> ハイラガ紀行 〜 白くてモフモフの奴。
5階に住む、キマイラを討つのだ……!
公宮から出た依頼(ミッション)。
さばみそギルドが、それを仕遂げたという事実は、すぐに街にも伝えられた。
「流石だな、さばみそギルド。エトリアの覇者!」
「よくやったな、さばみそギルド!」
「さばみそギルド!」「……さばみそギルド!」
衛士たちは喜びの声をあげ、戻ってきたさばみそギルドたちの健闘をたたえる。
だが、さばみそギルドの面子は、曖昧に笑い無言のままその歓声の間を通り過ぎるだけだった。
その腕には、血塗られた首輪が…………。
…………ギルド、ベオウルフの。クロガネの形見だけが光っていた。
> もふもふ虎と名前とギルド。
GM : 「さて、今日もそろそろセッションを始めようと思うのだが……」
???(謎の白い虎) : 「がう」
GM : 「…………この虎は何だ? 誰か新しいプレイヤーを入れたのか?」
アズマ : 「えっ? それ、GMの旦那が準備したNPCじゃ無かったんですかぃ?」
アクセル : 「俺たち、てっきりGMが準備したキャラだと思ってたんだけど……」
???(謎の白い虎) : 「がうがう! がう。がーう」(喉をゴロゴロ鳴らしている……)
GM : 「いや、俺は別にこんなNPCを準備した記憶はない……お前たちが誰か新しいプレイヤーキャラとしてつれてきた訳じゃないのか?」
ミクト : 「俺たちはいつも通り、5人しかいないぜ?」
GM : 「うむ……俺が登録したキャラでもない。お前たちが登録したキャラでもない。となるとこいつは……」
???(謎の白い虎) : 「がう! がう、がうー」
ローズ : 「きゃー! まっしろな虎さんですわー、可愛い。可愛い! あ、あの、だっこしても良いですか?」(おずおず)
シュンスケ : 「ローズ! ……危ないよ、ひょっとしたら凄く凶暴な虎かもしれないし」
GM : (カタカタ、とデータ操作しつつ)「……ム。こちらからの操作を受け付けないな……少なくてもこの虎、GMが自由に出来るNPCではなさそうだが……」
アズマ : 「イベントキャラって訳ではないみたいですねぇ……ちょっと、アタシもデータを見てみてよござんすか? GMの旦那」
GM : 「あぁ、頼む」
アズマ : (カタカタカタ、とデータを操作中)「うん……たしかに、GMさんの権限では入らないみたいですが……どうやら、PC扱いになってますねぇ。PC名も、キャラクター名も登録されていませんが……」
シュンスケ : 「つまり、私たちのギルドの『新しい仲間』という事ですか?」
アズマ : 「そうみたいですねぇ……誰がプレイヤーなのかわからないのが気になる所ですが」
ローズ : (おずおず……)
???(謎の白い虎) : 「がう?」
シュンスケ : 「あ! ローズ、駄目だよ、あんまり近づいたら危ないよ!」
アクセル : 「そうだ、勝手に近づくなローズ! まだ仲間なのかもわからないんだから……!」
ローズ : 「もふもふですの〜」(ぎゅっ)
???(謎の白い虎) : 「がう〜」(ごろん、とお腹を向けるポーズ)
ローズ : 「きゃー! ……おなかを、もふもふしても宜しいんですの?」
???(謎の白い虎) : 「がう!」
ローズ : 「わかりましたの! では……」(もふもふもふもふ)
???(謎の白い虎) : ゴロゴロゴロゴロ……。
ローズ : 「きゃー、ゴロゴロいってますの! 見てください、シュンスケおじさま! アクセル! ローズがなでなでしたら、虎さんとっても喜んでおりますわ〜!」
???(謎の白い虎) : ゴロゴロゴロ、のび〜ん。
ミクト : 「……アイツが敵だか味方だかわかんねぇけど、どうやら敵意はねーみてぇだな」
アズマ : 「そうですねぇ……一応、このギルドに登録されている訳ですから『仲間』と判断しても良さそうですが」
GM : 「あの虎をつかうなら、とにかく名前を登録してやってくれ。名無しじゃいくらなんでも可哀想だからな」
アクセル : 「名前? 虎でいいんじゃないの?」
GM : 「アクセル。キミは、ポケモ○でニックネームをつけずにプレイするタイプだな……」
ミクト : 「じゃあ、ボロンゴ! プックル! チロル! ゲレゲレ! ……以上の4つから選んでな!」
アクセル : 「……何故その4択?」
シュンスケ : 「キラーパンサーの名前じゃないか! ドラクエ5だよね」(笑)
ミクト : 「駄目か?」
GM : 「駄目もなにも、そんなメジャーなRPGタイトルから堂々とキャラ名をパクってくる精神はいかがなものかと思うぞ?」
ミクト : 「じゃぁ、タイガというのはどうだろうか!」
アクセル : 「タイガ?」
アズマ : 「なるほど、虎だからタイガー……からとって、タイガですかい?」
ミクト : 「いや、俺が昔飼っていた、犬の名前」
アクセル : 「違うのかよ!」
アズマ : 「というか、犬に虎って名前をつけちゃうミクトの旦那のセンスがなかなかに、残念でさぁな」(笑)
ミクト : 「いいだろー! 俺は格好いいと思ってつけてたんだからよー!」
GM : 「じゃぁ、タイガでいいか? 決まったら登録をすませてほしいんだが……」
ローズ : 「……しろがね」
GM : 「ん?」
ローズ : 「ローズは、シロガネがいいですわ! ……クロガネの意志を継いで、迷宮の奥まで向かう……シロガネって名前がいいですの! 皆さんも、それでよろしくて?」
ミクト : 「ローズちゃん……ローズちゃんが言うのなら俺はそれでいいぜ! ローズちゃんは正しい! ローズちゃんはいつも正しいからな! 俺はいつでも全面的に、ローズちゃんの味方だ! なぁみんな!」
アズマ : 「アタシも、別に構いませんよ」
