル。F.O.Eさんすすみました事よ。これで私たちも先に進めますわ〜」


アクセル : 「ふぅ……これで、ひとまずこの長い路地は抜けたみたいですね。先はどうなってますか?」


GM : 「さっきまでの路地より幾分か広い場所に出てだな……それから、二カ所。フロアに向けて勧める道が現れる、手前と、さらに奥にだ」


アクセル : 「分岐ですか……どっちからいきます?」


ミクト : 「こういう時は、大概奥が正解だぜ! 奥だ!」


アクセル : 「……地道に地図を埋めていこうとか、思わないの? オマエ?」


ミクト : 「思わない! ……事はないけど、とりあえず行ける所までいってみるチャレンジ精神も大事だろ?」


アズマ : 「あまり大事にしてほしくない、無謀な精神ですが……ま、よござんしょ。とりあえず、奥からずずずいっと埋めていきましょうや」


アクセル : 「……わかりました、じゃぁ、奥から」


GM : 「奥に進むんだな。すると、少しして階段が見えてくる……が、上の階段ではない。下に向かう階段だ」


シュンスケ : 「下ですか?」


ローズ : 「また8階に戻ってしまいますわ〜」


アクセル : 「うん……逆戻りか? でも、8階もまだ随分埋まってないフロアがあるし、別ルートがあるかもしれない。行くだけいってみよう、敵もここより弱いはずだし」


ミクト : 「そうだな、ちょっといってみようぜ!


GM : 「8階に一度戻る、と……最初はまた細い小道で……F.O.Eが出てはいるが」


アクセル : 「やりすごして奥にいきましょう、どうです?」


GM : 「順当に奥まですすむと、上への階段がある」


アクセル : 「やっぱり、一度元の階に戻ってからすすめるみたいですね……階段で、いってみましょう。再度、9階に戻ってきましたけど」


シュンスケ : 「あ、助手さんのいってた、サンプルがとれそうな所はありましたか?」


GM : 「いいや、ないな……9階は小道になっていて、その先をキミたちが歩いていると、唐突にF.O.Eがヌプッと出てくる」


シュンスケ : 「わぁっ! ビックリしたっ!」(びくーん!)


ミクト : 「俺はそれより、GMがそんなエロ漫画みたいなオノマトペをつかった方がビックリしたが。ヌプってなんだよヌプッて!?」


ローズ : 「えろまんがですのー! ぬぷぬぷですの、ぬぷぬぷですのー!」


アズマ : 「……ミクトの旦那、お子さまの手前ですんで、あんまりそういうのは。ね?」(苦笑)


ミクト : 「……うん、ミクト兄さんちょっと反省している」


アクセル : 「でもこの出現の仕方は、間違いなく森林の破王ですよ……どうします?」


シュンスケ : 「……まだこっちは消耗してないから、いまのうちに叩いちゃおう! 勝てない相手じゃないし!」


アズマ : 「……お、随分度胸のある発言するようになりやしたね? 嫌いじゃないですぜ、そういうの……では、お相手致しましょうや!」


GM : (……森林の破王は攻撃力こそ低くないけど、もう結構戦い慣れしちゃった所があるんだよな……足止めにはなるが)


アズマ : 「とどめだ、月影……よござんすか?」


GM : (……やっぱり、トントン倒されちゃうか)「……それで、倒れた」


ローズ : 「やりましたの! 流石、アズマ様ですわ!」


アズマ : 「いやいや、嬢ちゃんの強化のおかげですぜ」


シュンスケ : 「……これで、先に進めますね」


アクセル : 「はい。思ったより深い道のりですけど……」


ミクト : 「おい、あそこに誰かいるぞ。衛士かな……」


GM : 「あぁ、見回りか何かか、衛士が一人背伸びをしている。 (衛士)『あ、冒険者かー? ……こんな所までよくきたな。やっぱアレ? 財宝が欲しい系?』


アズマ : 「何か、随分フランクな衛士ですねぇ」(笑)


