> 世界樹の迷宮を、TRPGリプレイ風のプレイレポートしてる人おりまして。の物語
前回までのあらすじ >
第二階層に広がる原始の大密林。
その探索を、順調に続けているかに見えた新米っぽいギルドの面子であったが、地下8階にて先に進む階段が見あたらない事を知る。
途方にくれたギルド面子は、一度エトリアの街に戻るのだった……。
> 明カサレル真実
GM : 「さて、それじゃ、エトリアに帰ってきたキミたちだけど……」
シグ : 「よし、早速シリカに会いに行くぞ、武器と下乳を拝みに行くのだ!」
シェヴァ : 「その前に酒場だよ、クエストと泣きボクロを拝みに、酒場のマスターに会いに行くんだ!」
シグ : 「何言ってんだシェヴァっ、お前にはあの下乳の魅力がわからんのかっ!」
シェヴァ : 「シグこそ、やさしー酒場のマスターと色気たっぷり泣きぼくろの魅力、わかんないのかよ!」
シグ : 「下乳だろ常識!」
シェヴァ : 「なーきぼーくろー!」
リン : 「もー、シグっ、なーに言ってるんですかッ! それ以上下らない事言うと……」
シュンスケ : 「いい加減にしろッ、シェヴァ! さもなくば……」
リン&シュンスケ : 「殴りますよ!」 「…………殴るぞ?」
シグ : 「う、う。 じょ、冗談だ、リン、だから……許せ、な?」
シェヴァ : 「うはぁ、じょ、じょ、冗談だよ、シュンスケぇ」
シュンスケ : 「ふふふふふ……それとも、高レベルの氷マスタリーで叩き出す氷結の術式の方が好みか、シェヴァ。命が……あると、いいな」
アイラ : 「シュンスケさん、本気だ」(笑)
リン : 「シェヴァさーん、大丈夫ですよ、死んでも私がリザレクション(蘇生)使えますから!」
シェヴァ : 「まず俺が死なないように努力をしてくれよ、リンちゃーん!」(笑)
シュンスケ : 「……と、シグやシェヴァに行き先を決めさせるとロクな事にならなそうだからな。アイラ君、行き先はキミが選んでくれないか?」
アイラ : 「私が? そーだなァ、確かに新しいクエストが出ているか気になるしィ、新しい武器も気になる、けど……」
GM : 「けど?」
アイラ : 「ここは意表をついて、なで肩メガネさんのいる執政院なんてどうかな?」
シグ : 「何だお前、いつからメガネ萌えになったんだ?」
アイラ : 「何でそーなるのよ、アンタバカぁ?」
シグ : 「いや、急にメガネに会いに行くとかいいだすもんだからよ」
アイラ : 「別に、なで肩メガネさんに萌えは抱かないよ。 けど、女子の居る場所だとアンタとか、シェヴァさんが黙ってないでしょ? だったら、居ない所にいけばいーんじゃないかな、と思ってね」
シグ : 「しかし、今更執政院に何の用事だ。あそこは、新種のモンスターを報告するくらいしか用事はないだろ、な、シュンスケ?」
シュンスケ : 「……いや、案外いいかもしれん」
シグ : 「何だ、シュンスケ。お前いつから、メガネ萌えになったんだ?」
シュンスケ : 「何故そうなる」(笑)
シグ : 「いや、急にメガネに会いに行くとかいいだすもんだから」
シュンスケ : 「メガネに会いに行くのではなく、執政院に行くと言ったんだ……そろそろ、新規ミッションが出ているかもしれないと、そう思ってな」
リン : 「新規ミッションですか?」
シェヴァ : 「あぁ、ミッションって……確かアレだよね、前回の、スノードリフトを退治してこい! みたいな……」
アイラ : 「奥地に進むには必須のお仕事、だよね?」
シュンスケ : 「そうだ……前回のミッションも、地下三階で受けただろう。今回も、中盤である8階でおこる可能性があると、そう思ってな」
シグ : 「なるほど、執政院でミッションを受ければ……」
アイラ : 「見つからなかった、先の道が見つかる可能性があるって訳ね!」
シグ : 「なるほど、ただメガネが恋しくなった訳でないんだな!」
シュンスケ : 「俺が執政院のメガネを恋しく思う理由も必要性も一切感じないんだが……行く価値はあると思うぞ」
シグ : 「わかった、それじゃ、早速執政院だ」
GM : 「……何というフラグ殺し。(笑) じゃ、キミたちは執政院に行く訳だね。それでは、執政院の扉を叩いた〜。と」
シグ : 「よし、たのもぅ、たのもーぅ…………」
GM : 「? ん、どうした、シグ。急に言葉止めたりなんかして」
シグ : 「いや、な……今、ふと思ったんだけど、俺ら、冒険者のギルドに所属している、って設定だろ?」
GM : 「……うん、そうだけど?」
シグ : 「確かこのギルドには、ギルド名がつけられたはずだよな……?」
アイラ : 「えっ。ギルド名って、何?」
シュンスケ : 「俺たち冒険者のパーティ名だな……」
アイラ : 「へぇーっ、そんなのつけられるんだ、知らなかったァ……ね、GM、私たちのギルド名は、何て名前なの?」
シェヴァ : 「そういえば、一度も聞いたコトないよね……以外とまだ、つけられてなかったりして」
シグ : 「新米ギルド、と呼ばれた事はあったと思うけど、正式なギルド名は聞いたコトないな、確かに」
アイラ : 「もし、まだついてないとしたら、私、格好いいギルド名つけたいなァ……」
シェヴァ : 「格好いい名前って?」
アイラ : 「そーだなー。ワルキューレとか、アルテミスとかミネルヴァとか……そういう系がいいな、私は〜」
シグ : 「どーしましたか、アイラさん、中二病が今来ましたか?」
アイラ : 「だっ、誰が邪気眼よー。もー、誰がエターナルフォースブリザードなのよっ、言ってみなさいっ!」
シグ : 「っ、おま……痛ぇ痛ぇ痛ぇ痛ぇ! 何お前そのヘッドロック、プロの世界でも完全ギブアップとれるぞ、やめんかっ!」
アイラ : 「……そう言うシグは、どういうギルド名にしたいのよ?」
シグ : 「そんなもの……シグ様と楽しげな仲間達で、充分よ!」
