「…………やっべ、気持ちイー………」
 掠れた、それでいてねっとりとした熱を含んだ声。
 たまらないと言うように後頭部をシーツに擦り付けて顎を反らしたルークが、生理的な涙に僅かに潤んで、翡翠を思わせるとろりとした艶を帯びた瞳で見上げてくるのにぞくりと背中が震えた。
「……ンッ………」
「くぅっ………」
 無意識に締め付けてしまったのか、途端に形の良い眉が切なそうに寄せられ、ぎゅっと瞼が伏せられて。
 ぐっと噛み締められた唇の隙間から子犬のような鼻にかかった声が漏れた。
(かわいい ―――― ……)
 ほぅっと小さく息を吐いたティアは、片手の指先を絡めたまま、そろりと身体を倒して快感を堪えるように噛み締められた唇に自身の唇を重ねた。
 長い髪がカーテンのように彼の視界を覆って、視界が翳ったことに気付いたルークがそろりと瞼を上げるのがわかる。
 そのまま触れるだけで離れると、物足りないとでも言うように追い縋ってきた。
「んっ……ルー……」
 後ろ手に肘を付いて身体を起こしての、甘えるような仕草とは裏腹の、噛み付くようなキス。
「…………てぃぁは? ちゃんと、気持ちイ………?」
 その合間に吐き出された息の、甘さ。
 無意識なのだろう、甘えるような舌っ足らずなそれに酔いそうになりながら、けれどティアはそのキスから逃れて身体を起こすと、手を伸ばしてルークの鼻を抓んだ。
「………ふぁ?」
 酷く間抜けな声が上がる。
「…………そういうことは、聞かないの。教わらなかった?」
 上擦ってしまいそうになるのを堪え、嗜めるように告げると。
「……っ、すがに、そこまで教わんねー、って……」
 ルークは舌打ちでもしそうな表情で繋いでいた手を解き、両手を強引にティアの腰の後ろへと回してきた。
 大きな掌が尾骨から上へ、背骨を辿るように這うのにぞくりとする。
「んっ………デリカシーのないこと、言わないでってことよ」
「気になるじゃんか、俺ばっか気持ちいーの、やだし」
「っ、から………きゃッ!?」
 そのまま引き寄せられて、彼の上に前のめりに倒れ込む形になって裏返った声が上がった。
 たわわな胸に顔を埋める形になったルークがどこかあどけない表情で眼を閉じる。
「………ティアの胸、すべすべでやわっこくて超気持ちイー……」
 こんなことをしている真っ最中だと言うのにまるで子供染みたそれに毒気を抜かれて、ティアは溜息交じりの声を返した。
「…………それ以上言うと、怒るわよ」
「………誉め言葉なのに」
 拗ねた様な声と共に胸元にちりっと微かな痛みが走る。
 明るいところで見たら、所謂キスマークと呼ばれるものがついているのだろう。
「―――― ………ってるわ、よ」
 本気でそう思ってくれていることぐらい、わかってはいるのだ。
 恥ずかしいからあれこれ言われたくは、無いだけで。
 掠れた声が届いたのか、はぁっと熱っぽい息が漏れた。
「………っれ、も、ガマンできね……ッ……」
「……っぁ………」
 もぞもぞと腰が揺れて、限界を訴えてくる。
 それにじわりと頬が赤くなるのを感じながら、ティアは汗で額に張り付いた髪を掻き上げて、彼の額にキスを落とした。
「…………ゆっくり、ね?」

― END? ―
 

 やっちまいました……!!
 ルクティア……ですが、限りなくアレ、うん、ヘタレで受なルー君です。
 当初は気持ちよくなっちゃってるルー君を書きたかっただけだったのですが、ティアルクだと言われてしまいました……(笑)。

 生々しい+ヘタレ上等な方へのオマケ(え)
戻ル。