その34 地蔵盆


 

 毎年7月24日は、厳原町の町内で地蔵盆が盛大に行われる。町内のお地蔵様に飾りつけをしてこどもの安全と成長を願う行事であるが、子供たちは毎年この日を楽しみにしていた。ゆかたを着て町内のお地蔵様を巡り歩く。回っていくと子供たちはお地蔵様からお菓子やアメがもらえる。
 飾りつけには、趣向が凝らしてあって、いろいろと面白い格好のお地蔵様が思い出される。
 厳原の町並みは石垣の土塀、町の真ん中を流れる厳原川の両岸に並ぶ柳の木々の川端通りがなかなか風情がある。夏休みに入ったばかりの地蔵盆のこの日は子供たちにとってはまさに至福の一日だ。
 蒸し暑い夏の夜、港厳原の町はにぎやかさと明かるさに包まれる。光り輝くお地蔵様とこどもたちの幸せそうな笑顔がまぶたの裏に焼き付いて今も離れない。


 

お地蔵様は実質的には民間信仰の中にある神様ですが、一応は仏教に所属す る地蔵菩薩。過去に釈迦が入滅した後から、未来に弥勒菩薩が現れるまでの 間の今世において、人間界のみならず地獄・餓鬼・修羅・畜生・天といった 六道の全てにおもむき、人々を救済する存在です。六道に合わせて六地蔵も よく道ばたなどに作られています。
またお地蔵様は子供の守り神であり、賽の河原で苦しんでいる子供達の霊を なぐさめるものとして、地蔵和讃にも歌われています。
一重組んでは父のため
二重組んでは母のため
(中略)
その時能化の地蔵尊
(中略)
幼き者を御衣の
もすその内にかき入れて
哀れみたまうぞ有難き

地蔵盆では町外れのお地蔵様の前に棚を作って供物を捧げたりします。一般 には子供主導のお祭りとして行われてきましたが、それに合わせて陶器市な どが開かれたりするケースもあります。
 

厳原の地蔵盆


夜町内にまつられている地蔵様に供物をし、盆堤灯をともし、
子どもたちの安全を祈るおまつりです。夕暮れになると、子どもたちが
各地蔵様を回り、おさい銭を上げ手を合わせ、お参りをすると
地蔵菩薩の絵が入ったお守りとアメがもらえ、夜おそくまで賑わいます。