アイラ : 「嫌よ! アイラ様と手下シグなら、まだ許してあげるけど」
シグ : 「だっ、誰がお前の手下だ、誰が!」
アイラ : 「私だってシグの舎弟じゃないもん、舎弟はシェヴァさんだけだよ!」
シェヴァ : 「あれ、俺も別に、舎弟が職業って訳じゃないんですけど?」(笑)
リン : 「でも、本当に決まってないんだったら……早く決めないといけませんよね、どうしますか?」
シェヴァ : 「そーだねー……ねね、リンちゃんだったら、何てつける?」
リン : 「えぇっ、ぼ、ボクですか? うーん、ボクは、可愛い名前がいいなァ……キキョウ、とか。エンジュ、とか」
シェヴァ : 「リンちゃん、和風な名前が好きなヒト?」
リン : 「はいッ!」
シェヴァ : 「へぇー、和風かぁ、和風いいなぁ……あ、シュンスケだったら、何でつける?」
シュンスケ : 「エムボマ」
シグ : 「まさかのギャグマンガ日和ネタかよ!」(笑)
シェヴァ : 「って、エムボマ!? サッカーの!?」
シュンスケ : 「いや、サッカーとは関係ない。たまたま偶然、エムボマなだけなんだ」
シェヴァ : 「いやいや、同じ名前のサッカー選手居ただろ、そんな偶然あるかよ!」
シュンスケ : 「浪速の黒豹とか呼ばれている事もあるが、偶然だ」
シェヴァ : 「だーかーら、そんな偶然あるかって! ……で、マスター。このギルド、何か名前ついてんの?」
GM : 「うん、何というか……えっと」
シグ : 「もしついてなかったら、今から皆で何か格好いい奴を……」
GM : 「さばみそ」
一同 : 「えっ!?」
GM : 「だから……お前らのギルド名だよ。……さばみそですが、何か?」
一同 : 「…………」
GM : 「……」
一同 : 「えぇえぇええぇぇええぇ!」
GM : 「何だよ、そんなにタメて驚くなよ、いいじゃないか別に。さばみその何処が不服なんだ!」
シェヴァ : 「えっと」
シュンスケ : 「何処が不服なのだと問われると、何処から指摘していいのか解らず逆に当惑するが」
シグ : 「まぁ、一つ聞くとしたらアレだな……何故さばみそ!?」
GM : 「いいだろ、俺の母親の得意料理だったんだ……」
シグ : 「ん、何だ、お袋の味って奴か?」
GM : 「うム、まぁそーいう事になるな」
アイラ : 「へーっ、じゃ、お母さんの手料理で一番美味しいのが、さばみそだったんだ?」
GM : 「いや、残念ながら、群を抜いてマズイ料理だった」
一同 : 「な、なんだってー!?」
GM : 「いやもぅ、それがホント奇跡のまずさでさァ……魚の臭み消そうとしねぇから、超絶にサバ臭ぇし、骨なんて遠慮なくゴリッゴリに入ってるし、ミソに砂糖も入れねぇからただ辛ぇだけだし、普段料理しねぇくせに無理して作るから、焦げ焦げだし、オマケにアレンジだとか言いながら、謎の香草をブチ込むし、しかもそれが尋常じゃない臭さだしでもー、ホント最悪料理な訳よ。その最悪料理を、ものっそい笑顔で 『はい、食べてね!』 って出す訳よ。 喰えないなんて言える訳ねーじゃん! ましてや、マズイなんて言える訳ねーじゃん! それで、ウマイって言うとまた作る訳よ、同じ失敗する訳よ。ホントその繰り返しで……忘れない、俺はあのさばみその味を死んでも忘れないよ!」
シグ : 「……途中、GMの私怨が入ったよな」
アイラ : 「でも、確かにそれは忘れられないね」(笑)
シュンスケ : 「…………」
GM : 「ははっ。ま、俺がそんな思い出をフっと思い返してしまったがばかりに、お前らはさばみそになったんだぞ。有り難く思えよ」
シグ : 「あまり有り難くは思えないエピソードだな」
シェヴァ : 「ん……でも、俺は……いいな、さばそでも」
GM : 「だろう、シェヴァ。いいセンスだろ!」
シェヴァ : 「いや、センスは全く感じないけどさ!」
GM : 「まさかの高速否定」(笑)
シェヴァ : 「でもさ……GMは、自分の母さんが作った料理の味、ちゃんと覚えてるんだろ。俺、そういうのが……すげぇ、羨ましいんだ」
GM : 「……シェヴァ?」
シェヴァ : 「ま、とにかく、俺はさばみそでいいよ、うん。いい名前だとは粉みじんも思わないけど、ぎりぎり許せる範囲」(笑)
GM : 「……ぎりぎりで許された」(笑)
シュンスケ : 「まぁ……仮に許されなかったとしても、一度つけたギルド名は変更できないから、それで行くしかないんだよな」
GM : 「そうさ、諦めて皆さばみそになれ」
アイラ : 「え〜」(笑)
リン : 「あ、でもボクは、ちょっと好きかも。さばみそ。可愛いかも」(笑)
シグ : 「でも俺は納得いかねぇ〜ぞ、せめてもう少し高貴な響きが欲しい所だぜ、一応名家出身としてな!」
GM : 「普段あんなにわんぱくの癖に、都合のいい時にばかり名家ぶりおって!」
シェヴァ : 「じゃ、シグだけ高貴なるさばみそとよべばいいんじゃない?」(笑)
シグ : 「そんなとってつけたような高貴は嫌じゃ!」
シュンスケ : 「それなら……サルバトーレ・バルネイ と ミクトラン・ソドマ。 二人の出資者の名前をとって、さばみそと。そうよばれているのだと思えば、諦めもつくだろう?」(笑)
リン : 「そうですね、ギルド出資者二人の頭文字をとって、さばみそだと思えばいいんじゃないですか。ね、シグ?」
シグ : 「む……うん、それなら諦めがつく。よし、諦めよう、高貴だしな!」
GM : 「悪い、シュンスケ。ナイスアイデーアの提供、しのびねぇな」(笑)
シュンスケ : 「かまわんよ」(笑)
> Tales Of Another Broken Home 【もうひとつの、こわれたところ】
シグ : 「で、やってきましたよさばみそギルドが。(笑) で、メガネ何かミッションあるか?」
GM(執政院のなで肩メガネ) : 「『やぁ、キミたち、活躍は聞き及んでいるよ!』」
