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  彼女の願うこと。ぼくの思うこと。     (偃月さんのレビュー)     評価: 7.5 
▼ タイトル 彼女の願うこと。ぼくの思うこと。
▼ ブランド Project-?(ミュー)
▼ ジャンル ノヴェルシアターPLUS
▼ 対応OS Win95/98/2000/Me
▼ 定価 \8,800
▼ 発売日 2001/09/28
▼ 必須CPU / 推奨 Pentium 166 MHz / MMX Pentium233 MHz
▼ 必要メモリ容量 / 推奨 32 MB / 64 MB
▼ HDD必須容量 / 推奨容量 20 MB以上 / 340 MB以上
▼ 解像度 / 色数 640*480・High color
▼ 音源 CD-DA
▼ DirectX 7以上




Soft Information - ソフト情報 -

OP曲
:
Falling Fruits - 楽園 -
     
ED曲
:
カーテンコール
     
総プレイ時間
:
10.0時間
  
CG観賞 :
  
シーン観賞 : ×
  
音楽鑑賞 :
 
原画
:
ひねもすのたり
     
シナリオ
:
砂斗あきら
 
:
越智自由
 
:
木下明
     
音楽
:
有阪千尋




Outline - あらすじ -

互いに違う世界を捉える二つの目を持った少年、流渦。

彼の捉えている虚ろな世界の中で、一人の少女が声をかける。

「あなたは・・・誰?」

掃き溜めの街で、目的もなく、ただ無気力に生きているルカ。

彼はその声を聞き、無性に興味を惹かれる。

「自分」を忘れ、何事にも無気力だった彼が、その声を聞いた時から次第に変化を始めようとしていた。

そう、本当の自分を見つけるために・・・



Scenario - シナリオ -

右の目と左の目の捉える世界が違う「流渦」という少年。
そして、掃き溜めのような街の一部として一人無気力に生きていた「ルカ」という少年の話。

物語全体の中心的な立場に位置しているのは「流渦」の方なのですが、
全編を通して見たときの、主人公的な役割を担っているのは「ルカ」の方になります。

二つの目が互いに捉えている世界が異なるというのは、少し理解しにくいかもしれないので簡単に説明すると、
右の目では現実的な世界を捉え、左の目では他人の思考を視覚的に捉える事が出来るという事になります。

メインキャラの設定が特殊な感じなので、物語の世界観も少し特殊な感じがします。

希望も何もない牢獄のような檻の中で、ただ義務として神に祈りつづける日々を送っている「流渦」。

現実を見つめている右目が捉える、長い間眠りつづける「美月」という女の子の思考を、
彼が左目で捉え、彼女は一体何を自分に伝えたいんだろうか、そうして左目の世界を眺めていくという感じです。

その左目で捉えている世界が物語の大部分を占めていて、話のジャンルはコミカルな冒険物という感じですかね。
左目で捉えている世界の中での主人公が「ルカ」で、他の女性キャラ達の舞台になっています。

プレイしてみない事には物語の全体的な形が見えにくいので、長々と全体的な世界観のような物を説明してみました。

大きな枠組みで見てみれば、結構シリアスな感じの話になります。
ただ、物語の大部分がコミカルな感じの物語なので、実際にはこちらの方が印象に残りますね。

物語が章立てされているので、構成上そのシリアスとコミカルが、ふと気付いたときに切り替わります。

コミカルだった物語が、いきなりシリアスになる事で急に現実に引き戻されるような感覚を感じたり、
今までは笑っていた気分を一気に引き締めてくれたり、プレイする上での気持ちの揺さぶりは結構伝わりました。

そんな事もあってか、全編を通して飽きること無く読み進める事が出来ました。

全体的には一本の道に沿った感じがする物語ですが、どの女の子を中心として話を進めるかで、
しっかりと他のキャラの位置も展開も変わるから飽きなかったんだと思います。

物語の面白さもさる事ながら、魅力的なキャラ達も忘れる訳には行きませんね。
存在感も大きいですし、ちゃんと笑わせてくれますし、シリアスな表情もしてくれます。

安心して笑いながらプレイできる、ある意味、安堵感みたいな物を感じさせてくれる、そういった感じを受けます。

ただ、原画では幼い感じを漂わせているキャラが多いですが、実際の所は精神的に幼くありません。
あえて萌えを狙っているような感じもしませんでしたし、そういう点からも安心してみていられたり。

