>> 草食系マフィアの日常





 2009年 10月某日。

 ニューヨークの一角に、一人のマフィアの姿があった。


 その名は、バラクーダ東吾。

 これは、そう名乗る一人のマフィアの、華麗なるマフィアライフの物語である……。


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 ざわ……。

 ……ざわ。 (福本漫画風擬音風に)



舎弟 
(※バラクーダ東吾の舎弟だが、別にバラクーダ東吾の部下ではない) : 「…………なーんか外が騒がしいな、何の騒ぎだ……あ!!!」


バラクーダ東吾(以下便宜上アニキ) : 「〜♪」


舎弟 : 「アニキ、大変大変、大変ですよ!」


アニキ : 「何だよ舎弟、今俺、ごはんにカレーをかけるか、カレーにごはんをかけるかで迷っている所なんだけど……」



舎弟 : 
「どっちだってカレーライスですよそれは! それどころじゃありません……外が、大変なんです!」


アニキ : 「外?」


舎弟 : 「えぇ! 敵対勢力のマフィア連中が、アニキの店を襲撃しようって魂胆らしく……武装して待ち構えているんですよ!」



アニキ : 
「!! 本当か!?」


舎弟 : 「……本当です。 しかし、アニキが敵対マフィアに狙われるようになるとは……」


アニキ : 「舎弟……」


舎弟 : 「思い起こせば半年前。アニキがマフィアデビューした頃は、そのあまりにマフィアらしくないゴボウ男っぷりの為、敵対マフィアも気の毒がって誰も襲わなかったというのに……これまで誰にも相手にされない弱小マフィアだったアニキも、ついに敵対マフィアに抗争をけしかけられる程の実力を身につけたんすね! そう思うとこの舎弟、嬉しくて胸が熱くなるってモンですよ!」


アニキ : 「そうだな……」


舎弟 : 「いよいよ本格的に抗争出来るとは! 俺らマフィアは、抗争してナンボですからね。へへへ……腕が鳴るってモンです!



アニキ : 
「よし! おい舎弟!」



舎弟 : 「はいっ! 何を準備しますか、アニキ! チャカですか、ハジキですか? それとも機関銃ですか? すぐにご用意しますよ!」



アニキ : 「そうか、じゃぁ……
防災頭巾を準備しろッ!」



舎弟 : 「…………は?」



アニキ : 「あと、店のテーブルは全部倒しておけ! 流れ弾に俺があたるといけないからなッ! あ、防災頭巾は勿論、鉄板入りだぞ?」



舎弟 : 「ななな、何言ってるんですかアニキぃ! アニキ、マフィアでしょうがッ! 売られた喧嘩は買う、それがマフィアの鉄則でしょーに!」




アニキ : 
「馬鹿野郎! そんな事をして、敵対マフィアさんの機嫌を損ねたらどーするんだっ!」




舎弟 : 「……アニキ」


アニキ : 「何だ?」


舎弟 : 「いや、なんでアニキ、マフィアやっているのかなぁって思って……」


アニキ : 「何でなんだろうねぇ……」




 ※ この後、ご期待通り敵対マフィアさんからフルボッコにされました。





> 草系マフィア お仕事に励むの巻



 かくして、ニューヨークに降り立ったバラクーダ東吾。

 彼はマフィアだが極めて草食系で、
敵対マフィアに土下座する程度の根性しかないマフィアだった……。


 だがこのままでは、マフィアとして生活していけない。

 そう思い、日々 犯罪 仕事に励むのだった……。





舎弟 : 「準備完了、と。 アニキ、バイク強奪用のナイフと散弾銃の準備、できましたぜ!」


アニキ : 「そうか……しかし、今まで酒屋強盗しかしてない俺だったが、いよいよバイク強奪に手を染めるようになるとは……これで俺もはれて一人前のごろつきだな……」



舎弟 : (ごろつきを一人前といっていいのかは少しひっかかりますが) 「アニキ、暇さえあればバール片手に酒屋強盗をする程度の小物マフィアでしたからね。ごろつきの仕事とはいえ、ランクの高い仕事を頑張ってくれるのは嬉しいですよ」



アニキ : 「あぁ……バールをもって酒屋に襲撃したら、店長がハジキもってたので土下座して逃げ出したのも、今となってはいい思い出だぜ……」


舎弟 : 「んじゃ、いきますか! 自動車強奪で得られる収支は2700ドル! 850ドルしか稼げなかった酒屋強盗とは訳が違いますぜ!」


アニキ : 「そうだな、バールを持ち歩いていた所、警察に咎められ 『い え、これ違うんです。家にごっつい釘が出ていて、この釘抜きで引き抜こうかと……マジで強盗とか違うんです。強盗っていうか、そもそも強盗にバールとかな いっすよね。テッポーつかいますから。え、あ、鞄の中に入ってる鉄砲は何だ、ですか。あ、これエアガンで、弾入ってませんから……すいませんでした!』 とか言い訳する必要もないしな」



舎弟 : 「アニキは本当に犯罪者向いてないですね……あ、でもこれで稼いだ金で、何しますか?」


アニキ : 「そうだな、2700ドル稼いだら……」


舎弟 : 「やっぱ、街で酒飲んでぱーっと使うとかむとか……それとも、武器買いますアニキ、武器ですか!?」




アニキ : 「他のマフィア様が抗争として攻め込んで来た時の、上納金にするかな!」




舎弟 : 「……は?」



アニキ : 「だから、上納金。ボコってきたマフィアさんがお怒りにならないよう、怒りを収める為の!」




舎弟 : 
「……アニキ金の使い方間違ってるよ!」


アニキ : 「あれ?」



 マフィア歴半年。

 早くも搾取される事に慣れ、お金を敵対マフィアに貢ぐ事しか頭になくなっているアニキなのであった。






> 彼がマフィアになった理由(わけ)



 バラクーダ東吾はマフィアの一員である!