シグ : 「だからメガネのハナシはいいといっているだろうが! 俺は、ミッションがあるかないかを聞いているのだ、メガネはそれだけを答えればいいっ!」
GM : 「断然非道い! お前、何かメガネに恨みでもあるのか?(笑) 『まぁ、ミッションはあるけど……』 と、メガネはごそごそと依頼書のようなものを取り出して読み上げるね」
アイラ : 「あるんだ、ミッション」
リン : 「これで先に進めそうですね!」
GM(執政院メガネ) : 「『実は、地下8階に到達したキミらなら解ると思うが……あのフロアには、未だその生態が謎につつまれている、ワイバーンが巣くっている』」
シェヴァ : 「わいばーん?」
シュンスケ : 「恐らく、あの12畳のリビングに住んでいる魔物だろう」
シェヴァ : 「あぁ、あの格安物件ね」(笑)
シグ : 「ワイバーン、ワイバーンか……なぁ、ワイバーンって、ゲームとかじゃ、よく聞く名前だけど、実際はどんな魔物なんだ?」
GM : 「何だ、知らないんか?」
シェヴァ : 「知っているのか、雷電!」
GM : 「いや……実は俺も知らないんだけどね。(笑) という訳で、解説はプロテリーマン係の、シュンスケ君にやっていただこう。シュンスケ、頼む」
シュンスケ : 「そんなプロ資格を取った覚えないんだが……一般的に、ワイバーンはドラゴンの中でも、翼を持ち腕を持たないモノの事を指す場合が多いな。竜の亜種であったり、知性を持ち得ていなかったりと、ドラゴンより下位の存在として位置づけされている場合も多い。翼がある事から、翼竜や飛竜と称される事もあるな」
リン : 「それでも解説出来ちゃうんですね、シュンスケさん凄い!」
アイラ : 「でも、竜かぁ……竜って大きいんだよね、だとすると、12畳のリビングて、思ったより手狭じゃない?」(笑)
GM : 「毎日、羽を抱えて細々と生活しているんだよ」(笑)
シェヴァ : 「そんな努力しなくても、俺の三畳間と交換してやるのに」(笑)
アイラ : 「ちょ、もっと手狭になっているよ、シェヴァさん!」
シグ : 「しかし、竜か。なるほど、それなら俺の相手に相応しいな、ふふ……腕がなるぜ!」
GM : 「……と。目が輝いている所で恐縮なんだけど……シグの言葉にメガネは静かに首を振るね。『……いや、おそらくワイバーンには、今のキミたちではとても勝てないだろう、それ位強力な魔物なのだ』」
シグ : 「何ぃ!? クソ、執政院の連中はそろいもそろってチキンであらせられるぜ……」
シェヴァ : 「でも、退治じゃないなら、何したらいいんだろ?」
GM : 「そこでメガネは改めてキミたちを見る。 『実は、ワイバーンはその強さもあり、まだ生態に不明な点が多い。今回は、その生態を明らかにする為に、君たちに協力をしてほしいのだよ』」
シグ : 「協力ったってなぁ、俺ら冒険者で学者じゃないぜ?」
シュンスケ : 「……俺も、生物に関しては専門ではないな」
GM : 「『大丈夫、冒険者でも出来る仕事さ……実はキミたちには、地下8階にいるワイバーンの……タマゴを、とってきて貰いたいんだ』」
シェヴァ : 「!?」
リン : 「……ワイバーンの、タマゴですか?」
GM : 「『そうだ……ワイバーンのタマゴがあれば、これまで謎が多かったワイバーンの生態も少しは解るだろうが、如何せんあいつらは危険なので……』」
シェヴァ : 「ふっざけんな!」
一同 : 「!!!」
GM : 「え、あ、し……シェヴァ君?」
シェヴァ : 「何が生態だよ……そんなの、そんなに急いで知りたい事か? いいじゃねーか、迷宮の魔物だぞ。好きに生かしてやれば、それでいーじゃねぇか。なんでわざわざ……」
シュンスケ : 「落ち着け、シェヴァ」
シェヴァ : 「なんでわざわざ、子供から母親を奪う真似なんかするんだよ!?」
シグ : 「!?」
シュンスケ : 「シェヴァ、二度も言わせるな。落ち着け!」
シェヴァ : 「っ、でも!」
シュンスケ : 「……落ち着く事が出来ないのなら別に良い。だが、大声をあげるな。話は、大声を張らずとも出来るだろう?」
シェヴァ : 「うん……ん、ごめん、シュンスケ。俺……」
シュンスケ : 「謝るのは、俺にじゃない。GM、はじめ他のギルドメンバーが先だろう」
シェヴァ : 「そう、だね……ごめん、GMさん。シグ、アイラちゃん、リンちゃん……俺、そのっ……」
シグ : 「いや、俺は構わねぇよ。気にすんな。お前の言い分も、解らない訳じゃねぇもんな?」
アイラ&リン : こく、こく。 (無言で首を縦に振る)
GM : 「……私も構わないよ、シェヴァ君」
シェヴァ : 「すいません、本当、すいません……でも、俺やっぱり嫌なんすよ、そういうの……いくら冒険者でも、やっちゃいけないと思うんです」
シグ : 「……シェヴァ」
シェヴァ : 「誰のモノだかわからない宝や、古の理に触れる禁忌の書物なんかは、冒険者の浪漫でいいと思うんですよ。でも……いくら冒険者でも、異種とはいえ他者の新しい命まで犯しちゃいけないと、俺は思うんです。テメェの都合で、誰かから……誰かの大切な存在を、奪ってしまってはいけないと思うんですよ」
GM : 「ん、でもミッションとして発動しているからねーぇ……まぁ、受ける受けないはキミたちの自由ではあるけど……ミッションとして出ている以上、避けては通れないぞ?」
シェヴァ : 「それは、そうなんですけど…………」
GM : 「それに、執政院もタマゴを得た後、無下に扱うとはいってもないだろ、目的があって得る訳だから…………」
シェヴァ : 「…………でも、執政院の目的は……実験ですよね、それ?」
GM : 「……」
シェヴァ : 「だったら……もし実験が、うまくいかなかったら……そのタマゴが、雛が、何らかの形で壊れてしまったのだとしたら。あるいは、有効な実験結果を生む事がなかったとしたら……その子は、捨てられるんですよね?」
