螺旋回廊  







序章



 
 人生が劇的に色を変えた。

 ちょうど一年前の、雪が降った季節の出来事だった。

 その変化を哀れむ者も、怒りをあらわにする者も、この偽善に満ちた世界には大勢いるだろう。

 かつては僕もその中の一人であったから、葉子という個人を支配し、蹂躙する事を決めた後もその気持ちも少しは残っていた。

 だが、今、僕がいる歪んだ色の世界はそんな気持ちなど吹き飛ばしてしまうほど強烈で、甘美なものであったのだ。

 抜け出す意志さえも放棄させ、更に歪みを増していく世界の中で、

 気がつけば、日常を楽しんでいる僕がいた。

 気がつけば、それを納得している僕がいた。

 気がつけば、自ら世界を歪めていく僕がいた。

 そして、葉子だけでは足りない事に気付いてしまった。

 歪んだ色をもつ僕の人生は、まだ満たされてはいないのだから……








・・・続く。