 だが、気持ちが小市民である為血を見るのが怖く、抗争が出来ないでいた……。

 (おまけに仕事も、誘拐や放火は人命に関わりそうなので怖くて出来ないでいた)



舎弟 : 「って、アニキは本当、マフィア向きじゃないですよね……営利誘拐が怖くて出来ないとかって、どんだけですか?」


アニキ : 「だって営利誘拐とか駄目だろ、幼女を誘拐とかして、
親御さんがどれだけ悲しむと思っているんだ!」



舎弟 : (営利誘拐なら幼女より大人を、それも重役を誘拐した方がいいって事実は黙っておくべきか……?)



アニキ : 「とにかく、犯罪は駄目だ。マフィアでも仁義って大事だと、俺は思うんだよね」


舎弟 : 「はぁ……アニキ、本当にマフィア向いてませんよ……」



アニキ : 
「うん、良く言われる!」



舎弟 : 
「よく言われないでくださいよッ! あぁ……でも、何でアニキはマフィアになったんスか?」


アニキ : 「?」


舎弟 : 「いや、だってアニキはどう見てもマフィア向きじゃないというか……むしろ会社員とか、公務員が向いている気がするんすけど?」


アニキ : 「あぁ、それなんだけど……
求人票出てたんだよ」



舎弟 : 
「何ですと?」



アニキ : 「だから、求人票。俺の母校に、マフィアから」



舎弟 : 
「マフィアなのに求人票!?」



アニキ : 「俺も、元々公務員希望で必死で勉強してたんだけど、分数のわり算が理解出来なくて……」


舎弟 : (アニキはやんわりとアホだと思っていたけど、真性のアホだったんだ……)


アニキ : 「で、進路どうしようと思っていたら、進路指導の先生から勧められたんだ」




舎弟 : 
「マフィアという職場を推薦する学校、舎弟的にもどうかと思うッスよ!




アニキ : 「給料は歩合制だけど、基本給が250ドルって書いてあったから、まぁ安定しているかなぁって」


舎弟 : 「あにき……250ドルって円高の今、2万円くらいっすよ?」


アニキ : 「そうなんだよな……手取りで25万くらい貰えるって思ってたぜ……」


舎弟 : 「……ん、でもウチのボスもよく求人票なんて出しましたね……やっぱ、面接とかしたんですか?」



アニキ : 
「面接あったよ!」



舎弟 : 
「マジですかぃ! え、え、どんな感じですか?」


アニキ : 「いや、面接場所がいきなり海外でさ! 俺、パスポートとったのも飛行機乗るのも初めてだからかなり興奮したよ!」


舎弟 : 「面接が海外でっていきなり海外にいっちゃうアニキの、そのアグレッシブさはホント、どうかと思いますけどね……」


アニキ : 「まぁ、何とか面接会場にたどり着けたから、今こうしてマフィアになっているんだけどな」


舎弟 : 「はぁ……で、面接会場はどんな感じでした?」


アニキ : 「思ってたより真面目な印象だったよ。皆
黒スーツにサングラスって外見でさ」




舎弟 : 
「真面目な印象!? どう見てもマフィアな印象ですがッ!?」




アニキ : 「出入り口に、機関銃をもっている連中が居たのはビビったけど。まぁ、空港並の警備なんてセキュリティのシッカリしている会社だと思ったもんだぜ」



舎弟 : 「そうですね、
軍隊を要している国の空港並な武装ですよね」



アニキ : 「しかし面接官の迫力には気圧されしたな。まるで人を2,3人は殺ってるよーなプレッシャーを感じたよ!」


舎弟 : 「多分そこに居る方は2,3人じゃきかないくらい殺ってると思いますが……でもアニキ、良くそれで面接通りましたね……」


アニキ : 「カタコトの英語だったからさ、通じるか分かンなけど、とにかく知っている英語を一杯言ったら情熱が通じたみたいでさ、OKの返事が頂けたよ」


舎弟 : 「へぇ……何て言ったんですか?」




アニキ : 
「アイアム テッポウダマ!」




舎弟 : 
「英語でもねぇー!」




アニキ : 「あれ、そうなの。向こう、ユーア、テッポウダマ? って聞いたから イエス、テッポウダマ! て答えたらそのままマフィア試験合格したんだけど……」


舎弟 : 「ホントに合格したんすか、それ……というか、合否は何で来たんですか? 手紙? メール?」


アニキ : 「いや、そのまま即雇用だったみたいで……黒服の屈強な男たちが俺の両脇を掴んで、謎の個室につれていかれたけど?」



舎弟 : 
「へ?」



アニキ : 「耐久力テストだったのかな、あれ。最初ボコボコにされて縛られた挙げ句写真とられた時には、履歴書の写真がマズかったのかなぁと思ったけど……」



舎弟 : 
「えっ? えっ? えっ?」



アニキ : 「三日くらい飲まず食わずで倉庫みたいな所に転がされていた時は、流石に死って言葉が脳裏に過ぎったな……」


舎弟 : (って、それ殺されかけてるよな、アニキ)


