月姫〜GR計画〜外伝(18話)『七夜と両義……』


 秋葉が出かけて翌日……

「ふう……そうか……誰も居ないんだった……」

志貴は当たりを見まわす。

「とりあえず……
飯」

この行動が志貴の運命となる。



月姫――


――GR計画――
――外伝の1(17話)話『七夜と両義……』――





志貴は街中に繰り出していた。

「ラーメンも良いなぁ……
待て待て、せっかくの軍資金だし……
そうだ!
特盛の牛丼……
って、それじゃ、何時もより少し豪華……なんだよなぁ……」

考え事をまとめようと口に出すもいろいろ迷う。

その時……
目の前……
居る者は……
不思議だった……

紫のだんだら
レザーのジャケット
短くもバッサリと切られた髪
そんな事はささいな違いとばかりのその美形。

(美人……)

それが志貴の感想……
の、はずだった。

(!
気配が……違う?
一人……いや二人?
いや、無い? いやある……それも強く……
いや、違う……?)

隣りに居る志貴をそのまま長身にしたような男は最早 目にも入らない。

ふっと……
視線が……
混ざる……

そして……

お互い……

通り過ぎた……


そのまま、その不思議な美人は【にやり】と笑い
路地裏に消える……
最後に志貴をそっと見て……

「ふぅん……」

志貴のスイッチが入る。

「望を叶えてやるよ……」

七夜の血が……
暴れる。


そこに【それ】は居た。

笑みすら浮べるその【モノ】は静かにナイフを取り出す。

「お前も……
普通じゃないな!」

【それ(以下 式)】は走り出す。
志貴の居る方向に
しかし!
その場に見えた 志貴は居ない。

「何所?!」

式は当たりを見まわす……

すると!

ぞくりと来るほどの強烈な殺気!

「ちぃ!」

一瞬で式が飛ぶ!

(あのまま居たら……死ぬ!)

式の直感がそれを告げる。

「何所……」

ぞくり

「また?!」

式の感覚に訴えかける死の文字。
たまらず飛び引く式。


「はぁ……はぁ……はぁ……
(汗の量が多い……
殺気が消えない……
くそ、俺がここまで良いように……
このまま消耗させる気か……?
いや、あのまま留まって居ても殺られる……)
くそぉ!」

3度目の殺気をあび
三度 式が飛んだ……


3分……
たったと言うべき3分……
その3分が過ぎた時……
式の思考は壊れかけていた……

(殺気が見えない……
まるで、腹の中に居るみたいに……
怖い……怖い……怖い……怖い……怖い……)

式の脳裏に浮ぶ
恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気恐怖殺気
もう、正常な思考など……式には
……無い

志貴の方と言うと……

(ふむ……当てれる気がしない……
持久戦か……)

まだ、余裕はありそうに見える。

「ふ……はは……
あはははははは」

式が突然笑い出す。

「?!」

志貴が飛ぶ……
その……
式の……
気の緩みに引き寄せられて……

「かかったぁ!」

それは式の作戦だった。
こいつは絶対に死角から来る。
それは直感的に完全に信用できた。

「!」

式がナイフを前に構える。
それは完全に志貴の正面。

「これで……終りだ」

式の直死が志貴の死を見る。

「ふ……」

志貴が……
笑った……
気が……
……した。

鳴るはずのナイフ同士の打撃音は無い。

交差する視点。

立っている……
両者とも……
だが……
一人は笑みを浮かべ
一人は絶望をその表情に映す。

「俺と同じ……」

「違うさ……
お前のは見るだけ……
観て無い……」

式は考える……
(どうして……
俺のナイフが切られた)と……
理由は解っている……
死の線を切られたからだと……

絶望する式に志貴は言う。
「観る事と見る事は違う」と……
そして……志貴は消えた。

「?」

数分経ち……
式が不思議に思った時。

「式!
上!」

黒桐(式が一緒に居た志貴似の長身)

待っていた
自分が絶対有利な時を!
なのに……
何故……
あいつはそれが解るのか!

その時志貴の興味は完全に黒桐に注がれた。

「それに触れるな!」

志貴がターゲットを黒桐に移した時
式が吼える。
「それは俺のだ!」
と……
志貴の視線が式を一瞬向く
再び交差する視線
いや……
この二人にとっては
死線
だ。

志貴のナイフが降ろされる。
その時 黒桐は……

「真正面から振り下ろしだね」

式は信じた。

「ぬう!」

「はは……どうした?」

白刃取りなんて神技をこの状況で式は取る。
開いた腹を蹴りつける。

「ぐ!」

志貴はその衝撃を緩和するように飛び引く。

「はぁはぁはぁ……」

「……ふぅ……ふぅ……ふぅぅぅ……」

志貴の呼吸が……
式の呼吸が……
荒い。

両者は思う
【次だ!】

ダン!
両者が同じに地面を蹴る!

しかし、神速で動く両者よりずっと前に動くものが居る……
黒桐幹也……
それが彼の名……

「どうして、式をいじめる?」

微笑んでるように見えるその表情に
志貴は腕を取られる。

「な、な、な、な……」

考えを読まれ、腕を捕まれる。
気配はあった
取るにたら無いと思ったのも事実。
しかし、何故だ。

志貴の思考はこれに費やされる……と式は思った

志貴は腕をねじり黒桐を投げ飛ばすと
路地裏から消えた……

(2・1……無理だな)

との判断だった……


「黒桐」

「何?」

黒桐は涼しげに
式は不機嫌そうに

「どうして解った?」

「何の事?」

「あいつとここに居る事
そして、あいつの行動だ」

「捜したんだ……」

「それは解る
だが、行動はどう説明する」

「だから、捜したんだよ
あれの行動も」

「な……」

「所長が言うには俺の物捜しに差別は無いんだって」

「そうか……
じゃ、捜してくれ……あいつを……」

「怖いの?」

「ったく……お前って奴は……」

「うん」

式は黒桐に飛びこむ。

「式?」

真っ赤になって黒桐は問う。

「怖いんだ……」

黒桐の表情も強張る……
式にあわせるように

「俺……私なら死んでた……
駄目だった……
殺気の質も量も……
やっぱり、女なのかなぁ……」

「うん、式はとっても可愛い女の子だよ……」

そのまま黒桐は式を抱きしめた……





次回予告
やって来たのは、青い魔術師
迎えるのは、傷んだ赤色の魔術師
二人を見るのは黒い式……
次回、月姫〜GR計画
外伝の2
『魔術師達の宴(前編)』




後書き 今回のはただのクロスオーバーって気もします(笑)