TeaParty ~紅茶のお茶会~

『世紀末のお茶会』

「午後の風景」~神様からの贈り物《番外編》~

それはある晴れた休日。
高杉さんはリビングで新聞を読んでいました。
「ふぅ」
その隣で洗濯物をたたんでいた緒方君は、ソファーに座り直しながら小さくため息をつきました。
「大丈夫かい?」
緒方君のそんなため息を聞いた高杉さんは、すぐにそう言いました。
「大丈夫っスよ、これくらい。どうって事ないです」
だいぶ大きくなってきたお腹をそっとなでながら、緒方君は笑って答えました。
「それならいいんだけど…」
高杉さんは、ちょっと上目遣いに緒方君のことを見つめました。
「なんですか?」
緒方君は、そう言って高杉さんのことを見つめ返しました。
「なんだか無理をさせてるような気がしてね…。耕作はいつでも一生懸命だからね」
高杉さんは新聞をたたみ、緒方君の傍に座り直しました。
「無理なんてしてませんよ。それに…他でもない、洋一郎さんと俺の子供なんですから。全然平気です」
緒方君は高杉さんに笑いかけました。
「でも、やっぱり耕作に負担がかかっているのは間違えではないだろう?」
高杉さんは真剣にそう言って緒方君のことをそっと抱きしめました。
「洋一郎さん…」
突然のことにちょっと驚いた緒方君も、その優しさとぬくもりの中でおとなしくしていました。
「あと少しだね」
緒方君の大きなお腹にそっと触れながら、高杉さんは幸せそうな顔で言いました。
「そうっスね。最近、よく動くんですよ。なんだか…すごく実感わくんですよね」
緒方君は優しい目で自分のお腹を見つめました。
「…なんか。うらやましいな…」
そんな緒方君の姿を見た高杉さんは、ぽつりとつぶやきました。
「何がですか?」
緒方君は不思議そうにそう訊ねました。
「この子は、僕が傍にいられない時でも、耕作の一番傍にいられるからね」
上目遣いで緒方君のことを覗き込んで、高杉さんはそう答えました。
「洋一郎さん…。自分の子供にやきもち焼いてどうするんですか…」
ちょっと赤くなりながら、緒方君は言いました。
「だって、しょうがないだろ?僕はいつでも耕作の一番傍にいたいからね」
高杉さんの声は少し淋し気でした。
「洋一郎さん、俺はいつでも傍にいますよ。忘れちゃったんですか?」
緒方君はそう言って高杉さんの背に腕を回しました。
「忘れるわけないだろう」
高杉さんは、緒方君の言葉に即行で答えると、優しく優しく抱きしめました。
「それならいいじゃないですか。俺が一番大事に思っているのは洋一郎さんなんですから」
緒方君はちょっと笑いながら、そして幸せそうにそう言いました。
「それは分かっているんだけどね」
高杉さんは緒方君のことを抱きしめたまま、ちょっとだけ腑に落ちない顔をしていました。
「それに、この子は洋一郎さんの子供なんですから、大事にするのは当たり前なんです」
片手でお腹にそっと触れ、緒方君は幸せそうに言いました。
「僕と、耕作の、だろ?」
高杉さんはそう訂正すると緒方君のお腹にそっと耳をあてました。
「…それにしても、洋一郎さんって、本当にやきもち焼きですよね」
高杉さんの髪にそっと触れ、そして優しく見つめながら緒方君は言いました。
「…そう言えば…緒方君にやきもち焼かれた事ってないような気がする」
高杉さんはむくっと顔を上げて言いました。
「そういえば、そうですね…」
緒方君は考えるようにして答えました。
「僕ばっかりだなぁ」
高杉さんはちょっとすねた風に言いました。
「そんなことないっスよ。でも、洋一郎さん、俺がやきもち焼くようなことしないじゃないですか」
緒方君はちょっと焦ってそう言いました。
「ちょっと…やきもち焼かれてみたいかな?」
高杉さんはいたずらっぽくそう言うと、緒方君のことを下から見上げました。
「な、何言ってるんですか!」
緒方君はそんな高杉さんの態度に、もっとあわててそう答えました。
「ははは。愛してるよ」
ふと真面目な顔で高杉さんは言いました。
「え…」
急なことでびっくりしたまま、緒方君は顔を赤くしていました。
「耕作はホント可愛いなぁ」
高杉さんはしみじみそう言うと、ぎゅっと緒方君を抱きしめました。
「…俺も、愛してますよ。だから急にそういうこと言わないで下さいよ」
緒方君は真っ赤な顔でそう言うと、そっと高杉さんの背に腕をまわしました。
「本当のことだからね」
高杉さんはそう言うと緒方君にそっとキスをしました。
それはある晴れた、恋人たちの休日…。



午後の風景
2000.2.22~2.29