アニキ : 「でも、三日目の朝くらいかな。何か黒服でいかにもボスっぽい印象の男が現れてさ。 『例の写真をお前の実家におくりつけてやったら、いい身代金がとれた。コイツはまだ生かしておけ。あの家からはまだ搾り取れるぞ』 っていって……」




舎弟 :
 「は?」




アニキ : 「で、何もさせてないのもアレだからって、寂れた惣菜屋の経営を任されて……俺ははれてマフィアの一員になった、って訳さ」


舎弟 : 「え、っと……あれ、アニキの実家って極東とは聞き及んでますが……実家は何をされてたんですか?」


アニキ : 「華道の家元ってのやってたよ……何つーの。格式高い家柄らしくてさ、資産は一杯あるから、昔から働かなくても結構いい暮らし出来たらしいよ」


舎弟 : 「え?」


アニキ : 「でも労働って国民の義務だから……」


舎弟 : 「いや、そうじゃなくて……アニキ、実は結構いい所のお坊ちゃん、と、か?」


アニキ : 「あーぼんぼんとか言うなよそれ俺凄い気にしてんだからなッ!」


舎弟 : 「えっと、それってアニキひょっとして……」


アニキ : 「?」



舎弟 : (
営利誘拐されたんじゃ、と思ったけど……それを指摘しているとアニキが傷つくからやめておこう)



アニキ : 「何不思議そうな顔してんだ、舎弟?」

舎弟 : 「い、いえ。何でもないっす」



 ※このアニキがアニキらしさが全くないのは、バグではなく仕様です。





> 草系マフィア資産運用に走る編



 草食系マフィア、バラクーダ東吾は小銭が貯まったので初めての資産運用に励むのだった……。



舎弟 : 「アニキ、バイク盗んで金にかえてきましたぜ。結構資金も増えましたね!」


アニキ : 「そうだな、これで資産運営も出来る」


舎弟 : 「えぇ、郊外の空き地をアニキがかった時には何してんだと思ったんですが、そこに借家をたてて金を稼ぐなんて流石はアニキです!」


アニキ : 「あぁ……」


舎弟 : 「これで、武器を買ってさらに武装してっ、へへ。いよいよ俺ら強くなりますぜアニキぃ!」




アニキ : 「そうだな……こうして資金繰りが安定して供給できれば……
他のマフィアさんがせめて来た時に渡す上納金にもう、困る事はないな!




舎弟 : 
「は!?」


アニキ : 「という訳でさらに経営に励むぞ舎弟! 他のマフィアさんの機嫌を損ねない程度の金、常に準備しておくんだな!」



舎弟 : 「
常に他のマフィアに搾取される事ばっかり考えないでくださいよ、もー!!!」



 ※舎弟の言う通りだと思いますが、考えずにはいられない程搾取されているのです、はい。





> 舎の秘密編



 アクセル=ガンズ。

 バラクーダ東吾が 「舎弟」 と呼ぶこの男は、実はバラクーダ東吾の部下ではない。



 その日。

 旧式のモシン・ナガンを構え、一人的に向かう舎弟の姿があった。



舎弟 : 「………………」 



 タァーン。

 乾いた音がする。


 銃口から硝煙があがり、弾丸は的の中央を射抜いていた。


 そんな舎弟に、一人の男が声をかける。



??? : 「……相変わらず素晴らしい腕だな」



 穏やかな笑顔を浮かべた初老の男だった。

 高級ブランドのスーツを誂えた男は、一目見ただけでもただ老いた男には見えないだろう。


 数多の修羅場をくぐり辛酸をなめてきた人間の持つ、独特の雰囲気。

 男は笑顔の仮面でそれを隠そうとしていたが、隠すにはあまりに深い業を背負っていた。



舎弟 : 「!! あ……ファーザー。来ていたんですか?」


ファーザー : 「……そう、気負うな。オマエは私の可愛い部下だ……名で呼んでも構わないんだぞ、アクセル」


舎弟 : 「そうはいきません、ファーザー。貴方は、私たち組織のトップだ。俺は、今は貴方の直属の部下でもない……」


ファーザー : 「スコープもついてない旧式のモシン・ナガンで。しかも視界の悪いこの場所で的を射抜くなんて、常人とは思えぬ腕前だな、アクセル? 見事な腕だ、さすが……白い死神の名は伊達ではないな?」


