藪漕ぎの楽しみ

窓の滝上登山口〜上兜山(ピストン)

上兜山】(2003年12月29日)

 今年の年末・始の休暇は、有給休暇を取らなくても9連休となるラッキーな年だった。その分、休み前の慌しさは半端なものではなかった。忘年会(私だけじゃなくて)や、年賀状の印刷などで時間を取られて、帰郷準備も思うに任せないまま「とりあえず詰め込んで!」と、車の中が荷物で埋まった。その荷物に今年から加わったのが、“カメラ道具一式”である。そのカメラは、“瓶が森”へと持っていく算段(もちろん千代さんの思惑である)なのだ。重信町の自宅へは昨日、無事に着いた。今日は軽アイゼンだけで十分・・と、軽荷で車に乗り込んだ。

 

上兜の登山口までの道は、以前と何ら変わらなかった。しかし、懐かしの“上兜”とは、随分とご無沙汰してしまったものである。このルートは先頃、“シェルパ・原”さんからの「是非、辿ってみたい」そして、完走を果たした・・との連絡があったルートだ。

 

 

 

 いつもの様に、尾根の端っこに愛車を停めて、出発は7時半だった。通い慣れた路は、以前と何ら変わらなくて、薄い踏み跡が植林の中へと続いている。相棒が「この山域は小鳥が多いねぇ」と、語りかける。小休止の場所は、何時もの“松の木展望所”である。目の前の峪(西種子川)の向こうに続く“石ガ山丈の尾根”を眺めながらの休憩だ。

 

 相棒の重い腰、じゃなかった(@_@;)。重い腰を上げて出発である。尾根添いの路は、潅木の下に続いているが、私達は何時ものように植林の作業道へと採る。植林の路は何処でもそうだが、何時通っても薄暗くて、薄気味悪いものである。路は、右手に尾根を見上げる横掛けになると、しばらくで尾根へと直登するようになる。植林の林の中の急勾配を息を切らせて登ると、やがて、新しい目印に出会う。そして、雪が現れた。雪を踏みしめる音が“キュツキュツ”と心地良い音を奏でる。軽アイゼンを履く事もなく、“ひかげつつじ展望所”に着き、小休止。

 しかし、以前と何か風景が違っていた。灌木の丈が成長して、展望が悪くなっていたのだった。ここで、灌木に埋もれての休憩である。目を瞑っては歩けないが、雪に路が隠されていてもルートは判る。つまり、私の記憶からは消し去る事が出来ないルートとなっていた。やがて、“手強いスズタケ”が現れた。雪でうなだれて路を覆う“やつら”は、実に厄介な存在である。所々で違う種類の新しいテープに出会う。

 

 

 

 そのテープは、各自が準備したいろんな種類の目印なのだが、目印の付いている箇所がリレーでもしているかのように変化していた。つまり、白い紐状の目印からビニールテープへと変わり、それも青から赤と変わって行くなど、“このルートを何組かが辿っているんだ!”と感慨に浸りながら歩を進めた。日差しが暖かいせいか雪面は柔らかく、心地よい音を聞きながら進む。やがて、東(串が峰=上兜の肩)へと続く尾根の岩の箇所に着いた。

 

 

 

 

 小休止後出発である。所々で北の方向の瀬戸内や新居浜の町が見え隠れする。右手には西赤石から物住の頭へと続く稜線である。やがてスズタケが被さっている路で、一踏ん張りで肩にでるがここで「先頭を変わろうか?」の千代さんの言葉で、topを譲る。やっとの思いで肩に到着。もう11時半だ。ここから上兜を見て、登頂を諦めた数年前の事を思い浮かべたが、現在は懐かしい思いだ。

 

  

 

 

 

 傍らに“クシガミネ・2003ナーコ”の金魚がぶら下がっていた。なんで金魚なのかは気にしなくてもいい。いろんな想いで様々な人が訪れる・・それでいい。中予地方に住んでいる(現在は大阪なのだが)私達が、赤石山系に執着する理由も説明出来ない。ただ言えるのは、“山に魅せられた”だけ・・・なのだ。ただ、それだけなのである。

 

 

 

 左の写真は、串ガ峰から西の方向を望んだ写真である。

 

 

「手前から笹ガ峰から兜岩、その奥はちち山・笹ガ峰と沓掛山・黒森山へ続く吊り尾根、吊り尾根の向こうに瓶ガ森が望まれる。石鎚は姿を見せていない。」

 

 

 

 さて灌木を掻き分けての路は、相変わらず手強くて、所々で出会う岩場に立つと一安心である。そして、再び息を整えて灌木の中へと潜って進む。以前歩いた折に見つけていた「下兜」へ続くであろう分岐の目印を確認出来ないままに、最後の急登部に着いた。今日はピストンの予定なので、ザックをデポして登る事とした。

 一年半振りの上兜山に12時過ぎに着く。そして“懐かしのシャモジ”と、傍らにぶら下がった金魚を手に取り記念撮影である。

 

 

 “年に一度くらいは訪れたい!”の願いは、年末も押し迫った今日になってしまったが、何時も同じ佇まいのままで迎えてくれる山は、そう多くは無い。山に抱かれての山歩きと、誰とも出会わない山行が、このルートの魅力なのかも知れない。

 昼休を風の当たらない場所で摂って、下山の途に着く。13時だった。前方左手の遥かかなたに、かすかに石鎚が見えている。「今年は一度も石鎚に行かなんだネ!」と、千代さんがつぶやいた。

 

 

 所々で右手に望まれる町並みと、今日辿ってきた尾根を見ながらの下山である。

 

 大阪へ転勤となってからは、今日のような静かな山歩きが出来なくなった。関西の山では何処へ行っても、人に出逢わない事は無い。

 木々のざわめきや小鳥の囁き、風の鼓動、雲と太陽と星の織り成す競演、そのどれもが素敵だ。それに比べて、街の汚さは何だ!人間の欲望の醜さはなんだ!競い合い、憎しみあい、傷つけあい、殺しあい!・・・しかし数時間後には、私達もそんな現実に引き戻らされてしまう。

 

 結局、私の山への旅は、現実を見つめ直すための時間なのかも知れない。そして、次回は何処へ行こうかと・・何かを探す旅にでるんだ。

 

 このルートの、松の木展望所までの、のっけからの急登はこたえた〜。けど、上兜山までの5時間弱は、何回歩いても変化にとんで飽きんよ! 

  唯一、東(串が峰=上兜の肩)へと続く尾根の岩へのっこす辺りが、少し危険じょ。一箇所、一枚岩があって、下りでおっちゃんが滑ったことがあるんで、そこを通過せんと、安心できへん。その箇所は左の大岩を木等をつかんでなんとかクリアできたんで安心! その後の休憩後、笹との格闘で疲れたんか、おっちゃんが5歩進んでは休む状態となってきたんで、このままでは、串が峰で「今日はここまでじゃなぁ」となるかもしれんと、topを変わったんじょ。2000年1月22日に登った時は、摩戸の滝は凍っとったけど、雪はこんなに深くなかった。せっかく此処まで来たんやから、上兜まで行かんと! と頑張ったんじょ。

 それにしても、此処はいいわ〜 ヽ(^。^)ノ