アクセル : 「俺は、名前なんて最初からどうでもいい」
シュンスケ : 「皆さん、ローズのワガママを許してくださり、ありがとうございます……ほら、ローズ、皆さんにお礼を言って」
ローズ : 「わ〜い! 皆さん、ありがとうございますの! それと……これからヨロシクお願い致しますわね、シロガネ!」
謎の白い虎改めシロガネ : 「がう!」
> もふもふ虎と迷宮とカボチャ
GM : 「かくしてキミたちはシロガネという新しい仲間を手に入れた訳だ……と、ちなみにシロガネの職業はペット」
アクセル : 「ペット?」
GM : 「体力と攻撃力は高いが、テクニックは低く、物理攻撃には強いが魔法攻撃には弱いといった種族だな……」
アズマ : 「へぇ……どんな特技(スキル)を覚えるんですかい?」
GM : 「威力のある物理攻撃の他、仲間を庇うスキルを覚えたりするはずだが……」
アズマ : 「へぇ……だったらシロガネが、何のスキルを覚えているか一応確認しておくべきですかね?」
シュンスケ : 「そうですね……物理攻撃主体のキャラなのか、仲間を庇う防御主体のキャラなのか確認しておかないと……GM、シロガネは何を覚えているんですか?」
GM : 「LUKブーストLV3」
アズマ&アクセル : 「……えっ?」
GM : 「だから、LUK3だ。LUK以外のスキルは、特にとってないな……」
アズマ&アクセル : 「「戦闘の役に立つ気ねぇーな、コイツー!」」
GM : 「一応、テクニックとラックを5ずつあげれば『野生の堪』という採取スキルを覚えるが……」
アズマ : 「採取スキルでしょう、それ! ……何か、随分と戦闘やる気のなさが伺えるスキル振りですねぇ」
シロガネ : 「がう! がう!」
アクセル : 「全く、しろげ頭以来の役立たずだな……」
ミクト : 「何言ってるんデスカー! アクセルくん! ……最近は、俺の弱体に随分お世話になってるんじゃナイカナー!」
アクセル : 「お前のスキルは役に立つが、お前は邪魔だな」(きっぱり)
ミクト : 「きっぱりと断言されました! きっぱりと断言されましたよこの子、ぐぎぎ……!」
ローズ : 「シロガネは、戦闘スキルもってないんですの? ……人を傷つけたりするスキルをもってないんですわね? 偉いですわ、シロガネ。シロガネはきっと優しい子なのですわ!」(なでなで)
シロガネ : ゴロゴロゴロゴロ……ぺろぺろ。
ローズ : 「!? きゃぁ、シロガネ! 舐めたらくすぐったいですの! いやぁ! もー、駄目ですの、シロガネ! シロガネー!」
シロガネ : ゴロゴロゴロ……ぺろぺろ。
シュンスケ : 「うん、大きな牙をもった虎だから危険なんじゃないかなぁ、って心配したけど……どうやら、ローズとも仲良くやってくれそうだね。安心したよ!」
ミクト : 「たしかにローズちゃんと仲良さげだが……」
ローズ : (きゃっ、きゃっ!)
シロガネ : ゴロゴロ、ゴロゴロ……。
ミクト : 「…………どうやら、俺が本当に倒さねばならぬ敵はここにいたようだな……!」(闘志を燃やしつつ)
アクセル : 「何ケダモノ相手に本気になってるんだ、しろげ頭」
アズマ : 「大体、旦那の出来るのは弱体くらいでしょうに……実質、ダメージ与えられるスキル無いに等しいじゃないですか?」
ミクト : 「む……ならばこの日の為にペイン砲を覚えるか! カスメの本気見せてやるぜ!」
ローズ : 「シロガネをいじめますの? ミクトお兄さま?」
ミクト : 「あ、いや……その、何だ」
ローズ : 「シロガネを虐めてはいけませんわ! ローズ怒っちゃいますことよ! ミクトお兄さま?」
ミクト : 「あぁ……は、はい。いじめません! 仲良くやろうとおもいまーっす!」(ビシッ)
アズマ : 「……本当に、チョロい性格をしてまさぁねぇ、ミクトの旦那は」
アクセル : 「このロリコンめ!」
GM : 「……さて、シロガネの名前も決まった事だし、そろそろ迷宮探索に入るか。あぁ、もしシロガネを連れて行くのであれば、留守番を一人頼むぞ。迷宮には5人までしか連れていけないからな」
アズマ : 「さぁて、どうしましょうか? 今日はいよいよ6階……第二階層の探索ですから、無理にシロガネをつれていかなくてもいいとは思いますが……」
ローズ : 「シロガネ……お留守番ですの? シロガネ……寂しいですわ〜」(ぎゅう)
シロガネ : ゴロゴロゴロ……。
ミクト : 「ん〜、もし誰か一人留守番、って事になれば今日は俺が残ろうかなぁ?」
アクセル : 「わかった! 是非そうしてくれ!」
ミクト : 「ちょっ! いきなりの快諾! もう少し! もう少し引き留めてー!」
アクセル : 「引き留める理由が思いつきませんでしたから……」
ミクト : 「もっと考えてー! お前の灰色の脳細胞もっと有効活用して、俺を引き留める語句の一つや二つ捻りだーしーてー!」
アズマ : 「まぁまぁ、ミクトの旦那……たしかにここでの留守番役は、ミクトの旦那が一番適任ですからねぇ」(笑)
アクセル : 「対ボス戦もない、ただの迷宮探索なら通常攻撃などほとんど役に立たないカスメは留守番が適任だもんな」
ミクト : 「自分でも、この流れだと留守番は俺だろーなーと思っていたが、そうも力強く留守番をプッシュされると悔しさが先立つぞ、この野郎!」
GM : 「そうなると、第2階層探索面子は……」
前衛 : アズマ(ブシドー) ・ シロガネ(ペット) ・ ローズ(ドクマ)
後衛 : シュンスケ(メディ) ・ アクセル(ガンナー)
GM : 「……この5人でいいか?」
ローズ : 「よろしくてよ。ねぇ、皆さん?」
