PMF2010の記憶〜その2
PMFOのコンサート3本


2010年7月18日 札幌芸術の森・野外ステージ

PMFオーケストラ・セレブレーション・コンサート
〜芸術監督マエストロ・ルイジを迎えて〜

PMF2010野外一発目、開場1時間半前の行列はわずかにふたり。
ちょっと人気薄か・・・。

新芸術監督登場のコンサートは司会と通訳を舞台脇にセットし、
演奏前に主催者、スポンサー、ルイジのあいさつの場を設けた開会式の雰囲気も帯びたもの。
そのためかPMFフレンズは芝生席ながら無料で入場できる。

最初はヴェルディの「シチリア島の夕べの祈り」序曲。
冒頭の堅い緊張感はルイジの意図かそれとも本物の初日の緊張か?
後半のヴァイオリンの美しさが素晴らしい。
音程にしてもボーイングにせよよく統率されているように思われた。

2曲目はマルタンの7つの管楽器、ティンパニ、打楽器と弦楽オーケストラのための協奏曲。
このへんの作風だと、奇怪なコンテンポラリーには至らないので聴きやすい。
各ソロ楽器がまんべんなく活躍して場にふさわしい音楽だ。
しかもファカルティ達がいずれも見事なソロを聴かせた。
オーボエの「女傑」モネ、トランペットのヴァレンツァイ、トロンボーンのノードが傑出していた。

休憩を挟んでベートーヴェンの交響曲第7番。
大変熱気あふれる演奏となり大いに満足したと言いたいのだが、
ルイジのオーバーな指揮から聴こえる音楽は、
こまかい部分でのテンポやフレーズの扱いに賛成できない部分もあったり、
時に古典派の音楽として品位に欠けるように思えた。
「ベト7」に品位はいらない、という向きもあるかもしれないが・・・。
目立ったのが第1、第2楽章をアタッカとしたこと。
これは緊張感の持続に大きな効果をあげていたが、
他の楽章間はゆるくとり、逆に演奏自体の勢い、緊張感を殺いでしまっていた。
とはいえ、時に強引なほどのドライブにファカルティ率いる弦楽器群が見事に付いていく行くさまは
聴きごたえも見ごたえもある。
この日のコンマスはヒンク、意地悪な見方をするならVSOの現シェフが、
(引退したとはいえ)VPOのコンマス率いるオケをきりきり舞いさせる構図である。
ともかく熱の入った演奏でフィナーレが怒涛のように終り、
後ろを振り向けば大勢の聴き手が芝生席を埋め、喝采を送っていた。
時折雨粒が落ちたが、天はなんとかルイジとの約束を守り終演までケースから出した傘は用無しに終わり。


2010年7月25日 札幌コンサートホールKitara

PMFオーケストラ演奏会〜ルイジのオペラ“ラ・ボエーム”〜

PMF久しぶりのオペラ。
コンサート形式とは言え、オーケストラ前には椅子が不規則に並べられ、
歌手たちにはステージの出入りもある軽い演技が求められた。

ダブルキャストの2日目は歌手全員がオーディションで選ばれた。
第1線級の歌手のようなスケールの大きな声や個性は期待できないが、
誰もが堅実な仕上がりの歌を聴かせ、満足のいくものだった。

合唱団は声量的には十分だが総じて発音に明瞭さを欠いたのは残念。
とはいえ、第2幕冒頭でPブロックに立ったその声は、
あのゼッフィレッリの2段舞台の音響効果を思い起こさせ効果抜群。

オーケストラはファカルティを加え精彩に富む。
弦楽器はアンサンブルの精度が高く、
木管ではフルートが随所で美しいソロを聴かせた。
ピットに入らないオーケストラの音は歌をマスクする部分もないわけではなかっが、
これはオケの問題というよりは歌手の地力の問題かもしれない。

今までのオーケストラ・コンサートではオーバー・アクションが気になったルイジの指揮、
ここではのめり込みすぎず、実に的確、やはりメトの主席客演というのは伊達ではないと思わせた。
しかしさすがに第2幕終盤は難しいのだろう。バンダ、オケ、合唱が危うく空中分解するかと、はらはらさせた。

プッチーニの美しくも悲しい音楽を堪能したひととき。
いつもは前半2幕で満足する「ボエーム」だが、この日は後半の2幕の抒情的な音楽により惹かれた。

これで歌手がかつての様なプロの1線級で、
ファカルティがウィーン、ドレスデンのメンバーだったらなどと言ったら贅沢か・・・。

終演17:20


2010年7月31日 札幌コンサートホールKitara

PMFオーケストラ演奏会〜サルート・トゥ・ショパン&ブルックナー〜

PMFO最後のプログラムは、久々のブルックナー登場(前回の8番は聴いてないけど・・・)。
NHKのTVカメラが5台入った。
LAブロックの席は第1ヴァイオリンが半分見えない。
ルイジの指揮を見ようと思ったがさすがにちょっと失敗だったか・・・。

前半はショパンのピアノ協奏曲第2番、ソロはリーズ・ドゥ・ラ・サール。
なかなか美女、LAブロックからではほとんど背中しか見えないが、
退場のときにはしっかりとそのルックスを堪能・・・。
音色もタッチも悪くないが強烈な個性は感じられない。
また音楽の息が短く、どこか場当たり的で一貫性というか持続力に欠ける。

ただこれは奏者の責任ではなく、曲自体の問題かもしれない。
それ以上に自分の聴き方の問題か・・・。
アンコールに遺作のノクターン。
こちらはしっとりとした佳演。

期待のブルックナー。
音楽は力強く、ルイジの音楽も大変意欲的なものだったが、
不満も少なくなかった。

マーラーの音楽の様にある種の勢いだけで済まない、
緊密で一体感のあって、重さのある響きがあまり聴かれない。

今回もファカルティがトップを取る形をとったのだが、
ケイナーのフルートを初め全体的にスタンド・プレーとまでは言わないが、
演奏自体からはみ出したものに聴こえるシーンが目立った。

またホルン、ワーグナー・チューバといった聴きものといえるパートが全く不安定だったり、
長いクレッシェンドを持続することのできないティンパニなど、
個人的にはPMFOでこれだけがっかりさせられるシーンの多い演奏というのはあまり記憶にない。

ルイジのブルックナー、もっとちゃんとしたソロ・プレイヤーがいるオケで聴いてみたいと思う。

終演21:20


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