TeaParty ~紅茶のお茶会~

『世紀末のお茶会』

パラレル「赤ずきん」ダーリン
「タケルずきんちゃん」1600Hit 比呂さまへ♪

むかし むかしのおはなしです。

 ある村にタケル君という可愛い男の子がいました。
 タケル君はいつも黄色いずきんをかぶっていたので、村中の人からタケルずきんちゃんと呼ばれていました。
 「タケルずきんちゃん、森のオガタ君が風邪で寝込んでいるらしいのでお見舞いを持って行ってあげてくれませんか?」
 ある日タケルずきんちゃんはお母さんのツツミさんにそう頼まれました。
「はーい。行ってきまーす」
 タケルずきんちゃんはそう返事をして元気良く出かけて行きました。
「寄り道しないで、気を付けて行って来て下さいね」
 ツツミさんはそう言ってタケルずきんちゃんを見送りました。

 タケルずきんちゃんが森の入り口まで来た時です。
 一匹の狼がその様子を見ていました。
「さてはコウサクの家に行くんだな…。先回りしてやろう」
 タケルずきんちゃんは狼のそんな思惑など全然気付かずに、うきうきと森の中を歩いて行きました。
「あ、花畑だ!せっかくだからお見舞い用につんで行こうっと」
 花畑でお花をつみ、森の中の動物達とおしゃべりしながらタケルずきんちゃんはオガタ君の家へと向かいました。

 先回りでオガタ君の家に着いた狼は家のドアをたたきました。
「は~い」
 オガタ君はドアを開けました。
「よ!ヘボサク」
 狼は出てきたオガタ君にそう声をかけました。
「げ!コウヘイ!!」
 思いもよらなかった狼コウヘイ君の登場に、オガタ君は驚いて声をあげました。
「何しに来たんだよ。俺は今風邪でだるいんだ、まったく…」
 オガタ君はぶつぶつそう言いながらコウヘイ君の事をちょっとにらみました。
「いや、ここに男の子が向かってたからな。先回りしてきたんだ。ちょっと腹減ったからな」
 コウヘイ君ははそう言ってオガタ君の家に上がりこみました。
「というわけで。ヘボサクちゃんはここに隠れててもらうとしますか」
 コウヘイ君はオガタ君をタンスの中に閉じ込めてしまうと自分はベッドの中に入ってタケルずきんちゃんが来るのを待ちました。

 しばらくするとタケルずきんちゃんが楽しそうに歌を歌いながらやって来ました。
「コウサクさーん。タケルです」
 ドアをたたき、タケル君は家の中に入りました。
「来たな…」
 ベットの中のコウヘイ君は心の中でそう思いました。
「コウサクさん?そんなに具合悪いんですか?」
 ベッドの中でふとんを深くかぶった姿を見て、タケルずきんちゃんは心配そうに声をかけました。
「風邪を移すといけないからな」
 コウヘイ君はそう答えました。
「コウサクさんの声…、なんだかいつもと違いますね」
 少し低めの渋い声に、タケルずきんちゃんはちょっと顔を赤くしました。
「そ、そうか?」
 そんなタケル君の顔を見たコウヘイ君もなんだか気恥ずかしくなってそんな風に答えました。
「なんだか、いつもと違う感じ…」
 タケルずきんちゃんはそう言ってベッドの中を覗き込みました。
「俺はコウサクじゃないからな」
 コウヘイ君はそう言ってふとんをはいでタケルずきんちゃんの事を見つめました。
 寝ているのがオガタ君だと思っていたタケルずきんちゃんは急に現れた狼コウヘイ君にびっくりし、同時に顔を真っ赤にしました。
 コウヘイ君の方もタケルずきんちゃんを見て、一瞬言葉を失いました。
「お前…可愛いな」
 そしてそうつぶやくとおもむろにタケルずきんちゃんのこと抱きしめました。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 突然の事に驚いたタケルずきんちゃんは、叫んでコウヘイ君の事を突き飛ばしました。

 そのタケル君の叫び声を森の中でキツネを追っていた猟師のタカスギさんが聞きつけました。
「ものすごい声だけど…何かあったのかな」
 タカスギさんはオガタ君の家に向かい、そっと家の中をのぞきこみました。
 中には突き飛ばされたコウヘイ君、真っ赤な顔のタケルずきんちゃんが見えました。
「出せー!このヤロ~」
 そしてがたがたと動くタンスの中からそんな声が聞こえました。
 瞬間、タカスギさんは急いで家に中に入ってタンスの扉を開けました。
「やっと出られた~~」
 オガタ君はそう言って開けてくれたタカスギさんの事を見ました。
「大丈夫かい?」
 タカスギさんもオガタ君の事を覗き込みました。
「あ、ありがとうございます」
 オガタ君は目の前のタカスギさんを見つめ、そう言いました。
「無事でよかった」
 タカスギさんも見つめ返し、優しく微笑みかけました。

 オガタ君の家でそんな事が起こっている時です。
 ツツミさんは夕食の支度をしながら家族の帰りを待っていました。
「シキブ君もタケルずきんちゃんも遅いですね…」
 ツツミさんがちょうどそんな事を考えた瞬間。
「ただいまー」
 ドアが開いて、シキブ君が帰って来ました。
「おかえりなさい」
 ツツミさんは優しくシキブ君の事を迎えました。
「今日も一日ご苦労様です」
 そう言って微笑むツツミさんの事を、シキブ君はそっと抱きしめました。

 そしてオガタ君の家では、それぞれお互い見つめ合ったまま時間だけが過ぎていました。
「俺…帰ります。コウサクさん、お大事にして下さい」 
 一番最初に行動を起こしたのはタケルずきんちゃんでした。
 ツツミさんから預かってきた荷物を置いくと、急いで家を飛び出しました。
「タケルずきんちゃん、ありがとう、気をつけるんだぞ」
 オガタ君はそう声をかけました。
「タケル…。待ってくれ、タケルく~~~ん!!」
 突き飛ばされてちょっと伸びていたコウヘイ君は急に飛び起き、タケルずきんちゃんの後を追って行きました。
「一体何があったんだ…」
 タンスの中にいて状況が見えなかったオガタ君はそうつぶやきました。
「僕は、君の事が知りたいな」
 タカスギさんはにっこりと笑って言いました。
 オガタ君は真っ赤な顔で高杉さんの事を見つめました。

 そして…。物語はいつもHappyend♪



タケルずきんちゃん
2000.7.27