シュンスケ: 「えぇ、構いませんよ。ですが……留守番中、ミクトさんは何をされるおつもりですか?」
ミクト : 「そうだなぁ……普通に見学をしつつ、仕事でもしているよ」
シュンスケ : 「仕事?」
ミクト : 「いや……実は現実世界の俺はじりじり〆切が近づいてきている仕事もあってだねぇ! ……という訳で、ミクトは表向きは『ハイラガの街を彷徨いつつ、自分の研究の為知識を高めている』という理由で。現実は『仕事の下書きをする為』に離脱するぜ! みんな頑張ってこいよ!」
アクセル : 「……極限まで仕事を放置するなんて、本当に駄目な大人だな」
アズマ : 「でも、何処でも仕事が出来る在宅ワーク……という点は、ちょいと羨ましくも思えまさぁね……」
GM : 「さて……こうして進む5人……いや、4人と一匹たちはひとまず、キマイラを倒した部屋を抜けさらなる上の階段へ赴く」
ローズ : 「フロースガル様……クロガネ……」
シュンスケ : (静かに手を合わせている)
GM : 「そうして君たちが新たな階段を上ると、その階段はいつもより長く、緑に溢れた木々は少しずつ少しずつ、赤みを帯びてきた……」
シュンスケ : 「赤味……まさか、血ですか!?」
アズマ : 「それとも、火事ですかい?」
GM : 「いや、そのどちらでもない。森の木々が赤く色づいているだけだ」
シュンスケ : 「なんだ……紅葉ですね」
GM : 「そうだな……最初、ぽつりぽつりと赤味のあった木々も、徐々に紅を増やし、キミたちが新たなフロアに到達する時には一面、燃えるような赤一色となる……ここが6階、第二階層……常緋ノ樹林だ!」
アズマ : 「……へぇ、一面紅葉たぁ、見事なもんですねぇ。ここが危険な迷宮と知っていても、思わず目が奪われまさぁ」
ローズ : 「わ〜、凄いですわ! おじさま、私、落ち葉を拾って帰りたいですの! ミクトお兄さまのお土産にしますわ〜!」
シュンスケ : 「お土産はいいけど、周囲には気を付けてね、ローズ」
アクセル : 「ここは新しい階層なんだ、今までとは比べモノにならないくらい、強い敵が出るかもしれないからな……」
ローズ : 「はいですの! 落ち葉落ち葉〜」
シロガネ : (くいっ、くいっ)
ローズ : 「? どうかしましたの、シロガネ?」
シロガネ : 「がう!」
ローズ : 「こっちに何かありますの? ……あら、これは?」
GM : 「……シロガネが指し示した方向には、光で出来た柱のようなものがある。それにふれ、思い描くだけでハイ・ラガの街並みが手に取るように近くに感じられる……キミたちはフロースガルの話を覚えているだろうか。 『樹海には、街と階層を行き来出来る特殊な場所が存在する……』 恐らく、これがその特殊な場所……『樹海磁軸』だろう。キミたちが柱にふれると、街と迷宮に自由に行き来出来るようになる」
アズマ : 「これで、いつでも6階、第二階層からやり直しが可能……って事ですかねぇ?」
GM : 「そうだな」
アズマ : 「そりゃ、嬉しい事で。さぁて、迷宮探索にも力が入りまさぁ……それじゃ、奥へ目指しましょうか。行きますよ、嬢ちゃん」
ローズ : 「はーいですの! えへへ……見てくださいまし、こんなに綺麗な葉っぱがいっぱい拾えましたの! ミクト様のお土産にしますわ〜。これ、もっていて下さいましね、シロガネ」
シロガネ : 「がう」
アクセル : 「さて……扉を開いた先に出てみたけど、どうだろう。新しいF.O.Eとか、敵の気配はありますか、GM?」
GM : 「F.O.Eの気配はない、が……キミたちの前に、見た事のないモンスターが現れる、敵は、エリマキトカゲ2体だ!」
シュンスケ : 「エリマキトカゲとは、また懐かしい……」
GM : 「ちなみに、色はピンクだ」
アズマ : 「エリマキトカゲなのに、ウーパールーパーカラーなんでさぁな!」
ローズ : 「?」
アクセル : 「???」
GM : 「……最近の小さい子にはちょっと分からないネタだったようだな」(苦笑)
ローズ : 「とにかく、敵さんは私が成敗いたしますわ! え〜い!」(剣ぶんぶん)
エリマキトカゲ : (ひょい、ひょい)
ローズ : 「いや〜んですの! 全然あたりませんわ……」
アズマ : 「よし、お嬢ちゃんの仇はアタシが……って、うぉっと!」(大振りで空振り)
シュンスケ : 「当たりませんねぇ……」
シロガネ : 「がう」
アクセル : 「どうやら、回避力が高いキャラみたいですね……俺はここは慎重に、精密射撃! どうですか?」
GM : 「それで、一匹倒れた」
アクセル : 「よし!」
GM : 「だが残った一匹の攻撃だ……ダメージはローズに。21だ」
ローズ : 「いや〜ですの! うう、痛いですの……」(めそめそ)
アクセル : 「こら、泣くなよローズ……」(ナデナデ)
シュンスケ : 「幸い、攻撃力はそれ程ではないようですね……」
アズマ : 「でも、何度も当たる訳にはいきませんぜ……今度はどうだ、それ!」(ぶん)
GM : 「アズマの剣先はエリマキトカゲの身体を捉える……これで、退治した」
アズマ : 「……また、つまンねぇモンを、切っちまいやした」(カチャッ)
ローズ : 「ふぇぇ、おじさま。痛かったですの〜」
シュンスケ : 「はいはい……今、キュアするからね?」
アクセル : 「……攻撃力は高くなっているけど、これなら慎重に進めば危険はないだろうな。もう少し奥にいってみましょう」
GM : 「キミたちがそうやって、フロアの奥に進むとすぐに長い通路へとたどり着く。フロアの形状からすると、どうやら回廊になっているようだ」