舎弟 : 「やめてください、ファーザー。私なんか……」


ファーザー : 「その腕を眠らせているのは惜しい。どうだ、再び私のモノにならないか?」


舎弟 : 「…………」


ファーザー : 「以前より良い待遇で迎えてやっても、かまわぬよ」



舎弟 : 「……俺は一度、あなた方に裏切られ死にかけました」



ファーザー : 「裏切り? とんでもないな、あれは我々のミスだ……その点は、私直々謝罪しよう。どうだ……それでも、戻るつもりはないか?」



舎弟 : 「足を打ち抜かれて死にかけた殺し屋なんて、貴方の片腕になれるほどはお役にたてませんよ」


ファーザー : 「……あの男についている方が楽しいか?」


舎弟 : 「…………さぁ、どうでしょうね。ただ……」



アニキ : 「舎弟、どこだぁー。なー、そろそろポン引きの仕事の時間だぞー、バイクの鍵出してくれよー!」



舎弟 : 「……世話のかかる奴の相手は、嫌いじゃないですね」


ファーザー : 「そうか……お前がそう言うなら仕方ないが。いつでも戻ってこい。お前なら幹部でもやっていける……あの男の、直属の部下という訳でもないんだからな」



舎弟 : 「ありがとうございます。ですが……」




アニキ : 「ぎゃぁあ! 短機関銃が暴発! 暴発した、とーまらんよー!」



舎弟 : 「私には舎弟が似合いですよ」



ファーザー : 「そうか……惜しい男を逃がしたモノだな」


舎弟 : 「誉め言葉として受け取っておきます」


ファーザー : 「……敵として会った時は、容赦せんよ?」


舎弟 : 「それはこちらの台詞ですよ。貴方が、アニキの敵だっていうのであれば……白い死神が再びこの街に戻る事になるでしょう」


ファーザー : 「ふふ……失礼する」



 初老の男は、片足を引きずるように歩いて姿を消す。

 ……足が良くないのか、それとも身体がもう、あまり良くないのだろうか。

 不安になる舎弟だったが。



アニキ : 「あ、いたいた舎弟。あれ、今のフレンチブルドックに似た人、誰だ? 貫禄あったなー。全盛期のアル・カポネを彷彿とさせたぜ!」


舎弟 : 「ちょ、フレンチブルドックとか言わないでくださいよアニキ! もー、アニキは実にバカですねぇ?」


アニキ : 「バカ言う奴がバカだぞ! それより、ポン引きいくべ。バイクのケツにのってくれよ」


舎弟 : 「いいですけど、アニキはバイク乗れましたっけ?」


アニキ : 「まだ乗れん!」


舎弟 : 「俺が運転しますよ……アニキがケツにのっててください?」



 彼が慕う兄貴分の顔を見て、今は過去を忘れる事にする。

 殺し屋としてではなく、世話のかかる兄貴分の舎弟として。

 その役割を全うするために。





> 幼馴染みのし屋現る



 アクセル=ガンズ。

 通称舎弟。

 良く気をつかってくれて、仕事もマメ、おまけにショタっこという出来た男だが、実はバラクーダ東吾の正式な部下ではなかった……。




アニキ : 「という訳で、新人募集をしようと思う!」


舎弟 : 「新人ボシュー、ですか?」


アニキ : 「そうだ、マフィアとはいえ所詮人海戦術! 友達が多い方がリア充なのは一般人もマフィアも一緒だからな。 少しでも仲間を得る為、インターネットでマフィアの募集をかけたのだ!」


舎弟 : 「い、いんたーねっとで!?」


アニキ : 「あぁ! さて、誰かくるかなぁ…………楽しみだなぁ!」


舎弟 : (インターネット募集で応募してくるマフィアなんて、居ると思えないけどなぁ……)




 それから、数日後。

 ニューヨークでは特に治安の悪い一角。




舎弟 : 「さて、ポン引き用のバイク、ガソリンも充分だし短機関銃の準備もよし。  アニキ寒がりだから、外で寒くないよー、コートの準備もし て、お弁当も買ったし……アニキ、何だかんだ言っても俺がいないとマトモに仕事しないからな……アニキー、そろそろ仕事の時間ですよー、一緒にポン引きい きま…………」 (ガチャ)



??? : 「……誰だ?」 (ナイフを向けながら)




舎弟 : 「うぉっ!」




??? : 「なるほど……至近距離から、俺のナイフ攻撃を避けるとは。どうやら、ただの凡人じゃなさそうだな……よし、武器をとれ。そうすれば、楽に殺してやるぞ?」


舎弟 : 「……何言ってっ!」



??? : 「ただし、醜く足掻くな……苦しんで死ぬ事になるからな」



舎弟 : 「ちょ、待て! 何でいきなりお前に殺されないといけないんだっ、お前、何者だ……!?」



??? : 「俺の名は カラミティ・ガイ ……東方では有名な殺し屋だが……知らんのか、この名を……」



舎弟 : 「……!! まさか、お前が噂の……」



カラミティ・ガイ : 「ふふ……」




舎弟 : (東方には、黒いコートをはためかせ、まるで旋律を奏でるように鮮やかに人を血に染める殺し屋がいる、と聞いているが……まさかこの男が、噂の殺し屋、カラミティ・ガイか!? なんで、そんな男がアニキのアジトに……まさか、アニキに何かあったのか!?)



カラミティ・ガイ : 「うむ……どうやら今宵は上等の獲物のようだな。さぁ、武器をとれ! 早くだ! この俺を、満足させてみろ……俺は……闘争がないと、満足に眠れんのだ……」


舎弟 : (……どうやらコイツ。マジでヤバイ相手だな、こりゃ……久しぶりに死神スイッチ入れねぇと、勝てない……か。チッ、もう殺し屋には戻らねぇつもりだったんだが……アニキ守る為なら、仕方ねぇか……)



アニキ : (がちゃ、とドアを開けながら) 「あれ、何してんのガイちん?」



カラミティ・ガイ : 「!!!!」


舎弟 : 「え……ガイち、ん?」



カラミティ・ガイ(ガイちん) : 「!! な、何昔のあだ名で呼んでるんだよ! もー、昔のあだ名で呼ぶなー、ばかがー!」



舎弟 : 「えっ、アニキ……ガイちん、って?」


アニキ : 「そこの、その人」 (指さしながら)


ガイちん : 「ゆ、指さすなばかがー!! 恥ずかしいだろ、もー!」



アニキ : 「ガイちん。俺の、小学校時代の同級生なんだ!」


ガイちん : 「だからガイちんはやめろっつーの! 俺、殺し屋だぜまじでー!」


アニキ : 「いやー、ゴメンゴメン。でもまさかガイちんが殺し屋やってるとは思わなかったよ、お父さんもお母さんも音楽家で、小学校の頃はバイオリニストになるっていってたから、てっきりバイオリニストになるとばかり、思ってたのになぁ!」


