> ハイラガ行 〜 新世界より。






 大陸の彼方にあるハイ・ラガード公国。
 その街で「冒険者酒場」を経営するマスターは、客を相手にしながらも心ここにあらずといった様子だった。

 ……遅い。

 その前日。
 マスターは、あるギルドに新しい仕事を頼んでいた。

 迷宮にわき出るという石清水。それをもってきてほしい……。
 仕事としては至って簡単な仕事のはずだった。だが、あまりにも遅い。

 簡単な仕事だといえど、迷宮では何がおこるかわからないのが現実だ。
 ひょっとしたら……。

 マスターは樽のような大きな体に似合わず、心配そうな表情を浮かべながら幾度も出入り口を眺めていた。
 だがその日も、彼らは帰ってこなかった……。

 迷宮は、自然豊かで穏やかな森に見える。
 だがその内に住む魔物たちは決して穏やかな気質を持ち合わせてはいない。

 ……迷宮の露と消えたか。
 酒場のマスターが今日の営業を終えようとした、その時。


シュンスケ : 「……遅くなりました、マスター!」


 賑やかな、声がした。


ミクト : 「全く、オレの言う事を聞いてたらもっと早く終わったってのに……」


アクセル : 「うるさい! お前がもっと役に立ってれば……」



 とたんに、酒場が賑やかになる……。
 全く、もう店じまいだというのに冒険者という奴らは時間もわきまえない奴らばかりだな。

 その思いとは裏腹に、マスターは白い歯を見せて笑っていた。


 「それで、お前たち……仕事は無事終わったんだろうな?」


 誰かが頷き、水筒を差し出す。
 ハイ・ラガードの時は、ゆっくりと夜を刻み始めていた。




> それはへと続く大きな一歩である。




ミクト : 「タラララッ、タッ、タッ、ター!」


ローズ : 「どうしましたの、ミクトお兄さま? すっごいご機嫌ですの!」


アズマ : 「というか、それ、急にド●クエのレベルアップ音じゃねぇんですかねぇ……」


GM : 「メーカーの垣根を越えてしまったな……何があったんだ?」



ミクト : 「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれました! この度、俺は無事にレベルがあがり! な、な、なんと! スキルを習得しましたー!」




一同 : 「「「おお〜!!!」」」




アクセル : 「……って、驚く事じゃないだろそれは! 普通、スキルは最初の段階でもっているもんだ!」


ミクト : 「うるさい! ふふふ……これでもう、お前に役立たず扱いされる筋合いはなくなった! って事だ。何せ俺は睡眠の呪言を覚えたんだからなー! これで敵を眠らせ放題! 眠らせている敵にしたい放題だぜ!」


アクセル : 「……本当に役に立つのだか」


シュンスケ : 「まぁまぁ……いいじゃないですか、頼りにしてますよ。ミクトさん」


ミクト : 「おぅ、まかせておけ! どーんと来い超常現象だ!」


GM : 「超常現象を防げる能力だとは思えんが……ともかく、セッションをはじめるか。前回、無事にクエストを終えた君たちだが……」


アズマ : 「クエストは無事に終わったし、上に行く怪談も見つけてますからねぇ。ひとまず、上を目指してみましょうか?」


シュンスケ : 「そうですね……この階も、概ね探索していますからね」


アズマ : 「おっ、積極的になってきましたね、シュンスケの旦那? それじゃ、新しい階を目指して進んでみましょうや!」



一同 : 「「「おー!」」」




GM : 「……という訳で、早速目指すは2階だ。長いフロアを抜け」


ローズ : 「針ネズミが出ましたわー」


アズマ : 「返り討ちにしてやりましょうや! ……よござんすか?」


GM : 「うむ……まぁ、キミたちも大概強くなってきているからな。さして問題なく撃退できる」


アズマ : 「ふぅ、またつまらぬモノを切ってしまいやした……」


ミクト : 「何だよ、斬鉄剣か?」(笑)


アズマ : 「一度言ってみたかったんでござんす」(笑)


GM : 「針ネズミを越え、ひっかきモグラを越え……広場の中央にいる、手負いのモンスター……」


ローズ : 「まだいらっしゃいますの?」(びくびく)


GM : 「まだいらっしゃるが、動く様子は相変わらず見せないな」


シュンスケ : 「刺激しなければ動かなそうですね……あまり触れずに、そろり、そろりと行きましょう」


アクセル : 「そうですね、静かにいきましょう…………余計な事するなよ、白ブタ」


ミクト : 「それは、この動かないモンスターの尻をけ飛ばせ! というフリかねアクセル君? 芸人の『やるな』は『やれ』の同義語だよな?」


アクセル : 「黙って進めっていう意味に決まってるだろーがぁぁー!」(ギリギリギリ)


ミクト : 「ちょ、首! チョークはいけません、きまってますよ! 苦しいです。おじさん苦しいです!」(ぶくぶく)


GM : (何だかんだいっても、アクセルとミクトが一番煩い気がするのは気のせいだろうか……)


ローズ : 「無事にモンスターさんの隣を抜けましたわー!」


アズマ : 「上への階段もあと少しでさぁね……さて、鬼が出るか蛇が出るか……」


GM : 「そんな、いきなりモンスターが出たりはせんな……2階も、一見すると1階と大差ない新緑の眩しいフロアになる」


シュンスケ : 「見た目は今までとかわらないみたいですね……」


アズマ : 「だけど油断しちゃいけませんぜ……迷宮の一歩奥に進んでるにゃ違いねぇんだ。注意して進みましょうや」


GM : 「うム……注意深く進むキミたちの前で、巨大な影が揺れる。大人の背丈ほどありそうなそれは、鋭い棘に包まれていた……さて、戦闘だな。敵は、オオサボテンだ」


ローズ : 「きゃぁ! サボテンさんが歩いてますの! 植物なのに、不思議ですわ〜」


アズマ : 「……何か異常なことが当たり前の迷宮で、そこを驚くというのは逆に新鮮な気がしまさぁね


GM : 「そうだな……さて、オオサボテンは殺気だった様子でキミたちに向かってくるが……」


ミクト : 「ふふふ……ここは俺の出番だな!」


シュンスケ : 「ミクトさん?」


ミクト : 「今まで単なる応援係だった俺だが、今は一味違うぜ! 何せ、スキルを覚えたんだからな!」


アクセル : 「だから、お前以外の全員がもう普通にスキルを覚えているんだが……」


ミクト : 「細かい事は言うな! 折角だから俺はスキルをつかってこのオオサボテンを足止めしてやるぜぇぇぇぇ! という訳で、スキル発動! 睡眠の呪言……どうだ!」



 オオサボテンにはきかなかった!



