TeaParty ~紅茶のお茶会~

『世紀末のお茶会』

「6月のある日」~トドタケ編~

「耕平、耕平、結婚式やってる!」
猛は無邪気にはしゃぎながら教会を指さした。耕平はそんな猛の指さす方へと視線を移す。
そこには式を挙げたばかりの2人がみんなに囲まれている光景があった。
「いいなぁ」
無意識に猛はつぶやいた。
「え?!」耕平は驚きの声を上げた。まさかそんなセリフが出てくるとは思っていなかったのだ。
猛自身、本当に無意識で、何がいいのか分かっていなかった。だから耕平の驚き声に、これまたびっくりしてしまう。
「結婚したいのか?」
ちょっと気をよくした耕平は、いたずらっぽく猛の顔をのぞき込んだ。
バグウッッッッッ!!!!
猛の顔が真っ赤になるのと、パンチを繰り出すのは、ほぼ同時だった。
「こ、こんな人の居るところで恥ずかしいこと聞くなよ!!!」
周りに人なんてそんなに居なかったのだが、猛は恥ずかしい方が先に立ってしまって、周りなんて見えていなかった。
「いっちぃ~…」
耕平は顔を押さえながら、それでも『猛はかわいいなぁ』などと思っていた。
猛は猛で、あまりにも痛そうにしている耕平の姿を見てはっと我に返った。
「こ、耕平が悪いんだからな」
それでも急に素直にはなれなくてそんな風な言葉が口から出てしまった。いったん怒ってしまった手前、なかなか素直になりづらいのだ。
でもそんな性格までもをかわいいと思っている耕平は、心の奥でにやにやしてしまうのだった。猛のとっている態度が照れ隠しだということにも、もちろん気付いている。
「俺はお前としか結婚したくないけどな」
耕平は猛の耳元にそっと渋い声でささやいた。
「猛は?」
そしてまた意地悪く聞いてしまうのだった。猛の顔はさっき以上に真っ赤になってしまう。
「ん?」
答えを待つ耕平の顔が、いつもよりもそばにあって、なんだかそれがうれしくて、でも恥ずかしくて、照れくさくて、猛はうつむいてしまう。
「俺もだよ」
そしてつぶやくように小さな声で言った。
「何だって?」
聞こえないふりをして耕平はまた聞き直す。
「俺が耕平以外としたいなんて思う訳ないだろ!!」
真っ赤な顔をブンッと上げて猛は叫ぶように言った。
「当たり前だろ!!」
そして耕平の胸にぽふっとしがみついた。
耕平はびっくりしてしまう。外で、それも少ないとはいえ人の居る前で、猛からくっついてこられたことは滅多にない。
「た、猛くん?」
「絶対に幸せにしろよ」
どうしようかとおろおろしている耕平にぎゅっとしがみつき、猛は聞こえるかどうか位の声でそう言った。
耕平は一瞬何も言えなくて瞬きを繰り返していた。それから、とても優しい笑顔で猛のことをそっと抱きしめた。
「当たり前だろ。俺以外の誰が幸せに出来るって言うんだ?」
そんな自信満々の答えを聞いて、猛はうれしくなってしまう。
「俺も、耕平のこと、絶対幸せにするからな」
大きな目をもっとくりくり大きくさせて、猛はそう言って笑う。
何があっても、やっぱり2人は幸せなのだ。



6月のある日~トドタケ編~
1999.11.25 Thu