TeaParty ~紅茶のお茶会~

『峠のお茶会』

「かわいい人」

感じたその視線に振り返れば。
そこにあるのはぼんやりとしたその表情。
思わず笑みがこぼれてしまうというのは、こんな感じを言うのだろうか。

「どうした、ぼぉっとして」
その答えが分かっていて、そう声を掛けるオレは確信犯なのだろうか。
「え、あ、なんでもないです・・」
あせって、そんな答えを返してくるその表情はさっきまで見せていたものとはまったく違って・・。
「そうか?」
思わず自分の表情まで緩んでしまう。
「はい・・」
その顔を伏せて返ってくる返事は小さな小さな声で、オレは苦笑いをせずにはいられない。
「緊張する?」
なんとなくそう聞けば、
「いえ、そうじゃないんですけど・・。いや、やっぱりそうなのかも・・」
なんて表情をころころ変えて答えてくるからついつい笑ってしまう。
「どうして?」
その口から答えが聞きたくて、その答える表情を見たくて、オレはそう尋ねてみる。
「・・」
無言でオレは見上げられている。この顔が、たまらない。
「だって・・」
言いながら、真っ赤に染まっていく顔がかわいい。
「ん?」
促すような短い言葉を、同じ目線の高さまで下げてささやく。
「涼介さん、意地悪です・・」
小さくつぶやいて、そしてぷぅっと頬をふくらませるその表情がこれまたかわいい。
「真っ赤な顔で言っても効果ないよ」
そしてそのふくらんだ頬に、ひとつキスを落とす。
「涼介さん、ホント意地悪だ・・」
ぎゅっとしがみつくようなその腕の中でオレはその言葉を聞いた。
「ごめん、ごめん」
オレは愛しい恋人をそっと抱きしめた。
「でも・・好きです・・」
小さな小さな告白は、本当にうれしくて・・。
「オレも好きだよ・・」
今日初めての、拓海への口付け。



かわいい人
2001.5.18