(エビガライチゴの実が赤く熟していた。)
7月15日

雨不足で枯損の危機的状態にあった広葉樹植栽林地のその後の様子を見に訪れた。
本格的な梅雨らしい雨は6月の月末頃から7月の上中旬にかけて降り、夏草は勢いづいて
人の背丈を越えるほどに伸びている、そんななかで植林後の第一回目の下刈作業が行わ
れていた。下刈作業の現場では、通常は刈り払い機のエンジン音が響いて遠方からも認め
られるが、ここではそれが聞こえてこない。小さな手鎌を使った坪刈りという方法がとられて
いるためだ。植栽の広葉樹は苗木の間を1メートル間隔で3角形に植える巣植えが行われ
ているので、作業者は赤い目印を頼りに誤伐しないように注意しながらその周囲1メートル
程を刈り払っていく。猛暑の訪れの中、蜂の来襲に注意を払いながら現場作業に従事する
スタッフたち、山造りのプロとして蓄積された経験が生きている。

坪刈りは植栽木の周囲1メートルほどを刈っ
て陽光を当て成長を促進する作業、全刈り
の場合と違って刈り払いの跡が明白でない。
伸びた夏草の中に埋まるようにして7人のス
タッフが作業に従事していた。
植栽の際一本一本に赤いテープを貼る配慮
がなされていた。下刈の際に誤伐を防ぐための
目印である。植栽樹種の様子、写真左、梢端
部分は枯れたが、中途より新芽を出して復活の
クヌギ。同右、一度葉を出した後に枯れたコナ
ラ。表土浅く乾燥に耐えられなかったか?
小型の手鎌を使っての作業、坪刈りは、カモ
シカの食害防止の効果も期待しているという
が、この現地のような乾燥しやすい地形では、
幼木を保護するために周囲の植生との共生、
共存の効果が期待できると考えられる。
下刈作業にとってこの時期の暑さは大敵
であるが、刈り取る草木の中に巣くい突然
襲ってくる蜂は命にかかわる大敵である。
作業者は頭から防虫ネットを被り蜂の攻
撃から身を守るが、柄の短い手鎌は蜂の
巣に近づく危険も大きいのではないか。
尾根筋
の斜面にきのこの株が見かけられた。秋に出る
クリタケかと思ったが、どうもナラタケモドキらしい、この種は、梅雨時から発生すると図鑑に記されている。
   
[思い出す風景] 拡大造林が盛んに
行われた昭和30〜40年代、下刈作業の
風景は農山村の風物詩であった。各林業
家の経営計画の立案に当たって、植林計
画は下刈の実行が可能な面積を考慮し
て決めるべきだとよく言われた。下刈は
植林後5年間は実施する必要があるの
で、5年間の植林面積の累計が下刈りを要
する面積となり、計画の実行可能性の点
からチェック用件としたのである。

   前ページへ   次ページへ