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  忘れな草     (偃月さんのレビュー)     評価: 6.5 
▼ タイトル 忘れな草
▼ ブランド Project-?(ミュー)
▼ ジャンル ノヴェルシアター
▼ 対応OS Win95/98/2000
▼ メディア CD-ROM
▼ 定価 \8,800
▼ 発売日 2000/11/17



Soft Information - ソフト情報 -

OP曲
:
帰らじの七月
     
ED曲
:
(エンディング毎に異なります)
     
総プレイ時間
:
15.0時間
 
原画
:
ひねもす のたり
     
シナリオ
:
砂斗 あきら
     
音楽
:
有阪 千尋
     
CG回想
:
     
シーン回想
:
×
     
音楽回想
:



Outline - あらすじ -

路線バスに乗っている一人の青年。
彼は、以前家族皆で住んでいた、上鷺村へと向かっていた・・・

夏のある日 ・・・差出人不明の1通の手紙が届いた。
それは、以前村で一緒だったみんなと、一緒に同窓会をやろうというものだった。

久しぶりの帰省。
ソラは、同窓会までの生活のことなど全く考えず、下鳥村のバス停に降り立つ。
それは、同窓会を楽しむためではなく、現実の苦痛から逃れるための方法の一つでしかなかった。

ふと思い立ったソラは、近道をするために森の中へと入っていく。
そこで聞いたのは、小さな鈴の音だった。

「シラサギヒメ!」

祖父から「シラサギヒメ」の恐ろしさについて聞かされていた彼は、 慌てて森から逃げ出す。
森の斜面を転げ落ちた彼は、かつて自分が通っていた分校の前にと、辿り着いていた。

そこに懐中電灯をもって現れた一人の女の子。
それは、かつて自分と同級生だったセナだった。

そして、物語が始まる・・・
過去・・・歪んだ記憶・・・

果たして、主人公の心の中に引っかかっている違和感。
そして、断片的に思い出す記憶。
真実は・・・



Scenario - シナリオ -

このソフトをジャンル分けすると、一体どうしていいのか困ってしまいます。
純愛物でもありますし、陵辱物でもあります。そして、サスペンスでもありますし、ホラーでもあります。

一つのジャンルには分けることの出来ない、色々な要素を持ったストーリーですし、
それはまた非常に奥深いものに感じました。

そして、久しぶりにテキストを読む事が面白かった。そういうストーリーでした。

ゲームは、ワンプレイが約2.5時間程度。
スキップの速度が遅いですし、繰り返し同じシナリオを読まなくてはならないという、多少面倒な部分があります。

物語に対する感情移入の度合いは、かなり高かったと思います。
後ほど説明しますが、やはりそれは音楽・効果音の影響ではないでしょうか。

同窓会の主催者、そして主人公の閉ざされた記憶。
それが次第に解き明かされることによって、徐々に物語が展開されていきます。

とにかく、物語に謎が多すぎるので、その答えが知りたくなってしまい、どんどん先へと読みたくなるシナリオです。
その謎を解き明かしていくにつれ、次第に無意識のうちに感情移入が進んでいくでしょう。

目の前に写るもの・・・
それは事実・・・

確かにそれは存在している・・・
それも事実・・・

だけど、その事実は真実じゃない・・・

主人公の閉ざされた記憶・・・
封印してしまった悲しい過去の物語・・・

ずっと気付かないようにしていた・・・
気付く事が怖かった・・・

今まで逃げ続けてきた・・・
これからも逃げ続けたい・・・

真実を知るのが怖いから・・・
自分が傷つくのが怖いから・・・

炭焼き小屋で主人公と背中をくっつけ合っているシーン、そしてバス停での新たなスタートのシーン。
この二つのシーンが、印象的でした。 場面的にはあまり印象的なものではないと思います。
ただ、後の展開を考えると、この二つのシーンは印象的でした。

エンディングの数は非常に多く、各キャラクター毎に複数用意されています。
キャラ毎のエンディングは全く別のストーリーになっているようです。

また、同じキャラの複数のエンディングに関してみてみると、一見同じようなエンディングが多いのですが、
実際はエピローグがあったり、 エピローグからさらにストーリーが展開されたりと、大抵のソフトにある、
本編では大体同じで、 エンディングだけが異なるというタイプにもかかわらず、
そのエンディングの少しの変化が楽しみでたまりませんでした。

