月姫〜GR計画〜第23話『伽藍の堂』



「黒桐 お前の調査
あれ間違ってたぞ」

 あの戦いの翌日。
式は伽藍の堂に来ていた……


――第2部――


化物――第7話(23話)伽藍の堂



「間違ってた?」

「おいおい、式。
何があったかは知らんが黒桐が調査で間違うはずはないだろう?」

「でも、間違ってた
見ろ」

 式が投げ出した茶封筒に遠野秋葉の姿がある。

「遠野秋葉……式 お前何を頼んだんだ?」

「こいつと一戦やった。
それだけだ」

「で、ボクが調査を受け持った
と、そう言う事です」

「黒桐……お前……」

「なんです?」

「いいや。なんでも……
(式が戦闘の前に相手の調査なんて頼む事はなかった……
この間敗戦したとか聞いたが……まだ こたえてるのか?)」

「でも、間違ってたって何処が?」

「そいつの能力の限定条件だ。
藤乃みたいに視界じゃなかったぞ?」

「おかしいなぁ……かなり信用できる所からなんだけど……」

「式……ひょっとして翡翠とか言うのも一緒じゃなかったか?」

「翡翠?」

「こいつだ」

「ああ、これは一緒に居たけど……
ほとんど動かなかったぞ?」

「良く見てみろ
こいつの能力は空間のつなぎと移動だ」

「?」

「すみません橙子さん。
ボクにも解るように……」

「しかたない……
翡翠の能力が空間事態のつなぎなら
秋葉が自分の目で見てなかった可能性もあるだろう?」

「!」

「でも、あいつの能力って髪の毛が……
くそっ!」

「何か思う所があったようだな……」

「ああ、秋葉の奴あの戦いで一歩も動いて無いんだ、
自分の目で見てないなら歩けるはずが無い」

「あの〜話が見えないんですけど……」

「つまりだ。
翡翠の能力で秋葉の奴は自分の上から戦場を見て居たんだよ。
有効範囲が髪の毛に依ったとしても自分と翡翠の周りくらいはほぼ全て見渡せる」

「つまり ボクの調査はあってたんですね?」

「まぁ、そう言う事だ……」

 ガタン!
椅子を鳴らして式が立ち上がる。

「式?」

 そのまま式は外に出て行く。

「おってやれ黒桐」

「ありがとうございます」

「ああ、そうそう」

「?」

「今の式はえらく弱いぞ。黒桐」

「知ってますよ。
式はか弱い女の子だって事くらいは、出会ってすぐに」

「そうか」

 橙子の苦笑を背に浴びながら幹也は式を追う。
とぼとぼと歩いていた式を幹也は背中から抱きしめる。

「黒桐……」

 ゆっくりと背中から前に回される幹也の手を式が抱きしめる。

「俺……弱くなった?」

「式が強い時なんてあった?」

「強かったさ……ずっと」

「そうかな?」

「そうさ……でも……今は……」

「どんなに強くたって式は女の子なんだから
ボクに頼って良いんだよ?」

「うん……幹也……ありがとう……」

 そのまま式が瞳を閉じる。
幹也は式の頬に口付けを交わす……

「幹也……私ね……
………………怖い」

「大丈夫……大丈夫だよ……式……」

 抱きしめた手は何時の間にかしっとりと汗ばんでいた……

次回予告
襲い来る快楽にただ身をゆだねる…… それは 鮮血たる赤…… それはとても綺麗に金色に光って見えた…… 次回、月姫〜GR計画
第24話
『衝動』


いきなり2話書きしてるし(笑) これ読んでる人教えてください。居るのかすら不明なので(苦笑)