ミクト : 「…………あれ?」


GM : 「利かなかったようだな」


ミクト : 「そ、そんなー……いや、別に俺1ゾロふってねぇぞ!? おい!?」


GM : 「相手の精神力抵抗値が高かったんだろう、お前の出目じゃ抜けなかったんだな……」


ミクト : 「そんなはずはっ……折角スキル覚えたのにこれではまだ応援係のまま……もう一度っ、睡眠の……!」


GM : 「その前にオオサボテンの攻撃だな。いくぞ!」(ずごばきっ)



ミクト : 「へぶぅっ!」



アクセル : 「全く、不用意に前に出てくるな! ……植物なら弱点は炎かな。フレイムショットショットで!」


アズマ : 「アタシはちょいと様子見もかねて、通常アタックにしておきましょうかね……」(チャキッ)


GM : 「……単体だと集中攻撃には流石に弱いな。それで倒れた」


アズマ : 「あっけないもんでござんすね……」


ミクト : 「でも、俺、血ぃびゅーびゅー出てるんですけど……」(どくどく)


アクセル : 「スキルが出来たからって粋がって不用意に近づくからだ!」


ミクト : 「怒られた! 俺、怪我したのに怒られたよ。うぇ〜ん」


シュンスケ : 「はいはい、今キュアしますからね」(よしよし)


ミクト : 「うぇ〜ん、シュンスケお兄さんうぇ〜ん……でもキュアはローズちゃんからしてもらいたいです! 貴方の娘さんからしてもらいたいです!」(キラキラ)


シュンスケ : 「……」(無言でキュア)


ミクト : 「そんな、娘さんにしてほしかったのにぃ!」(がびーん)


シュンスケ : 「……ローズ、あのお兄さんにあまり近づいてはいけませんよ?」(ニコ)


ローズ : 「わかりましたの!」


アズマ : 「さて、準備を整えた所で先に行きましょうや……ずずずいっと、奥に進んだ所で、何かありますかねぇ?」


GM : 「うム……キミたちが先に進むと、扉があり急に開けた草原に出る。そして、その草原には……今まで出会ってきたモンスターとはまた違う、巨大な影が徘徊しているようだ」


アズマ : 「今までと違うモンスター、ですかい?」


GM : 「そうだ……MAP上でもシンボルが現れる……見るからに他のモンスターとは格が違う雰囲気を、醸し出している」


アクセル : 「それって、1階にいた手負いのモンスターみたいに姿が見えているんですか?」


GM : 「あぁ。だが、1階の敵とは違い、こちらはキミたちが1歩動けば同じように1歩動く」


シュンスケ : 「……F.O.Eですね?」


アクセル : 「F……って、何ですか。兄貴?」


ミクト : 「知っているのか、雷電!」


シュンスケ : 「わ、私は雷電という名前ではありませんが……えぇっと、これはField On Enemy。フィールド上にいる敵……という意味で、つまりは見える強敵ともいえる存在ですね。FOE自体にも『敵対者』という意味があります。つまるところ、私たちの邪魔をしようとする厄介な相手でしょう……」


アズマ : 「へぇ……よくご存じですねぇ、シュンスケの旦那?」


シュンスケ : 「えっ? ……い、い、いえ! たまたま知っていただけですよ!」


アズマ : 「ふぅん……何にせよ、触らぬ神に祟りなしってやつですかねぇ? どうします?」


ミクト : 「触らないっていっても、結構フラフラしてるぜあいつら……」


ローズ : 「でも、ぐるぐる回っているだけみたいに見えますわ!」


アクセル : 「行動パターンがあるみたいだね……」(トコトコ)


シュンスケ : 「あ! 危ないですよアクセル。あんまり近づいたら……」


アクセル : 「大丈夫ですって、アニキ……どうです、GM。あいつらは、こっちにくる様子ありますか?」


GM : 「いや、キミたちは意に介せず進んでいるようだな」


アクセル : 「……やっぱり、こいつ、特定のルートを回っているだけですよ。多分、そのルートに入らなければ大丈夫だと思います」


ミクト : 「ホントだろうなぁ……」


アズマ : 「まぁ、今は信じて進むしかないでしょう? よござんすよ、アクセル坊の観察眼を信じて進んでみましょうや……F.O.Eの先に立たないようにすればいいんでさぁね?」


アクセル : 「はい、幸い避難できる場所もあるみたいですから注意深く進んでいきましょう」


GM : 「……キミたちが後ろをついて歩いても、F.O.Eはさして気にする様子もなく自分の進むべき道を歩んでいるな」


シュンスケ : 「……大丈夫そうですね」(ほっ)


ミクト : 「よし、このままやり過ごしてこの階層はサッサと抜けちまおうぜ!」



 かくして始まった、さばみそギルド面子の2階探索。
 その途中。




ローズ : 「あ……」


アズマ : 「ん、どうかしやしたか。ローズお嬢ちゃん?」


ローズ : 「見てくださいませ、あんな高い所にリスさんがいますの!」


シュンスケ : 「あ、ホントだ……見た事のない奴だなぁ」


ローズ : 「あ、あの。シュンスケおじさま。私、リスさんなでなでしたいですの……触ってもいいですの?」


アクセル : 「お、おい。ダメだよローズ。もし危険な生き物だったら……」


アズマ : 「その時は、アタシらがお嬢ちゃんを守ればいいでしょうに……よござんすよ、お嬢ちゃん。ナデナデしてきなせぇや」


ローズ : 「わーい……リスさん、おいでおいでー、ですの」


GM : 「……リスは、少し小首を傾げると恐る恐る近づいてくるな」


ローズ : 「わぁっ……頭なでなでさせてくれますの? なでなで……あはぁ、可愛いですの……」(うっとり)


GM : 「と、暫くローズと戯れているリスは、不意に彼女の手を駆け上り、パーティの荷物袋へと潜り込んだ!」


アクセル : 「!? あ、こいつ……ダメだ、この中にはアイテムが……!」


ローズ : 「きゃぁ! リスさん、悪戯したらダメですの! ダメですのよ!」


GM : 「と、荷物から引っ張り出す間もなく、リスはアリアドネの糸をくわえると、そのまま森の中に消えていった……」


アクセル : 「!? やられた……」


ローズ : 「ふぇぇぇぇぇぇ! リスさんにとられましたの! ……ローズのせいですわ。私が、リスさん触りたいっていったから……ローズがワガママいったから。私悪い子ですわ。ふぁぁぁぁぁぁん!