シュンスケ : 「回廊ですか……東にいっても、西にいっても同じ道にたどり着きそうですが、どうしますか?」
アクセル : 「そうですね……ひとまず、時計回りに進んでみましょう。西側に……モンスターの気配に警戒しつつ進みます」
ローズ : 「紅葉のトンネル抜けて〜いざ〜冒険にいきますの〜♪」 (※気付いたらシロガネの上に乗っている)
シロガネ : 「がう〜♪ がう〜」 (※気付いたらローズに乗られているが、あまり気にしてないようだ)
GM : 「こうして、キミたちが道を進んでいると、西側に小道が見える……」
アズマ : 「あっちが新しい道でしょうかねぇ……とにかく、行ってみましょうか?」
アクセル : 「はい……あ、ちょっと待っていて下さい。今、地図を書いちゃうので……」(かきかき)
シロガネ : 「!? ……グルルルルルルル」
ローズ : 「? どうしましたの、シロガネ? ……シロガネが何か唸っておりますわ」
アズマ : 「何興奮しているんでさぁね、シロガネ……あ!」
シロガネ : 「ガウウゥッ!」(と、突然アクセルに飛びかかる)
アクセル : 「!? うわっ、何するんだこの、ケダモノ……!」(じたじた)
シロガネ : 「がう、がう……がうっ!」(ずるずる)
アクセル : 「こら、何をするっ、苦しっ……やめろ!」
ローズ : 「シロガネ、どうしましたの。シロガネ……」(オロオロ)
アクセル : 「いい加減にしろっ、このケダモ……」
GM : 「……こうして引っ張られたアクセルの背後をかすめるように、音もなくF.O.Eが姿を現した。カボチャ形のF.O.Eは君たちの脇すれすれを通り過ぎて行く」
アクセル : 「!? そんな、地図には何もうつってなかったけど……」
GM : 「……そうだ、このF.O.Eはマップ上では認識できないF.O.Eのようだ。これまでのように、地図にばかり目を落としていては危険だという事だな」
アクセル : 「そ、そうだったのか……ひょっとして、助けてくれたのか?」
シロガネ : 「がう!」(ゴロゴロゴロ……すりすり)
アクセル : 「あ……ありが、とう」(ナデナデ)
ローズ : 「偉いですわよ、シロガネ!」
アズマ : 「ともあれ、見えない敵が出てくるたぁちょいと厄介でさぁね……ここより先は、より慎重に進みましょうか!」
シュンスケ : 「えぇ……皆さん、気を付けていきましょう!」
一同&一匹 : 「「「「おー!」」」」「がう!」
かくして、6階の探索を始めたさばみそギルドご一行。
その道中。
アクセル : 「敵が出てきた……何かでっかいキノコだ」
ローズ : 「おばけきのこですわ!」
GM : 「いや、そんな名前ではない……大キノコだ」
ローズ : 「おばけきのこは毒をつかってきますわ〜!」
GM : 「何処の世界のおばけきのこの事を言っているのかわからんが、この大キノコたしかに毒はつかってくる……毒の胞子を振りまいた!」
ローズ : 「そんな見え見えの攻撃、怖くありませんわ〜」(ひょい)
シロガネ : 「がう〜」(ひょいひょい)
アズマ : 「……口元を抑えて、と……全員避けやしたね? シュンスケの旦那?」
シュンスケ : 「……」
アズマ : 「旦那?」
シュンスケ : 「……何か、猛烈に血反吐が出てきそうな感じなんだけど、後で治して貰ってもいいかな、アクセル?」(げふげふ)
アクセル : 「な〜にやってるんですか、アニキ!」
やんわりと、シュンスケさんのラック度合いが残念だったり。
ローズ : 「……いやーですの! このフロア、見えないF.O.Eさんが一杯おりますわ!」
アクセル : 「沢山居る、けど……あいつら、同じ軌道をぐるぐる回っているだけで、こっちを追いかけているだけだから慎重に軌道を見極めれば怖くないよ、慎重にいこう、慎重に……」
シロガネ : 「がう!」(グイ)
アクセル : 「うわっと! な、何するんだシロガ……」
アクセルの鼻先を、かぼちゃ形のF.O.Eがすぅっと通り過ぎて行く……。
アクセル : 「!? ……助けてくれたのか、シロガネ?」
シロガネ : 「ガフゥ!」
アクセル : 「そうか……ありがとう、シロガネ」
シロガネ : 「がう!」
シロガネの手をかりて、ふわふわ。うようよいるF.O.Eを無事突破したり。
アクセル : 「……あれ」
アズマ : 「どうかしましたかい、アクセルの坊や?」
アクセル : 「いえ……あんな、木の高い所に荷物が吊るしてあるなぁ、と思って」
アズマ : 「どれ……ホントだ、何処かの冒険者がブラ下げておいたモンですかねぇ……どっちにしても、あんな高い所にあったんじゃあねぇ」
アクセル : 「そうですよね、取れませんよね……」
ローズ : 「だったら、私がとりに行きますの!」
アクセル : 「ローズ?」
シュンスケ : 「だ、駄目だよローズ! あんな高い所……もし、落ちたら大けがだよ!?」
ローズ : 「大丈夫ですわ! ローズ、木登り得意ですの! よいしょ、よいしょ」(のぼのぼのぼのぼ……)
シュンスケ : 「あぁっ、ローズ! 何で勝手に……あぁ、あぁ……」(ハラハラ)
アズマ : 「……まぁまぁ、折角お嬢ちゃんが頑張っているんだから、ここは温かく見守るのも男親の仕事でさぁで?」
シュンスケ : 「あぁ……で、でも、あんな高い所に……」(ハラハラ)
ローズ : (のぼのぼのぼ……のぼっ)「やりましたの! 無事到着しましたの! お荷物とれましたわ〜……」
ミシミシミシ……。
ローズ : 「あら?」
バキッ!
ローズ : 「あら? あ〜れ〜! お、落ちますわ〜……きゃー! きゃー!」
シュンスケ : 「あああ、ローズ! ローズ!?」
アズマ : (だだだだだ……がしっ!)