GM : 「……いや、そうとは」
シェヴァ : 「ねぇ、捨てるんですよねぇ!? 俺を捨てたあいつらみたいに、壊れたら捨てるんですよねぇ!?」
シュンスケ : 「シェヴァ、落ち着けと……」
シェヴァ : 「……大丈夫だよ、シュンスケ。俺は、冷静だ」
シュンスケ : (シェヴァの手を取り) 「冷静な人間の心拍数が、108もあるか……少し水を飲んで深呼吸だ」
シェヴァ : 「大丈夫だって言ってンだろ、勝手に触ってンじゃねぇよ!」
(と、思い切り手をふりほどく……)
シュンスケ : 「…………ッ!」
アイラ : 「きゃぁ! しゅ、シュンスケさん、大丈夫ですかッ!?」
シュンスケ : 「俺なら……大丈夫だ、大事ない」
アイラ : 「大丈夫って、血が出てるじゃないですか、手……」
シェヴァ : 「あ……シュンスケ……」
GM : 「! ……シェヴァ、お前っ……何をするんだ、シュンスケに手ぇあげるなんて……」
シュンスケ : 「マスター、大丈夫だ。俺なら……」
GM : 「どういうつもりだッ、お前……本気になるのはいいが、仲間に手ぇあげるのは流石にルール違反だぞ!?」
シェヴァ : 「すいません。俺……あの……」
GM : 「いや、許せないな。お前がそんな行動になるなら、GMの権限において……この場から強制退去の命令を……」
シュンスケ : 「…………俺は大丈夫だ、マスター。それに……シェヴァ、冷静ではなかったんだろう。仕方ないもの……な」
シェヴァ : 「シュンスケ……」
シグ : 「あぁ……シェヴァ、お前だけの責任じゃねぇよ。止められなかったのは、リーダーである俺の責任でもある」
シェヴァ : 「シグ……」
GM : 「……………あ、そう。お前たちがそー言うなら、まぁ、いいけどね」
シェヴァ : 「あ…………みんな、ごめ……ん、なさい……俺…………」
リン : 「シェヴァさん……」
シェヴァ : 「………ごめん、俺。少し……外の風にあたってくる」
シグ : 「待てよ、シェヴァ!」
シェヴァ : 「……シグ。大丈夫だから、俺、本当……大丈夫だから」
シグ : 「いや……外に出るなら、ビール買ってきてくれねぇか?」
リン : 「えっ……シグ、何を言って……」
シグ : 「つまみは、チーズちくわか柿の種で頼む。釣りでお前の好きなモン、何でも買っていーからよ……ビールだぞ、発泡酒は許さないから、な? ほら、金はコレだ。いいか、頼んだ……必ず、帰ってくるんだぞ」
シェヴァ : 「……うん、解ってるよ。シグ……ありがとう」
(シェヴァのプレイヤーが、退席する)
GM : 「ふぁ……驚いたなァ」
アイラ : 「というか、シュンスケさん、大丈夫? リアルに血が出てるんだけど」
シュンスケ : 「……大事ないな、大丈夫だ」
リン : 「あのっ、ボク……絆創膏もってますから、よかったら……」
シュンスケ : 「大丈夫だ」
リン : 「でも……」
シュンスケ : 「………………あいつが戻るまで、このままでいさせてくれないか、リンくん?」
リン : 「……はい」
> 痛みに耐える冒険者
GM : 「……じゃ、シェヴァ君はいないけどとりあえず勧めていいかな」
シュンスケ : 「あぁ、構わない」
アイラ : 「いいの、シュンスケさん……?」
シュンスケ : 「シェヴァは、シグに必ず帰ってこいと言われ、それに答えたんだ……必ず帰ってくる」
アイラ : 「うん…………そうだよね、うん!」
GM : 「……了解。じゃ、彼が戻るまで、何をしている? 一応、新規ミッションの他に、地下8階で5日間過ごすというクエストもあるけど……」
アイラ : 「さらりと言ったけど何その苦行」(笑)
GM : 「君たちを筋肉ダルマにしたい、冒険者ギルドからのクエストだ」(笑)
シグ : 「むむ…………」
GM : 「……ま、時間を潰すには最適だと思うけど、どうする?」
シュンスケ : 「俺は……ミッションを受け、それを遂行する旨を希望する」
アイラ : 「!? い、いいの、シュンスケさん。シェヴァさん……シェヴァさん、あんなに嫌がっていたのに……」
シグ : 「……俺はリーダーとして、シェヴァがあぁなっている以上、このミッションを受けるのは後ろ向きだ。シェヴァの言い分も解るし、あいつの気持ちを悪戯にかき乱すのは本意ではないからな。だから、お前がこのミッションを受けるというのなら……その理由を、聞いてもいいか?」
シュンスケ : 「問題ない。俺の意見を述べよう」
シグ : 「あぁ、頼む」
シュンスケ : 「これが執政院から発動したミッションである以上、誰ががやらねば先に進めないミッションでもある」
シグ : 「あぁ……だが、俺たちがやらなければいけないミッションでも、ないぜ?」
GM : (新しいキャラクターを作り直して、シェヴァのPCを抜いた状態でプレイするのもありといえばアリだもんな。手間はかかるが)
シュンスケ : 「リーダーの言う通り、俺たちがやらずともいいミッションだろう、が……だが、誰かがやらなければいけない以上、俺は、アイツがこそがこの依頼に適任だと思うのだ」
シグ : 「……理由は?」
シュンスケ : 「あいつが、痛みを知っているからだ」
GM : 「……これまた、随分と非論理的な言葉を持ち出したな、キミらしくもない」
シュンスケ : 「らしくないのは、委細承知している。だが……同時にこれ以上の理由も必要ないと思っているよ」
シグ : 「……」
シュンスケ : 「何より……シェヴァ自身が、この依頼を受ける事を望むと俺はそう確信している。誰より痛みを理解するあいつだからこそ、この依頼を望むとな」
GM : 「……」
シュンスケ : 「……そうさな、あいつの事だ。風にあたって帰ってきて、シグのビールを買うのも忘れデザートだけしこたま買い込んできた所……ごめんごめんといつもの調子で謝ったら、笑って言うんじゃないか。 『俺、あの依頼受けるよ。他の冒険者にタマゴを預けるのも心配だし、執政院のヒトに言いたい事もあるしね!』 とな……」
