世界の車窓へ(2004年6月分)

2004/07/02 (Fri) 294

.「6月30日(水)」.
■というわけで帰国。今回のツアーはまさしく「ツアー」で、移転移転の日々。1ヶ月という時間は瞬く間に過ぎました。今回のツアーをもって、日仏中の国際共同製作としての『IRIS』は終了。急遽、決まった事柄だが、メンバー各自、自国での各々の活動に戻って行った。(今年末にはフランスで『IRIS』ニュー・バージョン公演もあるが、これはフランス人主体で新たに再編成される予定。)というわけで、不肖・小浜も少し疎かにしていたこの国での展開に重きを置いて再活動しようと思ってる所存です。宜しくお願いいたします。『IRIS』の本格的なリハーサルは、昨年6月のシャトーバロンからだったから丸一年という短い期間だったが、この一年は濃縮一年でした。言葉もダンスも不自由な男に国際共同製作という奇跡のような機会を与えてくれたフィリップ・ドゥクフレ氏&佐藤まいみプロデューサーに深く感謝します。ありがとうございました。この一年で見たこと・聞いたこと・知ったこと、いい意味で、ちゃっかり盗まさせていただきますので、今後の展開に乞うご期待ください。ではまた。SEEYOUWORLD!


2004/06/22 (Tue) 287

.「6月28日(月)」.
(5月31日〜6月28日分は、『STUDIO VOICE』2004年9月号(vol.345)「アーティストたちの旅」特集「タビレポ!」から転載したものです。本誌には観光写真も掲載されてますので、そちらのほうも是非、ご購入ください。)


■TGVで皆とパリに戻り、終着駅で最後のお別れ。仏ダンサー・オリーブに言われたのが、「See you TOKYO? See you PARIS?」で、続けて、彼が言ったのが、「世界は丸いし、繋がってるし、何処へでも行けるし、何処ででも会える。電車を使ってだっていいし、飛行機を使ってだっていいし、船だって」というような言葉で、つい微笑む。そう、そういうこと。行けないとこなんて無い。だから、「See you WORLD!」と言って、手を振った。僕的には、「世界のどこかでお会いしましょう」という意味だったのだけど、伝わってる?



2004/06/21 (Mon) 286

.「6月27日(日)」.
■早くも楽日。今秋以降は、フランス制作で再編成されていく「IRIS」なので、日仏中国際共同製作としての「IRIS」楽日でもある。本番前のミーティングは、皆静かだった。ステファンから「イッツ・グレート・プレジャー・トゥ・ワーク・ウィズ・マサ」と、正面から言われれば僕も動揺。日本から持ってきた達磨を渡せば、「オゥ、オキナワ!」と言われ、さらに動揺。で、最後の「IRIS」。今日も昨日同様、立錐の余地もないほど超満席でありがたい。「マサと呼ばれる日本人」もこれが最後。ラストダンスは脚立と。



2004/06/20 (Sun) 285

.「6月26日(土)」.
■朝市の道を抜けて劇場入り。照明作り→ゲネプロ→本番、とそれだけでも大忙しな予定だが、それに加えて、開演前のロビーでやる「脚立バレエ」の用意もしなければならない。僕と中国中央バレエ団のフェイ・ボーで考案した演目。昨年末のパリ公演でも開演前のロビーでやっていて、今回の各会場でもやるはずだったが、広いスペースがなく、実現出来なかった。で、半年ぶりにやった。そんな慌しい中、作業着から羽織袴に大急ぎで着替え開演。客席は(オペラ座のような)正面&サイド6階席まで人人人の二千五百人超満員で、その数の「ブラボー!」にビビッた。



2004/06/19 (Sat) 284

.「6月25日(金)」.
■モンペリエへの移動日だが、パリ市内を聖火ランナーが走るため交通規制が行われるらしい。渋滞が予想されるので、早めに集合場所のガル・デ・リオン駅に向かう。で、TGVに乗って3時間半、モンペリエ駅着。ウワッ、猛暑!駅前で見ず知らずの男に話しかけられる。ポン引きだと思って無視してたが、やけにしつこい。話を聞くと劇場スタッフだった。早く言ってよ!その彼に引率され劇場へ。町の感じは、同じ南仏地方のアヴィニオンに似ている。明日から国際ダンスフェスティバルが開幕するのでウワッ、カーニバルが来た!かのように賑わう町。