シュンスケ : 「な、泣かないでよローズ。ほら……」(なでなで)


ミクト : 「そ、そうだ別にローズは悪い子じゃないだろっ! ほら、アメちゃんあげるから……」(ぺろきゃん)


アズマ : 「そうでさぁでよ、お嬢ちゃん。また糸なんて買えばいいんですから……」(オロオロ)


ローズ : (ぐすぐす)


GM : 「大の男たちが女の子を甘やかしている構図だな」


アクセル : 「何だかんだいってみんなローズに甘いんだからなぁ……」



 悪戯リスにアリアドネの糸を盗まれたり。




GM : 「……君たちが迷宮の奥に進むと、周囲を警戒していると思しき衛士がキミたちに声をかけてくる。 衛士『やぁ、キミたち迷宮を冒険中の冒険者だね。役に立つアイテムを1000エンで売っているんだけど、買わないか? 武器と、アイテムがあるんだけど……』


ミクト : 「1000エン!? 高っけーなぁ。おいもうちょっとまけろよ」(武器をチラつかせつつ)


シュンスケ : 「それじゃぁ、おどしじゃないですか! でも、1000エンはたしかに高いですよね。どんな武器でしょう……」


GM : 「それは衛士は教えてくれないな。『役に立つ武器だよ』と言うだけだ」


アクセル : 「どっちか一つしか買えないんですよね……迷うなぁ」


シュンスケ : 「せめて武器がどんなものだか分かればいいんだけど……」


ローズ : とてとてとてとて。


GM : (衛士)『ん、どうしたんだいお嬢ちゃ……』


ローズ : ぱかっ。


GM : 「あ! こら、勝手に衛士の鞄をあけるな……!」


ローズ : 「おじさまー、中にはグラディウスが入っていましたわよー!」


シュンスケ : 「グラディウス……たしか武器屋で280エンくらいでうってたよね?」


ローズ : 「アイテムは、テリアカβオールみたいですのー!」


アズマ : 「そりゃ、レアアイテムじゃぁないですか? とても1000エンでは買えないモンでさぁ」


ミクト : 「決まりだな、テリアカβオールを買おうぜ!」



GM : 「というか、ちょっとこの方法は力業すぎやしないか、お前たちっ!」



ミクト : 「お、怒るんならローズに怒れよ! ガキがしたんだからなー」


ローズ : 「ローズがしましたの。ローズ、悪い子ですわ……」(しゅん)


GM : 「う」


ローズ : 「……そんな私でも、許してくださいます?」(キラキラキラキラ)


GM : 「…………今回だけだからな」(陥落)


ミクト : 「GMがローズの魅力に陥落した」(笑)


アズマ : 「幼子の無垢な瞳パワー絶大でさぁ」(笑)



 衛士に、高い武器をふっかけられそうになるも、逆に安値でいいアイテムを手に入れたり。




GM : 「敵が現れた、ひっかきもぐら2体だ」



ミクト : 「よし、まかせろ! 睡眠の呪言だ、ぁぁぁあぁっ!」



GM : 「……きかなかったな」


ミクト : 「がびーん!」


アズマ : 「ちょいちょいっと、おっぱらっちまいましょうや……よし、倒しましたぜ」


アクセル : 「よし……じゃ、もっと奥にいってみようか?」


GM : 「こうして奥に進む、と……また敵だ。今度は、毒吹きアゲハ2体」



ミクト : 「今度こそ、俺にっ、任せとけぇぇぇええぇぇぇ! 睡眠の呪言、だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



GM : 「きかなかったな」


ミクト : 「がびびびびびびーん!」



アクセル : 「ショット! ……どうだ?」


GM : 「うん、それで倒れた」


アクセル : 「ふん、他愛もないなっ……よし、先に行くぞ」



GM : 「先に進むと……今度出てきたのは、オオサボテンだ」


ミクト : 「………………」


アクセル : 「ん? どうした白あたま。もう、調子こいて睡眠の呪言をつかわないのか?」




ミクト : 「使いてぇーけど、もうTPがきれちまったんだよ、ばーか! バーカ! うわぁぁぁぁぁぁん!」



アクセル : 「……役立たず」(ぼそ)


ミクト : 「うるせー!」


シュンスケ : 「あ、あの。ま、まだスキルレベルが1だから、仕方ないですよ……気を落とさないでください」




ミクト : 「そういう慰めはかえって傷つくだろーが! うわぁぁぁぁん! グレてやる。不良になってやる。警察の前で煙草吸ったりしてやる!」




アズマ : 「旦那の年齢的には、何ら問題ない行動じゃないんですかねぇ、ソレ」(笑)



 スキルをとっても、ミクトさんがいまいちの成功率でガッカリだったり。




アクセル : 「随分奥地まできたなぁ……」


アズマ : 「相手の進路を読みながら、F.O.Eの来ない道を選んで歩く……単純かとおもいやしたが、存外精神が削れまさぁでな……」


ミクト : 「でも、あと少しで新しい階段が見つかりそうだよな! よし、さっさと進んじまおーぜぇー!」(だだだだっ)


アクセル : 「あ、危ないぞ白毛あたま! そっちは、まだ探索してない……」


GM : 「……そうしてミクトが走り出した時、丁字路の影から突如F.O.Eが現れた! 戦闘だ、敵は……狂乱の角鹿!


ミクト : 「え?」



アクセル : 「なぁぁぁ、何やってんだこの馬鹿カスメ! 略してバカスメっ!」


GM : 「敵はかなり興奮している……! ミクトを攻撃。ずばしゃっ!」



ミクト : 「うぁらば!」(一発死)



ローズ : 「きゃー、ミクトおにーさまが、ミクトおにーさまがぁぁぁ!」


アズマ : 「こりゃやってられませんねぇ……撤退、撤退でさぁ!」



 出会い頭にF.O.Eにぶちのめされたりしつつも。



アクセル : 「こっちはまだきた事のない道だと思うけど……どうだろう」


GM : 「……キミたちが迷宮の小道を進むと、その奥には上に行く階段があるな。どうやら、新しい道のようだ」


シュンスケ : 「!? 新しい階段ですか?」


GM : 「そのようだな……」




一同 : 「「「やった〜!」」」 (ぱちぱちぱち)



アズマ : 「それじゃ、早速いってみましょうや!」


ローズ : 「はいですの! 綺麗なお花がいーっぱいあるといいですわ〜」



 ……何とか、3階への道を切り開くのだった。




> 彼のは、フ……なんとか。




GM : 「さて、こうして3階へと赴いた君たちだが……」


ローズ : 「ここも緑がいっぱいですの! 新緑が気持ちいいですわ〜」


シュンスケ : 「でも、危ないモンスターがいっぱいいるからね? ローズはあんまり、僕たちから離れないでね?」


GM : 「そうこうして進んでいるキミたちの前を遮るように、一匹の影が躍り出た」


アズマ : 「何でしょう、敵でしょうかね……とりあえず、刀に手をかけて警戒しておきますが」


GM : 「影は、どうやら黒い狼のようだった……黒炭のように深く黒い、輝くような毛をもつ鋭い目をした狼だ」


アクセル : 「狼? 襲ってくる気配は?」


GM : 「ない。ただ、北にある小道を鼻先で指し示すとじっとその場で静かに座っている……どうやら、その小道へ行け、という事らしい」


アクセル : 「襲ってくる気配がないなら、野生じゃないのかな。誰かに飼われているのか……」


ローズ : 「すっごい、もふもふですの……もふもふしたいですわ……」


アズマ : とにかく、あの狼が指し示しているって事はそっちに何かあるんでさぁね……行ってみますが、よござんすか?」


ミクト : 「おう! あぁも意味深に出てこられたら気になるからな……」


GM : 「北の小道を進むんだな。すると、程なくして広い平原にたどり着く……誰もいない、だが誰かに見られている気がする」


アズマ : 「……」(無言で刀の鞘に手をかける)