ただ、エンディングに関して一つだけ言えるのは・・・
全てのエンディングがTrue Endであり、真実であると言うこと・・・

ソラの犯した罪・・・

カイトの犯した罪・・・

みんなの犯した罪・・・

Hシーンに関してですが、大抵のソフトがそうであるように、
Hシーンは純愛物のソフトの到達点の一つのような印象があります。

しかし、忘れな草の場合は、到達→エンディングというのではなくて、
物語の通過点の一つとして捉えられることが出来ました。

ですから、突然その場面がやってくる場合もありますし、
それがさらに物語の謎を深めてくれることにつながっていたりと、
物語の中での役割と言うものは、大きいもののように感じました。

当然、Hシーンは濃くはありません。
また、陵辱系な印象を持ったものが多いです。
しかし、それは個々の判断。純愛系のHシーンと捉えることも出来ると思います。

・・・ソラの存在、村の存在、儀式の存在、そして、森が存在する意味

難易度に関しては、非常に高いと思います。
個人の力でクリアするのには、相当な時間と労力を必要とすると思います。

何よりも、ゲームシステムが複雑で、理解するのが大変です。
すんなりと攻略を使用したほうが良いと思います。時間も節約できますし、物語を楽しむ事につながります。

そして・・・・・・閉ざされていたものの開放。

とにかく、一度プレイしてみても良いと思います。



Sound - 音楽・効果音・音声 -

ゲーム内で使用される曲数は、全部で13曲。

曲数自体は、シナリオの長さから考えても若干少ないと感じました。
それと、1曲の長さが約1分半〜2分と短いのが残念でした。

雰囲気としては、暗めの感じの曲が多いです。
暗く感じる曲も、1曲を通して聞いてみると違ったものを見つけられる、そんな印象を受けた曲が多いです。

突出して良いと感じる曲は無いものの、楽曲全体の平均的なレベルはかなり高めだと感じました。

TrackNo.02 [ 帰らじの七月 ]
オルゴールのような音色から始まる悲しげな曲。
切ない物語には、非常にイメージがあっていて良かったと思います。

TrackNo.06 [ 木漏れ日に踊る君 ]
ゲーム本編で、初めて流れた曲ではないでしょうか?
それだけにとても印象的でした。

TrackNo.09 [ 骨のバイオリン弾き ]
悲しげなバイオリンのような曲です。
満月が良く似合うようなイメージの曲です。

TrackNo.10 [ 僕の還る場所 ]
ピアノの曲だと思います。
やはり、この曲も悲しげな曲。忘れな草の曲目の中では、好きな方の上位に入ります。

TrackNo.12 [ 影が僕を笑うので・・・ ]
少し不気味な旋律の楽曲。
ですが、意外にも好きなイメージを持った曲です。
映画にもこういう曲が出てきてもおかしくないような曲です。
ホラー映画のエンドロールの曲には合うと思います・・・

そして、この作品の評価が高くなった理由が音楽・効果音にあると思います。

ゲーム本編では、基本的にはBGMがあまり流れません。
本当に静けさを持った世界観で、旧世代の田舎のノスタルジックな感覚が沸きあがってるくる様に感じました。

今まで、ストーリーの半分以上にBGMが流れていないソフトは体験したことがありませんでした。
しかし、音の無い世界、それは非常にインパクトが強く、そして物語の雰囲気、
物語と一体感を持つことが出来ることにつながっていたと思います。

静かな物語を大事にする事が、逆にBGMが流れた時の、よりいっそうの効果を上げていたと思います。
要所要所で流れるBGMが、印象的な物に聞こえました。

まさに [ 静 ] と [ 動 ] の相対するものを、上手く使い分けているという感想を持ちました。
スタッフの曲の使い方の上手さが伝わってきますね。

BGMと同じく、このソフトを盛り上げていたのが効果音。
忘れな草の効果音は、過去のソフトに類を見ないような絶対的な効力を発揮していたと思います。

BGMが流れない静寂の中、物語の場面の臨場感を盛り上げていたのが、ウシガエルの鳴き声であり、
アブラゼミの鳴き声であり、蜩の鳴き声でした。
それは、日本の古き良き時代、忘れ去られた農村の長閑な風景を象徴するのには十分過ぎるほどの物でした。

水が落ちる音・・・山が鳴る音・・・風が吹く音・・・鈴の音・・・虫が鳴く音・・・

自然的な情景をまじまじと見ているために、 今度は逆に機械的・人工的な物の出す音までもが、
何か特別なもののような気がしてきます。

効果音の一つ一つが、それぞれの意味を持っています。
その効果音、自然の持っていた音色を大事にして、プレイしたくなりました。
効果音が、作品のBGMになっていたと言っても過言ではないと思います。