自分自身の存在理由や、生きる目的、そして本来の自分のあるべき姿を追い求めていくルカ。

それを他の仲間と共に自然な流れに沿って、次第に気付かせていく物語の流れ。
物語の本質、ましてや宗教的な感じを受ける物語なので、自然に説明っぽくなく気付かせていく所は良かったですね。

結構なじみ易いというか、自然な感じの主人公にも共感できます。
だから自然な流れでプレイできたような気もしますしね。

Hシーンについてですが、かなり淡白な感じがします。

それを象徴しているように、HシーンでのCGは一枚が基本ですから。
ただ、コマCGの演出は、ここでも見る事が出来ますけどね。

テキストの方は長めですが、文章は第三者的な立場から見た、説明のような感じになっています。
主人公やヒロインの台詞や声がメインになっているのではないので、あまりHな感じはしなかったですね。

Hシーンの数も、各キャラ一回、もしくは二回程度なので、あまり多くありません。
陵辱的なものもありますけど、やっぱりあまりHに感じなかったり。

全体的に見てみると、なかなか深い世界観で、読み物としても十分に楽しめた部分があります。
また、特徴的で魅力的なキャラ達の存在感が大きかった事も忘れる訳には行きませんね。

ただ、一つの文の長さが長めで読みづらい点があった事、
バックのCGとの色の関係で文章が読みづらかったという事も忘れるわけには行きません。

涙を流して感動してしまう、あまりの展開の衝撃に心を打たれる、そういった事はありませんでした。
しかし、そういう枠では捉えられない感動とか衝撃とか、良い意味でのあっさりとした余韻が残りました。

何はともあれ、「自分自身を探す」「自分の存在理由を探す」ような物語、自分にはかなり面白く感じました。
拙筆で伝わらない点が多いのが残念ですが、プレイして心に何かが残る作品だったという事だけは言えます。

極端に純愛を好む方などにはお薦めできないソフトですが、全体的にはあまり人を選ばない作品だと思います。
純粋に読み物としても面白いですし、心理学を交えた作りだそうですので、違った視点から見ても面白いかも。




Sound - 音楽・効果音・音声 -

BGMはPCMとCD-DA。
CD-DAで再生される曲数は15曲で、他にPCMの曲も結構な数用意されています。

PCMで再生される曲の方は、BGMというより効果音に近い演出効果という方がいいのかもしれません。
WAVの中にハッキリと「効果音」と呼べるものもあれば、完全に曲になっているというのもあるという事です。

曲調は暗いものもあれば明るいものもあり、シリアスな場面ではシッカリと決めてくれます。
全体的に作品の雰囲気に一致していますし、自然に馴染める曲が多かったです。

● PickUp
[ Falling Fruits - 楽園 - ]
[ 月の影 ]
[ 砂の天使 ]
[ 御使いは来たりて・・・ ]

全体的な曲のレベルはやや高めではないでしょうか。
残念な事に、一曲毎の長さが短いというのが気になります。

主題歌のFalling Fruitsですが、多少歌が聞きづらいというのがありますが、歌詞も魅力的な感じがしますし、
曲の雰囲気も、これから始まる物語を楽しみにさせてくれる曲でした。

それと注目すべき点が効果音の多さ。
実際にプレイしてみると分るのですが、かなり多くの効果音が使用されています。

また、BGMは流さずに効果音のみを使用した演出されているのは巧いところ。
自然の音から打撃系の音等、実に様々な種類の効果音が用意されています。

音声は入っていません。
音楽関係の演出面については、実に巧いと言えると思います。



Character - キャラクター -

原画はひねもすのたりさん。

● セリ
浮浪児のような格好をしている女の子で、いつもお宝を集めることに忙しい。
そのためか、お宝に関しては非常に貪欲で、他人に対してもがさつな面が多い。
主人公に対して、いつも態度ががさつで、酷く乱暴な扱いをする。
旅の日々を共に過ごす中で、次第にある感情が芽生えてくるのだが・・・

● トルイエ
特殊な超能力に似た能力を持っている女性で、いつもマドカを従えている。
いつも穏やかで、他人に対しても優しい性格をしている。
特殊な能力を持っている彼女は、その能力を有効的に使うために人助けの旅の途中。
普段は周囲に穏やかな眼差しを向け、優しい笑顔をしている彼女だが、時折無機質な表情をする事が・・・

● マドカ
トルイエにいつもついて歩いている人物。
いつも慌てていたり、怯えていたり、おどおどしていたり、性格があまり安定していない。
人助けの旅をしているトルイエと一緒に行動しているが、その性格上、他人に不安を抱かせる事も。
そんな頼りない雰囲気を漂わせているが、ある時、突然それが一変することに・・・

