第4話 回収と変更と暴走と…
ナレーター:
先輩。わたし、ちょっと出かけてきますね。
「…あんまり混乱させないで欲しいなぁ。」
…努力はしますよ、先輩。
「…勘弁してよぉ〜…」
くすくす。
どっかの誰かさん's view:
そして玄関に到着した一行であるが…
「もう…なにもない…かな?」
あたりの様子を伺いながら、七瀬が誰にという事もなく呟く。
「とりあえず、何もないみたいだけど…いかんせん技術屋さんのうちだからねぇ…」
「そうだよねぇ…」
アリサとなのはも警戒の様子は隠せない。
今までが今までである。いくら警戒していてもしすぎると言う事はあるまい。
「…ここでいつまでもぼやぼやしてる訳にはいかないだろ? 行こうぜ。」
真雪が一同を促して、玄関の扉を開ける…と…
「ぱんぱかぱーん!! 月村邸にようこそ!!」
「那美…お前ってやつは…」
「すでに羞恥心は捨ててしまったようなのだ…」
『うさみみばにぃさん』姿の那美を見れば…まぁ、この真雪&美緒の感想を持つくらいは仕方のない事であろう…
しかも、あんまり似合ってない所がまたなんとも…
「うぅぅぅ…何かヒドイ事を言われているような気がしますぅ…」
「気のせいよ!!」
間髪いれずに断定するのは、我らが七瀬嬢。
どうやら、これ以上面倒くさい事で時間を潰すのはご免であるらしい。
「で、なんの用?」
「アルバイトです。」
「いや、それはわかってるの。この場に何のために現われたのか聞いてるの。」
今回の七瀬はわりと容赦ないようである。もっとも、それに対する那美の答えなどこの程度だが…
「えぇっと、それはですねぇ〜…」
「早く言え。」
命令形&命令口調。もはや、この場は七瀬の独壇場か?
それでもメゲナイ那美の答えはこれ。
「第1回、真一郎さん争奪、酒豪王選手権大会ぃ〜♪ の司会のためですぅ。」
「ダメだ。」
「却下!!」
間髪入れずに言葉を放つ薫と真雪。
「えぇぇ…なんでですかぁ…こんなに頑張ってるのにぃ…」
「…なにか頑張り方が間違っているような気がする…」
なのはの感想は、たぶん、正しい。
「…面倒なので、このまま抜けるぞ…」
「うちもお供します。」
「…私がいかないわけないでしょ?」
「七瀬が行くのに、魔法少女の戦敗であるあたしがいかないわけないじゃない。」
「アリサちゃん、戦敗ぢゃなくて先輩…もちろんあたしも行くよ。」
「あたしが行かないわけないのだぁ!!」
次々に名乗りをあげる戦士(?)達…そのまま、那美の横を抜けようとする。
「あぁぁあああ…!!! せっかくのアルバイトが……」
…那美嬢、既にしっかりと壊れていたようである。
「那美……」
痛ましげにその様子を見つめる薫嬢…
「こうなったらぁ!!」
「「「「「「「!」」」」」」」
全員に緊張が走る……
「神気発勝!」
「那美……本気で来るなら容赦せんとよ!」
霊気を練り始めた那美に、哀れみの瞳は隠せないまま、それでも本気の気を纏い始める薫。
途端に…
「ご、ごめんなさぁい。」
と来たもんだ。
「「「「「「「は?」」」」」」」
当然呆気に取られてしまう御一同。
「許してぇぇぇぇ。」
「那美……よかよ。誰もお前をいじめたりはせん……」
更に泣き叫ぶ那美に、優しい瞳を向けながら薫が肩をぽん♪と手を置いた。
と、同時に、那美の表情が…変わった。
「くすっ…」
「那美?!」
その豹変は、まさに一瞬。そして薫のその一瞬の油断は、完全に那美に捕らえられていた…
「はい。薫ちゃんリタイア…」
「え?!」
「神気吸収!!」
「な!」
那美の隠し技、神気吸収。
それは、その名の通り、触れている相手の霊力をその媒体ごと吸収してしまう荒業である。
この技は、霊力が強いものほど効果が高い。
で…その薫は…すっかり小さくなってしまっていた。
なんと言うか、その丁度10歳くらいである。
表情はいつもの薫と替わらないのだが、それが却って微笑ましく愛らしい。
となれば…
『萌えぇぇぇぇ〜〜〜』
と、スピーカーから某男性の声が聞こえるのは言うまでもない…
「し・ん・い・ち・ろ・う♪」
『ナナセサマガイチバンモエデス。』
「よろしい♪」
…ホントにそれで良いのか、七瀬?