シグ : 「ちょ、俺のビール忘れられてるし!」(笑)
シュンスケ : 「だが、あり得る可能性だろう?」(笑)
GM : 「じゃ、受けるんだねこの依頼」
シュンスケ : 「……俺はそれを勧めるが、決めるのは皆とリーダーだ」
アイラ : 「……私は、どっちでもいいよ。シュンスケさんや、シグが考えた事なら、私はそれに従う。だって正直……どれが正しいのかなんて、わかんないもんね」
リン : 「ボクは……受けてもいいと、思います。だって……もしここでこの依頼を受けないと、きっと……シェヴァさんが、後悔するような気がするから」
シグ : 「…………」
GM : 「シグ、どうする?」
シグ : 「………………シュンスケが、そう言うなら。シェヴァの、シュンスケの。その思いを、俺は信じよう。いいぜ、この依頼。俺らさばみそが受けてやる!」
GM : 「…………シグ」
シグ : 「……」
GM : 「………………プッ、さばみそだって。変な名前」
シグ : 「ちょっ、GM、お前がつけた名前じゃないかよっ!」(笑)
GM : 「ま、とにかく行くんだね、受けるんだね。『よし、キミたちありがとうタマゴとってこい!』」
アイラ : 「何その、パン買ってこい感覚」(笑)
シュンスケ : 「……確かに、立ち止まっていても仕方ないが」
シグ : 「そうだ、立ち止まるのは性分じゃねぇ、倒れるなら前のめりだ! よし、行くぜ……シェヴァが居ない穴はシュンスケ、お前が頼む」
シュンスケ : 「うム、了解した……」
アイラ : 「あれ、でも大丈夫? シュンスケさん、普段からアルケミストはコマンド多様するから、忙しいんじゃないの?」
シグ : 「シェヴァの穴を埋めるのは昔からシュンスケの仕事だからな!」
アイラ&リン : 「え!?」
シュンスケ : 「………………行くぞ」
アイラ : 「あ、華麗にスルーした」(笑)
GM : 「シュンスケのスルーマスタリーの高さといったらないよな」(笑)
シグ : 「さて、と、地下八階までは一度行っているが……」
GM : 「確かに、地図はもうできあがっているね」
アイラ : 「地下八階に泉はあるけど、めんどくさい戦いで消耗するのは嫌だよね、近道ガンガン通っていっちゃお!」
GM : 「F.o.eもあらかた退治しているし……まぁ、素直に勧めると思うが……」
と、暫く皆、地下八階……ワイバーンの巣を目指して進む……。
リン : (そわそわ)
シグ : 「ん……リン、どうした、さっきからそわそわして……トイレか?」
リン : 「ええっ、あっ、その……ち、違いますよぅ!」
アイラ : 「っていうか、何女の子にデリカシーのない事聞いてんのよ、シグ、このデリカシーない男爵!」(ぺしぺし)
シグ : 「あべし! ……いや、何つーか、いかんアイラ、俺の腰にピンポイントに打撃系を与えるのは、しかもキック!」
リン : 「…………そうじゃなくて、シェヴァさん、帰りが襲いな、って思ったんです。もう、30分はたってますよ、ね?」
シグ : 「ん……そうだな」
リン : 「…………大丈夫かな」
シグ : 「さぁ。でも……俺は帰ってくるって信じてるぜ?」
リン : 「…………でも」
シグ : 「それに…………(リンの耳元で、小声で) 一番心配している奴が動かないんだ、俺が動く訳にもいかないだろ、な?」
シュンスケ : 「……」
シグ : 「それによ、アイツ、人に心配かけておいて、急にケロっとした顔で戻ってきたりするから、案外今でもこのドアからケロっとした顔で出てくるかも……」
シェヴァ : (ケロっとした顔で) 「……ただーいまー!」
シグ・リン : 「ホントに出てきたッ!」
シェヴァ : 「な、何だよ、出てきたって、人を悪霊か三日ぶりの便通みたいに言って!」
シュンスケ : 「……大丈夫か?」
シェヴァ : 「うン……ごめん、シュンスケ。心配かけて……。 あ、それより買ってきたよ、皆のおやつ」
アイラ : 「ほんとー? あ、まるごとバナナ! まるごとバナナがある!」(笑)
リン : 「アイラさん、それ好きですよね」(笑)
シグ : 「……いや、おやつはいいんだが……シェヴァ、俺のビールは?」
シェヴァ : (しょっぱい顔)
シグ : 「何だよそのしょっぱい顔は、つーか忘れたんか、お前人の金で……忘れたんか!」(笑)
シェヴァ : 「いやー、ごめんごめん、コンビニで新作のデザート買ってたら、何かビール買うお金なくなっちゃって」
シグ : 「おまっ、優先順位違うだろ!」(笑)
シェヴァ : 「…………てへ」(ペロ)
シグ : 「何お前その笑い、許されると思ってんのかそれで? ……まぁ、別にいーけどよ」(笑)
アイラ : 「いいんだ!」(笑)
シグ : 「シェヴァと付き合っていると、この位の誤作動は想定の範囲内だ」(笑)
シェヴァ : 「…………それで、皆、今何やってんのかな?」
シグ : 「ん、今か。今は……」
シェヴァ : 「……もし、特に何のクエストも受けてないならさ。俺、あのミッション受けようと思うんだ。どうせ、ほっといても誰かがやるミッションな訳だし。他の連中がやったら、タマゴに何かあるかもしれないだろ。それなら、俺たちがやった方がいいだろうな、って思うから……」
一同 : 「…………」
シェヴァ : 「え、え、何皆、その沈黙……?」
リン : 「い、いえ。シュンスケさん、凄いなと思って……」
シグ : 「俺も付き合いは長いが、ここまで完璧にシェヴァの行動パターンを読む事は出来ないぞ」(笑)
シェヴァ : 「え、え、俺何かした? つーか、シュンスケ何かした?」
シュンスケ : 「……さてな」
GM : 「いや、実はもうミッションは受けているんだよ」
シェヴァ : 「え、え、何で? つーか、俺に内緒で勝手にとか非道いっしょ常識!」
