『いよいよ有馬編スタート(13巻)』
『本心を隠し続ける有馬』
有馬は自分の本心を宮沢に知られたら嫌われてしまうと思っているようだが、そんなことはない。むしろ、本心をさらすことを彼女はもちろん有馬の叔父と叔母も望んでいるはずだ。それに、このことを知れば宮沢は一家全員で協力してくれるだろうし、育ての御両親にしても心から打ち解けてくれたと思って大喜びしてくれるに違いない。「意外な理由に驚く」
それにしても有馬が執拗なまでに勉学に打ち込む理由が親戚共への復讐だったことに少なからず驚いた。とはいえ、まだまだ分からない部分もある。確かに、社会的評価で自分が一番になることで、これまでバカにしてきた連中を見返すことは出来る。けれど、それだけで積年の恨みが晴らせるとは到底考えられない。だとすると、こちらの想像もつかないような恐るべき計画を人知れずに準備しているのかもしれない。「気持ちは分かるけど」
相変わらず有馬のことを見下す親戚共の態度に憎悪の炎を燃やす気持ちは痛いほど分かる。他人でもむかつくのに、血の繋がりのある人間であるなら尚更である。こんな奴等にはそれ相応の仕返しをしなければ気が済まないと思うのも無理はない。それが分かるだけになんとしても復讐をやり遂げてほしいと願いたくなる一方、そのような下らない連中とは関わらず宮沢と幸せな道を歩んでいってくれればいいのになと思う気持ちもある。『実の母親登場でこれからどんな波乱が巻き起こるのやら』
そして、この巻の最後に登場した有馬の生みの母親。ちょっとだけなのでまだなんとも言えないのだけど、わざわざ出てきたのだから、今後有馬とその周辺の人間にどんな波乱を巻き起こすのかと思うと、今から楽しみである。『有馬の根底にあるもの(14巻)』
今そこにある幸せを素直に喜べない、否、喜んではいけないんだという強迫観念に有馬は囚われてしまっている。その傾向は叔父叔母夫婦に引き取られた頃の利発で可愛らしい少年の頃から色濃く現れていた。目の前に何かご褒美を差し出されて「本当に自分のものなの」というような目で訴える姿は可愛らしくはあるが、儚くも感じてしまう。虐待の日々に怯える記憶を封印しても尚これ程の後遺症を残し、現在も突如登場した母親の影に怯える有馬を見ているとなんだか居ても立ってもいられなくなってしまう。『産みの母涼子の悲哀』
なんとなくだけど、涼子は口が達者なんだなと思った。確かに水商売という職業柄、相手の気持ちを掴むのはお手のものだろう。それでなくても幼い頃まで有馬と一緒に暮らしていたのだから、自分側に抱き込むことなんか赤子の手を捻るように簡単なことかもしれない。『複雑な有馬の胸中(15巻)』
花華院美木(「天使な小生意気」)の時にも感じたけど、子供の頃に植え付けられた負の感情はなかなか払拭できるものではない。それが良くないんだということを頭では理解していても気持ちがそれを拒んでしまう。複雑な有馬の胸中を見ているとなんだか切なくなる。『微妙な違和感』
最初のうちは有馬視点を中心にするのも悪くはないと思っていた。15巻でも一人では抱えきれない辛い過去を思い出して苦悩する有馬の心境はよく描かれていて、それに関しては申し分ない出来だとは思う。『これにて一件落着(16巻)』
有馬の心が救われた一番の功労者はやはり宮沢雪野をおいて他にいないだろう。もともと主人公だった訳だし、彼女がいたからこそ「彼氏彼女の事情」も16巻まで漕ぎ着けられた。宮沢がいなければ彼が抱える悩みというものは生涯取り除かれなかったことだろう。そういう意味では、有馬に惜しみなく愛情を濯いだ叔父夫婦の存在も大きかった。人から愛されるという土壌があったからこそ、宮沢に対する過剰なまでの執着心というものも発揮できたと思う。その執念によって獲得した掛け替えのない人に深く根ざした闇を取り払ってもらったのだから、これほど喜ばしいことはない。『ちょっと引き伸ばし過ぎたか(17〜20巻)』
最初のうちは、有馬が抱えていた暗闇が如何にして、底なし沼のように淀んでしまったのかが明らかになるところは、それなりに興味を惹かれたものの、流石にちょっと引き伸ばし過ぎたような気がする。本来の主人公はやはり雪野なので、もっと内容を凝縮して・・・いたとしても、結果は一緒だったかも。だったら、ある程度読者に認められた有馬編で稼げるだけ稼いでしまおうという魂胆が見え隠れする。商売上仕方がないとはいえ、なんとも解せないのも確かだ。『拍子抜けだった(21巻)とまとめ』
全てが丸く収まってしまって目出度いはずなのに「なんだか拍子抜け」というのが、正直な感想だ。雪野から灰汁の強さが抜けてしまったことで彼女のみならず、作品の魅力というものが薄らいでしまった。上手く纏まっているとは思うが、やはり、なんとも言いようのない物足りなさというものを感じたと言ったら贅沢だろうか。タイトル | 作者 | 出版社 | 第1巻出版年度 |
彼氏彼女の事情 14〜21巻 |
津田雅美 | 白泉社 | 1996年 |
タイトル | 作者 | 出版社 | 出版年度 |
子供が育つ 魔法の言葉 |
ドロシー・ロー・ノルト レイチャル・ハリス 石井千春=訳 |
PHP | 1999年 |
タイトル | 作者 | 出版社 | 第1巻出版年度 |
天使な小生意気 7〜9巻 | 西森博之 | 小学館 | 1999年 |