第5話 黒い翼 act-2


どっかの誰かさん 's view:
真雪と七瀬、そして真一郎が乱入して、一瞬だけ動きが止まったアリサ…その一瞬が正に命取りとなった…
「ふふふ……甘いわよ、魔法少女さん♪ それとも銃器少女さんかなぁ…?」
あまりに場違いな知佳の台詞…その言葉の伴奏のようにゆっくりと、黒い翼がウゴメク……
誰もが呆気に取られているその瞬間、知佳の眼が金色に輝くとその手でアリサを首を掴み取った。
「が…ぁ……」
首を握りこまれたアリサ。苦しみは、恐らく一瞬だったであろう…その一瞬後には、もはや苦しみを感じられる事は永久になくなったのだから。
コトの次第に満足して、握っていた手を簡単に開く知佳。

ドサッ……

アリサが地面に落ちる音は、あまりにあっけないものであった。
「アリサちゃ〜〜ん!!」
なのはが到着したのは、丁度、その瞬間。アリサの亡骸に、縋りつくなのは…
あたりには、ただ、悲しみが漂う…

ナレーター:
混乱した状況の中で、真雪さんはやりきれない表情を浮かべながら、知佳さんに詰め寄ります。
「知佳、やめろ。な? もう、いいだろ?」
「クスクスクス……お姉ちゃん…じゃ・ま・だ・よ・♪」
しかし、知佳さんには、いえ、今の知佳さんの心には届きません。
そして彼女は、手のひらをぶんっと振りました。
同時に真雪さんが目の前から消えて、先輩が知佳の胸の中に納まります。
(あ、柔らかい……)
…先輩、それはダメダメです…雰囲気ぶち壊しです…
「何考えてるのかな〜。し・ん・い・ち・ろ・う・??」
七瀬さん、先輩がつい思ったコトに気付いたようです。
でも、その疑問に答えたのは先輩ではありませんでした。
「それはきっとぉ、Hな事、だよ♪ ね? しんいちろ〜♪」
唯子さん、合流です。
だから…とでも言うのでしょうか…この場は、輪を掛けて混乱しました。
…それには瞳さんが一役かっているようですが…

「って、鷹城さん?」              「し・ん・い・ち・ろ・う♪ ……死ぬ?」
「あ? 瞳さん(はぁと) どうしてこんな所に?」「離せ〜、俺はまだ死にたく無い〜。」
「えぇ、ちょっとホームランされて……」     「大丈夫(はぁと)相川君は私の物だから(はぁと)」
「それは大変でしたねぇ♪」           「このアマ…殺す!」
「でも、鷹城さんこそ授業は?」         「その体で何ができるのかな〜?」
「えと、小鳥に押しつけちゃいました。」     「これ、ならどう?」
「悪い人ねぇ…」                「わっ、すごい、変身だ♪ ……でも意味無いよ?」
「ほら、持ちつ持たれつとも言いますし。」    「そうかしら? 私は格闘系よ!」
「あなたねぇ……」               「無駄に力を使って『そこの』お嬢さん見たくなるの?」
「瞳さんこそ授業は?」             「ならないわ…私は。」
「ちょっと休憩よ。」              「だったら試してあげるね…」

ナレーションを入れられない程の状況です…
あっ、七瀬さん途中で大きいバージョンになっているみたいです。
小鳥さん、ちゃんと授業やれているのでしょうか…

どっかの誰かさん's view:
何やら緊張感が漂ったり漂わなかったりする会話の中、なのはは未だ、アリサにすがりついて泣きじゃくっていた。
「アリサちゃ〜〜ん… 」
…そして、我知らずに…彼女の呪文を唱えていた…
「…リリカル……」
(アリサちゃんを)
「…マジカル…」
(私の親友を)
「…テクニカル!!」
(助けたいの!)
それは、彼女の純粋な願い…そうそして、なのはの祈り、純粋な願いが天を撃つ時「いかなる時であっても」女神様はそれを聞き届けて降臨する。
そう「いかなる時であっても」だ。…それゆえまぁ…今回のような時もあるわけで…
「ええと、なんでしょう?」
口の周りをミートソースで一杯にした女神がそう言ったのは、なのはの呪文の直後である。
…手にはフォークと、ミートソーススパゲティが…
しまらない…あまりに、しまらない…
そんなコトにはお構いなく、なのはは女神様に抱きついて泣きじゃくった。
「アリサちゃんがぁ〜!!! 」
「あらあら、それじゃ解らないでしょ?」
やさしい瞳をした女神様は…そう言ってなのはを宥める。優しき愛し児の願いを叶えるために…