ガイちん : 「俺の方がビックリだよ。お前、学生の頃は公務員になるんだ、っていってたのに、まさかマフィアになってるとはなぁ……」


アニキ : 「公務員試験受けようと思ったら、お前にはこれが向いてるぞって、進路指導の先生に勧められた求人で向かったらマフィアの事務所だったんだよ、あはは!」


舎弟 : 「え、あれ……知り合い、っすか。アニキ、その人と。え、東方で有名な殺し屋と、アニキが?」


アニキ : 「あぁ、そう……ガイちん、俺がこっちで一人マフィアしているって聞いて、手伝いに来てくれたんだよ、な、ガイちん?」


ガイちん : 「あぁ、まぁ、ゴンザレスとは昔馴染みだからな、手伝ってやるのもいいかと思ってな」


舎弟 : 「ゴンザレス……あれ、アニキ、確かバラクーダ東吾て名前じゃ……」


アニキ : 「あぁ、ゴンザレスは小学校時代の俺のあだ名だよ。もー、ガイちん昔のあだ名で呼ぶなよー!」


ガイちん : 「悪い、つい、な」



舎弟 : (何でゴンザレスなんだ……)



アニキ : 「という訳で、今度からガイちんが手伝ってくれるっていうから、舎弟もヨロシク頼むな」


ガイちん : 「あぁ……じゃ、この子がお前の言っていた、子分の居ないお前の面倒を見てくれているバイトの子か」


アニキ : 「そうそう……仲良くな、舎弟」


舎弟 : 「あ、はい……舎弟です、どうも」 (ぺこり)


ガイちん : 「…………よろしくな、アクセル=ガンズ……いや、白い死神



舎弟 : 「!!」



ガイちん : 「さ、て、と。 それじゃ、ゴンザレス。俺、早速仕事してくるわ」


アニキ : 「……あ、まじで。ガイちん働き者だねー」


ガイちん : 「生憎、血を見ないと気が済まない性分でな……それに」 (ちらり)



舎弟 : 「…………」



ガイちん : 「予想以上に俺好みの獲物が見つかってな……メインディッシュを喰う前に、少し前菜をつまみたくなったのさ」


アニキ : 「あ、そー。じゃ、ガイちんいってらっしゃーい」


ガイちん : 「すぐに帰ってくる……じゃぁな」


舎弟 : 「…………アニキ、あの人」


アニキ : 「ん、何?」


舎弟 : 「いえ、頼りになりそうですねって、そう思っただけですよ……あはは……」



 かくして現れた新しい仲間!

 その存在で、弱小マフィアは少しでも優位な生活がおくれるのか。


 それとも変わらぬ、上納金を納める毎日が続くのか!

 そんな最中でも。



アニキ : 「さて、ポン引き行く?」


舎弟 : 「あ、はい。お供します!」



 それでもバラクーダ東吾は、全く変わらずごろつぎの仕事に精を出すのだった!




> ガイちん大けが編



 そんなガイちんとの出会いがあってから数時間後。

 いつものアジト。



アニキ : 「ふー、外寒かった。ポン引きの仕事は給金いいけど長時間外に居るのが辛いよなぁ」


舎弟 : 「あ、アニキおかえりなさい。コンビニのカレーまん買ってありますから、よかったらどーぞ」


アニキ : 「それより早くこたつに入りたいぜ……ふぅ、生き返る。やっぱり寒空の後のこたつはたらまんなぁ……」



 ギィィイィ……ばたむ。



舎弟 : 「あ、誰か来たみたいですよ」


アニキ : 「ん、ガイちんかな……?」


ガイちん :  「いま、戻ったぞ」


アニキ : 「あ、やっぱりガイちんだ……おかえり、ガイち……!!


ガイちん : 「ただいま……ふぅ、部屋が暑いな。抗争の後は血が熱い……」 (血まみれのコートを脱ぎながら)



舎弟 : 「ガイさん! あ、ど、どうしたんですか、その血!」



ガイちん : 「抗争だ。何、心配するな。敵にやられた傷はない。これは全て敵対勢力の返り血だ……」


舎弟 : 「そうですか……それなら、いいんですが。今、新しいワイシャツを準備しますので少しお待ちください。あ、アニキ。アニキはシャワーの準備を……」




アニキ : (がくがくがく、ぶるぶるぶる)



舎弟 : 「アニキ?」



アニキ : 「うわぁぁぁぁ! ガイちん血がでとる! ガイちん血がぎょーさんでとるよーーー! こわかー! こわかー!」



舎弟 : 「アニキ、テンパらないでください!」


ガイちん : 「そうだゴンちゃん! テンパりすぎて方言が不明瞭だぞ!」



アニキ : 「だってガイちんに血が、血がぁ。大変こういう時は119番? それとも110番ですか? もしもーし、警察さん? 大変です友達がマフィアの抗争に巻き込まれて。いえ、友達がおこした抗争なんですが!



ガイちん : 「落ち着けゴンちゃん! マフィアが警察に電話してどーする!