GM(衛士) : 『んー、実際ちょっとヒマなんだよ。このアタリは名うての冒険者、【エスバット】がちょくちょく来るし、安全も確保してるから見回りでもやる事なくて……あふぅ』


アクセル : 「……ダラけた奴ですね」


シュンスケ : 「あ、あっ。えーと、この辺に、木が枯れた所はありませんでしたか、衛士さん!」


GM(衛士) : 『……木? うーん、知らないなー』


アクセル : 「あ、だったら上へ……10階への階段は?」


GM(衛士) : 『それなら、もうちょっすすめばあるよ。いってらっしゃ〜い』


アクセル : 「……10階はあと少しみたいですね。どうします?」


アズマ : 「う〜ん……迷宮探索は続けたいけど、一応アタシらは助手さんに雇われている身ですからねぇ……ここは一度、戻ってサンプル探しをしてみましょうや」


シュンスケ : 「そうですね、とりあえず先に進む道だけわかったんだから、良しとしましょう」


アクセル : 「だったら、一端戻りましょう。途中、分かれ道があったからきっとそっちの方ですよ」


GM(助手) : 『お手間をとらせてすいません……』(ぺこり)


アズマ : 「あはは、お嬢ちゃんが気にする必要はないでさぁ。じゃ、行きましょうか、助手のお嬢ちゃん」


GM(助手) : 『……はい!』



 来た道を戻っております。
 しばらくお待ち下さい。



シュンスケ : 「……えーと、ここがさっきの分かれ道、かな?」


ローズ : 「いったり、きたりつかれましたのー」


アクセル : 「こら、あんまり文句いうなよローズ……とりあえず、奥に進んでみますか、アニキ?」


シュンスケ : 「そうだね、奥に……っ!?」(不意に足をとめる)


GM(助手) : 『ふわわわわわ! ちょ、ど、どうしたんですかシュンスケ……さん。急に立ち止まるなんて! 止まるなら、止まるって一声かけてくれれば……』


シュンスケ : 「あっ、ごめん、助手さん……今、その森の奥で何か……動く気配がして」


ミクト : 「動く気配? おいおい、本当かよ。何も感じなかったけどなー」


アズマ : 「……いや、何かいるようですぜ。こっちの気配を伺ってるような。そんな息遣いが、あの木の方から聞こえてきまさぁ」


GM(助手) : 『えっ? えっ? 何かいるんですか?』


ローズ : 「……でも、遠くにいっちゃってるみたいですわ。私たちに気付かなかったみたいですわね」


シュンスケ : 「もしくは、ボクたちに興味をもたない腹具合だったのか……どっちにしても、もうここは安全みたいですね。これなら入ってもいいと思いますよ、助手さん」



GM(助手) : 『あ、ここ! たしかに枯れてる……でも、何だろうこの粘液みたいなの。それに、この傷……ふんふん、ひょっとして。うーん、でも……駄目だ、私だけで考えてもわからないや。先生といっしょに考えようっと……とにかく、サンプルを回収。回収っと!』




ミクト : 「……オマエに言われるより先に、もう調べはじめちゃってるぜ。あの子」(笑)


シュンスケ : 「アグレッシブな方ですね」(笑)


アクセル : 「でも、あの人の調べている所……アズマさんたちが言ってた何かの気配、ってのがあった場所じゃないですか」


シュンスケ : 「……そうみたいだね。それに、付着している粘液も……ひょっとしたら、今感じたあの気配と、この木が枯れる奇病と何か関係があるのかもね」


GM(助手) : 『サンプル採取、終了しましたー! 上手に、とれましたっ!』


シュンスケ : 「お疲れさまです。それじゃぁ、アリアドネの糸をつかって帰りましょうか、長居は無用ですし……」


GM(助手) : 『はい! ……あっ。あれ? あれ?』


シュンスケ : 「……どうしましたか、助手さん?」


GM(助手) : 『あっ、すすす、すいません! 私、アリアドネの糸を……その、忘れてきちゃったみたいで……』


シュンスケ : 「えっ? ……アリアドネの糸って、ボクたちが持っているのを彼女にもつかえないの?」


アズマ : 「……彼女の口振りだと、使えないみたいでさぁね。どうやら、この糸5人用みたいですぜ」(笑)


