月姫〜GR計画〜第5話『遠野』 飛ぶ……
そらを飛ぶ……
そう、鉄の塊 空を飛ぶ――





月姫〜GR計画


第5話『遠野









「ねぇ? 志貴これって遅くない?」

純白のタートルネックに紺のスカート
アルクエィドが学蘭の眼鏡少年 遠野志貴に話をし始めたのは
飛行機が飛んで30分後だった。

「遅いって……お前よりは速く飛ぶだろ?」

志貴はめんどくさそうにアルクエィドの方を向く。

「でも、さぁ 凧だっけ?
あれが隣に居るよ?」

「な!?」

と、志貴が窓の外を見ると
大凧に乗った 銀髪のスーツ男が隣に貼りついている。
ぴょん
と、した仕草で飛行機の羽に飛び乗ると。アルクエィドの窓を掴んで
開けた。

「こんにちは。お嬢さん」

入ってきた。銀髪のスーツ男は頭を下げてアルクエィドに挨拶をする。

「こんにちは〜♪」

アルクエィドはそれに陽気に答える。

(解らない……
どうやって、凧がここまで……一万フィートだぞ、ここ!)

「あなたの美しさに引かれてしまいましたよ……」

「あはは〜 ねぇ? 志貴聞いた? 聞いた?
私 美しいって♪」

そう言われたアルクエィドは志貴に嬉しそうに話す。

「ほう……こぶ憑きですか……
しかも、七夜くんとはね」

銀髪のスーツ男は志貴を見て不気味に笑う。
その時に飛行機のドアが開いた。

「これこれ、王冠よ。
入る時はキチンと入り口からにしておれ」

そう言ったのは、同じくスーツ姿の初老男性。

「それもそうだな……
これは失礼しました」

そう言う銀髪のスーツ男はスチュワーデスの手を取り
口付けを手の甲にする。

「あらあら
ですが、王冠と豪腕のお二方 チケットが無い人の搭乗は禁止ですよ〜」

スチュワーデスがそう言うと二人揃って懐からチケットを出す。

「これでよろしいかな?
お嬢さん」

「駄目ですねぇ
なんたって、私は志貴さまを迎えに来たんですから」

「何?!」

「王冠! そいつから離れろ!」

初老の男性――豪腕がそう言うとほぼ同時にスチュワーデスは蹴りで
銀髪のスーツ男――王冠を弾き飛ばす。

「ぐう!」

うめきを上げて吹き飛ばされる、王冠。

「すまん、豪腕のじっ様
後は任せた〜」

その言葉を最後に王冠は外に飛んでいった。

「さあ、志貴さま こちらへどうぞ」

それで安心したのか、スチュワーデスは手を志貴に差し出す。

「私は〜?」

自分を無視されたのでアルクエィドは不満を表情一杯で表す。

「えっとですねぇ……私がおつれする用に言われたのは志貴さまだけなので
もう仕分けないのですが……」

そう言われてシュンと縮こまるアルクエィド

「勝手に尽いて来てもらえますか?」

「うん♪」

アルクエィドはにこやかに笑った。

「そうは行かん!」

豪腕がそう言って、拳をスチュワーデスに繰り出す。

「あはは〜、当たらなければ
いかに豪腕でも無駄ですよぉ〜」

ひょいひょい
っと、軽やかにかわし切る、スチュワーデス。

「そうか……
貴殿は、遠野の頭首付き最強と言われる
割烹着の悪魔か!」

「私、二つ名は好きじゃ無いんですよ〜
ですから琥珀と呼んで下さいねぇ〜」

あくまで笑顔でスチュワーデス――琥珀は語る。

「余裕だな……」

逆に豪腕は顔をしかめる。

「あはは〜
そんなこと無いですよ♪」

と、言った途端!
琥珀はスカートの中に手を入れ 内側の太股から銃を取り出す。

「だって、こんな事でもしなきゃ逃げ切れませんからね」

銃が弾丸を発射すると、辺り1面は煙に包まれた。

「志貴さま〜飛びますよ〜
アルクエィドさんも良いですねぇ?」

「は〜い」

「え?」

志貴が疑問に思ってるうちに琥珀は志貴の手を取り飛行機の外に飛び出した。

「煙幕ごときで、この豪腕は止まらん!」

豪腕が拳を一発放つだけで、煙幕の霧は消える。
だが、三人の姿ははそこに無く……

「逃げられたか……」

豪腕はただ立ち尽くすのみだった……


「って、どうするんですか?
高度一万フィートの外でぇ!」

思わず大声で叫ぶ志貴。

「大丈夫ですよ〜
迎えが来ますから〜」

「「迎え?!」」

志貴とアルクエィドが同時に言った時に
下から飛行機が来ては三人を回収した。

「翡翠ちゃん、ありがとう」

琥珀はパイロットのメイド服の少女――翡翠に声をかける。

「しかし、危なかったですね
王冠と豪腕とは……」

「本当ですね〜」

無表情の翡翠に終始笑ってる琥珀
本当に危なかったのかは疑問だが……

「迎えって、空港じゃなかったんですね」

「ええ、実は最初から、そのつもりだつたんですが……
その姉さん――いえ、そちらの女性が」

「あ、大丈夫、ちゃんと覚えてるよ。
はい、借りてたリボン」

「え?」

志貴の差し出した、白いリボンに翡翠はうろたえる。

「どうして……」

「俺が翡翠を見間違う訳無いじゃん」

リボンを受け取る翡翠の顔がみるみる真っ赤にそまる。

「で、琥珀さんって何時も俺達を窓から見てた娘だよね?」

「ほぇ〜びっくりです」

琥珀は一瞬、不思議で何が名にやら解らなかった用だが
すぐに、翡翠共々嬉しそうな表情で微笑み始めた。

「私は〜?!」


話が解らないアルクエィドは怒り始めたが
これで志貴は遠野の屋敷に一直線に行く事に成る。




次回予告
王冠は地に落ち
豪腕は帰ってくる
ナルバレックは遠野の事を調べ始める……
次回、月姫〜GR計画〜
第6話
「懐刀」

ご覧……あれ……



後書き 予告と違うし(苦笑)