ローズ : 「ふ〜ぇ〜……あ、アズマ様! た、助かりましたの……」
アズマ : 「……大丈夫だったかい、お嬢ちゃん?」
ローズ : 「はい! お怪我せず無事降りられましたの! アズマ様、ありがとうございます!」
シュンスケ : 「もう……あんまり危ない事しちゃ駄目だよ、ローズ」
ローズ : 「はいですの……あら?」(むずむず)
アクセル : 「どうした、ローズ?」
ローズ : 「……何だか、手が無性に痒いですの! うう〜」
シュンスケ : 「どれ、見せてごらん……あぁ、これは多分、かぶれたんだね。あの木、どうやらかぶれる材質のもののようだ」
ローズ : 「いや〜んですの! とっても痒いですわ〜」(かいかいかいかい)
シュンスケ : 「お転婆するからだよ、ローズ。ほら、軟膏を塗るから、手ぇ出してごらん」
ローズ : 「ふぇぇ……」
ローズ嬢が思ったよりお転婆だったり。
GM : 「敵が現れたぞ。怪しい石像、2体だ」
アズマ : 「こりゃまた、随分硬そうな相手ですねぇ……刀で切れるかどうか……」(ガンガン)
GM : 「キミたちが攻撃を仕掛けると、怪しい石像は石化ブレスを使ってくる!」
アクセル : 「石化だって!?」
GM : 「……とはいえ、この石化ブレスはあまり成功率は高くないんだよな。一応抵抗してみてくれ」
アズマ : 「当たらなければ問題はありませんぜ、ひょいひょい。っとな」(ひょい)
ローズ : 「吸い込まなければ大丈夫ですわ〜。お口チャックですの!」
シロガネ : 「がうー」(ひょい)
アクセル : 「はぁ……石化なんていうから驚いたけど、何とかみんなよける事が出来たみたいだね……アニキ?」
シュンスケ : 「…………」
アクセル : 「……アニキ?」
シュンスケ : 「……えっと、誰かテリアカβもってない、かなぁ」(苦笑)
アクセル : 「何石化してるんですかー! アニキー!」
アズマ : 「シュンスケの旦那って、何でLUKはそんなに低くないのにバステかかりやすいんですかねぇ」(笑)
GM : 「……名前のせい、だな」
シュンスケさんのラック度合いがやっぱり残念だったりしつつ。
アクセル : 「あ、見て。あんな所に階段があるよ」
アズマ : 「これでようやく7階に行けまさぁね……さぁ、気合い入れていきますよ!」
一同&一匹 : 「「「おー!」」」「がう!」
何とか上への階段を見つけ、新たなフロアへたどり着くのだった……。
> モフモフ虎とイガイガの道
GM : 「次は7階、一見するとさっきの階層と大差ないが……」
ローズ : 「わ〜、真っ赤ですわ〜、先にいきますのよ!」
シロガネ : 「がう!」(ぐい)
ローズ : 「!? ……どうしましたの、シロガネ?」
シロガネ : 「がう!」(ぺたぺた)
ローズ : 「?!」
GM : 「シロガネが指し示す場所は、鋼のように鋭い針のような茨が幾重にも連なっている……」
シュンスケ : 「ダメージ床ですか?」
GM : 「そうだな」
アズマ : 「こりゃまた、見るからに痛そうですねぇ……なるべく、通らない道を探していきましょうや」
アクセル : 「こういう時に、しろげ頭が居ない事が悔やまれるな……」
ミクト(外野より) : 「お! アクセル、やっと俺の大切さがわかったようだな! 感心感心!」
アクセル : 「いや、オマエがいれば、オマエを踏み台にして先に進む事が出来たのに、惜しかったな。と思って」
ミクト(外野より) : 「ノォォオオォオオオ! 何て残酷な事を考えるのですか! 肉の橋! 肉の橋ですか! 人間は橋ではありませんよ、ガッテェェェーム!」
GM : 「……まぁ、仮にミクトが橋になったところでダメージは受けるのだがな」
アクセル : 「何だ、役に立たないな」
ミクト(外野より) : 「しかも勝手に踏み台にしておいて役に立たないとか! ウソッ! 俺の扱い、非道すぎ……?」
アズマ : 「まぁまぁ、ミクトの旦那。仕事仕事……」
ミクト(外野より) : 「あぁ、そうだった……ちゃっちゃと片づけないとネ!」(ちゃっちゃっちゃ)
シュンスケ : 「……でも、痛そうな通路ですね。私が、警戒斥候を覚えればダメージは軽減出来ますが、覚えましょうか?」
アクセル : 「それ、レベル5まであげないと完全無効になりませんから、いいですよ。痛いのはイヤですが、ガマンして歩きましょう」
ローズ : 「……ううう、ちくちく痛そうですわ」
シロガネ : 「がうがう」
ローズ : 「……でも、そうですわね。シロガネは裸足ですもの、私よりもっと痛いはずですわ……シロガネがガマンして進んでいるんですから、私がガマンしない訳にはいきません! 頑張って歩きますわ……」(ちくちく)
アズマ : 「はぁ……ごっそり体力を減らされた気分でさぁ」
シュンスケ : 「あ、すぐキュアしますよ。体力が減ったままでは危険ですからね」
アズマ : 「シュンスケの旦那! 済まねぇ……恩に着まさぁ」
シュンスケ : 「いえいえ! ……こんな時にモンスターに襲撃されたら、一溜まりもありませんからね
GM : 「期待されているようなのでモンスターの登場だ、敵は大イノシシ」
アズマ : 「はぁ、早速のお出ましですか。ですが、イノシシ如きに遅れをとるようなアタシでは……」
GM : 「攻撃は、猪突猛進! ……この攻撃は、一人攻撃した相手の左右にいるキャラを攻撃する。今回はアズマだから、シロガネにもダメージがいくぞ! ダメージは、アズマが80。シロガネはもっと少なくて35だ」
