月姫〜GR計画〜第22話『東の果てに日は昇る』

かつーん
かつーん
かつーん。

深闇に靴音が大きく響く。

「ふぅ……」

短くされただけな紙が闇の黒に溶けた……


「式?」

「ああ……黒桐 なんだ?」

「凄いね 振り向きもせず……」

「お前だって私の足音で私だと確信するだろ?
それより 頼んだものは?」

「はい。これ
でも、僕としては式にこんな奴の相手をして欲しくないんだけどね」

「今回の依頼主は国直々だからな そうも言えないさ……
よく調べたな……相変わらず お前の捜査能力はどうなってるんだ?」

「不服かい? ならもうちょっと調べてみるけど」

「十分だよ……」

すっと黒桐に近づいた式がその唇を押し当ててさって行く。

「式!」

その言葉にそっと右手を上げて式は出て行った……


――第2部――


化物――第6話(22話)東の果てに日は昇る




第三室……

「私と同能力?」

「ちがうな お前と違って視界内のすべてだ
一つじゃない」

「空間転移ですか……」

霧絵・式・藤乃の三人が机の上でなにやら書類をめくる。

見ているのは……秋葉・琥珀・翡翠の能力と思われる所……

「両義さんは辛そうですね。今回の相手は」

「藤乃 相手を見て物を言えよ?」

「あら? 私の視界から逃れられます?」

「試して……」

机から

「見ろ!」

式が消えた……

「机とか資料とか 壊さないでくださいね」

霧絵が小さくつぶやく……

「そこっ!」

藤乃が首を斜め右後ろを向けて視る。

「はずれだ」

そこに残ったのは……

「気配の残留?!」

「と、まぁ……ごく近い距離なら もう問題ない」

式の手の平が藤乃のうなじを撫でる。
そこは藤乃の死の線……

「ふふ……頼もしい事で……」

藤乃の手がそっと撫でて居た式の手にそえられた……

「なんか……寂しい……」

「で、どうする?」

「どうしましょう?」

「出向くしかないんじゃ?」

「じゃ……行くか……」

こうして……三人は遠野の屋敷へと歩き出した……



視界が……変わる……

「なっ?!」

「お部屋をお連れしました」

「翡翠?!!」

「はい 遠野家メイドの翡翠ともうします」

ふわりとスカートを持ち上げて翡翠が言う。

「ちぃっ!」

近づこうと式が壁をつたい天井を走る。

「あらあら 両義家では レディは天井を走るものなのかしら?」

「遠野……秋葉……」

「って事は……ここは遠野家か?!」

式が天井から地面に降り立つ。

「ごきげんよう皆様
我が家にお集まりなろうとしていただいた事は嬉しく存じますが……
ここで死んで頂きます」

秋葉の髪の毛が赤くそまり広がり舞う。

たんっ!

式がいち早く視界から消えるように秋葉の背後に回る。

「思ったとおり反応が遅いな」

「いいえ。これでよろしいのです」

長く伸びた髪が式の体を包み込もうとする。
当然のように秋葉は式に後を向けたままだ。

「!」

式がナイフで飛び交う赤き線を切って切って切りまくる。

「ふふ……浅上さん……どうなさいました……顔色がすぐれませんが」

秋葉に視線をずっと向けていた藤乃の顔色が青ざめていく。

藤乃の視界には一面の赤
赤い髪が舞い散る桜の花びらとなってあたりをつつむ。

「翡翠? もうお一人は?」

「それが……秋葉さま……ここに何人もいらっしゃいま……す……」

翡翠が震えた声で言うと秋葉も気になってそちらを向く。

(今だ!)

式の感覚がその瞬間を見逃さない。
式のナイフが秋葉の線にせまる。

秋葉が見たのは……7……いや、8人の少女。
自分と同年代の少女がふわふわと当たりを舞う。

「何んでしょう……これは……?」

「それが……秋葉さま……さきほどから……いくら打ち抜いても……
秋葉さま!」

式が秋葉の背後に降り立つ。

「平気よ。翡翠。
解ってるから」

「何処が?!」

噛み合うナイフと赤。
式に向かう髪の毛を藤乃が片っ端からねじ切る。

翡翠と向かい会う 8人の少女達。

「ふふ……無駄よ……翡翠さん……
だって……皆……死んでいるなんですもの……」

「はいは〜い♪
では こう言うのはどうでしょうか?」

突然の轟音。
うなる弾丸。
辺りは炎に包まれた。




瓦礫が広がる
3分後。

「こ〜
は〜
くぅ〜!」

「あははは♪
秋葉さま 大変でしたね〜♪」

「姉さん邪魔したいんですか?」

「そんな……私は秋葉さまの為になると思って……」

「主人が居るのにいきなり爆弾は無いでしょう!
爆弾は!
炎にまぎれて逃げられたじゃありませんか!」

「爆弾じゃありません!
なんと言っても この炎
いにしえの魔術師……」

その言葉は最後まで言えなかった。
秋葉が琥珀につかみかかったからだ。

「琥珀!」

「秋葉さま。
ここであの方々を倒すと私達には不利になりますよ?」

「姉さん……それはどういう……」

ピンと人差し指を立てて琥珀が語る。

「良いですか?
あの3人は政府の切り札として投入されました。
ここであの3人が亡くなられると
政府としては別の勢力に頼る必要が出てきます」

翡翠が手を上げる。

「なんでしょう翡翠ちゃん?」

「それでしたら 今では同じでは?
敗北に近い状況でしたし」

「それは翡翠ちゃんのひいきめと言うのよ……
まぁ、そうじゃなくても……」

「プライドとかメンツとかありますから
どっちにしろこのままって事ね」

「そのとおりです秋葉さま♪」

「はぁ……」

「ここでつぶしても良いじゃないの……」

「はいはい。ぶつぶつ言わない言わない
この間の事もありますし、まだ早いですよ……」

ふっと……秋葉が空を見上げて微笑んだ。

「そうね……兄さんが帰ってくる頃ですし……
今はのんびりとして居ましょう……」


しかし、遠野家では一人の少女が目を覚ます……

「あれ……私……」

少女は目を覚ました……




次回予告
それは、平和だった…… 次回、月姫〜GR計画
第23話
『伽藍の堂』


予告とまったく違います(笑)
しかも時間かかりすぎ(苦笑)