シュンスケ : 「まぁ、まぁアズマさん……人なら敵意がないかもしれませんよ。声をかけてみましょう……誰か、いるんですか?」


GM : 「すると、その声かけに応じるように草陰から一人の男が姿を現す……物々しいプレートメイルを身に包んだ、聖騎士風の男だ」


ミクト : 「……そいつは、イケメンであらせられるのか?」


GM : 「ん? ……そうだな、重々しいアーマーなど似つかわしくない優男、とでもいうのか。爽やかな笑顔が印象的な好青年、といった所だな」




ミクト : 「そうか、よし。そいつを殺そう!」




アクセル : 「何でそうなる!」




ミクト : 「だって、RPGのイケメンなんて大概裏切るか敵になるかの存在だろーがよー! それに、イケメンなんて美女の心を鷲掴みにする罪な存在だ! 即刻ぶち倒すべきだ! そうしなければ、我々ブサメンが子孫を繁栄させられない危機が訪れるのだ!」



GM : 「仮にイケメンを撲滅した所で、おまえがモテるとは限らんが……」


アクセル : 「とにかく、この白あたまは俺が黙らせておきますから……えぇっと、その人はどなたですか。俺たち、面識はないですよね?」


GM: 「キミたちの訝しげな視線に気付いたのか、男は軽く一礼すると人の良さそうな笑顔を向ける。 (謎の男)『はじめまして、私の名前はフロースガル。ギルド、ベオウルフを率いているものだ』


シュンスケ : 「……ベオウルフ?」


ミクト : 「ん……ファンタジーの源流ともいわれる叙事詩の一つだな。英雄ベオウルフの活躍を書いた、ふるーい書物がベオウルフ、って名前で呼ばれている訳だ」


アクセル : 「へぇ……本当に、どうでもいい事では博識ですねぇ……感心します」


ミクト : 「どうでもいいとか言うなー! ちなみに、フロなんとかルって名前も、ベオウルフの登場人物の一人な」


GM : 「フロースガルだな」


シュンスケ : 「なるほど……それで、そのフローガスルさんが、何でこんな所に?」


GM : 「フロースガル、だ……。 (フロースガル)『いや、実は公国に新しい冒険者が現れた、って聞いてね……きっと、磁軸の柱の事は知らないだろうな。と思って、教えてあげようと、ここで待っていたんだ』


シュンスケ: 「磁軸……ですか?」


GM : 「うむ。彼は笑顔を浮かべたまま、自らの後ろにある磁軸の柱について教えてくれた……これは、機動すると街に戻った時、この場所から探索が始められる、という代物らしい」


アズマ : 「つまり、迷宮行き片道切符のワープゾーンって所ですかい?」


GM : 「そうだな、帰りの手段は各々アリアドネの糸を準備するか、自力で歩いて還って貰うかだ」


ローズ : 「どうせなら、行き来出来れば便利ですのに……」


GM : 「(フロースガル)『自由に行き来できる、樹海磁軸というものもあるよ。でも、もっと迷宮の奥にいかないといけないね……』と、そこでフロースガルの足下に黒く大きな狼が影のように現れる。さっき、道をふさいでいた狼だ。『さて、私はそろそろ行くよ。キミたちに磁軸の柱について教える事も出来たし、クロガネもきたからね……』



アクセル : 「その狼、貴方の飼い犬……じゃない、飼い狼だったんですか」


GM : 「(フロースガル)『あぁ、クロガネは私のギルド……ベオウルフのメンバーの一人さ、さぁ挨拶なさい。クロガネ』 フロースガルに促されると、クロガネは恭しく頭を下げた。随分となついているらしい……」


ローズ : 「かっ……可愛いですの……!」


GM : 「『じゃぁ、私たちはこれで……』と、ベオウルフの二人。いや、一人と一匹はその場を去ろうとする……」


ローズ : 「!? お、おまちくださいませ。フロースガル様!」


シュンスケ : 「どうしたんだい、ローズ?」


ミクト : 「!? まさか、この男に一目惚れかっ! ……許しません、ミクトランお兄さんは許しませんよ! ローズはみんなのお姫様! こんなイケメンふぜいに渡しはせん! 渡しはせんぞぉぉぉ!」


シュンスケ : 「そ、そうだよ! そういうのはローズにはまだ早い!」


ローズ : 「? 何を狼狽えてますの。おじさま、ミクトおにーさま? ローズは、クロガネをモフモフさせて欲しいだけですわ〜」


シュンスケ : 「そ、そう……何だ、良かった……」


ローズ : 「あの、あのっ……フロースガル様、クロガネをモフモフしたいんですが、宜しいですか?」


GM : 「フロースガルは、にっこり微笑むと。『あぁ、いいよ』と頷いてくれた。すぐに、クロガネはローズの足下にひかえるとごろりと寝そべる」


ローズ : 「クロガネ……えへへ、クロガネ。いいこ、いいこです……うふ、モフモフですわー。やわらかい、あったかいですの〜」(もふもふもふもふもふもふ)


GM : 「満足したか?」(笑)


ローズ : 「はい! ありがとうございます、フロースガル様! クロガネも、ありがとうですの!」


GM : 「『あぁ、さばみそギルドの皆も気を付けて進んでくれ。この先には強力な魔物がいるからね……』フロースガルはそう忠告し、迷宮へと消えていった」


ローズ : 「えへへ……」(満足げ)


アクセル : 「いっちゃった……結構手練れみたいでしたね」


シュンスケ : 「あぁ……でもいい人だったね、彼の忠告もあったし。何時でもここからやり直せるなら無理しないように進もうね。強敵もいるっていってたし……」


アクセル : 「そうですね、それじゃ先に進んでみましょうか……えぇっと、この先に扉があるのかな?」(がちゃっ)


GM : 「君たちが扉を開けると、圧倒的な殺意が肌に焼け付くようまとわりつく……眼前には巨大なカマキリに似た魔物が、殺気だった目を向けている。これは、君たちが敵うような敵ではないようだ……!」


アクセル : (バタン)


ミクト : 「あ、閉めた」


アクセル : 「……いつでもここから始められるようになった訳ですから、一度ハイラガの街に戻りましょうか」


GM : 「懸命な判断だな」(笑)


