月姫〜GR計画〜第12話『変革者』
草木も眠る七つ目の夜の時……
少年は体を抱きしめるように眠っている。
悲痛な表情は今にも泣き出しそうだ。
暗闇はその少年に堪えず恐怖を与え続けた……
月姫
〜GR計画〜
第12話『変革者』
少年は目を覚ます。
何かに導かれるように
そして、口を開く
「助けて」
と……
ケルトが消失して数日。
日本はいたって平和そのものであった。
遠く異国の地など関係無いと言わんばかりに。
雑多な喧騒に包まれて少年は歩き出す。
導かれた先は綺麗な顔をした少年、ぱっと見は少女であるがその瞳の強さからは男性を強く意識させる。
【それ】は少年の手を握る。まるで握手をするように強く……ただ強く握り締める。
少年の顔に赤みが挿す。照れの為がその表情に笑みが浮ぶ。
そうして、普通っぽく無い少年と綺麗過ぎる少年は街のホテルに吸いこまれて行った。
そんな光景を女……青崎橙子は見つめていた。
………………
断続的に息遣いが聞こえる。はぁはぁと荒い息が部屋中に充満する。絡み合う二つの影はただ相手のみを見つめる。その素肌をさらして……
「どうだった?」
呼吸を整えるように綺麗な顔が少年に問い掛ける。
胸元を隠すようにシーツを抱え上げ少年をじっと見つめる。
「う……ん……わかんない」
その言葉に少年はそっけ無い。
横たわっていた少年は寝返りを打つように綺麗な顔に瀬を向けた。
「そう」
何が嬉しいのか綺麗な顔は少年にそっと……あくまで優し”過ぎる”笑顔でそう言った。
――埋葬機間本部――
パイプオルガンでも鳴り響くような大聖堂に【それ】は居た。綺麗な顔で天井を静かに見つめる。
【それ】は唐突に話しかけられた。
「大懐球は予定通りに進んでいます」
「そう……」
聞くものを確実に魅了する声が大聖堂に響く。
「報告
ご苦労様でした。ロッテンバイン」
ロッテンバインと呼ばれた女性は踵を鳴らすように敬礼する。
「おやおや、ここではその作法は要りませんよ」
あくまでにこやかに【それ】は語る。
「はい」
「すみませんが、こちらの作業は遅れて居ます。
ロアには進行速度を365分の1に落とすように伝えてもらえますか?」
「365分の1ですか?
それでは……」
「そうです。
予定は一年遅れになりそうです」
「解りました。
では、そのように……」
カツカツと靴音を響かせてロッテンバインはさって行った。
――大懐球内部――
「解りましたね? ロア」
通信機から聞こえるのは先ほどのロッテンバインの声
凛としていて隙と言う物が見えない声。
「ああ、解ったと伝えろ」
「では、伝えましたよ」
通信機が切れる。
そこには苦虫を潰したような白いスーツのオールバック+ポーニーテール眼鏡。
ミハイル・ロア・バンダムヨォンが居た。
「あの楕円形め、いったい何をやるつもりなのだ!
作業が遅れている?!
知ったことか!
私は私の為にある太陽を克服して見せる!
テオ・カ・ロア
この 真なる精霊石 に、よってな!」
「それはマヅイぞ
アカシャの蛇」
黒い白衣に似たコートを羽織った男はロアに言う。
「マヅイ事などあるものか」
「それがあるのだ。【奴】の作業が太陽を消す手段もあるとしたら?」
「なんだと?」
「【奴】がしている作業が何かは解らん。しかしその魔術は間違い無く何かを生み出す。
思い出してみろ 赤い月と真祖の姫も【奴】のやる事を黙認していた」
「うむ……」
「赤い月はともかく真祖の姫がただ逃げるだけと言うのはおかしい……
そう言ったのは他でもない 君であっただろ?」
「解った……今回は君……ネロ・カオスの顔を立てておこう」
「ありがたい」
そう言うとネロ・カオスは背を向けて歩き出す。
「何所へ?」
ロアがたずねる。
「【奴】が何かして居るという日本へ……」
それが始まり……
変革の一歩。素晴らしき時の創造。見えざる【モノ】への真の抵抗。
全ては……【奴】カレーパ○ンマンの為に……
次回、月姫〜GR計画〜
第1部最終話
『混沌と誕生』