ナレーター:
感動的なのか、それとも全然違うのかよく解らない女神様の降臨なのですが、どうやら、見ていたのは遠くに飛ばされていた真雪さんだけだったようです。
薫さんは、いつ瞳さんと唯子さんの会話に介入しようか迷っていましたし、十六夜さんはそんな薫さんの側でオロオロ浮いているだけでした。
美緒さんは、知佳さんと七瀬さんの緊張感溢れる会話にわくわくしていた様です。
…なのはちゃん以外、誰もアリサちゃんを悲しんであげてなかったんですね…
「そこまでよ!」
「「「「「「は?!」」」」」」
そこに…えっと、なんの脈絡もなく、…その、忍、が乱入しました…
「ノエル!」
「はい、お嬢様。」
どうやらノエルも一緒の様です。そのノエルは、なにやらポケットからスイッチを取り出すとこう言いました。
「ぽちっとな。」
……ノエル? 壊れちゃったのかしら…

どっかの誰かさん's view:
「ぽちっとな。」
という、間の抜けた声と共に押されたスイッチ。
その行動は、間接的には、こう言う事象を引き起こした。
ドカーンという音を一発だけ鳴らせ、なのはとアリサをフィアッセの体を宙に浮かせる、という事象を…
「鷹城さん!」
「瞳さん!」
その瞬間! 今まで談笑(?)していた唯子と瞳がとっさに動いた。
「ほい♪」
「は!」
なのはは唯子に、アリサは瞳に、無事に優しく受け止められる。
外傷は、特にない様だ。もっとも、アリサは息絶えているので、外傷がどうのこうのというレベルではない。
………
…で、もう一人は…

べちゃっ!

…地面に、厳しく受けとめられたようだ…
「…くすん…どうせ私は不幸な少女…」
……元気いっぱいでは、ある。

ナレーター:
「「よし♪」」
嬉しそうに忍とノエルがそう言いました……本当に壊れちゃったのかしら、ノエル…
「どう言うつもりなの? 技術屋さん……」
あまりの展開に、七瀬さんが忍にそう尋ねます。
「簡単な事よ……こんな事もあろうかと…あぁ、一度言って見たかったのよねぇ。」
忍はそう言うとうっとりとしています。……なにかおかしな物でも食べたのかしら?
「こんな事もあろうかと! こんな事もあろうかとぉ!!」
……どこかで、忍の育て方を間違えちゃったみたいです……
「知佳、ノエル!」
「なに?」
「はい。」
「美少年『さえ』あればもう用無しよ〜♪ その為の黒い翼だしね♪」
いきなり、とんでもない台詞を忍は放ちました。
これではまるで、今回の事件の黒幕のようです……
……やっぱり黒幕の一人なんでしょうね…
「は?」
質問と答えが噛み合っていないため、七瀬さんは呆気に取られているようです。
その隙をついて、忍はノエルが「持ってきた」車に先輩を抱いたままの知佳さんをほおり込むと、自らも運転席に座りました。
「じゃ、そう言う事で……」
そして、誰一人止める間もなく、車は去っていきました…
ノエルを置き去りにして……
「…アリサ様、酷い怪我です……」
しばらくその場に首を傾げながら佇んでいたノエルでしたが、瞳さんの腕の中でぐったりとしているアリサちゃんを見かけると、何を思ったのかそんな事言いました。
やっぱり壊れちゃってるみたいです。
「お前、良い性格してるよ……」
いつのまにか戻ってきていた真雪さんがそう言うと、うんうん、と、満場一致で頷く皆さんです。
「…ぐす…とにかく、アリサちゃんの回復を…」
「あっ、はい…ちょっと待ってね、なのは…」
なのはちゃんがそう言うと、地面でいじけていた女神様は慌てて呪文を唱え始めました。
同時に、女神様の翼が広がっていきます。
「……生と死の境をさまよう愛しき魂よ…我、フィアッセ・クリステラが請い願います…今一度、現世にて光輝かんこと……」
今度はわりと神秘的です。そして…
「……あ〜、えーとまぁ、その、ただいま。」
「アリサちゃん!!」
無事にアリサちゃんは帰還したようです。なのはちゃん、アリサちゃんに抱きついています。
女神様はそれを満足そうに見つめていましたが、しばらくすると、まじめな顔をしてノエルの方へと向き直りました。
「ではそろそろ、何があったかをお聞かせ……」
でも、その言葉は途中で七瀬さんに遮られてしまいます。
「あの発信機が実は爆弾で、技術屋…月村忍はなぜかしんいちろうが欲しくて、仁村妹はその為に黒い翼をつけられた……でしょ?」
「はい。大体その推論であっていると思います。」
ノエルの答えに、七瀬さんは満足そうに頷きます。
…女神様はまた地面にしゃがみ込んでいじけ始めてしまったようです…
「私の立場……」
「回復しに来たんでしょ。いーじゃない。そこでずっと寝てる『だけだった』銀髪よりましと思いなさい。」
七瀬さん、それって厳し過ぎます…


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