アクセル : 「だったら、しろげ頭を置いていけばいいだけの話じゃないか?」


ミクト : 「さらりと非道い事をいうな! ……でも、流石に依頼人をおいて帰るワケにゃいかねーからな。仕方ない、樹海磁軸まで歩いて帰るか」


アズマ : 「紳士ですねぇ、ミクトの旦那は」


ミクト : 「可愛いおねーちゃんのNPCだったからな! これが、あの薬泉院のイケメガネの方だったら、遠慮なく置いていってたぜ!」


アズマ : 「そうですか……やっぱミクトの旦那は紳士ですねぇ、変態の方の」(笑)


ミクト : 「変態は紳士の嗜み!」


GM(助手) : 『す、す、すいません……皆さん、何だか私忘れっぽくて……』(あせあせ)


シュンスケ : 「……いいんですよ、まだ余力もありますし、ここからならそう遠い距離じゃないですから」


アクセル : 「そうです、もう驚異になる敵もいないですし……地図を見ながら、8階に、7階にって少しずつ戻れば……F.O.Eもあらかた倒していますし」


アズマ : 「……打たれ弱いアタシは、イノシシは苦手ですけどね」


アクセル : 「それでも、倒れないように気を付ければ大丈夫ですよ。ほら、もう6階までおりてきた! これであと、地図をみて、迷わないよう気を付けて進めば……」


シュンスケ : 「!? あ、アクセル、あぶなーい!」


アクセル : 「へっ?」


GM : 「どしゃーん……出会い頭のF.O.E事故だ。敵はカボチャ。忘れたのか? この階にいるF.O.Eは、MAP上からは見えない奴だぞ?」


アクセル : 「う、嘘だろっ!? し、しまっ……」


アズマ : 「……つべこべ言っても仕方ねぇです、気合いいれてやりましょう! 皆、倒れないように……!」



 と、最後に思わぬF.O.E事故があったものの。



アクセル : 「サンダーショット! ……どうだ?」


GM : 「それで、倒れたな」


アクセル : 「……よかった。誰も倒れてないですね?」


ミクト : 「おー、一応な」


シュンスケ : 「そいつ、雷と氷意外全然通らないから、実質アクセルとアズマさんしか戦えないんですよね」


アズマ : 「アタシも、最近覚えた雷属性の技が早速役にたってよかったって奴でさぁ」


アクセル : 「……すいません、皆さん」


ミクト : 「おー、そうだそうだ、あやまれあやまれー!」


アクセル : (むすーっとした顔で)「ゴメンナサイ」(棒読み)


ミクト : 「何で棒読みなんだよ、全く……でも、ホント気を付けろよ? オマエ真面目だから地図を一生懸命つくるのはいーけどよ、これで怪我でもしたら困るからな?」(ナデナデ)


アクセル : 「なぁっ! き、気易く触るんじゃなっ……」


ミクト : 「はいはい、たまには素直になる! ほら」(なでなで)


アクセル : 「……ばぁーか」


シュンスケ : 「本当に、今度は気を付けてくださいよ。アクセル」


アクセル : 「わ、わかってますよアニキ……えーとでも、後少しで樹海磁軸ですね……あそこまでいけば……」


ローズ : 「あっ、見えてきました事よ。樹海磁軸ですわ! ……これなら、助手のおねーさまでも街へ戻れますわね?」


GM(助手) : 『あ、はい! ありがとうございます、皆さん。これで、無事にサンプルを手に入れる事が出来ました! ……これから、森が枯れる原因をつきとめたいと思います。本当に、本当にありがとうございました!』