アクセル : 「一目でわかりましたよ……アレは、今戦ったらいけない敵だ、って……ね……」


ミクト : 「よっしゃ、じゃぁ帰ろうか……徒歩で!」


GM : 「徒歩か」(笑)


シュンスケ : 「まだアリアドネの糸も高いですから、仕方ないですね……」



 こうして一度ハイラガに戻った面子。
 仕切直しで、再度草原にいる強敵(カマキリ)の前へと赴く……。




アズマ : 「さて、またやっこさんの所に戻ってきやしたが……当然、まだいまさぁね?」


GM : 「うム……待っていて消えるモノではないからな」(笑)


アクセル : 「見た目からして、2階にいたやつと違いますね。行動パターンを見ながら進みましょう……」


ミクト : 「そんなめんどくせー事考えねーで、このまま真っ直ぐ北に、一気に突っ込んでみたらどーだ?」


アクセル : 「そんな事をして、うっかり価値当たって死んだら話しにならないだろう! とにかく、敵の行動パターンを見るんだ……一歩一歩、慎重に……」(トコトコ)


GM : 「敵は、キミに気付くとすぐに追尾をはじめる。キミたちの行く方についてくるようだ」


アクセル : 「距離をとって様子を見ますよ……うっかり距離を詰めすぎて、戦闘に入ったらモンスターが倒せないうちにアイツが乱入してくる事になりかねませんからね」


GM : (む……特に説明してないのに、戦闘中もF.O.Eが動く事に気付いてる……勘のいい子だな)


ローズ : 「……あ、敵さん、とまりましたのよ?」


アズマ : 「うん……でもまた、一歩進むとすぐに追尾モードになるみたいでさぁね」


アクセル : 「えぇ……3歩すすむと、向こうは1歩休憩するようですから、あいつをやり過ごすのに一番いい方法は……」


シュンスケ : 「……フロアに入った時、そのまま真っ直ぐ北に抜けるのがいい、かな」


アクセル : 「そうですね」




ミクト : 「ほうほう! つまり……俺が最初に提案した方法が正解、という事だな。うははははははは!」




アクセル : 「そうだけど、それを認めると負けた気がするから他の方法を模索しましょう!」


ミクト : 「えー……無理すんなって! もっと素直になれよボーイ?」


アクセル : (ぎりぎりぎり……)


ローズ : 「喧嘩はダメですわ、ミクトおにーさま。アクセル。さぁ、先に進みましょう〜」


アズマ : 「さらなる強敵も居るでしょうからねぇ……ゾクゾクしてきまさぁ……」


GM : 「そんな君たちの前に現れたのは、オオテントウ……ボールアニマルを引き連れての登場だ」


シュンスケ : 「オオテントウ?」


アズマ : 「たかが虫風情でさぁ、恐れるに足らないでしょう……とにかく、ボールアニマルとやらから倒して、虫はじっくり料理しましょうや! ボールアニマルに集中攻撃といきやしょう!」


GM : 「ふむ……そうして集中攻撃をすると、ボールアニマルは倒れる」


アズマ : 「よし、それじゃ、次はオオテントウの料理を……」


GM : 「だが一匹になるとオオテントウは先に仲間を呼ぶね……ラフレシアが現れた!」


アズマ : 「え?」


GM : 「ラフレシアの攻撃! シュンスケ君へ……えい」(どがばきっ)


シュンスケ : 「えっ!? ちょ、まってください。その攻撃、一発で倒れてしまったのですが……」(汗)


アクセル : 「あ、アニキ!? アニキー!」


ミクト : 「……どうする、アズマ?」


アズマ : 「……仕切なおしましょうや。撤収! 撤収ぅー!」



 かくして、早速3階の敵の洗礼を受けたさばみそギルドの面子。
 その後も。




ローズ : 「きゃー、追いかけてきますわ! 後ろからカマキリ様がおいかけてきますわー!」(じたじた)


アクセル : 「くぅ……威嚇射撃!」


GM : 「……それで足止め出来るな。カマキリは暫く留まっている」


アズマ : 「いまのうちに、とっとと抜けちまいやしょうや!」


 カマキリに追いかけられ。



GM : 「シンリンサイの力溜め! 効果は抜群だ、それ!」(ごいーん)


アクセル : 「あ! ……後は任せました、皆さん」(ばたり)


シュンスケ : 「アクセル! アクセル〜!」


 シンリンサイに一撃でのされ。



アズマ : 「オオテントウは最後に残さないように攻撃しなきゃいけませんね……っと、しまった!」(ミスり)


アクセル : 「アズマさん!? ……俺、ボールアニマル倒しちゃったんですが」


GM : 「ふむ……期待されているようだから出そう。ラフレシアだ」


アズマ : 「……面目ねぇ」


シュンスケ : 「ああぁ、命あってのものだねです! 撤収、撤収ー!」


 ラフレシアに度々撤退ちつつも、着実に力をつけ。
 迷宮の奥へ、進んでいくのであった……。




GM : 「……そうして、奥に進んでいくとキミたちの前に一つの扉が見えてくる」


ローズ : 「新しい道ですの! ……今度は、ローズが開けますわー」


シュンスケ : 「あ、危ないよローズ。危険なモンスターも、いるかもしれないし……」


GM : 「と、キミたちが扉にふれる前に、誰かがその手をとめる。 『その扉を開けるのはまってくれ』 振り返れば、そこには3階の入り口で親身な説明をしてくれた、ギルド:ベオウルフのフロースガルが立っていた。隣にはクロガネも従えている」


アクセル : 「フロースガルさん……」


ローズ : 「クロガネー!」(もふっ)


アズマ : 「……先に進むのは待て、ってこの先には何かあるんですかい? ねぇ、フロースガルの旦那?」


GM : 「その質問に、フロースガルは頷いて肯定する。だが、何があるのかは語ろうとしない。ただ『詳しくは大公宮で聞いてくれ』というだけだ」


アズマ : 「大公宮?」


ミクト : 「あの、悪役っぽいジジイがいた場所だな! ……仕方ない、ちょいと戻って話聞いてこようぜ」


一同 : (無言で頷く)




> 獣をおき出せ!