舎弟 : 「そうっすよアニキ、間違えばガイさんが逮捕されますよそれ!」



アニキ : 「でもガイちんが、ガイちん?」


ガイちん : 「だからこれは敵の返り血だと言ってるだろうが、ほら……傷はないだろ?」



アニキ : 「あ、ホントだ……何だ、心配して損したぜ……」


舎弟 : 「ホント、でも驚きましたよそんな返り血びっしょりで……で、ガイさん。一応、他に傷はありませんよね?」


ガイちん : 「あぁ……と、言いたい所だが、実は少し被弾してな。左手に若干傷を受けた。とはいえ、大した傷じゃないがな……ほら」



舎弟 : 「あ、本当だ……鉛玉かすめたみたいですね。弾は?」


ガイちん : 「抜いてきた。大事ないと思うが……」


舎弟 : 「応急処置しておきましょうか。アニキ、救急箱とってください……アニキ?」



アニキ : バタン!




舎弟 : 「あ、アニキ、大丈夫ですかあにきー!」



アニキ : 「あはは……血が、血がでとるー。ぎょーさん血がでとるよー。こわかー。こわかー」



ガイちん : 「だから怪我をしている俺よりお前が狼狽えるな、ゴンちゃん! 全く、どうしてゴンちゃんはこう、血に耐性がないんだ!?」



舎弟 : 「あぁ……アニキ、これまで抗争した事ないっすから……」



ガイちん : 「!? ……マジでか?」


舎弟 : 「まじです」



ガイちん : 「マフィアなのにか!?」


舎弟 : 「マフィアなのにです」



ガイちん : 「……何でこいつ、マフィアやってるんだ?」


舎弟 : 「さぁ……?」


アニキ : 「血がー……血がでとる、こわかー……こわかー……」



 かくして、新しく仲間になったカラミティ・ガイ氏が思った以上に好戦的だった為に血を見てふらふらするハメになったバラクーダ東吾。

 はたして、このままマフィアを続けていけるのか。

 それとも、ファミリーのアニキの座をカラミティ・ガイ氏に譲ってしまうのか。

 そんな毎日をすごしながら、バラクーダ東吾は日々を強く生きているのである。





> 草食系マフィア 〜さぼり編


 資産運用をすると、何もしなくてもお金が入るようになる。

 その為、バラクーダ東吾にはすっかりさぼり癖が出ていた。



アニキ : ゴロゴロゴロゴロ……。


舎弟 : 「アニキ、何ごろごろしているんですか。暇ならまた街で大好きなバイク強奪でもしてくればいいんじゃないっすか?」


アニキ : 「そーいうけどさー、何かやる気がでねーんだよなー」


舎弟 : 「は?」


アニキ : 「何つーか、資産運用するようになったら、金が黙っていても入るようになってきて……」


舎弟 : 「……でも、資産運用は経験値になりませんよ?」


アニキ : 「でも、黙ってゴロゴロしているだけで定期収入あるんなら、いーかなーって気分だしさー……」


舎弟 : 「ちょっ!」


アニキ : 「もーこのまま不動産王でもいーんじゃないかなーって。わざわざ危険な仕事に手ぇ染めなくてもいいんじゃないかなーって思ってさ……」


舎弟 : 「アニキ、だからって家でテレビを見ていていい理由にゃなんねぇっすよ!?」



アニキ : 「相棒おもしれー。イタミンテラツンデレスー」 (ゴロゴロ)



舎弟 : (やばいこいつ、本気でゴロゴロして過ごすつもりだ……何とかやる気出さないと、このまま本気で不動産経営だけで生きていきそうだぞ……何とかしないと、何とか……そうだ!)



アニキ : 「相棒のイタミンが学園モノのヒロインだったら絶対ツインテールでくぎみーの声が出るぉー」 (ゴロゴロ)



舎弟 : 「アニキ! いい加減仕事してきてください、そうじゃないと……」


アニキ : 「?」



舎弟 : 
「そうじゃないと、他のマフィアさんに攻められた時に払うお金がありませんよッ!」



アニキ : 
「!! そ、そうだった! 俺、他のマフィアさんにおさめる年貢をちゃんと稼がないといけない身分だったな!」


舎弟 : 「そうです、じゃ、いきましょうアニキ、新しいごろつきの仕事へ!」


アニキ : 「わかった、ごろつきの仕事として、積極的にバイク強奪してくる! ……じゃ、いってきまーす!」


舎弟 : 「いってらっしゃい、アニキ!」



 アニキを見送って、舎弟は漠然と考えました。

 他のマフィアにお金を納めるために進んで汚れた仕事をするアニキは、心底マフィアに向いてないな。

 ただ、そんな事を漠然と……。




> 草食系マフィア日記 〜 エナジーパックって何ぞや編


 モブストライクでは、仕事をすると体力を使う。

 その体力を回復させるアイテムが、エナジーパックである。


 (ただし、1日に1回しか使えないのである)



アニキ : 「もう、体力が底をつきた……今日は動く事も出来ないな」


舎弟 : 「アニキ、大丈夫ですか……」


アニキ : 「そんな時でもっ! これ。エナジーパックがあれば大丈夫! 一気に体力が回復して、また仕事に赴けるようになるぞ!」


舎弟 : 「アニキお疲れさまです!」


アニキ : 「という訳で、また敵対ファミリーからシマをまもってくるぜ!」


舎弟 : 「いってらっしゃいアニキ! あ……でも、そんな疲れていても、また仕事が出来るなんて……エナジーパックって、一体どんなものなんですか、アニキ?」


アニキ : 「ん?」


舎弟 : 「一日に一回しか使えない、って制限あるのも気になるし……見せてくださいよ、アニキ」


アニキ : 「うーん、俺もどういう仕組みで出来ているかよく分からないんだけどな……とりあえず、俺のエナジーパックのなかには、何か注射器と、見た事もないような薬が入っていたけど?」




舎弟 : 
「デンジャラス物質の予感!」




アニキ : 「あー、なんか段々幻覚見えてきたわー」


舎弟 : 「アニキそれ絶対やばいくすり! やばいくすりですよ!」



 ※この物語はフィクションです。実際のエナジーパックには(たぶん)健全な物質が使用されています。


 ※当マフィアは良い子が見ても大丈夫な健全なマフィアです。


 えぇ。

 悪いお薬は駄目、絶対!