シュンスケ : 「いえ、お手伝いが出来たのならよかったです……原因わかるといいですね」


GM(助手) : 『はい! この樹海は、世界樹の迷宮は国にとっても、私にとっても大切なものだから……絶対に、原因を究明してみせます!』


アズマ : 「頼りにしてますぜ、助手のお嬢ちゃん」


ミクト : 「何か困った事があったら、またさばみそギルドに依頼してくれよな! おねーちゃんの依頼なら、何時でも歓迎だぜ!」


GM(助手) : 『はい……皆さん、本当にありがとうございます……また、何時かお会いしましょうね!』


シュンスケ : 「はい、いつか……また!」




 かくして、無事に薬泉院の依頼を終えたさばみそギルドの面々たち。

 思わぬハプニングに振り回されながらも、何とか依頼は達成した。

 しかし、樹海を蝕む原因不明の奇病とは……。

 それに、あの時あった魔物の気配は一体……。

 いくつか気になる謎を胸に秘めながら、さばみそギルドの面々はひとまず冒険を続ける事にした。


 奥へ、奥へ。

 いずれ全ての真相が暴かれる事を信じて……。






劇 : 月岡陽介の日常。





 幕間劇を始めよう。

 それは、現実世界の物語。


 愛するものを失っても、残された宝を守ろうとする。

 そんな、一人の男の物語。


 ……君は、彼の日常に、触れても、触れなくても良い。


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 セッションの数日前。

 都内 某所――AM7:00。





月岡沙織(ローズPL) : 「おじさまー、おじさまー、朝ですわよー朝ですわよー。朝ご飯たべて、お仕事ですのよー!」(ゆさゆさ)


月岡陽介(シュンスケPL) : 「う、うーん……あと、10分。ううん、5分だけ……」


沙織 : 「駄目ですわ! 遅刻してしまいますの……今日は朝からの授業がはいってますことよ! 起きてくださいませ!」(ゆっさゆっさゆっさ!)


月岡 : 「わわわっ、さ、さ、沙織! そんなに揺らさないで……ぎゃぁ! の、乗っからないで!」


沙織 : 「おきてくださいませー! おきてくださいませー!」(どすどす)


月岡 : 「わ、わ、わかった! 起きる、起きるよ……ふぁぁ……」


月岡晃(アクセルPL) : 「おはようございます、陽介さん」


月岡 : 「あっ、おはようひーくん、もう起きてたんだ、偉いね……」(なでなで)


晃 : 「ひっ、ひーくんとか! や、やめてください。もう、子供じゃないんですからっ……」


月岡 : 「あ、ごめんごめん……そうだね、ひーくんは、お兄さんだもんね」


晃 : 「またっ……もう、別にいいですけど。それより、陽介さん、俺、陽介さんに聞きたい事があって……いいですか?」


月岡 : 「うん、いいよ。何? またわからない問題でもあった?」


晃 : 「あ、はい。コレなんですけど……」


月岡 : 「……どれどれ。うん……あぁ、無理もないな。この問題は、こう……これを理解してないと難しいから……」


晃 : 「えっ? あぁ、そうだったんですね。でも、陽介さん、この場合……は、……のはずなんで……ですよね?」


月岡 : 「あはは、ひーくんは着眼点がいいな……うちの生徒にもそういう子、あんまりいないよ。実は……は、こうだから……で、こうなるワケでね……」


晃 : 「あ、そうか……なるほど、じゃぁ……」


沙織 : 「はーい、おじさまも。お兄さまも。そこまでですのー、朝ご飯できましたの! どーぞ」


月岡 : 「あ、ありがとう。さおちゃん」


沙織 : 「はいですの! 今日は、たまごやきと、コンソメのスープですの! あと、お野菜を刻んでサラダにしましたわ〜」


晃 : 「いつもと同じご飯じゃないか」


沙織 : 「違いますの! 今日はコンソメスープですの。昨日はおみそ汁で、一昨日はかき玉汁でしたわ〜」


晃 : 「スープしか違わないのな」


沙織 : 「スープが違いますの!」


月岡 : 「まぁまぁ……ありがとうね、さおちゃん。いつも沙織が頑張ってくれるから、美味しい朝ご飯が食べられるよ」


沙織 : 「はいですの! えへへ、誉められましたわ! ……やっぱり、陽介おじさまは優しいですの。私、朝ご飯つくって誉めてもらえたの、陽介おじさまが初めてですわ……」