アズマ : 「はちじゅっ……!?」
シロガネ : (きゅ〜ん、と耳がぺたーんとなる)
シュンスケ : 「だ、大丈夫ですか皆さん!?」
ローズ : 「シロガネー! お怪我はないですの?」(ナデナデ)
シロガネ : (すりすり)
アズマ : 「こ、こいつはヤベェですよ……とにかく早く仕留めちまわねぇと、小手打ち!」(シュバッ)
GM : 「……それで仕留める事が出来たな」
アズマ : 「はぁ……先に回復してもらわなかったら、一撃で沈んでたトコでしたよ」
アクセル : 「シロガネに直撃してたら、きっとシロガネも不味かったよな……まだレベルの低いシロガネじゃ、あの攻撃は耐えきれないだろうから」
シロガネ : 「がう〜……」
シュンスケ : 「……とにかく、段々と敵の攻撃が激しくなってきたようですね。なるべく、ダメージ床を通らないように進みましょう」
アクセル : 「そうですね……幸い、ここから先はダメージ床を通らなくてもすすめそうですよ」
ローズ : 「アクセル、地図には見えないカボチャさんが出てくるかもしれませんわ! 用心してくださいましね」
アズマ : 「ここにはいないと信じたいですがねぇ……んじゃ、先急ぎましょうか」
GM : 「急いでいる所悪いが、敵が出たぞ。敵は、かみつき草。一体だ」
シュンスケ : 「……トゲトゲがある場所だから、トゲトゲの草が出てきたんでしょうか?」
アズマ : 「しゃらくせぇッ、刀の錆にしてやりまさぁ……小手打ち! よござんすか?」
GM : 「ふむ……流石にブシドーが本気の一撃を出せば倒れるな」
アズマ : 「……また、つまんねぇモンを切っちまいました」
アクセル : 「流石ですね、アズマさん!」
アズマ : 「ははっ、アタシはこれ位しか能のないつまんねぇ剣士ですからねぇ……ま、前衛の敵たちはアタシが倒しますんで、アクセル坊たちはマップ作りとダメージ床を避けるの、お願いしまさぁ」
ローズ : 「私と、シロガネも戦いますのよー!」
シロガネ : 「がう!」
アクセル : 「……ありがとう、皆。しろげ頭がいないと、探索がはかどるよ!」
ミクト(外野より) : 「おーい、どういう意味だアクセルちゃーん!」
アクセル : 「そのままの意味だ! さぁて、ダメージ床をなるべく踏まないように、と……アズマさん、こっちの道は多分繋がっているから、西側へ……」
アズマ : 「こっちでさぁね?」
GM : (ム……ダメージ床を避けている結果、思ったより早く8階の階段に向かいそうだな……)
アクセル : 「さらに北にいきましょう、東側はダメージ床がありますから……」
ローズ : 「北ですわね〜、行きますわよ、シロガネ!」
シロガネ : 「がうっ! わふっ!」
GM : (等と思っているうちに、8階の階段前まできてしまった……)
ローズ : 「あ! 見てください、アクセル! あんな所に、上の階段がありますわ〜」
アズマ : 「これで新しい階層に勧めまさぁね」
シュンスケ : 「やりましたね! 順調すぎて怖いくらいですが……」
シロガネ : 「…………グルルルルル」
ローズ : 「? どうしましたの、シロガネ? シロガネ?」
GM : 「シロガネが鋭い視線を、階段の上に向ける……同時に、階段の向こうから凄まじい熱気と、それに交じった殺意が向けられた! どうやら、この上の階にはキミたちが見た事のない程、強力な魔物が潜んでいるらしい……」
アズマ : 「なるほど……この焼けるような闘気、その魔物のモンですかい……」
シュンスケ : 「シロガネも、その闘気に気付いて殺気だってるんだね」
シロガネ : 「ガウッ! ガウ……ガゥ……」
ローズ : 「シロガネ、落ち着いてくださいまし! まだここには、悪い魔物は何も居ません事よ……」(ぎゅっ)
アクセル : 「……何にせよ、このまま上に行くのは危険そうだな」
シュンスケ : 「一度、ハイラガの街に戻ってみましょうか? 上にいる魔物について、何か教えてもらえるかも……」
アズマ : 「それがよござんすね、そろそろ公宮に報告にも戻らなきゃいけない時期ですし……」
ミクト(外野より) : 「下書きあーきーたー! そろそろ帰ってこいよみんなー! さーみーしーい! さーみーしーい!」(ゴロゴロ)
アズマ : 「……ミクトの旦那も、そろそろ冒険してぇみたいですからね」(笑)
ローズ : 「はいですの! それでは、一度帰りましょう……私たちの、ハイラガの街へ!」
こうして、無事8階の階段前に到達したさばみそギルドご一行。
新しい仲間を迎え順調な旅に思えた所、行く手を阻んだのは謎の闘気……。
果たしてこの「強力な魔物」とは一体何ものなのか。
そんな魔物がいる領域で、果たしてさばみそギルドたちはさらに上に進む事が出来るのか!
謎が謎を呼ぶ……事もないが、とりあえず、次回に続くのである。
幕間劇 : 漫画家のお家に遊びにいきますよ!
幕間劇を始めよう。
それは、現実世界の物語。
本来なら決して出会う事のなかった男と、少女の物語。
……君は、彼らの現実にある日常に、触れても、触れなくても良い。
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本日のセッションより数日前。
某県 K市――椎名哲馬の仕事場。
椎名哲馬(ミクトPL) : 「さーて、今日も楽しくお仕事しましょーねー……遊びてぇ!」
丸子次狼(椎名哲馬のアシスタント・チーフアシ) : 「仕事するといいつつ、遊びたい気持ちが先立ってますよ、先生」