GM : 「フロースガルに促され、君たちはハイラガの街に戻ってきた訳だが……」


アズマ : 「とにかく、話を聞いてみなきゃ始まりませんでしょうに……いきやしょうか、大公宮とやらにね」


GM : 「大公宮にいくと、以前見た老人が『困ったのぅ、どうしたもんか……』と青い顔をしてうろうろしているね、どうやら……」


ミクト : 「そのジジイ、話なげぇから要点だけかいつまんで説明してくれねぇかな? ジジイの顔に用はねーし」


GM : 「また随分ぶっちゃけた意見だな。(笑) まぁいいが……彼の話を要約すると、フロースガルが行く手を遮っている扉の向こうに出かけた衛士が10人、戻ってこないそうだ」


シュンスケ : 「衛士って、迷宮にたまに出てくるバケツみたいな兜を被っている人たちですよね」


GM : 「別にバケツっぽい兜ではないと思うが……彼ら衛士は主に、迷宮でも安全の確保が出来ている浅い階層で、新米冒険者のサポートなどをしているのだが、その衛士が10人、あの扉の向こうにいったまま戻ってないらしい。恐らく、凶悪な魔物に襲われたのだろう……という事で、現在あの場所は封鎖中だ」


シュンスケ : 「ふむふむ……それで、その衛士さんが無事かどうか、確認する人材を求めている、と?」


GM : 「そういう事だな……何があるかわからないから、危険な任務だがやってもらえるか?」


ミクト : 「やってもらえるか? も何も……やらねぇとあの、フロなんたらはどいてくれねーんだろ? 受ける意外の選択肢、ねーんじゃねーの?」


GM : 「まぁ、ぶっちゃけていうとそうだな。(笑) 強制イベント、って奴だ」


アズマ : 「よござんすよ、その迷宮の先にいる強敵、ってのも気になりますし……衛士の無事、確かめてやりましょうや」


GM : 「キミたちが快く受けてくれたのを見ると、老人はキミたちに『引き寄せの鈴』を手渡す。これは、F.O.Eを自分のいる方向へとおびき出す為のアイテムだ」


アクセル : 「……困ったらコレをつかって強敵をやりすごせ、って事かな?」


シュンスケ : 「そんな困る事はあってほしくないけど……とにかく、これで先に進めるね。ミッションを受けた事、フローガスルさんに報告してこよう!」


GM : 「フロースガルだからな……フロースガルは、キミたちが任務を受けた事をしると黙って頷いた。 (フロースガル)『そうか、さばみその君たちがあの任務を……この先にたしかに強敵はいる。本当は私が手伝うべきなんだろうけど、私はやらねばならぬ事がある……くれぐれも気を付けて』と、道を開ける」


ローズ : 「クロガネ、気を付けてね。クロガネ……」(ぎゅ、もふもふ)


アクセル : 「ローズはクロガネの心配ばっかりだなぁ……」


アズマ : 「とにかく、先に進みましょうや。何がありますかねぇ?」


GM : 「キミたちが先に進むと、そこにはかつて衛士だったであろう凄惨な光景が広がる……飛び散る血と、肉。凶悪な魔物に嬲られた痕跡が……」


アクセル : 「!? ローズ、見ちゃダメだ!」(目かくしっ)


シュンスケ : 「アクセルも、見ちゃいけません!」(目隠しっ)


アズマ : 「GM、グロいのはわかりやしたから、ちびっこの為その映像を出すのは控えてもらえませんかねぇ。このままだと、アクセルとローズが目隠しをして進まなきゃいけなくなりさぁ」


GM : 「うむ、そうだな……では、代わりにグロ画像をポピーの画像と取り替えておこう」


ミクト : 「一気にお花畑になったな」(笑)


アズマ : 「で、この広間……見た所、ひぃ。ふぅ、みぃ……3匹のf.o.eが居るみたいでさぁねぇ」


アクセル : 「でも……(トコトコ)……そのうち2匹は、2階にいたやつっぽいですよ。特定のルートを徘徊するタイプの奴です。この階の広い草原であった、強敵のf.o.eじゃないみたいですよ。動き方が違いますから」


ローズ : 「奥の方に、全く動かないf.o.eさんも居ますわー」


アズマ : 「全く動かないf.o.eか……ちょいと、臭いまさぁね。生存者がいるとしたら、あの先なんじゃないですかい?」


ミクト : 「そうだなぁ……残念ながら、ここには生きてた人間のいた気配はもうねぇや。というか、ここに居たらいくらベオウルフのフロなんたらが忙しいからって、流石に保護してるだろ。扉の前に居たんだし」(笑)


アズマ : 「そうですねぇ……とはいっても、あいつは動きそうにありませんから……」


アクセル : 「……さっきもらった、引き寄せの鈴の出番でしょうか」


ミクト : 「だな! そのものズバリって名前すぎてかえってあやしいくらいだが! 実はこのモンスターもあの、ジジイの策略じゃねーのと思わせるぜ!」


GM : 「そんな事はない……と、思う」


アクセル : 「とにかく、アイツから距離をとって鈴をつかってみましょう……引き寄せている間に、脇を通り過ぎて……あの、f.o.eが塞いでいる道を進めばいいはずですから」


GM : 「……では、早速引き寄せの鈴をつかってみるんだな」


アクセル : 「効果の範囲はMAP上で3マス分くらいですから、これくらい離れていれば……さぁ、どうだろう」(ちりーん、ちりーん)


GM : 「すると、F.O.Eはその音に気付いて、ふらふらとやってくる……」


アズマ : 「よっしゃ! 今です、行きましょうや」


ローズ : 「ううう、凄い気迫を感じますの……怖いですわー」


アクセル : 「1階にいた手負いの魔物と違って、こっちはおびき寄せているだけ。戦う気満々の敵だからね……」


シュンスケ : 「見ると気後れしてしまいますから、見ないでいきましょう……」


GM : 「……キミたちはおっかなびっくりF.O.Eの脇を通り抜け、何とかやり過ごす事に成功した……」




一同 : 「「「よかった〜」」」(安堵の吐息)





GM : 「そして、この奥にはまだ道があるようだ……」


ローズ : 「みち!」


アズマ : 「さて、こっちにあのご老体が望む衛士がいればいいですけど……出来れば生きていてほしいですがね」


GM : 「そうしてキミたちが奥に進み、扉を開けた後。傷だらけの男が、怯えたような目を君たちに向けている……どうやら、あのf.o.eが入ってきたのだと勘違いしたらしい。鎧や紋章から、キミたちが探していた衛士に間違いはない。だが、ここに人がくると思ってなかったらしく、かなり怯えた様子だ。『あ、あなた方は……』


ミクト : 「助けにきた、正義の味方って奴だぜ……大丈夫か?」


GM : 「キミたちの言葉に、衛士は目を輝かせてボロボロの身体を起こす。(衛士)『助けに来て頂きありがとうございました! あの、鹿の群に仲間が全てやられて途方にくれていた所だったのです……ですが、大変な事がわかりました。一刻も早く、この事を伝えないと……』


アズマ : 「おっと、あんまり無理しちゃいけませんぜ……肩を貸しますから、とにかくハイラガの街に戻りましょうや」


GM : 「(衛士)『ありがとう、ございます……』衛士は、よろよろの身体をアズマの肩に預けた。一度、街に戻るかい?」


アズマ : 「そうでさぁねぇ……傷だらけの兵士をおいていく訳にもいきませんし、それに、この衛士のいう『大変な事』とやらも気になりますから。一度戻りましょうか。皆さん、それでよござんすか?」


一同 : (無言で頷く)


