月姫〜GR計画〜第10話『発動 大懐球作戦!』 ごうんゴウン……
巨大な球がゆっくりと進む……
そう、ヨーロッパを出発したその黒く巨大な球は
一路ユーラシア大陸を悠然と進み始めた……





月姫GR計画


第10話『発動 大懐球作戦!








――ヨーロッパの片田舎――
渓谷から10数キロ……
そこで、シエルは待つて居た。
今も顔を空から大地に落したまま……
そうこの二人を……
待っていた。

「良くやってくれましたね……
シエル」

「流石は空の弓だな……」

シエルが待っていたのは、ナルバレックと王冠=メレム・ソロモンの二人。

「王冠ともどもお出迎えとは……
これは本当に重要な物なのですね……」

「もちろんですシエル……
さぁ、それをこちらへ……」

「はい……」

泣きそうな表情のシエルがカバンをナルバレックに渡そうとした時だった。

「それは、こちらに渡して頂きましょう」

筋肉質ながっちりとした、体の男がシエルの後ろ側に立つ。

「なんだぁ?
伯爵さまかぁ?」

王冠に伯爵呼ばわりされた男はゆっくりと言う。

「それは、元々こちらのものでね……
100年以上も預けて居たんだ、返してもらうよ」



銃声が響く……

「うるさいですねぇ……」

シエルの手にはデザートイーグル
シエルが威力で最も信頼して居る愛銃。

「シ、シエル?」

王冠がシエルの表情を見て後ず去る……
それほど、今のシエルは目が座って居る。

「では、私は一足先に戻ります」

と、カバンを持ち直してナルバレックが立ち去ろうとすると

「そうは行かないのよ……」

妖絶と形容するのが一番近いと思われる女性……



またも銃声……

「だから……
どうして……あなた方……吸血生物と言うのは」

シエルの言葉を囮にナルバレックが王冠に耳打ちする。

「ここはシエルに任せましょう」

「良いのかい?
伯爵と女王だぞ。ありゃ」

「良いのです、何故なら
シエル一人で済めば安いほど
これは重用なのです」

「気に入らないねぇ……」

王冠の表情が強張る。

「役目を果たしましょう
あなたは護衛でしょう?」

ナルバレックの笑顔に王冠は怒を顔に出す。

「わあったよ!」

そう言って、王冠とナルバレックは岩肌から消えた……

「逃がさん!」

「あらあら、よっぽど大事なモノなのね……」

伯爵と女王と呼ばれた二人の背中に羽が生える。

「いちいち、飛ぶなぁぁぁぁ!
この、下劣生物ぅ!!!」

!!!

3発の銃声。
しかし、どれも当たっては居ない。

「我に一人か……
埋葬機間!」

「ワタシも居るのよ……
クヌム」

「そうであったな……
スランディア」

「そうですか……
王家の中の王とも言える二人ですか……」

「すぐに終る……」

「じゃ、ワタシは……」

そう言ってスランディアと呼ばれた女性が飛ぶ。

「そこを!
動くなって言ってるじゃ無いですかぁ!」

「!」

スランディアが空を見上げると
上にはシエルが居る。
そのままシエルはブーツで踏みつける
いや……
踏む
踏む踏む
踏む踏む踏む。

「人間が……!
ワタシを足蹴にするな!」

怒気を孕んだスランディアがシエルを振り払う。
跳躍してやり過ごすシエル
その間にデザートイーグルから銃声が2発飛ぶ。

「ちぃ!」

それを避けるようにスランディアは横にそれる。
その間に今度はクヌムと呼ばれた男が空へ飛ぶ。



シエルはそれを睨みつけて一発
その後はただ、カチカチと言うトリガーの音がなるだけ……

「球切れとは……
それは君の思慮の限界なのだよ……」

「どいつもこいつも……
五月蝿い……」

伏せ目がちのシエルが空を見る!

 リアリティ・マーブル     時
「固有結界!  世界よ……止まりなさい!」

シエルが貼った結界は世界の動きを止める。

「「ワタシ(我)が貼ると解って居る結界などで止まると思ったの(かね)」」

二人は同じようにシエルを笑う。
シエルにはその時間で充分だった……

  セヴン
 「七!」

シエルの叫びに大きな銃だか剣だか良くわからないゴテゴテしたものが現れる。


「あのモノ達に祝福など要らない!
殺害の王子よ! 神に刃向かう愚か者に裁きを!!」

セヴンと呼ばれた大物から剣もどきが発射され
それが二人にあたる……
風で本のページがめくれるように
        吸血鬼の存在
後には文字一杯の紙が舞っていた……
まるで雪のように……たくさん
たくさん……

「さっきほど踏まれた理由が解らないとは……
こんな奴より下級な奴に私はぁ!!」

シエルは叫ぶように地面を踏みしめた。



――――――大懐球内部――
「ふむ……
始まったかね」

暗闇で白衣にた黒いコートが動く。

「【アレ】と会う可能性が出るとはな……
先人達は【アレ】に関るなと言っていたが……」

ふっと男を横をみる。
そこには一枚の写真。

「真祖の姫君か……」



続く







次回予告
大地は揺れ
空は吼える
見よ……これが大懐球だ!
次回、月姫〜GR計画
第11話
「黒いメダマ」



「悲しいですね……人が死ぬと言うのは……」





後書き あ〜もぅ、シエルが主役みたいだから、このヘンを第1部と言う事にします(笑)