● ミカゲ
全身に黒衣をまとっている女の子で、いつも黒い猫を抱いている。
顔がセリととてもよく似ているが、性格は全く異なり、内に秘めた恐怖に似たような雰囲気を感じさせる。
ルカの前に度々現れては、その度に何か予言めいた事をさり気なく伝える。
セリとミカゲ、全く対称的なイメージを感じさせる二人だが、一体二人は・・・・・・

● 流渦
本編の主人公で、左右の目が捉える世界が異なるという特異な人物。
あまり他人と会話する人間ではないようだが、時折一人で言葉をつぶやいたりする事がある。

● 美月
本編のヒロインで、全身を包帯で巻かれ、長い間眠りつづけている。
眠りつづける彼女の夢、思考、それが流渦の失われた左目を通して伝えられていく。

● ルカ
もう一人の主人公。
あまり他人を疑うようなこともなく、純粋無垢な性格をしている。
掃き溜めの街で時を過ごしていた彼は、世界に対して、自分に対しての興味や疑問などはあまり抱かなかった。
そして、次第に人々との出会いの中で、忘れかけていた自分自身について何かに気付いていく・・・

原画についてですが、あまり万人受けする原画だとは思えません。
もちろん自分は好みなのですが。

どのキャラクターについて見てもインパクトが強めですね。
全員が笑わせてくれますし、サブキャラの存在感も強いのは良い点。



Graphics - グラフィック -

立ち絵はジャギーの処理もされていて、線はとても綺麗です。
塗りの方もかなり綺麗で、これに関しては言うことなしです。

イベントCGの枚数は85枚と、ちょっと少なめに感じました。
こちらの塗りについては、立ち絵同様に特に言うことなしです。

それで、注目すべき所は背景。
背景の塗りも素晴らしいと思いましたし、何よりも背景に描かれる世界観が印象的でした。

お世辞抜きで存在感を感じる背景CGでしたし、精細な感じも凄いです。

それと、このCGに関して、このソフトだけある特別なものがコマCG。
これを簡単に説明すると「漫画のコマ」のようなCGで、もちろんキャラが描かれています。

といった感じで強引にイベントCG、立ち絵、コマCGと別けて見てみましたが、
実際の所、プレイしている上でそういう区別はあって無いような感じになります。

それはどういう事なのかと言うと、すべてのCGが縦横無尽に動き回るから。
これはプレイした方にしか伝わらないと思いますが、本当に全てのCGがあらゆる動きをします。

一応ソフトのジャンルは「ノベル」がベースになっていますが、もう「ノベル」の枠組みからは確実に抜け出ていますね。
本当に斬新なシステムですし、それだけでも一見の価値があると思います。




System - システム -

ゲームシステムには特に不具合はなし。
全体的な動作は軽快な感じで、プレイしていて動作に問題があるようには感じませんでした。

ゲームは選択肢型のADVで、難易度はやや高めでしょうか。
Trueエンドを見るのが少し大変なところがあります。

セーブ可能数は8箇所。
難易度がやや高めという事と、選択肢の数も多めなので、多少心細い部分があります。

スキップは強制スキップと未読スキップ。
未読スキップは未読部分、選択肢の所まで、テキストや画像は表示されずに一気に跳ばしていきます。

強制スキップの方は、テキストと画像を表示しながら跳ばします。
スキップの速度はあまり速めではありませんが、丁度読めないくらいなのでOK。

画面モードはフルスクリーンとウィンドウモードの両方に対応で、ハイカラーモードのみでの動作になっています。
音楽関係の機能は、BGM、効果音の切り替えが可能。

メッセージ関係の機能はアンチエイリアスの切り替え、文章表示方法の一括、もしくは一行ずつへの切り替えが可能。
おまけ機能は、イベントCG回想、コマCG回想、音楽回想、心理学講座がついています。

おまけ機能に関しては、他社のソフトでは見かけない面白いものがついていますね。
それはコマCG回想と心理学講座の二つ。

コマCG回想とは、ゲーム内で使用されている、いわゆる「動くCG」を見る事が出来ます。

このソフトの特徴的な構成要素の一つですので、見るだけの価値は十分。
そして、回想モードとしてもう一度見られるというのは嬉しい点ですね。

もうひとつ、面白いおまけ機能は心理学講座。
ゲーム中に登場するキャラが、コミカルに心理学を教えてくれます。

その他の機能はウィンドウスキンの変更、それと拡張機能のメール受信機能がついています。

過去にでた数々のソフトの中で、全く例を見ない機能であるメール受信機能。
メーカーでダウンロードできるプログラムから、ゲームの機能を拡張できるわけです。

これは、ゲーム内で選んだ選択肢によって、自動的にメールが送られてくるという機能です。
送られてくるメールの内容ですが、選んだ選択肢に対して、突っ込み、謎の人物のコメントを入れてくれるという物。