椎名 : 「だって、哲馬すっごく遊びたいンだもん……」
丸子 : 「ダメです。 ……先生にペン入れして頂かないと、私は仕事がない状態ですから、一枚でも多くペン入れを頼みますよ?」
椎名 : 「わかってるっての……はぁ、俺ペン入れ苦手なんだよなぁ……」
ボティス・ビュート(椎名哲馬のアシスタント) : 「あ、じゃぁ哲馬。俺が代わりに遊びにいってやろーか! ほら金よこせよ、パチンコでも何でも、アンタの代わりに楽しんできてやっからよー」
椎名 : ドゴスッ! (無言のパンチ)
ボティス : 「うばらっ!」
椎名 : 「……何舐めた事いっちゃってるのかなボティス君はー。そんな事、哲馬さん許す訳ないじゃないデスカー。あははははー」
ボティス : 「……うぐぐ、腹。腹やったな……哲馬、テメェ……」(ゴロゴロ)
椎名 : 「うん、ボティスが俺のボディーブローで床に沈んでのたうち回っている姿を見たら、創作意欲沸いてきた! ペン入れするとするかぁ」
丸子 : 「それは良かったです、先生。創作意欲が途絶えたら、またボディスの腹をブローするなる、アッパーで華麗に吹き飛ばすなりして創作意欲をかき立ててくださいませ」
ボティス : 「テメェら、俺を何だと思ってンだ!」
丸子 : 「おや、まだ叫ぶ元気はあるようですよ?」
椎名 : 「そうだな……もう一発くらいブン殴ってもよさそうだな! よし、やるか!」(ボキボキボキ)
ボティス : 「あ! ちょ、まっ……イタタタ、急にお腹が……」
ピンポ〜ン♪
ボティス : 「あ! 哲馬、今インターホンなったぞ! お客様だな! 俺、ちょっと応対してくるから!」(バタバタバタバタ)
丸子 : 「……逃げ足早いですよね、彼」
椎名 : 「そうだな! だが客かぁ……今日は来客の予定はなかったはずだけどなぁ……」
丸子 : 「そうですね、たしかに……編集の方との予定も入ってませんし……セールスか何かでしょうか……」
ボティス : 「あ、こらまて! ……勝手に入ってくんじゃねーよ、ガキっ、こら!」
??? : 「イヤですわー、お兄さま怖いですの!」
ボティス : 「こら、まて! この……」
??? : 「きゃー、いやーですわー!」
丸子 : 「……何か玄関口が騒がしいですね。セールスじゃなかったのでしょうか?」
椎名 : 「そうだなぁ……というか、聞き覚えのある声なんだが……」
ボティス : 「あ、こらまてガキ!」
月岡沙織(ローズPL) : 「きゃー、待ちませんの! ……怖いお兄さまですわ〜!」
椎名 : 「なっ…………さおちゃん?」
沙織 : 「あ、哲馬お兄さまですの! ……哲馬お兄さま〜!」(ぼふっ、ぎゅっ)
椎名 : 「さおちゃん……アレ、何でこんな所に? 保護者(月岡陽介・シュンスケPLと月岡晃・アクセルPL)は?」
沙織 : 「もぅ、哲馬兄さま、忘れてしまいましたの? 今日は、哲馬兄さまの仕事場を見せてくれる約束の日ですわよ〜」
椎名 : 「あれ、そうだったっけ?」
丸子 : 「……そのようですね、私は存じ上げませんでしたが、手帳に走り書きで 『さおちゃん襲来予定』 と書いてありますから」
椎名 : 「あぁ、そうだったのかー……ダメだな最近は物忘れが非道くて」
沙織 : 「さおちゃん、一人で電車を乗り継いできましたの! ……えへへ、兄さま居なくても、さおちゃん一人で出来ますの!」(えへん)
椎名 : 「そうか、流石さおちゃんだな。偉い偉い」(ナデナデ)
沙織 : 「えへへ〜」
丸子 : 「……ですが、こんなに小さい子が一人で出歩くとは、昼間とはいえ少々心配ですねぇ」
沙織 : 「さおちゃん、小さくないですわ! 大人のレディー候補ですの!」
ボティス : 「大人のレディー候補って、ガキじゃねーか」(ぽむぽむ)
沙織 : 「いや〜ですの、大きいお兄さんが意地悪言いますわ……」
椎名 : 「そうか、それは大変だ! 今哲馬お兄さんが意地悪なお兄さんを成敗してあげるからね!」(バキバキバキバキ)
ボティス : 「ちょっ! ……れ、レディーです、大人のレディーです!」
沙織 : 「レディーですわ! ……今日は、晃兄さまも、陽介おじさまも忙しい日だから、さおちゃん一人できましたの!」
丸子 : 「一人はいいのですが……それに、今日は平日ですよ? 学校はどうしたんですか?」
沙織 : 「……さおちゃん…………さおちゃん、今は学校に通っておりませんの……」
丸子 : 「そ、そうでしたか……す、すいません……」
沙織 : (しゅ〜ん)
椎名 : 「おいこら、マルコ。あんま詮索すんな〜人間には色々、事情があるんだからな」
丸子 : 「……そう、ですね。すいません、小さいレディー。では、先生の仕事場見学を致しますか?」
沙織 : 「あっ……はいですの! ……私、月岡沙織ともうします。ヨロシクお願い致しますわ!」(と、ふわりとスカートを揺らす)
丸子 : 「私は、丸子次狼(まるこじろう)ともうします。哲馬先生の、チーフアシスタント……原稿を描くお手伝いをしたり、スケジュールの管理をしております。よろしくお願い致します」(ペコリ)
沙織 : 「よろしくお願いしますの、丸子のお兄さま!」
丸子 : 「さぁ、オマエも自己紹介しろ、ボティス」
ボティス : 「はぁっ!? 何で俺がこんなガキ相手に……」
椎名 : 「あ〜、何か生意気な口を叩く男を一人、天井までかっ飛ばしてやりたい気分だなー!」(ぶーん、ぶーん!)