アニキ : 「マフィアでも品位のあるマフィアを目指す、バラクーダ東吾は
正義のマフィアです!」


舎弟 : 「マフィアなのに正義とか、どうかと思いますよ」




> 利誘拐はじめました編



 バラクーダ東吾がマフィアになれてきて、どんどん階級はあがっていく。

 だが、相変わらず気持ちは草食系だった……。



舎弟 : 「アニキはどうもマフィアっぽくないですね」


アニキ : 「……そうか? これでもか、ってくらいワイルドに肉を喰うけど?」


舎弟 : 「肉を喰うくらいでマフィアになれるんならアメリカ人は全員マフィアっすよ! 抗争もしない、血を見ると失神する、すぐ狼狽える、敵を見ると上納金をはらおうとする……これじゃ、立派な上級マフィアは無理ですよ!」


アニキ : 「む……」


舎弟 : 「という訳で、アニキをマフィアらしい男にする為にちょっとばかり過激な仕事をやってもらう事にしました……はいこれ!」


アニキ : 「な、何だこれっ……機関銃?」


舎弟 : 「はい! 今日はアニキに、よりマフィアらしい行動をとってもらう為に……営利誘拐を企んでもらう事にしました、いいっスね?」


アニキ : 「営利誘拐……って、駄目だろそれ犯罪ッ!


舎弟 : 「マフィアなんすから犯罪とかいってビビんないでくださいよ! それだから他のマフィアに舐められるんスよ?」


アニキ : 「う……」


舎弟 : 「とにかく、こういう血生臭い仕事から慣れてもらって、少しずつ本格的な悪事に手を染めてもらい……ゆくゆくは抗争も出来る立派なマフィアになってもらいますからね」


アニキ : 「そんな事言ったってなぁ、インパラは肉食わないだろっ! 俺だって急に抗争とかいわれても……」


舎弟 : 「つべこべ言わない! さ、早速営利誘拐出来そうな奴を見繕って来ましたよ。えーと、アニキでも出来そうなのは……」



1.大手企業の会社役員


2.セレブの女医


3.少し訳ありの幼女




舎弟 : 「こんな所ですが、さぁ誰を狙いますか?」




アニキ : 「ようじょだ!」



舎弟 : 「返答早ッ! 何かものすごい固い決意のようなモノさえ感じるよ!」


アニキ : 「そういうがな……」


1.大手企業の会社役員 ←ジジイっぽそう。

2.セレブの女医 ← 左右非対称な顔をしてそう。

3.少し訳ありの幼女 ← 可憐な花。




アニキ : 「だったら、幼女に決まってるだろうが!」



舎弟 : 「このロリコンどもめ! ま、いいっすよ……じゃ、お望み通り幼女を営利誘拐してきますか!」


アニキ : 「おお、いくぜ! みなぎってきた!」


 ・

 ・

 ・



舎弟 : 「と、いう訳で営利誘拐をしてきた訳だが……」


アニキ : 「ビックリした……まさか黒塗りの車があんなに追いかけてくるなんて……」


舎弟 : 「ま、無事に済んで良かったじゃないですか……」



幼女 : 「………………」



アニキ : 「でも、幼女にとっては怖かったかもしれないだろ、お前もーちょっとデリカシーのある運転しろよな……大丈夫かい、怖くなかったかな?」



幼女 : 「…………大した事なかったですわ」



アニキ : 「そうか……ならいいけど。何かジュースでも飲むかい? ジンジャエールとコーラがあるけど……」



幼女 : 「モエ・エ・シャンドン」



アニキ : 「はぁ?」



幼女 : 「モエ・エ・シャンドンのブリュット・アンペリアルを頂けるかしら?」




アニキ : 「えーと。舎弟! 萌え絵のブリジットって、幼女がギルティの男の娘、鰤たんをご所望のようだけど?」


舎弟 : 「モエ・エ・シャンドンはドンペリ作ってるシャンパン会社の名前ッスよアニキ……って、飲ませられる訳ないだろ、キミ未成年……というか、どう見てもローティーンなんだから!」


幼女 : 「あら、そう? ……マフィアの癖に説教なんて言えるのですわね?」



舎弟 : 「う!?」



アニキ : 「何を気圧されしてるんだ舎弟。マフィアでも通す仁義があるだろうに! キミは幼女! 幼女はまだ酒を飲んではいけない! だから酒は 出せない! 仁義にマフィアもヘチマもあるかってんだ、なぁ? 大体、ドンペリ作ってる会社のご大層なシャンパンなんてここには無ぇしな!」