シュンスケ : 「…………確かに。だが……今のお前であれば、逃げないと思った。俺は、そんなお前を信じた。だからこの依頼を受けたのだが……それが不服だったか?」
シェヴァ : 「……う、ううん、そーいう事なら、別に構わないんだけどさ!」
シュンスケ : 「それより……さっきお前にやられた傷が疼くのだが、責任はとってくれるんだろうな?」
シェヴァ : 「う! うぅ、解ってますよぉ……はい、はい、シュンスケにそー言われると思って、絆創膏を買っておいたんですよー。絶対シュンスケは、俺に治療させる為に、傷ほっぽって待ってると思ったからね」
リン : 「シェヴァさんも、すごい……完全にシュンスケさんの行動パターンを読んでる」(笑)
アイラ : 「ココロを読む妖怪だってここまでよまないでしょ」(笑)
シグ : 「俺としては、その絆創膏代が何処から出ているのか気になるんだけどな……ビール」(しょぼん)
> Dearly Beloved 【心からの、愛】
GM : 「で、さぁて到着しました、地下8階〜はい、どーもワイバーンのリビングでっすよー」
シェヴァ : 「12畳の富豪様邸宅だ」(笑)
アイラ : 「でも、羽を縮めて生活しているんだよ」(笑)
リン : 「あれ、12畳はGMさんが勝手につけたイメージじゃないんですか?」(笑)
GM : 「否、GM様の言う事が絶対の真実じゃ! という訳で、ワイバーンが羽を縮めて一生懸命生活をしている。 よいこらしょ、よいこらしょ……不便だね、この生活は」
シグ : 「何故そんな苦行のような生活を」(笑)
シュンスケ : 「……シェヴァ、ワイバーンの行動パターンをシミュレートしてくれないか?」
シェヴァ : 「ん……ちょっと待ってね……ウン、数歩歩くと向きをかえる、視線があうとおっかけてくるけど……視線さえあわなきゃ、真横に居ても大丈夫みたいだよ」
シグ : 「それじゃ、アイツと目さえあわせなければ探索事態は問題ない、か」
シェヴァ : 「……そうだね、ワイバーンは時計回りにくるくる視線をかえているから、アイツが横を向いた時に入るといいと思うよ」
シグ : 「ん……シェヴァ、大丈夫か。何なら、お前はここで待ってても」
シェヴァ : 「……大丈夫だよ。誰かがやればいい事じゃない、俺たちがやらないといけない事だから」
GM : 「……キミたちが出入り口に入ると、ワイバーンはふと視線をかえる。キミらには気付いてない」
シグ : 「タマゴは……」
GM : 「ない」
アイラ : 「やっぱ、こんな出入り口にはないね……」
シェヴァ : 「もっと、奥にいってみよう。このまま俺たちも時計まわりに進めば、ワイバーンと目が合う事はないよ」
GM : 「……一歩、進む。まだ視線はかわらない。タマゴもない。 まだ、タマゴもない。まだ、タマゴもない……」
シグ : 「もっと奥か……地味にワイバーンのオーラが凄いだが?」
リン : 「……少し、どきどきします」
アイラ : 「一刻も早くみつけないと、ワイバーンさんの晩ご飯になるのは嫌だからね……あ!」(こち)
シグ : 「ン、どうした?」
アイラ : 「……ねね、皆見て、こんな所に、大人の頭くらいありそーなたまご!」
一同 : 「おおっ!」
GM : 「あぁ……それが目的のワイバーンのタマゴだね、間違いない」
アイラ : 「ど、ど、どうしよう、これ、私割っちゃいそう!」
シェヴァ : 「……俺が持つよ」
アイラ : 「う、うん、お願い……」
シグ : 「よし、皆……足下に注意して緊急避難! アイツに見つからないうちに脱出だ!」
アイラ : 「うう、そんな事出来るのかな、タマゴもったら襲ってきたりして……」
リン : 「できる、できるのだ!」
GM : 「ちょ、リンちゃん!? シグルイ?」
シェヴァ : 「リンちゃん、たまにコアな用語を使うよね?」
GM : 「まぁ、視線から外れていれば脱出も難しくないね……キミたちはワイバーンに見つからず、部屋から脱出する事が出来た」
シグ : 「よし、シュンスケ、帰還の術式だ!」
シュンスケ : 「言われなくても、すでに完了している……」
GM : 「了解、リレミトを使って、街を脱出する訳だね」
シュンスケ : 「GM、リレミトではないし、街にも一気に戻れないのだが」(笑)
GM : 「どうせ街まで戻るんだろ、リレミトで充分だ。(笑) で、キミたちは街に戻ってきた訳だよね……さ、ミッションは終了しているが、執政院に行くのかい?」
シェヴァ : 「…………」
シュンスケ : 「シェヴァ、大丈夫だな?」
シェヴァ : 「あ、あぁ……大丈夫だよ」
GM : 「では、執政院へ、メガネはキミらを満足そうに見ると 『ありがとう、流石はさばみそだ』 と、言いながらタマゴを受け取る」
シェヴァ : 「あ……」
GM : 「……そして、すぐに君らを向いてこう続けるよ。 『そうだ、キミたちに会わせたい人が居るんだ……』 と、執政院の奥に進むよう促す」
リン : 「会わせたい人?」
シグ : 「何だ、両親にでも会えというのか? 困るぞ、そういう趣味はねぇ」(笑)
GM : 「ちっがーう、こっちだってそんな趣味はないわ。(笑) 『実は、執政院の長であるヴィズル様がキミたちに是非会いたいと言っているのさ』」
アイラ : 「オサー?」
シグ : 「族長(オサ)! 族長(オサ)!」
リン : 「エトリアの街の町長さんですか?」
GM : 「ま、そうだね……キミたちは奥に案内されると、そこには堂々とした立ち振る舞いの……初老というにはまだ若いかなぁ、でも、中年というには少し貫禄がある。そんなロマンスグレーのオジサマが立っていた」
アイラ : 「あ……ちょっと好みかも」(笑)
GM : 「えー……ヴィズルはキミらを見ると頷く。『キミたちが、さばみそか……この厳しい迷宮探索を、よくなし得てくれているね。私からも、礼を言うよ』」