丸子 : 「……自己紹介をしないと、オマエの今後を保証できんぞ」
ボティス : 「チッ……俺は、ボティス・ビュート。ここのアシスタント……だな」
椎名 : 「コーヒーを煎れるのがうまいだけが特技のアシスタントだな」
丸子 : 「カレーを作るのも上手いですよ。メシスタントですね」
ボティス : 「失礼な事言うなオマエらはよー! ちゃんとベタもぬれるぞ俺は!」
沙織 : 「わかりました! アシスタントの丸子様と、メシスタントのボティス様でらっしゃいますね!」
ボティス : 「だからメシスタントじゃねぇって……!」
椎名 : 「まーまー、とりあえず仕事の現場を案内してやろうぜ。な?」
丸子 : 「そうですね……とはいえ、この現場は哲馬先生含めて男ばかり。男所帯なのであまり綺麗ではありませんが……」
ボティス : 「哲馬の机、すぐ汚れるんだよなー」
椎名 : 「男の机はジャングルなんだ、仕方ない……」
沙織 : 「ふわ〜……ふわぁぁ〜……ここが哲馬お兄さまの机ですわね! ……何だか思ったよりゴチャっとしておりますが、ここで哲馬お兄さまの漫画が生まれていると思うと、ドキドキ致しますわ〜」
丸子 : 「こっちがまだ、下書きだけの原稿で……これから、先生がペン入れする予定のがコレ。もうペン入れが終わっているのがこちらですね、こちらは私がこれから背景を入れる予定ですが」
沙織 : 「背景! 哲馬お兄さまの漫画の背景は、丸子お兄さまが描いてらっしゃるのですね!」
丸子 : 「はい……これはまだ、ペン入れが終わったばかりの原稿ですね。これから、消しゴムをかけて……あちらにいる、ボティスがベタ……髪の毛や背景などを、墨で黒く塗る作業をします」
沙織 : 「ベタ塗り! ……聞いた事はありますわ! さおちゃんも、お手伝いしたいです! 何か出来る事ありますの?」
ボティス : 「はっ、ガキがプロの原稿手伝える訳ねーだろ!」
沙織 : 「む〜、さおちゃん、図工の成績とってもいいですわ! 塗り絵も上手ですの!」
丸子 : 「まぁまぁ……手伝えるかどうかはさておいて、作業は見せてやって下さいよ。ボティス」
ボティス : 「……まぁ、作業工程くらいならな。ほら、ガキに原稿描くのがどんだけ難しいのか見せてやるぜ!」
沙織 : 「はいですの、見学させて頂きますわ〜」
ボティス : 「先ずこうやってベタを……あっ!」
沙織 : 「ボティス様、何かすっごく線からはみ出しているようですが、宜しいのですか?」
ボティス : 「っ……ちがっ、これはまぁ、その、何だ……こういう芸術だ!」
哲馬 : 「ベタをはみ出して塗った芸術があるか、ぼけがぁぁぁぁぁ!」(どんがらがっしゃ〜ん!)
ボティス : 「うわっ! 哲馬が怒った……だ、だ、大丈夫だ落ち着け哲馬! その、今、ホワイトでちゃんと修正するから……あっ!」(どぷっ)
沙織 : 「今、どぷってホワイトが零れましたけど……いいんですの?」
ボティス : (汗だくだく)
椎名 : 「…………テメェ、ボティス後で吊すからな?」
ボティス : 「あうぅ……」
沙織 : 「うー、さおちゃんも、お手伝いしたいですの! この、バツがついている所を塗ればいいんですの?」
丸子 : 「そうですよ……何なら、ちょっとやってみますか?」
ボティス : 「なっ、何いってんだよマルコ! こんなガキに原稿なんて出来る訳が……」
丸子 : 「その原稿を盛大に汚している貴方が何いっても説得力ありませんよ……それに、ボティス。貴方が横で見ていて、まずかったら修正させればいいだけの話でしょう。違いますか?」
ボティス : 「なっ、なーんだよ! そんな雑務、オマエがやれば……」
丸子 : 「私は、今し方貴方が汚した原稿の修正に入ろうと思いますので……お願いしますよ?」
ボティス : 「う……」
沙織 : 「お願い致しますわ、ボティスおにーさま!」(ペコリ)
ボティス : 「む……くっそ、仕方ねーな……ほら、やってみろ。バツの所と、枠からはみ出さないように塗るんだぞ?」
沙織 : 「はいですの! 一生懸命塗りますわ!」
ボティス : (とはいえ、小学校に通うようなガキだからな。何しでかすかわかんねーし、ちゃんと見てねーと……)
沙織 : 「〜♪ 〜〜♪」(塗り塗り)
ボティス : 「……って」
沙織 : 「出来ましたの! これでいいですの?」
ボティス : 「上手いなおい! ……何だよ、最近の小学生ってこんなに絵ぇ上手いの? それとも日本の子供って全体的に絵ぇ上手いの!?」
丸子 : (ひょっこり顔を覗かせつつ)「たしかに上手ですね、初めてにしては上出来です」
椎名 : 「おぅ、普段のボティスより上手いんじゃねーのか?」
ボティス : 「そ、んな事ねぇ……ねぇ、と、思う……よね?」
沙織 : 「えへへ、誉めて頂きましたの! もっと頑張りますわよ〜!」
丸子 : 「……この子なら、覚えさせればツヤベタくらいすぐいけそうですね。もしもの時の為に、育てておきますか?」
椎名 : 「そうだな、ボティスもいつクビにするかわからないしな……」
ボティス : 「ちょ、首とかっ……やめっ、縁起でもない事言わないでくれよっ! 俺頑張ってる、俺頑張ってるよー!」
沙織 : 「さおちゃん、お手伝いしますわ! そしたら、哲馬おにーさまとずーっと一緒に居られますものね!」
椎名 : 「…………何より、ボティスよりずっと可愛いというのはポイント高いよな」
丸子 : 「そうですね、ボティスはいてもサンドバッグ代わりくらいにしかなりませんものね」
ボティス : 「ちょ! お前ら本気で俺を何だと思ってるんだよ! くそー、俺の方が優れているって所を見せてやるぜ! 哲馬、次の原稿よこせよ!」
丸子 : 「お、珍しくボティス君がやる気ですよ先生」
椎名 : 「ん〜、でも今そんなに急ぎの仕事はないからなァ……原稿出来るまで、メシでもつくっててくれねーか?」
丸子 : 「そういえば、そろそろお昼時ですものね」
ボティス :「メシだな! ……カレーでいいなら作るぜ、カレー!」
沙織 : 「カレー! さおちゃん、カレー大好きですのっ……ボティス様、お手伝いしますわ。さおちゃんにも、カレー作らせてくださいませ」
ボティス : 「よし……いいか、原稿はちょっと、その……俺が負けた的部分もあったかもしれねぇ! けどな、カレー作りは負けないからなっ!」
沙織 : 「さおちゃんも、カレー作るの上手ですわよ! ボティスお兄さま、一緒に作ってとーっても美味しいカレーにしましょうねっ!」
ボティス : 「おう!」
賑やかな声が、小さな仕事場に響く。
幼い少女と、それを取り巻く男たち。
普通なら出会わなかった彼と彼女は出会い、室内を暖かな笑顔に包み込む。
全ては世界樹の迷宮。
ハイ・ラガード公国の出会いがもたらした幸福である。
そう、彼女は幸福だった。
偶然とはいえ、出会えた事が。共に、笑いあえる事が。ふれあえる事が。
だが、全ては仮初め。
その出会いは偽りに満ち、終わりの時は確実に近づいていた……。
ゲーム終了まで、あと21日。
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