第2話 玄関口の死闘
どっかの誰かさん's view:
その頃、玄関口では…
「おねいちゃんが! オネイチャンがぁぁぁぁ!!」
リスティと戦闘状態にあった知佳、ふと倒れている真雪を発見してしまったらしい。
もう、戦闘どころでないのは…ある意味いい事なのかもしれない…
ただし、とっても壊れている…今まで通り。
「オネイチャン!!!!!」
「やば!?」
知佳さんパワー全開、周囲爆発、力の暴走率100%以上。
もう大爆発である。
「げほん、げほん。あの治療中なのでもうちょっと静かに…」
不幸少女の女神様がそう言うが、誰も聞いてない。
聞いているわけがない…
「どうせどうせ、私はお姉ちゃんが居ないと……ふふ、ふふふふ…」
そして…更に暴走を始める知佳。これも黒い翼の影響であろうか…
「知佳?」
「リスティさん、何かやばく無いですか?」
「ああ、絶対にヤバイ。」
リスティとフィアッセがそう、囁き合う。
「私はぁぁぁ〜、可愛いのに〜、皆がいじめるのぉぉぉ!!!!」
かなり台詞がイカレテル。もちろん行動もイカレテル。
叫ぶ度に周囲が打ち壊れるというのが、一番イカレテル…
「ええい、寝てもいられん。おい! 知佳!」
不意に、真雪が復帰。密かなフィアッセの努力が実ったらしい。
あっ、フィアッセ満足そうに微笑んでる…
「お姉ちゃん〜!!!!!!」
その声を聞いた知佳、全速力で真雪に走り寄ってくる。
走り寄ってくる。
走り寄ってくる。
走り寄ってくる。
あ、引かれた。
「あれ? お姉ちゃん?」
「お前の足元だ…」
苦しそうに答える真雪。が、それに対する知佳の答えはやっぱりイカレテた。
「へ? あ! お姉ちゃんも『お兄ちゃんと一緒で』私に踏まれたいの?」
(耕介、あとで殺す。)
そう思いながら答える真雪の言葉はこれ。
「そんな事ある訳無いじゃないかぁぁぁ!!!」
「なんで…お姉ちゃん怒るのぉ…」
そんな真雪の言葉に…知佳は………泣き始めた…
「真雪……今のはヤバイ…」
リスティがそう言う感想を呟くが、時既に遅し。
知佳ぼー、再び大爆発!!
「私はぁぁぁぁ、なんの為に生まれてきたのぉぉぉ!? お兄ちゃんを踏む為なのぉぉぉ!」
…そんな人間、いないって…
が、壊れている知佳にそう言う常識など通じないのであったりするのだ…
というわけで、真雪を相手に、知佳ぼーの暴走は続くのである。
ナレーター:
暴れている仁村姉妹を余所に、それを見物している人達は、結構余裕があるみたいです。
「うちらは暇だね。」
「そうだね、薫ちゃん♪」
どうやら女神様の治療が功を奏したらしく、那美さんもいつの間にやら復活しています。
「私は忙しいですよ♪ 魔力で治療中ですから♪」
女神様は、最後の一人である薫さんの治療に余念がないようですが…その口調から、結構余裕があるみたいです。
「僕も暇になった……」
知佳さんにリベンジを試みる予定だったリスティさんも、知佳さんが大暴走を始めた今ではすっかり暇そうです。
「和んでないで助けろぉぉ!!」
「お姉ちゃん……助けてって何? やっぱり私が怖いんだぁぁぁ!!」
真雪さんの当然とも言える叫びに反応して、更に泣き叫ぶ知佳さん。
恐いといえば恐いですが…もちろん、違った意味で、ですけど…
「もう、収拾つかんね。」
「薫ちゃん。何とかできない?」
「…やってみる。」
その様子を見て、神咲姉妹が相談を始めました。
大きな那美さんが、小さな薫さんに頼っている図は、なにやら可笑しな感じがしますね。
そんな薫さんに、治療中の女神様が不思議そうな顔をしながら尋ねます。
「その小さい萌え萌えの体でどうするんです?」