2004/06/18 (Fri) 283

.「6月23日(水)」.
■ルクセンブルグ公演を終えパリに戻ったのが昨日の夕方。ルクセンブルグに比べ、圧倒的に暑いし汚い町だと思うが、それでも、(だからこそ?)落ち着く。道ですれ違った黒人が不自然な体勢と早さで僕側に向かって来たので、つい襲われる!と身構えたら、肩に掛けていた上着がずり落ちて、ただ急いで直そうとしただけだった。脅かすなあ!あと、大抵、町は工事中だ。サグラダ・ファミリアでも思ったことだが、世界の至るところで工事は行われていて、つまり地球は常にどこか工事中で、1秒毎に変化していき、止まっていることなんてないのだなーと。



2004/06/16 (Wed) 282

.「6月20日(日)」.
■この国は愛国心の高い国らしく、町の至るところに国旗が掲げてあり、公爵一家のポストカードも売られている。で、本番2日目。「IRIS」の演出で大事な役割を果たす一つが「大黒幕の開閉」なのだが、その操作を初めて間近に見て感動。スタッフが、針の穴を通すような細かさで操作。観客からは見えない職人芸が、舞台を支えていることを実感。で、終演後の町は、騒々しかった。この国には、ポルトガルからの労働者が多く、ユーロ2004の決勝リーグ入りを喜ぶ彼らが、ポルトガルの旗を振り回し、クラクションや爆竹を鳴らし、狂ったように興奮していたのです。それを見て、やっぱり「国旗」について思いを巡らす。



2004/06/16 (Wed) 281

.「6月19日(土)」.
■朝、外からのドーン!ドーン!と大きな音で目が覚めた。窓から見ると鼓笛隊が練り歩いてらしく、太鼓を叩いていた。特別なことなのか、毎度のことなのかは、よく分からない。で、劇場入りして、この国の治安安全という思いは覆された。衣裳スタッフのJが、昨夜、三人組の男に殴られ、財布をカバンごと盗られたという。ツアー中、こういう体験をするのは初めて。浮かれ気分を引き締め、本番。冒頭のルクセンブルグ語挨拶も伝わったようで安心。「幽霊」も「ウルトラ影絵」も、ビックリするほど伝わったようで凄く嬉しい。ありがとう、見知らなかった地の人よ。



2004/06/16 (Wed) 280

.「6月18日(金)」.
■世界遺産でもあるボック砲台に寄り、緑と城砦と橋を見渡してから劇場入り。舞台スペースは、劇場毎に異なるので、冒頭のシーンから順に細かい位置決め&照明作りをする。で、「冒頭の挨拶」は、ルクセンブルグ語でやることになった。フランス語とドイツ語とオランダ語が混じった感じの言語らしく、覚えるのがすごく難しい。「泥ダムン、安、D減るん、グー点、包分等」と語呂合わせをデッチあげ覚える。何の語呂合わせだか分からないが。なんとか24時前に全シーン終了。外に出ると雨が降っていて寒い。コートを着る人も。明日、早くも初日。



2004/06/12 (Sat) 279

.「6月17日(木)」.
■スペインからパリに飛行機で戻ったのが昨日で、今日は電車でルクセンブルグに向かう。で、3時間半酔うほどに揺られ、肌寒いルクセンブルグ着。新幹線の止まる駅の駅前のように何もないけどクリーンで安全な雰囲気。劇場へ向かうバスの中から町を眺めて改めて思うのは、故どんとのバンドが、ローザ・ルクセンブルグという名前だったということ意外、何も知らない、見たことも聞いたこともない地に来た、ということ。でも、それはお互い様で、見たことも聞いたこともない僕を、この地の人は見るのであろう。こんにちは、他人。