シグ : 「ふふ、礼なんていいさ……何せ俺たちは、エトリアでも上位の冒険者だからな、な!」
アイラ : 「シグが調子のってる」(笑)
GM(ヴィズル) : 「『だが、キミたちのおかげで迷宮の新たなる謎が紐解けるのだ……非常に助かっているのは事実、礼を言おう。それでは、私はこれで失礼するよ』 と、ヴィズルはその場から去ろうとする……」
シェヴァ : 「待って、ヴィズルさん!」
GM(ヴィズル) : 「『…………何だ?』」
シェヴァ : 「俺は、たった今……執政院のミッションを、完了させてきました」
GM(ヴィズル) : 「『……あぁ、聞いているよ。ありがとう、キミたちのおかげで、ワイバーンの生態が明らかになるというものだ』」
シェヴァ : 「そう……ワイバーンのタマゴを奪ってきたんです。これから、親に。厳しく、あるいは優しく……樹海の中で己の生命を全うさせるはずだった、ワイバーンのタマゴをです」
GM(ヴィズル) : 「『…………あぁ』」
シェヴァ : 「エトリアに、人に、それが必要であると執政院が判断したのであれば……俺はそれを非難するつもりはありません。ただ……」
GM(ヴィズル) : 「『……』」
シェヴァ : 「……ただ、あのタマゴを、大事に扱って貰えませんか。例え研究がうまくいかなくても……」
一同 : 「……」
シェヴァ : 「あの子を、愛してやってください。愛して、やって…………下さい」
GM(ヴィズル) : 「『……ふぅ』」
シェヴァ : 「ヴィズルさん……」
GM(ヴィズル) 「『私は、執政院の長として、厳しい側面を持ち合わせている。取り分け、迷宮で人に仇となる魔物には冷酷だ。討伐する事に尽力し、奴らに生命があるモノとは思わず命を狩る……民の命を守る為にな』」
シェヴァ : 「……」
GM(ヴィズル) : 「『だが……罪なく生まれた生命に残酷に振る舞える程、無慈悲な男ではないつもりだよ』」
シェヴァ : 「ヴィズルさん!」
GM(ヴィズル) : 「『…………いいだろう、ワイバーンの命、我々が責任を持って預かろう。そして与えよう。母が子を慈しむように、あるいは父が子の為に厳しく振る舞うように、そういう愛を、惜しみなく……な』」
シェヴァ : 「あ……あ、ありがとうございます! ありがとう……ございます!」
GM(ヴィズル) : 「『それでは、失礼する』 と、ヴィズルはその場を後にする……」
シグ : 「良かったな、シェヴァ」
アイラ : 「ねー、これでワイバーンのタマゴも、安心だよね! 私も正直、こういう泥棒みたいなのは嫌だったから一安心だよ♪」
シェヴァ : 「……あぁ」
シュンスケ : 「……よく、頑張ったな、シェヴァ」
シェヴァ : 「シュンスケ、俺……俺……」
シュンスケ : 「……だから、もう我慢しなくていいんだぞ?」
シェヴァ : 「う、うぁ……しゅんすっ……俺っ……」
刹那の静寂、そして。
シェヴァ : 「うぁ、うぁぁ……うぁあぁあああぁっ……」
慟哭。
その涙を、誰も止める事は出来ずに。
ただ、時間だけが過ぎていった……。
幕間劇〜 女の子と、半分女の子の日常 >
それは何げない日常。
あたりまえにある平時の、穏やかな時の流れの物語。
キミは、この穏やかな流れにある彼と彼女の、甘い一時に触れてもふれなくても良い。
「芹沢梨花、七瀬澪の家に和菓子を教えてもらいに行くの事」
こんにちは、芹沢梨花(リン)です。
今日は、ボクが世界樹の迷宮で遊ぶ時にお世話になっている、七瀬澪(シェヴァ)さんが和菓子の作り方を教えてくれるというので、七瀬さんのお家に遊びに行く事にしました。
けど。
梨花の妹 : 「女の人が男の家に遊びに行くなんて危ないよ、おねーちゃんの世間知らず!」
と、妹にとても怒られてしまいました……。
七瀬さんはそんな非道い事を出来る人に思えないけど……念のため、桐生若葉(アイラ)さん……若葉先輩にも、ついて行ってもらう事にしました。
若葉 : 「今度の休みに、七瀬さんの家に? いいよ、行く行く!」
若葉先輩は、快く一緒に来てくれる事になりましたが。
若葉 : 「そっかー、七瀬さんの家かー、楽しみだなー、七瀬さんの家、男所帯だよね。うふふ……家捜しするぞー♪」
何か別の目的がありそうなので、少し心配です。
そんなこんなで、日曜日になりました。
早速、若葉さんと二人で最寄りの駅に行くと、七瀬さんが知らない男の人と話ていました。
私たちが近づくと、男の人はそそくさと去っていきました。
私が 「今の人、知り合いですか?」 と、聞くと、七瀬さんは。
七瀬 : 「いや、違う違う! ナンパされてたんだよ、ナンパ」
と、少しションボリした様子で答えてくれました。
どうやら七瀬さんは、一人で待ち合わせなどをしていると、良くこういう事があるそうです。
確かに、七瀬さんは男の人にも、25才にも見えないかもしれないけど……。
若葉 : 「へぇ、七瀬さんをナンパするなんて……あいつ、さてはロリコンね!」
若葉先輩は、何か色々と間違えていると思います。
駅から十分ほど歩いた所に、七瀬さんのマンションがありました。
付いた早々。
七瀬 : 「俺、一応この家の居候だからさ。勝手に家捜しとかはしないでくれよな。同居人に怒られるから……」
と、釘を刺した七瀬さんに対して。
若葉 : 「チッ!」
露骨に舌打ちをしていた若葉さんの残念そうな表情当分忘れる事は出来ないと思います。
でもその直後。
七瀬 : 「あ、でも、キミたちが来るのは知ってるから、多少動かすくらいなら怒らないとは思うけどね!」
と笑って言っていた七瀬さんに対しての。
若葉 : 「あはは、そうなんだー。うふー、そうかー」
若葉さんのしてやったり顔も、当分忘れる事が出来ないと思います。
若葉 : 「そういえば……七瀬さんの同居人って、椎名さんだよね?」
七瀬 : 「……ん、そうだよ、淳平だよ……」
……淳平さん?