「吸収された途端に神気を消すなんて、さすが薫ちゃん♪」
実は、薫ほどの霊力の持ち主の場合、完全に吸収されてしまう可能性すらあった。
那美も半分それを狙っていた節がある。
それがその程度ですんだのは、ひとえに那美の言葉通り薫ならではの「実戦の感」のおかげである。
全てを取られる前に、外側へと放出していた霊力を内側への放出に切り替え、吸い取られた分で減った体を霊力にて再構築したのだ。
まっ、それでも薫の戦闘力がなくなったことには変わりはない。
身体の維持だけに、多量の霊力が必要となっている現状では…
なお、吸収されたてしまったとしても、あとでそれが放出されることによって、元に戻る事は可能である。
もちろん、術者にその気があれば、の話だが…
しんいちろう's view とゆーか、語り、しんいちろう:
そんなこんなで大騒ぎをしてみんななんだけど…そんな時…
ひゅん!!
まるで風が動いた様に、ある人がその場に辿り着いたんだ……
「ばか猫!!」
「おろろ? あちし捕まったのか?」
で、その不意に現れた乱入者の行動に、真雪さんと美緒ちゃんは驚いて声を上げていた。
そして…
「そうですよ。美緒さん。」
その美緒を抱えてる乱入者がさくら…って、まったく…混乱させてからに…
そんなさくらを敵と見ちゃったのか、真雪さん、焦ったように声を上げたみたい。
「振りほどけ!」
「真雪ぃ、何故か無理なのだ。」
大して力が入っているとは思えないさくらの腕の中で、もがく美緒ちゃん。
しかし全然も揺るぎもしないのは…まぁ、さくらは力持ちだしネ…
「単純な力比べなら、私は全員一緒にお相手できますから……それよりも…」
「「「「「?」」」」」
さくらの唐突な言葉に、みんなが戸惑っていたんんだけど、当のさくらはまったく無視して言葉を続けてしまう。
…ちゃんと考えて行動してるのかなぁ? って、こんな感想はさくらに失礼か。
「神咲さん。」
「はい?」
「なんね?」
呼びかけに答える薫さんと那美ちゃん。そりゃ、2人とも神咲さんだもんね。
「いえ、那美さんの方です。」
「はっ、はい!」
なぜか緊張して答える那美ちゃん。那美ちゃんも結構可愛いよね…って、はっ? なにか悪寒が…
「ちょっと失礼しますね…」
「?」
さくらはそう言うと、呆気に取られている那美ちゃんの首筋に手を触れる……
あぁぁぁぁぁさくらぁ!! それはダメでしょぉ〜?!
「はぁ……さすがに神咲姉妹の霊力は一味違いますね…」
さくらってば、那美ちゃんが吸収した薫さんの霊力と那美ちゃん自身の霊力の一部を、その手からゴッソリ持ってちゃったんだ。
おかげで那美ちゃん、ぐったりと横になっちゃってる。
そんな様子に、真雪さんの少々頭に来ちゃったみたい。思いこみも激しいしねぇ…
「なっ! 仲間じゃないのかぁ?!」
「許せませんか、仁村さん?」
あ〜あ、またややこしくしてるし。
素直に別に仲間じゃないって、言っておけば良いのに…
…でもこの状態の真雪さんが信じるわけもないか…
「まぁ、妹と声が似てるって以前に…おまえみたいのは…な。」
「…あまり好みの展開ではないのですが…お望みとあれば…」
「当然、だろ!? 行くぜ!!」
真雪、そう言うと一気にさくらへと切りこむ!
