藪漕ぎの楽しみ

 

     

 

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 上兜山】(2002年5月5日)

 一年振りの上兜は、相棒の「GW中に、上兜に行ってみたい!」との事で決まった。

 

 昨年は何回も利用した新居浜ICから西種子川の林道も久し振りだ。林道を走ること二十分余りで窓の滝の登山口脇の橋に差し掛かかったが、通行止めのロープが張ってあるではないか。今日は、ここに車を置き林道を歩く事とした。林道から姿を見せる窓の滝は、先日降った雨のせいか、“生き生きとして”木々の緑とのコントラストを主張している。

 

 

 そして十五分程の歩きで、西種子川の右岸を形成する尾根の末端に着いた。ここが、今日の登山口だ。

 

この尾根の端にある路は、いつも使っている植林の作業道と間もなく出会った。が、以前利用していた時より、尾根の道が良く踏まれていて辺りが明るく感じる。・・・間伐の手が入っているのである。左右に現れる檜の植林はもちろん、尾根に残された赤松まで切り倒されている。「松は切らんでもええのになぁ・・」相棒が口にした。

 

 

 路は作業に使われているため、何箇所か新しいトラバースの路と交わっていて間違いそうだ。“松ノ木展望所”の手前で、藪が路を覆うようになり“これが上兜への路だ!”と懐かしい思いがよぎる。

 

 “松ノ木展望所”で小休止として、潅木の密集した路に分け入る。そして少しで左手に植林のトラバースへと進むのだが、間伐された檜が整理されていなくて、踏み跡が判別できない箇所もあった。

 

 

 

 植林のトラバースから、尾根路への道は相変わらずの“ズルズルの箇所”だが尾根路に入ると歩き良い。“ひかげつつじ展望所”の手前の急登部は、一気に上がる。晴れていれば兜岩が望めるところだが、今日は雲が覆っているので、それは叶わない。

 

 尾根路は、潅木が路を覆っていて相棒の「ハゼの木は切ってヨ!」の声を聞きながら進む。相棒は、ハゼが苦手なので・・(皮膚と神経は比例しないのかなぁ〜)等など考えながら尾根路を辿る。やがて、三角点のあるピークの手前の植林のトラバースに差し掛かると真新しいテープに出合った。そして、そのテープは尾根へと続いているではないか・・“誰かこのルートを歩いたんだ・・”が、尾根の潅木は密生していて思うようには前進できない。“やっぱりトラバース道から笹藪の路のほうがいいなぁ〜”と云いながらも、直ぐに例の笹藪の分岐に出合った。

 

 ここからの路は一年前と変わらないままで、・・尤も潅木の勢いも変わらないが、真新しいテープと一緒に“ヤマザキストアの包み(5/1製)”を目印にしていたのには驚かされた。

 

 

 

 相棒の目的の一つは、兜岩や、西赤石から観た、このあたりの“あけぼの”の群落を真近で観る事だった。が、今年はそれも叶わなかった。“あけぼの”の木々は、その一割も花を付けていないし、一本の木に付いている花も一厘だけという木もある。「去年、一杯花を付けたから、今年はお休みかなぁ〜」と残念がっている。

 

 

 さて今回の山行は、明日からの大阪での研修を前にと“特別の意味合い”を持っていた。それは、研修後に配属が決められる(会社は大都市圏への配属と云っている)という身勝手さである・・本人の事情は聞き入れない。雇われの身の悲しさである。五十歳を過ぎて頭も白くなり始めて(堅くなり)、家族や地域の関係もある人に“会社の為には云う事を聞け!”というような企業が、大手を振って威張る社会がまともだとは思わない。今の歳での単身赴任(定年まで8年)は辛いし、相棒と一緒に引越しとなると、家はどうなるの?ということになるし・・・

 

 

 そんな状況で選んだ今回の山行は、私たちにとって最も相応しい山だったのかもしれない。

 

 

 山へ登るために勤めを辞めたという先輩方は、本の中ではしばしば登場もする。しかし、他の人はさておき、私たちはあくまでも余暇としての山行であり、主たる目的は会社勤めや、周りの社会での生活の中で生まれたストレスの発散にある、もちろん未知の世界(圧倒的な自然、木々や動物や花々など)との偶然の遭遇に、心も洗われる・・そして何故、山なのか?は判らないが・・そんな事はいい・・

 

 

 

 私たちには、高い山を目指したり○△名山を追っかけたり、という気持ちはさらさら無い。そういう価値観は持ち合わせていないのだ。

 山で会った人と自然な形で話しあったり、気のあった仲間と小屋でダベッて酒を飲み交わすのもいいし、二人だけのテントで夜を明かすのもいい。時には一人だけでの山行もいい。

 上兜は、そんな思いの私たちを受け入れてくれた。去年ぶら下げた、しゃもじと再開し目頭が熱くなるが、少し遅れた相棒に悟られないように、しゃもじと記念撮影をする。

 

 

 

 たとえ遠く離れて、故郷に帰れる余裕が無くなろうと、年に一度くらいは上兜のしゃもじに会いに行きたい!そして、いつまでも私たちの事を忘れないでほしい。

 振り返ると、上兜が私たちの“山への姿勢”を決定づけた。そして、成長を見守ってくれていた。この山だけは、○△名山のようには、なってほしくないんだ。

 

 ・・・いつの日か・・会おう、いや!逢いに行く!

【過去の上兜の記録】

 憧れの山“上兜への道”

 上兜の縦走

【後日談】5月31日に会社より、事前通知があった。大阪への転勤である。

  

 ひょっこり登山道に出た時はほんとうにうれしいんじょ! ヽ(^o^)丿 この後 '00年10月の丸瀧尾根縦走の時、土小屋〜駐車場の4kを歩いたけど、50分かかったんよ。この登山口までやったらどれくらいかな〜。