月姫〜GR計画〜第24話『衝動』
暗い家
それは何かを知らない。
有馬の家はつねに誰か居たし
遠野の屋敷は人が多いから……
それを知らなかった。
――第2部――
化物――第8話(24話)衝動
「秋葉〜
琥珀さぁ〜ん
翡翠〜〜!」
誰も居ない屋敷。
思わず自分を抱きしめる。
「な、なんか……冷える」
――寂しいから寒いのか
寒いから寂しいのか――
「お帰りなさい遠野くん♪」
その少女はやわらかく微笑む。
「弓塚さん……」
見えるは遠い日の風景。
ドクン!
志貴の心音が高鳴る。
「いろいろお世話さまでした。
弓塚さつき元気になったよ。
ありがと♪ 遠野くん」
頭を勢いよく下げ
さつきはまたやわらかく志貴に微笑む。
(なんだろ……)
それなりに見てきたその笑顔に志貴の心音が高鳴る。
(ドキドキする……)
「それでえっと……お家の方は?」
「……な、なんで?」
「ほら、いろいろお礼とかしたいし……」
「今……居ないみたいなんだ」
「そ、そうなんだ……」
少し頬を染めて視線をさつきは志貴からずらす。
(なんだろ……何か……)
また志貴の心音が大きく鳴った。
「そっか……二人っぎりかぁ……」
ちらちらと志貴の方をみながらさつきは志貴に問いかけるように
独り言を漏らす。
ドクン……。
ふいにさつきに影がかかった。
「遠野くん……」
二人の影がそっと重なる。
さつきの腕が志貴に捕まれる。
「な、何かな?」
さつきは、一気に赤くなる頬も隠せず志貴から顔を背ける。
「あ……うぅん……」
唇から漏れる儚い吐息。
「はぁはぁ……はぁっ……」
荒くなる呼吸。
腹部に感じる痛み。
「どうして……遠野くん」
その瞳は……
眼鏡ごしからも赤く染まり……
さつきを……
刺し貫いていた。
「げほっ!
ごほっ ごほっ!」
咳き込むと同時に吐血する。
赤い紅い液体が地面に落ちる。
「と、遠野くん」
「はぁっ……はぁっ……
はぁっ……死……
死……死……死……
赤……アカ……あか――鮮血は赤
鮮血はぁ!」
どかっ!
倒れるさつきに、なおナイフが突き立てられる。
1回。
2回。
3回。
………数えて16回。
そこで二人は倒れこんだまま動かなくなった……
――遠野家
志貴の部屋――
……ちゅんちゅん。
朝は来る。
「あれ……?」
「おはようございます、志貴さま」
「あ、おはよう翡翠」
「朝はできてると姉さんが」
「うん。今着替えていくよ」
「では、こちらにおめしかえください」
そうして、何時もの部屋で
いつものように
何時もと同じ朝を迎えた。
「なんだっけ……
あれ? あれれ?」
――遠野家
リビング――
「七夜の血ねぇ……」
「一応は安定してますけど……」
「なら、平気でしょう?」
「だと思います。
あくまで思いますですけど」
「秋葉さま姉さん。
そろそろ志貴さまがいらっしゃいます」
「琥珀 この話は」
「わかってます、きちんと説明するんですね?」
「琥珀っ!」
「解ってますよ〜
翡翠ちゃんも内緒ね♪」
「はい。それが志貴さまの為なら……」
――大懐球内部――
(ごめんね――遠野くん……
私……もう……死ねないんだ…………)
「弓塚さつき帰還しましたっ!」
さつきは叫ぶように帰還を告げた。
次回予告
未定(笑)
次回、月姫〜GR計画〜
第25話
とうぜん未定(笑)
さっちんはどうも私の中では死ぬキャラって固定イメージがあります。
死ななかったけどさ(笑)