月岡 : 「……さおちゃん」(ぎゅっ)


沙織 : 「あ……」


月岡 : 「……大丈夫。ボクは……キミに。キミたちに、前の父親みたいな非道い事はしないから……だから、あんまり無理はしなくていいんだよ?」


沙織 : 「はい……おじさま……でも、私無理はしていませんわ! 私、おじさまが喜んでくれるからやってるだけですの!」


月岡 : 「……さおちゃん」


沙織 : 「それより! おじさま、もうお出かけの時間ですわ。はい、お洋服きて、鞄もって……」


月岡 : 「えっ? い、いいよ。そんなに急がなくても別に……」


沙織 : 「駄目ですわ! 遅刻したら生徒さんに申し訳ありませんの! はい、どーぞなのですわ!」


月岡 : 「う、うん……わかった。二人も、ちゃんといい子にしてるんだよ?」


沙織 : 「はいですの! 早く帰ってきてくださいましね、おじさま!」


晃 : 「……陽介さん。気を付けて」


月岡 : 「うん……じゃぁ、いってきます」



晃&沙織 : 「「いってらっしゃい!」」



 そんな朝の風景から数時間後。

 都内、某大学内……。





月岡 : (ぽけーっ……)


狩名義明(アズマPL) : 「……? あれ、月岡。月岡の旦那じゃないですか!」


月岡 : 「えっ……ああ、アズマさん! じゃ、なくって……狩名さん」


狩名 : 「あはは、こんな所で会うなんて奇遇ですねぇ……何やってるんですか? こんな所でぼーっとして?」


月岡 : 「あぁ……実は、大学の図書館に通ってたんですよ。ちょっと、読みたい本があって……」


狩名 : 「それで、わざわざ大学まで? ……月岡の旦那、まさかこの学校の関係者で?」


月岡 : 「あっ、はい……一応、この学校で教鞭をとっています


狩名 : 「へー……って、マジですかい!? この大学って、日本でも有数の……超名門、エリート学校じゃないですか!? えっ、じゃ、ここの先生で?」


月岡 : 「い、い、いえ! 先生とかそんな大それた……准教授ですし……」


狩名 : 「准教授っていっても、先生じゃねぇですかい。いや……まさか、その若さで……」


月岡 : 「そ、そ、そんな事ありませんよ! 私は、たまたま兄の……西園寺馨の研究を引き継ぐ人間が他にいなかったので、その研究を引き継ぐ形でここのポストに収まったにすぎませんから……」


狩名 : 「あぁ……なるほどねぇ」


月岡 : 「そうじゃなければ、私みたいな若造がこの名門大学で教鞭なんかとれませんよ……最も、今は休職中、なんですけどね」


狩名 : 「……休職中? 何でまた。病気か、何かで?」


月岡 : 「はい……あっ、あの。狩名さん。もしよければ……少し、聞いて頂けますか。私の話……」


狩名 : 「はぁ……ま、ちょっと時間もありますし。いいですよ、お付き合いしましょうか」(と、隣に腰掛ける)