「うん。今の薫ちゃんは萌え萌えだね。」
…那美さん……なんですかその言葉は…まるで先輩のようですよ…
「なんね? その萌え萌えって…」
意味不明な言葉の羅列に、薫さんはつい尋ねてしまいます。
「ロリの魂だよ。か・お・る♪」
「リスティまで……」
薫さん、心底呆れているようです……もっとも、結局意味は解らないようですが…
「早く何とかしてくれぇぇぇ…」
さすがの真雪さんも、120%暴走中の知佳さんにはほとほと参っているようですね。
「真雪さん、このままだと死にません?」
「だな。では行って来る。」
和やかに恐ろしい内容の会話を交わすと、薫さんは知佳さんに歩み寄っていきます。
「ぷに萌え薫ちゃん?」
その姿を見て、つい口を挟む方が約一名……髪の毛の色は銀色の方ですが…
「なんね。それは?」
「見たまんまだよ♪」
もう、わけがわかりませんね…
…なんですか、先輩? なにか言いたそうですが…
「ともかく! 神咲一刀流神咲薫、参る!!」
薫さんはそう言うと、呪を唱え始めました…
〜 真言に寄る所の安徳の愛さ
目覚しき、時の上にも
みかずちの夢を
「あれは?! 信封?!」
「那美ぃ……何それ?」
驚愕の言葉を上げる那美さんに、リスティさんが尋ねました。
「ええと、昔に読んだ本に……
【信封(しんぽう)】名詞
居なくなった別人格や、その人の自我を覚醒させる為に用いられた手段。
これによって精神の安易を行う。
現在にも、新しい憲法を新法と呼ぶがこれとはまったく関係無い。
と、言う事らしいんです」
「謎だね。これを知ってる神咲が特に。」
…まったくです。
「そうですねぇ。あ! 真雪さんがぐったりしてる。」
「爆風にやられすぎたね。」
……状況はかなり切迫しているはずなのに、どうしてこんなにぼややんとしているのでしょうか…
「絶!」
呪を唱え終えた薫さんは、気合をいれて力ある言葉を放ちました。
その言葉にて、その呪は開放されて、天空の果てより聖なる獣が召還されるというわけです。
…聖なる獣、というのは、わりとヒドイかもしれません。
だって…召還されたのは十六夜さんなのですから…
「那美……」
「リスティさん?(びくびく)」
「間違ってた?」
「はい…」
「お仕置き。」
「嫌ぁぁぁぁ〜」
…それはと全然関係ないところで、意味不明にお仕置きが始まったみたいです…
ええと、具体的には…那美さんが脱されてる、といった感じです。
もちろん、そんなこととは露とも知らない薫さんは、そのまま知佳さんに相対します。
「神気発勝! 神咲ふぅぅぅじぃぃぃんはぁぁ!」
薫さん、そう叫ぶと霊剣・十六夜で知佳さんの『黒い翼』を叩き斬りました。
その刹那……
ぶしゅぅぅぅぅ!!
と血が噴出してしまいました。同時に鋭く叫んだのは真雪さんです。
「ば神咲。羽は知佳と繋がってるんだ!」
「え? でもこういうのって『黒い翼』で洗脳とかが普通じゃ?」
普通、じゃないですから……このお話は…
「違ったようだね。薫…」
どこか達観した様子を見せて、リスティさんが声をかけますけど…役に立ってませんね、リスティさん…
「何とかします!」
「十六夜も頼む!!」
那美さんの声に引き続いて、薫さんも声を上げます。
そして、2人はその治癒能力を合わせて、知佳さんの回復に努め始めました。
「私はなんのために帰ってきたのでしょう?」
治療を続けなら、十六夜さんは不思議そうに首を捻っています。
「知佳の回復だよ…きっと…」
リスティさんのその言葉に、この場にいる全員がぐったりとしてしまった事は言うまでもありません…
困ったものです。
戻ることなく次へ行け