一体、誰の視点から見た突っ込みなのかはハッキリしませんが、個人的に内容については面白いとは思いませんでした。
ただ、特殊な機能としてはとてもユニークな発想だと思いますし、こういうのも面白みが膨らんで良いなって思います。

今回導入された物については、一応試験的なもののようです。
開発途中ながら斬新な機能を示してくれた事に、次回作へ期待を持つ事が出来るだけの理由にもなります。

全体的に機能的には殆ど不満はありませんでした。
欲を言ってしまえば、回想モードは欲しいなと思いますが。

それと、マウス主体のプレイスタイルではなくて、キーボードにも機能が割り当てられているのも良い点。
スキップ機能がキーボードに独立しているのは、とても使いやすいですね。



Total - 総評 -

Project-Μさんの第三作目。
彼願ですが、実際にプレイしてみた最初の感想は、「世界観が分からん」という感じでした。
えーっと・・・そこには殆ど話について行けてない自分が・・・

二つの目が違う物を見ているっていうのもそうですが、リアルな世界での収容所のような建物。
何であそこに閉じ込められているんだろうかとか、理解に苦しむ場面も・・・

でも最後のエンディングの頃にはちゃんと理解できるようになってましたけどね。

本当はコミカルでギャグばかりな話だと思ってました。
けど、実際にはシリアスな感じが凄く良かったです。

それと、今回凄いと思ったのはS-Cubeシステム。
コマCGが動く奴です。

本当にこれはプレイした人間にしかわからないんですが、実に面白いです。
まさに動的な感じがして、動く漫画を見ているような感じ。

それと、もうひとつ気になるのが携帯にメッセージが送られてくる所。
機能的には実に面白いと思います。

でも内容が・・・・・・・・・次作に期待です。
それと送られてくる数が・・・・・・・・・これも次作での改善を期待して。

実際の所、自分はプレイする時に携帯に送信するように設定してみました。
でもまぁそこからが凄いの何の。

選択肢を一つ選ぶたびに、一つメールが送られてくるんです。
例を挙げると・・・・・・

「ほウ・・・?予想範囲でハアりまスが・・・さテ、どう転がりマすかネ・・・?」
「幼さ故の臆病・・・ふフッ・・・さテ?」

と、こんな感じです。

まぁ今考えてみればあの立場にあるアイツらが言っているんだなって理解できますけどね。
上のほうでは理解できなかったって書いてありますけど、Trueエンドを見たら分かりましたよ。

でもまぁそれまでは全く誰が言ってる言葉かはわかりませんでしたし、内容も意味不明でしたから・・・

と、そんな感じの機能です。
今回はどうかな?と思いましたが、機能の発想としては物凄い画期的な感じがします。

システム面に関して。

前作は物凄くスキップの使い勝手が悪かったのが印象に残っています。
ですが、今回は非常に優しいつくりになっていたと感じます。

やっぱりキーボードを操作方法に含めてあるという点が非常に好きです。
スキップするにしろ、なんにしろ、マウスオンリーでのプレイには多少使いにくい部分が。

そういった点で、非常に使いやすいシステムでした。
バグがないというのも非常に安心できますしね。

最終的に全体眺めてみると、とても丁寧な作りだったように感じます。
CGや音楽などもそうですが、各演出方法の巧さや、システムの設計まで、全体的に満足でした。

ただ、最後に心残りなのがエロの少なさ。

やっぱりエロが少ないエロゲというのはどうなのかな・・・・
シーン回想が無いのはどうなんだろうかな・・・

毎回思いますが、非常に良質な作品を送り出してくれていると思います。
世間での噂にあまりならないというのは不思議でしょうがない点でありますが。




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Scenario
:
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85
Sound
:
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75
Character
:
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80
Grapchics
:
■■■■■■■■■■■■■■■■
85
System
:
■■■■■■■■■■■■■■■■
80
H
:
■■■■■■■■
45
Main3
:
■■■■■■■■■■■■■■■■
80
Total
:
■■■■■■■■■■■■■■■
75