月岡 : 「私は……実は、幼い頃からある病を抱えているんですよ」


狩名 : 「病、ですか……移りませんよね、それ?」


月岡 : 「あはは! ……伝染するような病気じゃないです。私が悪いのは脳の一部の機関ですから」


狩名 : 「脳……ですか?」


月岡 : 「はい……私は、幼い頃から……人間の姿を認識出来ない体質だったんです……」


狩名 : 「人間の姿を認識出来ない……って事は、アレですかい? 旦那は、俺たちの姿をちゃんと見えていない、って事ですか……?」


月岡 : 「はい……勿論、今、狩名さんと話をしていて、貴方が狩名さんだってのはわかります。でも……私の目は、貴方をぼんやりとした影のようにしか認識してないんです。顔は見えません。ただ、ぼんやりとした影として貴方を認識する事しか出来ないのです」


狩名: 「……まさか、そんな事が……いや、旦那は嘘つく人じゃないでしょうから、本当なんでしょうが……」


月岡 : 「信じられませんよね、こんな事。でも、そうなんです……私は、人を影としてしか認識出来ない。それは、写真にうつった人の姿も同様です。私には、群衆が影の群れにしか見えません。写真でも、映像でも……ただ影の群れが蠢いている風にしか見えない……幸いにも、声の差異は分かりますし、影も形や大きさ、服装などで概ね、人の区別は出来ているのですけれども……」


狩名 : 「それでも、人の姿は見えない。自分は勿論、他人も……ですか」


月岡 : 「……はい。それでも、これまでは不自由しませんでした。人とそれほど関わらなくても、私は生きていく事が出来た。そういう人生を歩んでいましたから。でも、今は……」


狩名 : 「……晃くんと、沙織ちゃんがいる」


月岡 : 「はい……今の私は、あの二人の姿を見る事が出来ません。成長していく彼らを見守ってあげたいのに、彼らの成長を感じる事が出来ない。そればかりか、具合の悪い顔色などを見逃す事さえあります。このままじゃ、あの子の父親として。私は、あまりにも至らない……だから、私は考えたんです。この病を、治療する方法はないか……」


狩名 : 「それで……治療の為、休職中なんですかい?」


月岡 : 「……はい。実はこの症状を治療する方法として、兄の……西園寺馨の開発した装置……ニーズホッグ・システムが有効ではないか、とGMさん……今のあの『自称:西園寺馨さん』に言われまして……」


狩名 : 「……たしかに、ニーズホッグ・システム人の脳に直接働きかける事さえ可能ですからねぇ……脳に何かしらの認証障害があるのだとすれば、それを治療する事も、出来るかもしれませんね」


月岡 : 「はい……あ、ニーズホッグ・システムの事、ご存じなんですね。狩名さん」


狩名 : 「えぇ……といっても、今回ゲームに参加するって事になって、慌てて専門書を読んでみた、ニワカ知識でしかありませんけどね」(笑)


月岡 : 「とはいえ……実は私、兄の最後の研究だったプロジェクト・ユグドラシルにはほとんど関わっておりませんでしたから……ニーズホッグ・システムはじめとした、兄が最後に残したシステムのほとんどを自分で扱う事が出来なかったんです。治療する足がかりとして、ニーズホッグ・システムが有効なのは分かっていたのですが……そんな時、GMさんが現れたんです。あの方は、兄の最後の研究。その中核をになった人物だった……そう、本人がもうしておりました」


狩名 : 「……たしかに、あの子はプロジェクト・ユグドラシルに最も関わった人物ですからねぇ」


月岡 : 「……狩名さん。GMさんの事、ご存じなのですか?」


狩名 : 「えぇ、まぁ……知り合いなんですよ。最も、今回のゲームでは『言うな!』って言われてるんで、今の所そこは聞かないでくれると嬉しいですが」


月岡 : 「あ、はい……わかりました」


狩名 : 「……ひょっとして、ハイラガ・ゲームを始めた理由も、旦那のその奇妙な症状が関係しているんですか?」


月岡 : 「はい……一ヶ月、このゲームに参加する事。それが、私のこの奇妙な症状が治療出来る可能性を生み出すのだ。と、彼に言われました……同時に、一ヶ月。この期間内に改善がなければ、恐らくニーズホッグ・システムでは私の症状の治療が不可能だ、とも……」