音声に関してはありません。
ただ、BGM13曲の中には、物語の舞台となる村に伝わる歌が含まれているので、約2曲には声が入っています。



Character - キャラクター -

原画に関しては、良かったと思います。
特徴的な所がありますが、好みの感じの絵なので印象は良かったです。

ゲーム内に登場するヒロイン、女性キャラクターは [ セナ ] [ ナズナ ] [ カエデ ] [ スズネ ] の4人。

セナ
主人公とは同級生で、引っ込み思案な性格。
人との付き合い方は決して上手くはなく、いつも他人に対しては謝ってばかりいます。
現在は、上鷺村の役場で働いています。
普段は誰に対しても「ごめんなさい」と謝っていたり、おどおどした態度を取っていたりしますが、
本当はこのソフトに登場するキャラクターの中で、一番強い心と想いを持った女の子なのではないかと思います。
やはり、一番印象に残るキャラクターがセナでした。
印象的な場面は、炭焼き小屋で主人公と背中を合わせて座っている場面。

ナズナ
主人公よりも年下の下級生だった。
誰に対してでも、いつも向かっていくような性格で、それが仇となったりすることも過去にはあったようです。
現在は、[ カズキ ] という同じく主人公の下級生だった男の子と一緒にいるようです。
印象的だったのは、主人公の自宅でただひたすら天井を見上げている所。

カエデ
主人公の上級生だった女性。
村の資産家の令嬢なので、村の開発の為に親の事業を手伝ったりしています。
性格は、異常に礼儀に対して厳しく、些細な事に対しても直ぐにお説教をはじめてしまいます。
好きな食べ物はカレー。
印象的なシーンは、鏡通鏡の池でドレス姿をして立っている場面。

スズネ
主人公が鎮守の森で出会った少女。
正体は不明な彼女だが、いつしか主人公も彼女も引かれ会うように・・・
非常に無口な女の子で、まるで感情を伝える術をあまり知らないかのようでした。
いつも彼女は鈴の音と共にやってくる・・・
ストーリーの中では、あまり登場する機会が多くは無いキャラクターですが、存在感はかなりあったと思います。

主人公(ソラ)
あまり見る事の出来ないほどに貴重な自分に対して自虐的な態度をしていて、
さらにいつも彼の心理状態は何かに脅迫されているかのような状態。
そして、いつも何から逃げているような性格です。それが判断を躊躇わせ、
優柔不断で実行力のない人間を表していたように感じます。
さらに、自己中心的・疑心暗鬼な要素も混ざり、他の人のやさしさに対して怯えたり、
疑いを持ったりすることも度々あるようでした。

このソフトをプレイした他の方の意見を見てみると、やはり主人公に対してはかなりの酷評意見が多いようです。
やはり、周りから見ればじれったいとしか言い様のない彼の性格、
それが受け入れられないのは当然なのかなと思います。

しかし、個人的な意見は、主人公に対しての酷評意見とは異なって、逆に肯定する意見を持っています。
なぜなら、このような人間的に弱く、汚い心を持った人間だったからこそ、セナの優しさ、愛情、
そして悲しみが良く伝わってきたように感じます。

もしも、この主人公が積極的なキャラクターだったとしたら、
やはり物語のイメージ・印象は全く違ったものになってしまっていたのではないかと思います。



Graphics - グラフィック -

立ち絵のポーズの数は数種類。
塗り方は結構綺麗だと思います。

一枚絵の枚数は137枚。
一枚絵の塗り方についても、全体的には綺麗でした。

枚数を確認してみると、137枚もあったんだ?という感じがしました。
ゲームをプレイしているときには、CGの枚数はそんなに多いとは思ってもいませんでした。

ストーリーの長さから言っても、丁度良いぐらいの枚数ではないかと思います。

背景に関しても、なかなか細かく描かれていたと思います。

ただ、遠くの山などに関しては、あまり良い印象はありませんでした。
建物、物などに関しては、非常に満足しています。

HシーンでのCGの使いまわしはあまりありません。

ゲーム内での画面効果に関してですが、これも他のソフトとは異なった、特徴的なものを持っていたと思います。

例えば、テキストが波紋のようになったり、ノイズが走ったりと、他にはあまり見られないものが多かったです。
また、立ち絵が出てくるときにも、ただ普通に表示されるのではなく、画面横からすべり出てきたりと、
特徴的な点が多かったです。

それと、テキストの効果について追記すると、テキストが場面毎に色々なエフェクトがかかります。
先ほど上げた波紋のようになったり、文字サイズが巨大化したり、連続的に文字が出て来たりと、
色々なパターンがありました。

これらの多くは、「音」を表すのに使用されていたように感じました。
それは、先程も書いたようにBGMがない・少ない物語において、物凄く効果的で、
今までにない新感覚なノベルを見せてもらったような気がします。

ただ、気になったところと言えば、テキストを表示する背景に、ダークブルーのような矩形が表示されるのではなく、
透明にしてもらいたかったです。
それは、テキストを読むときにはあまり格好良いとは言えるものではありませんでした。

