『世紀末のお茶会』
「Sweet Sweet Magic」
「ヒック」朝起きて、顔を洗って、ふぅっと一息ついた途端しゃっくりが出た。
「・・・ヒック・・・・・ヒック・・」
一回出たら最後。しゃっくりはなかなか止まらない。
何したら止まるかな…そうだ、飯食えば止まるかも!
そんな事を考えて、とりあえずキッチンへ移動。
「・・ヒック・・・・・・ヒック」
そろそろ気持ち悪くなってきたかもしれない。何とかしないと…。
「おはよう、耕作」
「うわっ!」
後ろから、何の気配もなく急に抱きしめられて、俺は思わず大声を上げてしまった。
「あ…」
振り返れば、優しい笑顔の高杉さんがにっこり笑って俺を見ていた。
「おはようございます。って、びっくりするじゃないですか~」
子供みたいに、ちょっと頬を膨らませて抗議してみても、返って来るのはやっぱりニコニコとした笑顔。
「洋一郎さん?」
なんとなく、その名前で呼んで高杉さんを見つめれば、さらにぎゅっと抱きしめられてしまう。
「止まった?」
そして、ちょっと首を傾げて尋ねられ、でもその意味が分からなくて俺も首をかしげてしまう。
「しゃっくり」
言われて、あぁって思う。
「そういえば…止まったみたいっスね」
ひっきりなしに出ていたしゃっくりも、びっくりしたせいで止まってしまったらしい。
「良かった」
そう言ってもっと笑顔になった高杉さんを見つめ、俺を驚かせるための行動だったんだなぁって思う。
「ありがとうございます」
そう言って笑いかければ、高杉さんの笑顔が返ってくる。
こんな些細な事が、すごく幸せ。
「ところで。俺、動けないっスけど…?」
さっきまであった振り返る余裕すらない位にもう一回抱きしめられてしまい、俺は本当に身動きが取れなくなっていた。
「朝からこんなチャンス、めったにないからね」
背中から聞こえる高杉さんの声はなんだかやけに楽しそうな気がする…。
「た、高杉さん?」
そんな状態の高杉さんの事を見る事が出来なくて、俺は一瞬いや~な予感がした。
「わっ」
途端、首筋にちくっとした痛みを感じた。
予感的中…。
「何してるんですかっ」
やっと緩んだ腕からすり抜けて振り返りながら言ってみても、やっぱり高杉さんの笑顔には敵わない。
「ははは」
なんて笑っている高杉さんは本当に嬉しそうだ。
「さっきのお礼をしようと思ったけど、これでチャラですからね」
負けっぱなしもちょっとだけ口惜しいから、首筋を押さえながらちょっと怒ったように言ってみる。
でも、
「え、緒方君?」
なんて、ちょっとおろおろしている高杉さんも、やっぱり大好きだから。
「冗談ですよ」
って、笑って俺からキスをした。
Sweet Sweet Magic
2000.12.20