狩名 : 「それだったら、もっと急がないといけないんじゃないですか? もうゲームから、半月以上たってますが……」


月岡 : 「はい……ですが、あのシステムはかなり身体に負担がかかるから、長めに休息をとらないといけないので……私も、もどかしいのですが……」


狩名 : 「なるほど……それが、旦那があのゲームに参加した理由。って奴ですか」


月岡 : 「はい……」


狩名 : 「……でも、何でそんな事を俺に?」


月岡 : 「いえ、いつか皆さんにお話したいな……と思っていたんです。けど、どうも……いつも、ゲームは遅い時間帯が多いですから、沙織も眠たくなってしまうので、皆さんとゆっくり話す機会がなかったでしょう? それで……」


狩名 : 「……あぁ、たしかに旦那はいつも最初に帰ってしまいますからねぇ」


月岡 : 「このゲーム……私の、治療の為として開催されているのでしたら、皆さんに事情をお話しないのは悪いかなぁ……と思ってましたもので……」


狩名 : 「いやいや、別に気にしなくても良かったんですぜ……俺だって、一応は目的があってあのゲームに参加しているんですから」


月岡 : 「えっ、そうだったんですか?」


狩名 : 「俺だけじゃない……椎名の旦那も、あのGM……西園寺馨を名乗っている彼も。恐らくは、晃くんや沙織ちゃんだって、目的があって参加しているはずですぜ。だから、旦那だけがそんな気を使わなくてもいいですって」


月岡 : 「そう……だったんですね。私、全然知りませんでした……」


狩名 : 「……まぁ、俺たちはあのゲームで数時間、顔を合わせているだけ……普段連んだりはしてませんから、お互い何をしているのかだってよく分かってませんからね。知らないのも仕方ないでしょう……秘密にしておきたい事も、あるでしょうからね」


月岡 : 「そう、ですね……あぁ、そういえば、狩名さんは、ここで何を?」


狩名 : 「えっ?」


月岡 : 「いや、大学の構内で会うなんて珍しいな、と思いまして……」


狩名 : 「あぁ、俺は仕事ですよ。ちょっと、今……この中にある研究室で、頼まれていた仕事があったんで……」


月岡 : 「あ、お仕事中でしたか。す、すいません、長話に付き合ってもらっちゃって……」


狩名 : 「あはは、いいんですよ。今は休憩中でしたから……それより、旦那こそいいんですかい? ……休職中なのに、仕事場でウロウロするなんて。家にかえって、晃くんや沙織ちゃんの面倒みないといけないんじゃ……」


月岡 : 「あっ……じ、実は休職中なのは、二人には内緒なんですよ……」


狩名 : 「えっ? そうなんですか。何でまた……」


月岡 : 「あ……こ、この症状を治療中とかいって、心配かけるといけないと思って……だから、今こうして、出勤しているフリをしているんです……」


狩名 : 「……何だか、リストラされたお父さんみたいですねぇ、それ」


月岡 : 「はは……実際、このままリストラされるかもしれませんからね……」(汗)


狩名 : 「わ、笑っていい所ですかい、それ?」(苦笑)


月岡 : 「あはは……でも、この休職は……ちょっと、自分を見つめ直す意味合いも、あるんですよ。兄の研究を引き継いで教授になったけれども……私に、果たして兄の代わりが勤まるか、と……そう、思ってるんです。私は」


狩名 : 「……西園寺馨。脳工学の申し子。神に迫る学者(もの)……様々な逸話を持つ天才、ですよね」


月岡 : 「あっ、兄をご存じなんですね?」


狩名 : 「俺、こう見えてもこのスジの技術者なんですよ。だから、ちょっとはね……脳と神経を直接繋いだ電子義肢……人の感情を読みとる幻視映像……その他もろもろの技術は、業界では『テクノロジーが100年早い』とまで言われてます。ちょっとした有名人ですよ、あの人は」