はやい!! さすがは真雪さん…って、俺、あれを避けてたんか…我ながらなかなかすごいかも…
「たとえ風林火山でも…当たらなければどうと言うこともありませんね…」
……さくらは余裕で避けると…軽く真雪さんの首筋に手刀を送り込む。
ただ、それだけの動作で、真雪さんは横になってしまったようで…やっぱさくらは怒らせちゃイケナイネ。
「今何したの?」
みんなが沈黙する中、ななせが恐る恐るといった感じでさくらに尋ねたんだけど…
「…七瀬さんなら、すでにお解りでは?」
「……確かに解っているけど…見えたわけじゃないからね…」
そうそう、いい忘れてたけど、さくら、今の今まで、ずっと暴れる美緒ちゃんを抱いたままだったりするんだ。
如何にさくらが圧倒的かわかるよね。
「…さて、私はこれで失礼しますね。もう用事も終わったことですし。」
「は?」
また、さくらが一方的に話してる…
「…後は忍がお相手になると思いますけど…頑張ってくださいね。」
そうして、さくらは美緒ちゃんを抱いたまま退場して行っちゃった。
さすがはさくら、引き際も鮮やか…ってなにか感想間違ってる?
…まっ、いいか。
どっかの誰かさん's view:
で、残された人々は…今の状態を改めて確認していたりするのだった…
「えっとぉ〜…なのはとアリサとわたし…これで3人……」
まず、七瀬は指折り数えながら、戦闘員の数をチェック。
「うちもまだ行けるとよ…」
小さな姿でそう言われても説得力なぞあるわけもない。そう、薫嬢である。
『萌えだ……今のななせと一緒くらいの薫さん……萌え萌えだ!!』
…真一郎、まさに命知らず…
「し・ん・い・ち・ろ……」
『ハイ。ナンデショウカ、ナナセサマ。』
「一回ドコゾヘ逝って見る?」
……『いく』の字が間違っているようで、合っているような…なんか嫌である…
そこで真一郎は一計を案じてみたが…
『ななせ……愛してるぞ(はぁと)』
「えっ………なんて、誤魔化されると思っているの? 今からそっち行くから待ってなさい!」
『ハ、ハイ!(直立不動)』
結局無駄だったみたいだ。
まぁ、真一郎と七瀬がいつも通りにじゃれているという認識程度にしか、周りからは思われていないようである。
「やっと、話しがすすむのね……」
「だね♪」
ちびッ子2人は暇だったらしい。
「じゃ。おばさんは帰って真雪と薫の治療ね。」
そのちびっ子の1人、口の悪い天才児の方が、自称女神の少女にそう言った。
「ですね。…おばさんとこれ以上言われるのも辛いですし…」
また少女といえる年齢である。それは当然であろう…
ん? 20歳越えてるって? その程度じゃ十分少女だい!!
「えっとぉ〜、あれ? 瞳と唯子さんとリスティは?」
「そういえば……」
なぜかそこにいるノエル's view:
ここは、皆さんが抜けていってしまったクイズ場です。
……ですが、数人の方は残っていらっしゃったようです…
「ふふ、ボクは強いでしょ?」
クイズを悠々とクリアして、誇らしげにリスティ様はそう仰いました。
「ええ。あの子達だけに任せないで良かったわ。」
そのむこう側で、やはりクイズをクリアされた瞳様がのんびりそう発言なさいます。
「でも3対2、なのよね…」
……私はすっかり忘れられているようです…
「割と絶望的な状態だね。」
知佳様とお嬢様相手では、少々不安なのでしょうか…
…どちらも無茶をなさいますから、仕方のない事なのかもしれません。
「そうでも、ないよ♪」
能天気にそう仰られるのは唯子様です。なにか勝算でもあるのでしょうか?
とにかく御三方は、そのままゲーとを抜けると先へとお進みなられたのでした。
えっ? 出題は誰がやっていたのか、ですか? …さて、誰なのでしょうか…
戻ることなく次へ行け