百鬼

   なんて言うんでしょうね。廃墟が舞台という雰囲気、タイトルからして最初は遺作みたいなゲームだと思ってたんですよ。ヒロインがどんどん捕まっていくみたいな。ヒロインがどんどんヤられていくみたいな。登場人物が次々に殺されていくみたいな。でも、そうじゃなかったんですよ。


   舞台は今や廃墟となった黄化島という、某軍艦島をモチーフにしたような島に黄化島出身である主人公の友人と幼なじみの若葉(伏線)とその他の客とでツアー(?)に行くという話。

   この百鬼は大きく分けると二つのシナリオに分かれていまして。前半は百鬼の舞台、廃墟と化した黄化島を先に説明した登場人物で散策するというシナリオ。マルチエンディングで適度なフラグ立てあり(15個の小説を集めるなど)、それなりに笑いあり、謎解きあり、緊迫感ありでアドベンチャーゲームとして普通に面白いんですが、ちょっと物足りない感じがするんですよね。なんか感動が無いっていうの?心にグッと来ないっていうの?全部のルートを通っているにもかかわらず微妙に中途半端な印象を受けたんですよね。その辺のことはちょっと置いておきます。

   そして、この前半のシナリオで15個の小説を集めると後半のシナリオ(百鬼ルート)へ進めるわけです。この後半の百鬼シナリオは、黄化島でまだ若葉が生活をしていた頃の回想シナリオで、分岐のない一本道の展開になってるんです。


   って!な、何いいいいいいいいいいっ!若葉がまだこの島で生活していた頃の話だとおおおおおおおおおおおおお!<何故か絶叫


   このシナリオで前半での謎が解けるようになるわけで、若葉のことも解るようになるわけで。って、いや、これがさ!切ないのよ!号泣までいかなかったけど目頭が熱くなるのよ!心にグッと来るのよ!感動するのよ!ちょっと現実離れした話だけど目頭が熱くなるんだよ!胸の奥が熱くなるんだよ!お前!だってまさか!なあ!(伏線)

   この2つのシナリオの他にもオマケ的なシナリオがいくつかあって、これらを全て解き終えたとき、初めて百鬼の物語の全貌が明らかになるようになっているんです。もちろん、ここまで来ると前半での中途半端な印象もすっかり無くなってるわけです。

   こうやって、最初は中途半端かなと思わせつつ、最後でしっかりと物語を完成させ、プレイヤーを自然に物語にのめり込ませるあたりはやっぱり流石。

   パッケージの色合いや雰囲気からして一瞬鬼畜モノ?とか陵辱モノ?とか思うかもしれないけど、その手のモノではなく、どちらかというとそれとは正反対の感じかなと。まあ鬼畜っぽいシーンもありますけど。(俺は泣きゲーと断定!)

   一風変わった展開ですが、この百鬼のゲームシステムはかなり遊びやすいんじゃなかと思います。特にルートを確認できるシステムは最高。自分の通ってきたルートをいつでも確認できるのはもちろん、好きなポイントに好きなように戻ってプレイを再開することも出来るんです。分岐点とかでセーブしておかなくてもそこからプレイ再開なんてのも可能なんです。って言うか、要所要所のポイントで自動セーブまでしてくれるので、セーブ、ロード機能をほとんど使わずにプレイすることが出来るんですよ。もちろん、ゲームの特性上フラグ立ってないと進めない箇所もあるので、初めからリプレイしないといけない場合もありますけどね。
   こういうタイプのゲームはシナリオが進むに従って分岐点が増えて、何度もセーブロードを繰り返す羽目になってそれがストレスになるんですけど、百鬼ではそれがほとんど無くて、遊びやすさを第一に考えられたシステムだなと感心しきり。逆にそれがネックとなってプレイ時間が短くなってしまいボリューム不足かな、なんて思ったりもしますけど。


   いまいち評判の上がらなかった百鬼。往年のelf作品を知っていれば確かに物足りなさも感じます。でも、個人的にはなかなか良かったと思います。一押しっていうわけでもないんですが、決してハズレではない感じ。
   でも、本編中のHシーンが少ないからなのか、おまけシナリオの方にHシーンがたくさんあるんですが、取って付けたかのような多さなので、それはちょっとどうなの?って思ってしまいました。いや、あっても困らないんですけどね。