月岡 : 「はい、兄は……正確には、血のつながりが半分しかない兄ですが……私の、目標にするにはあまりに大きく、そして偉大すぎる兄でした。だから、思うんです。兄の研究を引き継いだけれども、私にこの重荷が、負いきれるだろうか、と……私はこの研究に、相応しいのだろうか、と……」


狩名 : 「……」


月岡 : 「……こうして休んでいる間に、少し整理しようと思ってるんです。私には、多分……あの人の、研究は……相応しく、ない……」


狩名 : 「そんな事、無いんじゃないですか。アンタは、西園寺馨に愛されていた


月岡 : 「えっ?」


狩名 : 「西園寺馨は天才でしたから……才能のない奴に、自分の研究なんて引き継がせたりしないと。そう、思いますぜ。アンタは、才能があった。だから、西園寺馨が後を任せたんです……自信もってくださいって」


月岡 : 「……そう、だといいんですが」


狩名 : 「ほらほら、そんな顔してたら、出来るもんも出来なくなっちゃいますぜ?」


月岡 : 「狩名さん……すいません、何か弱気になっちゃっていけませんね……」


狩名 : 「いえいえ。なぁに、旦那の気持ちね、俺もちょっとわかるんですよ……俺にも、兄がいて……その兄がえらい優秀だったんです。小さい頃から、俺は、あの兄に比べられて生きてきた……頭よくてねぇ、外科医としての腕もよく……いつも成績が悪くてヒィヒィいってた俺とは偉い違いでした」


月岡 : 「……あっ、狩名さんのお兄さん、お医者さんだったんですか?」


狩名 : 「えぇ……俺、これでも医者の息子でしてね……でも、俺は兄みたいになれなかった。オマエは駄目な奴だ。お兄ちゃんはちゃんと出来たぞ……何度言われたかわかりませんよ。また、俺のアニキはいーい奴でしてね。何かいわれる度に庇ってくれるんですが、俺はそれがまた辛かった。もう、逆立ちしても敵わないんだって、そう思ってましたからね……」



月岡 : 「狩名さん……」


狩名 : 「……それで随分悪い事もしましたが、そんな俺を救ってくれた人がいたんですよ。俺は……今はその人のおかげで、やっていけてるみたいなモンですよ。最も……あの人は、俺を選んではくれませんでしたけど、ね……」


月岡 : 「……狩名さん」


狩名 : 「なんて、つまんない話しちゃいましたね……いやいや、弱音は吐かないつもりだったんですが、つい口が滑りました……忘れてくだせぇ」


月岡 : 「いえ……私の方こそ、お時間とらせてすいませんでした……」


狩名 : 「……あぁ。すいません、そろそろ時間だ。俺は、この辺でお暇させて頂きますね」


月岡 : 「はい……あっ、狩名さん。あの、もしよかったら……教えてくれませんか。貴方が、ハイラガ・ゲームに参加している理由……」


狩名 : 「俺が、ですか?」


月岡 : 「はい……あ、差し支えがなかったら。で結構ですけど……」


狩名 : 「俺は……そうですね。さしあたり……自分を、取り戻すため……でしょうかね」


月岡 : 「……自分を、ですか」


狩名 : 「えぇ、まぁ……俺にも、色々あるんですよ。って事でここは一つ」


月岡 : 「……あ、はい。すいません、ありがとうございます……それでは」


狩名 : 「じゃ、今度はセッションで会いましょうや」


月岡 : 「はい、ぜひ!」


 別れた後も、月岡は丁重に頭を下げる。

 今まで喋らなかった事を、話す事が出来て気が軽くなったのだろう。

 そんな彼の姿を後ろに、狩名はただ歩き続けた。



狩名 : 「……相応しくないのは、俺の方だよ。俺は……あの人に、選ばれなかったんだから……な……」



 そんな言葉をもらしながら……。

 ゲーム終了まで、あと15日。




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