幼女 : 「そう? しょうがないわね……オレンジジュース、頂けるかしら?」


アニキ : 「俺はコーラとジンジャエールしかもってない……舎弟、幼女にオレンジジュースは出せるか?」


舎弟 : 「オレンジジュースありますよ?」


アニキ : 「よし、幼女にオレンジジュースを出してさし上げろ!」


舎弟 : 「へぃへぃ……どうぞ」


幼女 : 「ありがとう……優しいのね」


舎弟 : 「一応、アニキの命令だからな」


幼女 : 「営利誘拐って奴かしら……でも、私を誘拐しても、無駄よ?」



アニキ・舎弟 : 「はぁ?」



幼女 : 「だって……私は、誰にも愛されてなんか居ないものね」



アニキ : 「何をいうか、娘が可愛くない親なんぞ……」



幼女 : 「私は親なんていませんもの」



アニキ : 「う!」


幼女 : 「それに……私は、化け物ですわ。愛される訳、ありませんものね」


アニキ : 「化け物って、キミはどう見てもようじょ……」


幼女 : 「ローズ・トレイシー……ご存じなくて?」




舎弟 : 「!!」



アニキ : 「似た名前のポルノ女優なら知っているが……」


舎弟 : 「ローズ・トレイシー……ある研究所で開発された、通常の人間の、およそ20倍の筋肉発達をした特殊遺伝子を持つ少女の名前が、同じだった気がしますよ、アニキ! 見た目は細くてちみっこいけど、極端に発達した筋肉を持ち、小柄ながら普通の人間じゃ考えられない身体能力を持つっていう、まさかアンタが……」


ローズ・トレイシー : 「お見知り置きいただき光栄ですわ。ローズ・トレイシーともうします。最も……あなた方には『爆拳王』ローズの名の方が、覚えがいいでしょうけれどもね」


アニキ : 「有名人?」


舎弟 : 「有名人もなにもッ……俺たちの界隈でも有名な人間兵器ですよッ! 素手で鉄板ぶち抜くとか、銀行の金庫もこじ開けるって噂のある……確か今はその筋肉目当てで何処かのマフィアに飼われているって聞いたけどっ、まさか……」


ローズ : 「……どうやら、他の娘を誘拐する所で、手違いがあったようね」



舎弟 : 「そ、うみたいだな……」


アニキ : 「舎弟でも間違える事があるんだな!」


舎弟 : 「ううう……」


ローズ : 「災難でしたわね、可憐な令嬢を攫うつもりが、こんな化け物を攫ってくるなんて」


アニキ : 「ま、手違いは仕方ないだろ……それはそれとして……はい、これ」 (ぽふっ)


ローズ : 「……何かしら?」



アニキ : 「うさぎのぬいぐるみだ! 女の子だから、こういうの好きだろ?」



ローズ : 「化け物の私に、こんなもの……」


アニキ : 「確かに普通の子とは違うだろうけど……女の子にゃ代わりないだろ?」




ローズ : 「!!」




アニキ : 「だったらこういうの、好きかと思ってさ。気に入らなかったかな?」


ローズ : 「……そう。面白い人」



舎弟 : 「アニキ、この人手違いで誘拐したから解放してもいいんじゃないっすか?」


アニキ : 「そうだな……ゴメンな、ローズちゃん。間違えて誘拐して……」


ローズ : 「構わないわ。私……もう行きますわね」 (どさっ)


アニキ : 「!! 何だこれ!」


ローズ : 「餞別ですわ。お受け取り下さいませ。一応、誘拐されたんだもの。身代金くらいおいていきませんとね」


舎弟 : 「誘拐された本人が身代金払うなんて……」


アニキ : 「おぼっちゃま君みたいだな! 歩く身代金」



ローズ : 「…………それでは、ごきげんよう。おじさま」


アニキ : 「あぁ……って、オジサマじゃない! 俺まだおにーさんだよ!」




 かくして、営利誘拐をしたつもりが謎の幼女と知り合う事になったアニキと愉快な仲間達。

 一体これは何のフラグなのか!

 謎が謎を呼びつつ、モブストライクは普通に続いているのである。





> 草食系のわくわくお仕事日記 〜 お仕事マスター編


 モブストライク では、ある仕事をマスターするとアレコレ特典がつく。

 場合も、あるという……。



アニキ : 「よし、今日もバット一本でライバルギャングのケツをホームランしてやったぞ……ふぅ、段々実力はついてきたけど、こういう細かい仕事をこなしておかないとな……」



 ぽぱーん!


アニキ : 「うぁっ、何だビックリしたな! ……どうした、舎弟。クラッカーなんて持ち出して」


舎弟 : 「おめでとーござーいまーす」


アニキ : 「……? あれ、何か俺目出度い事したっけ?」


舎弟 : 「うぃ、今日の仕事でアニキは、晴れて ごろつきの仕事 をマスターしたんスよ!」


アニキ : 「ごろつきの仕事……あぁ、そういえば全部の熟練度がフルカウントされてるな……」


舎弟 : 「おめでとうございます! ごろつきの仕事をマスターしたアニキは、特典として 体力の回復が早くなる ッスよ!」 (※モブスト初代鯖仕様)


アニキ : 「そうかぁ! それは有り難いな、俺のようなサラリーマンマフィアにとって、体力は命綱! エナジーパックがお友達だから、体力回復が早まるのは本気で有り難いぜ!」


舎弟 : 「おめでとうございます、アニキ! 次はチンピラの仕事をマスターして、スタミナの回復時間を短縮させましょう!」


アニキ : 「え……あー、そりゃ、いいや……」


舎弟 : 「何でッスか?」


アニキ : 「だって俺、今まで一度もその数値減らした事ないもんな!」


舎弟 : 「これを機会に抗争してみようとか、少しは思ってください、マフィアとして!」



 ※ 体力 → 仕事で減少。 スタミナ→抗争で減少。 (初代鯖は)


 草食系マフィアで抗争したことがないアニキは、確かに抗争は必要ないのかもしれません。

 はい。






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