RSウイルス感染症


RSウイルスとはにはRespiratory Syncytial Virusを略したものです。
Respiratoryとは「呼吸の」という意味で、このウイルスが呼吸器系ウイルスであること、
またSyncytiumとはヒト培養細胞で合胞体を作ることから、このように呼ばれています。
特に乳児では細気管支炎、肺炎などの下気道感染を起こすウイルスとして重要であり、
最近では乳児の喘息発症にも関与している可能性があると注目されています。


流行疫学
一年中ウイルスは分離されますが、例年12月をピークに晩秋から早春にかけて流行し、
インフルエンザとならび代表的な冬期のカゼのウイルスです。
3歳までに全てのこどもが一度は感染します。そして一度感染しても免疫が完成しないので、
何度も感染を繰り返すことがあります。
多くは鼻カゼのウイルスですが、6ヶ月未満の乳児や基礎疾患のある人に対しては
下気道感染症の罹患率、死亡率を増加させるためとても注意が必要です。
症 状
2〜5日間の潜伏期間の後まず鼻水が出始め、2,3日して咳を伴うようになります。
この時熱がでますが、低年齢月齢の乳児では熱がでないこともあります。
上気道炎であれば1,2日で熱が下がります。
初めてかかった場合には、25−40%の乳幼児で喘鳴を伴うようになって細気管支炎・肺炎となり
それ進行すると無呼吸が出現したり、呼吸困難となり0.5−2%で入院が必要になります。
入院を要するような重症なこどもの大部分は6ヶ月以下の赤ちゃんです。
稀に死亡することもあります。その後何度も感染することがありますが、
再感染の場合は細気管支炎や肺炎は減り、上気道炎が増え、一般的に症状は軽いようです。
診 断
血清中RSV抗体価の上昇を確認すれば診断は確定します。
しかし乳児の初感染では血中の抗体価上昇に時間がかかるので急性期の診断にはむいていません。
最近では鼻汁からRSVウイルスを検出するキットが開発され、ベットサイドで簡便に診断可能になりまし
治 療
ウイルスの病気ですから、特効薬はありません。
呼吸困難になり、哺乳力がおちた場合は、入院して、酸素を与えたり、輸液が必要になります。
脱水にならないよう水分を十分にとり、痰を出しやすくするために加湿することも大切です。、
去痰剤、気管支拡張剤などの薬剤を投与することもあります。
予 防
★RSウイルスは、感染者との接触や感染者から飛散した気道分泌物が付着したおもちゃやおしゃぶり
 などで感染するので、手をよく洗い、口にいれるものは清潔にしておきましょう。
お父さん、お母さんなど鼻カゼを引いている時は注意が必要です。また手洗いをよくしましょう。
★カゼが流行する時期には、人ごみに連れて行くことはできるだけ避けましょう。
★肺の悪い未熟児や心臓疾患のある赤ちゃんでワクチンの使用が認められました。
家 庭 で 気 を つ け る こ と
水分を十分にあげましょう
 咳がでて1回量が減ることがあります。母乳やミルクは1回量を少なくして、その分回数を増やしましょう。
 いつもと同じだけ尿がでていれば水分は足りています。
 こまめに水分をあげ、飲んだ水分の量、尿の回数をメモしておくと診療の役に立ちます。
鼻づまり、発熱を楽にする
 鼻づまりがひどければ、鼻水は吸いとってあげましょう。(鼻吸い器は薬局で売っています。)
 加湿器を使ったり、洗濯物を部屋に干すなどして十分湿度を保つことも大切です。
 また着せすぎたり、室温を上げすぎないように気をつけましょう。
呼吸が楽になるようにしてあげましょう。
 咳をしている時に、立て抱きにして背中をトントンやさしくたたいてあげると、痰がきりやすくなります。
注 意 が 必 要 な 時
呼吸の様子をよく観察しましょう。以下のような時は呼吸状態が悪化しています。
 @息をする時、鼻の穴が広がったり、胸がぺこぺことへこむ。
 Aうなりながら息をする。
 B息を吐くとき、ヒューヒュー、ゼーゼーと笛のような音がする。
 C母乳やミルクを飲まなくなる。
 D唇のまわり、指先の色が青っぽくなる。

元気がなく、顔色が悪い時
★くちびるが乾いて、オシッコがあまり出ないとき

    などの時は早目に受診してください。