聞き覚えのない名前です……。
若葉 : 「えー、誰ぇ、七瀬さん、淳平さんなんて私、知らないよ〜」
若葉先輩も知らないなら、ボクが知らないのも当然です。
すると七瀬さんは驚いたようにいいました。
七瀬 : 「うそ、マジですかっ……椎名淳平。ほら……キミたち、会ってるだろ、シュンスケだよ、シュンスケ!」
あ!
和彦さんは、シュンスケさんを呼ぶ時は「椎名」だったし。
七瀬さんも、普段は椎名さんの事を「淳兄ぃ」と呼んでいたから……椎名さんのフルネーム、すっかり忘れてました。
若葉 : 「そっかー、忘れてた! 椎名さん、淳平って名前だったんだぁ……」
どうやら、若葉先輩も同じ事を思っていたようです。
七瀬さんは少し笑うと。
七瀬 : 「……まぁ、淳平は昔から教師にも 『椎名さん』 って呼ばれてた位だし。 家に、連絡網が回ってくる時、電話口で必ず。 『あの、椎名さんのお宅ですか? 連絡網なんですけど、あの……椎名さんいらっしゃいますか。あの、○○高校に通う椎名さんです!』 というやりとりがあった位、名前で呼ばれてなかったからねー」
慣れたようにそう説明してくれました。
……椎名さん、学校の先生にまで「さん」付けされていたって、一体何をしたんだろう……。
少し、気になります。
鍵を開けたら七瀬さんは、快く家に入れてくれました。
梨花 : 「お邪魔しまーす」
考えてみれば、男の人の家にあがるのって初めてで少し緊張します……。
でも、七瀬さんの家は男の人が二人で住んでいると思えない位片づいていて、特にキッチンはぴっかぴか。
七瀬 : 「いやーっ、皆が来ると思って掃除しちゃったんだよー」
と、七瀬さんも言ってましたけど、綺麗に片づけられています。
男の人って、もっと汗臭い洋服とかゴチャゴチャと置いてあったり。
あと、そ。そ、その……。
えっちなのがあるんじゃないかな。
そう思っていたので、少し安心しました、けど……。
若葉 : 「ここ、七瀬さんのお部屋〜?」
七瀬 : 「ん、若葉ちゃん……そーだけど、それがどうしたのさ」
若葉 : (ガラガラ) 「うわ、綺麗に片づいてる! ……というか、プラモしかない!」
七瀬 : 「ちょっ、勝手に開けるなよ、もー……」(パタン)
若葉 : 「ダメだよ七瀬さん、成人男性たるもの、エロ本の一つや二つ置いてないと!」
七瀬 : 「何だよそのダメだし、斬新だな!」
……若葉さんは、えっちぃのが無い事がちょっと不服だったようです。
若葉先輩が、あんまり執拗に家捜しをするのを封じる為、七瀬さんは若葉先輩に子育てクイズマイエンジェルを与えて黙らせる事に成功しました。
ボクは早速、お菓子作りを教えてもらいます。
う〜、ドキドキするよ〜。
七瀬 : 「えっと、梨花ちゃんは和菓子作りは初めてだっけ?」
梨花 : 「は、はい……」
七瀬 : 「でも、お菓子は作った事あるよね」
梨花 : 「はい、一応……」
でも、私が作るのはカップケーキとか……クッキーとか、簡単なやつばっかりだからいきなり難しい和菓子は無理だと思います。
そう、言おうと思った矢先。
七瀬 : 「それじゃ、練りきりでもつくってみよっか、ちょうど冷凍してある白あんがあるし!」
七瀬先生!
そんな……まだ棍棒しか装備してない勇者に、いきなりバラモスと戦わせようとしないでください!
七瀬 : 「だいじょーぶだいじょーぶ、俺が見ながらやるからさー」
……結局、七瀬先生に言われて、練りきりを作る事になりました。
うう、大丈夫かなぁ……。
と、思ったけど。
練りきりは思ったよりシンプル……?
七瀬 : 「電子レンジ使えば簡単に出来るんだけどねー」
という、七瀬さんの言葉通り。
思ったよりスイスイ出来そう……。
若葉 : 「ねー、七瀬さーん、ゲーム飽きたから、隣の部屋家捜ししていいー?」
七瀬 : 「隣の部屋って……淳平の部屋だから絶対ダメっ、何考えてんだよー、もー、若葉ちゃんの望むよーなモノ、何も隠してないから、まじで!」
若葉 : 「わかりましたー、じゃ、勝手に探しますねー」
七瀬 : 「全然わかってないじゃん、それ!」
……でも、お菓子作りの途中途中で、先生が若葉先輩の行動をデフェンスする為に居なくなってしまうので、少し大変でした。
結局、一時間ちょっとかかっちゃったけど、無事にそれっぽくできあがりました!
ボクが作ったのは少し型くずれ気味……。
桜の花ぽく作りたかったけど、ちょっとごつごつしちゃったかな。
でも、七瀬先生は初めてにしては上出来って誉めてくれました!
若葉 : 「凄い凄い、梨花ちゃんさっすがー。上手に出来てるよー」
若葉先輩にも概ね好評です。
良かったぁ〜。
せっかくなので、若葉先輩にもお裾分けしました。
少しでも、桐生さん……和彦さんも食べてくれると嬉しいなぁ……。
若葉 : 「ところで、七瀬さん……椎名さんの部屋を家捜ししたら、何か椎名さんのテーブルに、椎名さんには似つかわしくない鍵付きの可愛い日記帳とか出てきたんだけど……これ、鍵壊して開けていい?」
七瀬 : 「それっ、俺の……い、いい訳がないだろっ、何考えてるんだよキミは、もー!」
そして、若葉先輩は最後まで七瀬さんの家をかき回していきました。
若葉先輩は、絶対に七瀬さんに意地悪する為にここに来たのだと思いました。
紀行に戻る / オマケの方が多い話しに行く / つづきよむ。