アズマ : 「それじゃぁ、一度戻りましょうや……さぁて、どうなる事やら……でさぁな」





 ……かくして、無事ミッションを追えたさばみそギルド一同。

 だが彼らは、まだ知らなかった。

 それが恐ろしい魔物との戦いの序曲であるという事を。

 そしてそれが、別れの序曲であるという事も……。


 まだ何も知らぬまま、さばみそギルドの面々はハイラガの街へ戻る。

 傷ついた衛士の身体を、支えながら……。







劇 : 月岡陽介の日常。





 幕間劇を始めよう。

 それは、現実世界の「彼ら」の物語。

 彼らの築く、日常。その欠片の物語。


 ……君は、彼らの現実にある日常に、触れても、触れなくても良い。


 ・

 ・

 ・


 本日のセッション前。

 都内 某ファミレス内――。






月岡沙織(ローズPL) : 「おじさま、おじさま……さおちゃん、いちごのパフェ食べたいですの……注文して、いいですか?」(恐る恐る)


月岡晃(アクセルPL) : 「こら、沙織。デザートまでは食べ過ぎだって……無理いって、陽介さんを困らせちゃダメだぞ」


月岡陽介(シュンスケPL) : 「いいよ、いいよ、晃……久しぶりの外食だし、好きなもの頼んでいいよ。沙織」


沙織 : 「わーい、ありがとうですの! おじさまっ」




椎名哲馬(ミクトPL) : 「よぉーっス」


狩名義明(アズマPL) : 「楽しそうな所悪いですが、ご一緒しても宜しいですかね?」


月岡 : 「あ、椎名さん! 狩名さん……」


晃 : 「狩名さんはいいけど、椎名さんはダメだ」



椎名 : 「差別! いきなり少年に差別されましたよコレ……何で狩名はよくて、俺はダメなんだよちくしょーッ!」


晃: 「だってお前、デカすぎるんだよ……一気にこの席が狭くなるだろ……」


椎名 : 「お前が俺の膝に乗ればいい話だろ……ほら、俺の膝に飛び込んでおいでッッ!」


晃 : 「絶っ対イヤだぁ! 陽介さん、店かえましょう、店!」


月岡 : 「でも、もう注文しちゃったし……それに、意地悪はダメだよ晃。ちゃんと、椎名さんも座らせてあげなさい」


晃 : 「……はーい」 (ぶすっ)


椎名 : 「おぅ、ガキは素直の方がいいぞ!」 (頭わしゃわしゃ、なでなで)


晃 : 「気易く触るな!」


月岡 : 「こら、晃、意地悪したらダメだぞ……すいません、椎名さん」


椎名 : 「ははは、気にするなって、ガキは多少元気なくらいが丁度良いってもんさ」


月岡 : 「すいません……」




椎名 : 「それに俺……ちょっとツンツンしているショタっこも美味しく頂ける部類の人間だからなッッッ! ツンショタ可愛いよツンショタ!」




狩名 : 「へ、へ、変態だー!!!」



沙織 : 「はい、狩名おじさま。椎名おにーさま、これ、メニューですの。好きなものをお頼みあそばせ、でーすわ」


椎名 : 「お、ありがとうさおちゃん」


狩名 : 「さぁて、何にしましょうかね……今日はご飯モノが食べたい気分なんですが……」


月岡 : 「しかし、お二人ともよく私たちがここに居るのがわかりましたね」


椎名 : 「いや、二人でメシどうしようかって話しながらウロウロしてたら、外からアンタらの姿が見えたからさ。折角なら一緒にメシでも食おうとおもって、ここにきたって訳だ。ここ、窓側の席だからな


沙織 : 「椎名おにーさま、狩名おじさまと一緒でしたの?」


狩名 : 「うん。駅で偶然出会ってね」


椎名 : 「俺今日、車じゃなかったからなー……でもこいつ、非道ぇんだぜ。駅で会った時、何度呼んでも気付かねーの! 全く、失礼しちゃいやがるぜ! ぷんすこ」


狩名 : 「あはは……まさか旦那が俺と同じ電車にのってると思わなくてねぇ、他の人が呼ばれているんだと勘違いしてたんだ」


月岡 : 「そうですか……あ、そうだ椎名さん! 本当は、セッションが終わってからお願いしようと思ったんですけど……」(ごそごそ)


椎名 : 「ん、何だよ?」


月岡 : 「これ」(すっ)


椎名 : 「コレ、って……何だよ、スケッチブックじゃねーか……コレ、どうしろっていうんだよ」


月岡 : 「椎名さん、漫画家でらっしゃるんですよね? ……うちの子に、是非、プリ●ュアを描いてもらえたらなぁ、と思いまして……」




椎名 : 「俺の漫画のキャラじゃないキャラを頼まれたし! しかもプ●キュアっ」




月岡 : 「ダメ、でしたか……」


椎名 : 「だ、だ、ダメというか……それ、俺の漫画のキャラじゃないからな? 俺、漫画家だけど画風がプリキ●アと全然違うというか……」


沙織 : 「わーい、わーいですの! 椎名お兄さまが、キュアシンフォニーちゃんを描いてくれますの! 嬉しいですわっ!」 (きゃっきゃっ)



椎名 : 「う!」



狩名 : 「……退路が断たれちまいましたね、旦那」




椎名 : 「仕方ねぇ! 描いてやりますとも、俺にっ、任せとけぇぇぇぇぇぇ!」(じゃらじゃらと画材を出しながら)



月岡 : 「ありがとうございます、椎名さん!」


狩名 : 「何だかんだいっても、結構いい人ですよね。旦那」


椎名 : 「うるせー……えーと、キュアシンフォニーでいいんだよな……」(ざっざっざ……)


沙織 : 「はいですの! ありがとうございますの!」


狩名 : 「……自分のキャラじゃない、といいつつ何でしょう……不思議と、書き慣れている気がするんですが、気のせいですかね。椎名の旦那」


椎名 : 「前のイベントで本出したばっかりだからな……っと、まぁあんまり深く考えないでくれよ。カルマが上がるぜ?