2004/06/11 (Fri) 278

.「6月14日(月)」.
■休日。僕は、日本から来た妻と観光。先日の撮影で来たグエル公園を再び訪れた。で、帰りしな、駅に向かっていると突然、生卵が足下にぶつかる。え?と思っていると、どこからか2発目が飛んできた。敵の姿は見えないが、完全に狙われている!急いで駅構内に逃げる。幸い、ズボンが汚れる程度で収まったが、バイオレンスシティを体感。少し動揺。コロンでブスになるとこでした。その後、そんなことすっかり忘れて地中海で泳ぐ。シーフード・パエリアも美味かったが、イカ墨スパゲッティは、生涯食べたことない美味さで舌鼓打ちっ放し。



2004/06/10 (Thu) 277

.「6月13日(日)」.
■この町には、サグラダ・ファミリアだけじゃなく赤レンガと青&白タイル塀の闘牛場や、ガウディが建てた山の家・海の家と呼ばれる変わった建物がいくつもある。それらは、ある意味、歴史的な物件だが、写真の物件(通称「ちんこビル」)は何の目的か分からないが、そうとしか呼びようのない存在感で立っている。この建物を見たある世界的な振付家が考えたSFストーリーがあるが、あまりにオヤジ的与太なので書かない。で、本日スペイン公演楽日。本番中、舞台裏でサッカー中継を食い入るように見る舞台スタッフを、「さすがスペイン人!」と思いつつ閉幕。



2004/06/09 (Wed) 276

.「6月10日(木)」.
■本番3ステ目終演後、MTVラテン放送局の招待を受け、メンバー全員で、パロマというダンスホールへ行く。宵の口は、シニア向けの社交ダンス会場だが、0時半を過ぎると、ヤング向きの会場に変わる。本番後なのに皆、踊る踊る。場内では、VJもいて、映像がプロジェクションされていたが、今や東京的の新象徴になりつつある渋谷Qフロントの「実物大」映像や「三千里薬品」の映像もあった。帰り、タクシーの中から、全身星条旗の衣装で街角に立つ黒人娼婦を見た。今日、一番キョーレツだったのは、その星条旗の人の笑顔。なぜ、あの人は星条旗に身を纏っていたのか不明だったが、部屋でテレビをつけるとレーガンの葬儀中継していた。もしや追悼?または便乗?



2004/06/09 (Wed) 275

.「6月8日(火)」.
■初日。21時開演。やや暗くなってきた頃に幕は開く。昨日、テレビでやっていた『クレヨンしんちゃん』ネタを、好き嫌いは別にして、早速、冒頭の「挨拶」に入れる。こっちの挨拶は「Hola!(オラッ!)」なので、「オラ、シンノスケダ」をやらないわけにはいかないだろう。ちなみに、スペイン語版のシンノスケの喋りも、日本同様モッサリしてやがる。で、シンノスケ語だけじゃなく、カタルーニャ語も、僕が考案した「手だけの幽霊ダンス」、「ウルトラマン影絵ショー」も伝わったみたいで、満員のお客さん総立ちで喜んでくれた。伝わることが嬉しい。



2004/06/06 (Sun) 274

.「6月7日(月)」.
■本当は休日だったのだが、夕方、劇中映像用の撮影のため、グエル公園に全員集合。バルセロナ市街を見下ろせるそこには、トカゲの噴水やモザイクタイルのベンチ。お菓子の家というか、何というか、メルヘン感な建物が園内に並んでいた。映像と、舞台上の生の動きがシンクロするシーンがあるのだが、それを全員でやる新映像の撮影。フィリップがカメラを回す。劇場で稽古していたので、撮影は順調に進んだ。撮影後、皆で地中海に行き泳ぐ。泳いだあとは、レストランで食事。もちろん地中海料理。



2004/06/02 (Wed) 273

.「6月4日(金)」.
■基本的な日課として、午前中はバーレッスンのクラス(ダンス歴ゼロの僕も見よう見まねで参加)で、午後から本番に向けての稽古。今日は、照明作り&テクニカル・リハ中心。本番の冒頭、羽織袴を着た僕&フランス人俳優ステファン&京劇俳優ルーがそれぞれの母国語で挨拶をする「3ヶ国語挨拶」というシーンがあるのだが、そこにこの地方の言葉であるカタルーニャ語を交えてやることになった。知らなかったが、スペイン語とカタルーニャ語は、大きく違うらしく、日本から持参したスペイン語の辞書もほとんど役に立たない。そりゃないぜセニョール!



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