そして、テキストが読みにくくなった理由のもう一つは、文章を改行する場所だと思います。
自分の改行方法が適当なので、あまりこういうことは言えないのですが、
改行しているより、ただ長さが画面一杯になったから改行しているようにしか思えませんでした。

それが、文章の連続性と言うか、すらすらと読むには面倒な部分だったと思いました。



System - システム -

ゲーム全体に大きな不具合は無し。

ゲーム内のメニューで変更できるのは [ Save & Load ] [ 画面モード ] [ 音楽 ] [ 効果音 ] [ 画面効果 ]
[ メッセージ高速化 ] の5つ。

Save & Load:
セーブ可能個数は8個。
選択肢の個数から考えれば、少し少ないと感じるぐらいかもしれませんが、
ゲーム全体の難易度から考えてみると、非常に少ないと言えます。

メッセージスキップ:
スキップは未読・既読に関係なくCtrlキーでスキップ可能です。
しかし、文章を飛ばす速度は、あまり速くありません。

画面モード:
[ ウィンドウ ] [ フルスクリーン ] の切り替えが可能。
ただし、切り替える事が出来るのはタイトル画面の時だけです。

音楽:
BGMを [ On ] [ Off ] に切り替えが可能。
ただし、切り替える事が出来るのはタイトル画面の時だけです。

効果音:
効果音を [ On ] [ Off ] に切り替えが可能。
ただし、切り替える事が出来るのはタイトル画面の時だけです。

画面効果:
画面効果を [ On ] [ Off ] に切り替えが可能。
ただし、切り替える事が出来るのはタイトル画面の時だけです。

メッセージ高速化:
メッセージ表示速度の高速化を [ On ] [ Off ] に切り替えが可能。
ただし、切り替える事が出来るのはタイトル画面の時だけです。

ゲームをプレイするにあたっての機能の数としては、若干使い勝手の悪いシステムだといえると思います。
また、タイトル画面でしか変更が出来ない項目が多いという所は、良くない事だと思います。

ソフトについているおまけ機能は [ 勿忘草冊子 ] という機能がついています。
内容は [ キャラクター紹介+アルバムモード ] [ 勿忘草の世界観に関する情報 ] [ 忘れなQ ] [ 音楽鑑賞 ]
等があります。

キャラクター紹介+アルバムモード:
ゲーム内に登場するキャラクターに関してのエピソード、そして物語で果たす役割等が書かれています。
また、アルバムモードでは、各キャラクター毎のCGを閲覧することが可能になっています。

勿忘草の世界観に関する情報:
ゲーム内に登場する地名・キーワード・食べ物など、忘れな草のデータ−ベースになっています。

忘れなQ:
他のソフトと比べて珍しいおまけ機能としてはこの機能でしょう。 いわゆる、カルトクイズです。
忘れな草に登場する人物や、イベント、果てはテキストに登場した漢字の読み方など・・・

最後には人間の記憶システムについて等の問題が出ます。
問題数はそれほど数も多くはありませんし、問題のレベルとしてもそれほど高くはありません。

また、アイテムなども登場して難易度の調整が計られているようにも思えました。
ネタバレが含まれているので、プレイするのは後の方が良いでしょう。
これをプレイしないと、CGは全て埋まらないようになっています。

音楽鑑賞:
ゲーム内で使用されている音楽、そして忘れなQで使用されている音楽15曲を鑑賞することが出来ます。
自分のマシンの性能が問題なのか、再生するのに若干の時間がかかります。

ソフトのおまけ機能に関しては、他のソフトと比べるとかなり充実していて良いと思いました。
忘れなQもなかなか良かったです。

あと足りないものと言ったら [ シーン回想 ] ですね。



Total - 総評 -

久しぶりに面白いソフトをやったなと思わせてくれるソフトでした。
個人個人の趣向と言うものはありますが、世間的に評価は高いはず、そう思っています。

何よりも、他のソフトには持ち合わせていない要素がたくさんあり過ぎる。そういっても過言ではないと思います。

例えば、音楽。
大抵のソフトが、何の変哲もないBGMを垂れ流しにしていて、物語をやたら明るくしたりと、
不必要な演出をしているように感じます。

音のない空間、たまにはそれがあっても良いと思います。静寂という点に関して感心したのも、
久しぶりだと思います。




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Scenario
:
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80
Sound
:
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80
Character
:
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75
Grapchics
:
■■■■■■■■■■■■■■
70
System
:
■■■■■■■■
45
H
:
■■■■■■■■
40
Main3
:
■■■■■■■■■■■■■■■■
80
Total
:
■■■■■■■■■■■■
65