晃 : 「……思ったより、上手いんだな」(横から覗き見ながら)


椎名 : 「おぅよ、コレでもイベントでスカウトされて漫画家になった口だからな、俺……」


狩名 : 「へぇ……じゃぁ旦那、もしお声がかからなかったら漫画家になってなかったんですかい?」


椎名 : 「そうかもなぁ……俺、元々バンドやっててさ。音楽方面で活動出来ればなぁ……と思ってたんだが、事故で右手潰しちゃってさ。利き腕じゃなかったんだが、音楽出来る程は回復しなくてよー……音楽諦める事になった時、以前から同時にやってた漫画活動の方で声がかかって、こっちの業界に入ってきたんだよね」


晃 : 「……右手、事故ったの?」


椎名 : 「おぅ。今でも左右の腕の長さ違うんだぜ。ほら」(と、言いながら手術の傷痕を見せる)


月岡 : 「うわぁぁぁ……い、い、痛々しいですね……」


晃 : 「意外と、苦労してんだね」


椎名 : 「人に歴史あり、だぜ。坊主。 ……さて、折角だからカラーで描こうかな?」 (コピックじゃらじゃら)


狩名 : 「急に頼まれた割には、凄い種類の画材を持っている気がするんですが、気のせいですかねぇ」(笑)


椎名 : 「音楽出来なくなってから、その情熱が全部エロ絵……げふんげふん! 少々肌の露出が多い絵に向かっちまったからなぁ。結構普段から絵ぇ描いてるから、画材持ち歩く機会多いんだよ、俺」


沙織 : 「エロ絵ですのー?」


月岡 : 「……プリ●ュアの絵は、普通でお願いしますよ? 裸はダメですからね」


椎名 : 「わぁかってるって! 信用ねーなぁ………………っと、こんなもんでいいかな? どうかな、さおちゃん」(スケッチブックを差し出す)


沙織 : 「きゃー!? キュアシンフォニーですの! 素敵…………椎名お兄さま、ありがとうございますの!」(ペコリ)


椎名 : 「いーの、いーの。それだけ喜んでくれるなら、俺も描いた甲斐があったって……何なら、お前にも何か描いてやろうか。ひーくん?」


晃 : 「気易くひーくんとか呼ぶな! 大体、まんがなんて、俺そんなガキっぽいもの見てないし……」


月岡 : 「何いってるんだ晃、キミは毎週ナ●トを楽しみにしてるだろう? 描いて貰ったらどうだい?」


晃 : 「な、何いってるんですか陽介さん! お、俺別に……」


椎名 : 「ほー……晃君は忍者スキーかー、なるほどなー……」


晃 : 「ち、ちがう俺は! その、別に……」


椎名 : 「いいぜ、俺ナ●トのキャラなら結構描けるし〜……誰がいい? リクエスト聞くけど。いっとくけど、俺のナ●ト絵なんて激レアだからなー」(笑)


狩名 : 「たしかに、プロの漫画家が他のまんがのキャラを描くなんて、激レアでしょうな」(笑)


晃 : 「俺は、別に……」


椎名 : 「いーんだぜ、遠慮するなって〜、ナ●ト描けばいいか?」


晃 : 「あ……じゃ、じゃぁ、カ●シ先生をっ……お、お願いします……」


椎名 : 「うん、カ●シ先生ね。素直で宜しい……えーと、カ●シ先生は……」(ざくざく)


狩名 : 「本当に、書き慣れているみたいですが……ナ●ト本も出したんですかい?」


椎名 : 「いんや、これは海外でアニメイベントに呼ばれた時にな……プロの漫画家としてゲストで呼ばれたんだが、その会場は誰も俺の漫画を知らないでな………それで、やたらと『ナ●ト描いてください!』『私はシ●マルを!』と言われて、俺も仕方なく描いていたら、書き慣れてしまったという世知辛い思い出がだな……」


狩名 : 「……椎名の旦那ぁ」(ほろり)


月岡 : 「……大変なんですね、漫画家の方は」


椎名 : 「大変なんだよ、漫画家もな……っと、カ●シ先生のカラーはこれでよかったっけな……」(きゅっきゅ)


月岡 : 「すごい! 本当にお上手ですね……流石、プロの漫画家さんです」


椎名 : 「あぁ、自分でいうのもなんだが……正直、今俺、自分の原稿以上に本気で描いてるぜ!」


狩名 : 「何と! ……折角だから、俺も描いてもらおうかなぁ。椎名さんの漫画のキャラ……ファンなんですよ、椎名さんの漫画」


椎名 : 「何だ漫画家に絵ぇ描けとか安易に頼むなー、プロだから! それでメシ食ってるんだからな、俺! プライドあるんだからなー!」


狩名 : 「だったら、今日はおごりますよ、メシ」




椎名 : 「ならば描こう! 誰描く? 誰描く?」




晃 : 「意外なくらい安価なプライドだったな……」


椎名 : 「うるさい! 俺のこの巨体を維持する為のエンゲル係数をなめるな! 言っておくが人の三倍は食うぞ! 赤い奴だぞ赤い奴!」


狩名 : 「よござんすよ……それにしても、遅いなぁ。注文してから大分たつのに、まだ料理が届かないなんて……ファミレスは早いのが売りなのにな」


椎名 : 「ホントだよ……俺もカ●シ先生描き終わっちゃうぜ……っと、概ね出来た。ひーくん、これでいいか?」


晃 : 「だから、ひーくんって呼ぶなっ! あ、でも……絵、ホント、上手いんだね。その、えっと……ありがとう」


椎名 : 「いやいや、んじゃま、あと少しだから仕上げちまうな〜っと……」


月岡 : 「ありがとうございます……しかし、本当に遅いですね。注文……注文、あっ!?」


狩名 : 「……どうしました、旦那?」



月岡 : 「……よ、よ、よく考えたら私、まだ注文してませんでした……店員さん、まだ呼んでませんから!」




一同 : (ズコー!)




狩名 : 「……結構天然ですね、旦那? お子さんも苦労してるんじゃないですか?」(笑)


晃 : 「たしかに陽介さんは天然で、ちょっと危なっかしい所があるから、俺が見ていてもハラハラする事はありますよ。でも……」




月岡 : 「……さ、沙織! 沙織! も、もう一回注文を教えてくれるかな?」(わたわた)


沙織 : 「はいですの! ……えーと、さおちゃんは、海老とクリームソースのパスタと。あと、イチゴのパフェが食べたいですの!」


椎名 : 「俺は、相撲取りも満足サイズのでかでかピザと、ミックスグリル、ランチドリンク付き! あと、デザートは……」


月岡 : 「ちょ! まってください、覚えきれませんから……」(わたわた)




晃 : 「それでも、毎日楽しいですよ。俺は……陽介さんが父親になってくれて、良かったと。そう思ってます」


狩名 : 「そうか。それが…………」



 ……狩名は何かいいかけて、そこでぐっと言葉を飲み込む。

 だがすぐに、取り繕うような笑顔を浮かべた。

 元より細い狩名の目が、一層細く見える……。




晃 : 「それが……どうかしました?」


狩名 : 「いや、別に何でもないさ……それより、旦那。一々全員分のメニューを覚えるくらいなら、店員さんよんで注文した方が早いと思いますよ……っと、店員さんが来てから、注文しましょうや?」


月岡 : 「あ! そ、そ、そうですね……」


狩名 : 「さぁて……今日は大いに食べて、セッションに挑みましょうや。ねぇ、旦那がた……」



 ゲームはまだ、始まったばかりですからね……。

 狩名は静かに微笑むと、唇を濡らす。


 ゲーム開始まで、あと3時間。




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