どうも、本日代打日記を担当させていただく、鯰工房の鯰(なまず)です。
人様のページでいやらしいネタは書けませんので、今日は学問の香り漂うお話をしましょう。
鯰は今、大学でドイツ文学の歴史について学んでいます。
ニーベルンゲンの歌とか、聞いたことありませんか?
そのような結構有名な作品から始まり、中世になると、民衆文学作品が登場してくるわけです。
日本でも、江戸時代などの文化の爛熟期には、滑稽本や人形浄瑠璃などの町衆文化が華やかでした。
やはり、こういう流れは、どこの国でも同じなのだなあ、などと考えたりして、結構面白い授業です。
さて、今日はドイツのバロック期の民衆文学作品をみてみましょう。テーマは、ドイツで、17世紀にグリンメルスハウゼンによって書かれた「阿呆物語」です。どうです、ストレートでしょう。題名で一瞬にして中身が判別できます。
つまり、「あほうのものがたりだな」と。
当世のコピーライター達もこれぐらいキャッチーなコピーを考えて欲しいものです。
で、この物語のあらすじです。
農家の子供として生まれた阿呆ジムプリチウスは、波乱万丈の人生を送るにしたがって、徐々に賢くなっていき、むしろ阿呆ではなく利口ジムプリチウスになります。ですが、世間の波にもまれた結果、一切のことに虚しさを感じ、最後には山中に引きこもって隠者生活を送るというものです。
どうです。凄いでしょう。農家の阿呆ジムプリチウスが、どんな波乱万丈な人生を送った結果、隠者になるまでに悟りきってしまったのか気になるでしょう。
幸いにもこの物語は、目次が異常に親切で、それさえ読めば章の内容が結構わかるようになっています。
では、彼の人生が如何に波乱万丈だったのか、下に目次を書き並べてみましょう。
第一巻
第一章
ジムプリチウスは自分が百姓の家に生まれたことと、どのように育てられたかを語る。
第二章
ジムプリチウスは牧童に任ぜられ、牧童の生活を賛美する。
第三章
ジムプリチウスは風笛を鳴らしつづけ、ついに兵隊によって連れ去られる。
第四章
ジムプリチウスの居城は兵隊に荒らされ、それを防ぐものがいない。
どうです、わかりやすいでしょう。このようにしてこの阿呆物語は始まるわけですが、途中からだんだん目次がおかしくなってきます。
第三十二章 ジムプリチウスは客たちが牛のように飲み、ついに牧師が退却するのを見る。
第二巻
第八章
ジムプリチウスは物覚えについて講義を聴かされ、ついでに物忘れについての講義を聴かされる。
第二十九章 ジムプリチウスは兵隊が「パラダイス」でパラダイスに遊ぶ思いがしたことを語る。
まあ、よくわからないのは古典の常。それもその当時の民衆感情にそって作られたものなのでしょう。
ただ。
ただですね。
どうしても、どう考えても見過ごせない目次があったんですよ。
第六巻
第二十章
ジムプリチウスは料理女を手に入れ、
こころを慰められ、
やがて、
鼻毛を抜かれる。
なんで?なんで鼻毛?
ここまで来てどうして鼻毛?
この疑問が気にかかって授業どころではありませんでした。
先生、こんな面白い目次だけ配るのは卑怯です。